みさきみさの観てきた!クチコミ一覧

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検察官

検察官

柿喰う客

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/11/12 (土) ~ 2011/11/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

プレビュー公演を観た。
柿喰う客と韓国の若手劇団「連劇美」とのコラボだったが、韓国語のセリフのみ字幕付きだったが、観る場所によってはキャストの立ち居地で見えずらかった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


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悪政と汚職で腐敗しきった地方都市に、 中央政府から"検察官"が視察に来るという。
自らの悪行が露見するのを恐れた市長は、 検察官を懐柔しようと策を練る為に裁判長判事、校長先生、郵便局長慈善病院院長らを呼び出した。「お呼びしたのは他でもない。不愉快な知らせをお伝えするためです。 この町に…検察官がやってくる」との出だしから始まるが、キャストらが舞台に登場するパフォーマンスダンスが実に素敵だ。

観ているこちらもそのリズムに乗っかってついついハイテンションになっちまう。笑
導入音楽もいい。そしてなによりただの人・フレスタコフを検察官だと勘違いしたことから始まるこの物語は、滑稽という以外なく、はたしてフレスタコフ自身もそれにあやかって悪乗りして大ぼらを吹きまくり彼らから金を巻き上げ出し抜いて逃げてしまうのだ。

やがてフレスタコフが逃げた後に彼の正体がバレたものの、本物の検察官が登場しても疑心暗鬼な目でみてしまう、というブラックコメディだった。
玉置玲央の演技と吐く韓国語が見もの。劇団内の事情により俳優の意見を尊重した結果、コロと右手愛美が降板。
中屋敷法仁 の演出がお見事な舞台!

もしかしたら、本番ではキャストの入れ替えがあるかも・・との中屋敷の発言あり。
だとしたら、今回のプレビュー公演は幻の公演ともなり一見の価値ありでしょ。
これから

これから

アンティークス

OFF OFFシアター(東京都)

2011/11/09 (水) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★

大絶賛な「これから」
アンティークスの舞台は妄想と現実の世界が交錯するのが特徴だと常々思っているが今回の2編はまさにその表現方法だった。特に『これから』は文句なしに素晴らしい作品で後半は涙ナシでは観られなかった。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


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「ある日見た坂道で」
高校生のゆきとその教師・海人はつきあっていたが、デートの日に海人は交通事故でなくなってしまう。これをきっかけにゆきは悲しみのあまり現実の世界から逃避し独特の妄想の世界に入り込んでしまう。それは海人とゆきの魂だけが入れ替わるという映画「転校生」のようなものだった。ここまでなら映画でも小説でもよくある話で、ふんふん・・なんつって普通に楽しく観るのだが、物語はゆきがそういった妄想の中で海人と結婚し海人が浮気をしている様子も描く。

そして現実の世界ではゆきがあの頃から10年もたっているのに未だに精神科に入院してるらしいゆきをかつての同級生らが芝居を演じてゆきの記憶を呼び戻そうとしているのだった。
絶望の果てに現実逃避したゆきの物語。
えっちゃんこと柴田和美の小学生バージョンが中々笑える。



「これから」
これほどまでに落涙した舞台は久しぶりだった。
主人公しのぶは現在30歳。100回以上の就活に落ちまくりフテテいたが、いつも笑っている母がしのぶを元気付ける。そんな二人きりの生活に突如として表れた父と妹。彼らは奇妙にケケケケ・・・と笑いながら普通の人間とは違った生き物のように見える。しかし母は「お父さんと妹は前からここに居たでしょ。」なんて呆れた顔でのたまう。

少しは抵抗したものの、やがて、しのぶ自身、この奇怪な父と妹にいつしか癒され奇妙な生活にも慣れ家族として受け入れていく。4人家族としてどうにか枠組みが整った頃、家族旅行の話が盛り上がり母は初恋の人に逢いたいと言い出す。これをきっかけに時空に歪みが出来て1974年の過去、母・ゆみこが高校生だった頃にフラッシュバックし母の初恋と疾病と妊娠の秘密が暴かれるのだった。余命いくばくもないと悟ったゆみこは恋人、つまりしのぶの父親・学と別れることを決意し一人でしのぶを育てる覚悟を決める。

それからというもの、母はしのぶが生まれてから常に自分としのぶをビデオに収め、こういった事情を知らないしのぶはそんな母親をウザク思いながらも愛情たっぷりに育っていったのだった。しかし眠り病の突然変異性という疾病は少しずつ記憶を失いながら、やがて最後には死が待っている。事実そのように母は静かにいつも笑顔を絶やさずしのぶと向き合いながらも、死んでいった。

しのぶは自分が孤独だったことを時々思い出しながらも母との楽しかった過去を思い出す。それはしのぶが望んで止まない妄想の世界だ。その世界にはケケケケ・・と笑う他の星から来た父と妹も居る。その架空の家族は、しのぶの理想の家族像だ。だから、こうしてしのぶは孤独を忘れるように妄想に浸るのである。
就活が思いようにならず孤独に生きる女のお話。

後半はほとんど泣きっぱなしだった。母・ゆみこを演じた鉄炮塚雅よの笑顔が素敵だ。死に直面しながらもしのぶの為に笑顔を絶やさない心もちに泣ける。対してしのぶを演じた森口美香の自然な演技が素晴らしい。孤独感をひしひしと表現する表情もいい。そして不思議な魅力を奏でたさっちゃん(妹)こと、つのだときこがあまりにも素晴らしい。序盤コメディかと思いきや、後半になってがっつりと泣かせる演出と本がお見事!!

「これから」だけなら文句なしに星5つだが総合で星4つとしました。
帰ってきた ザ・バックストリート・シャイニングス

帰ってきた ザ・バックストリート・シャイニングス

スクエア

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/11/10 (木) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★

昭和のテキスト
4人全員がアコースティックギターを抱えてとにかく歌う伝説のサラリーマンバンド、「ザ・バックストリートシャイニングス」再始動!!
てなキャッチに思わず喰い付いたワタクシですが・・・、笑いと哀愁の弾き語りコメディは古典的でベタな内容のまんま昭和のテキスト。

以下はネタばれBOXにて。。

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公演の半分が弾き語りで半分がストーリー仕立てながら、ホント、昭和のスナックでの弾き語りのような小芝居だった。ワタクシは生の弾き語りを観たことはないが、たぶん、こんな感じなのかな?と想像する。

物語は「ザ・バックストリートシャイニングス」に入るには、みじめで不幸でなければいけないという条件のもと、結成された4人組は仲間の子供の修学旅行費を稼ぐ為に東京まで遠征して3万円を稼ごうと企んだのだった。

しかし、東京に行く道々で様々な目に会い、東京に着いたら着いたで地下鉄の乗り継ぎも解らずで当初の計画は脆くも崩れ結局薬局、神戸に舞い戻るという筋だ。

コメディの部分でスベッテいたのと、弾き語り(歌)があまり好みではなく、ちょっと退屈してしまった舞台だった。勿論、コメディは見る側の感覚や感受性で合わないとどうしようもないのだが、演劇というよりも漫才的な要素が強かったかな。

中年の星・課長島耕作から始まり、部長島耕作、取締役島耕作、常務島耕作、専務島耕作、社長島耕作までのネタが一番面白かった。

それにしてもワンピースはいつ終わるんだろ・・。苦笑!
スピンドクター

スピンドクター

劇団 東京フェスティバル

OFF OFFシアター(東京都)

2011/12/15 (木) ~ 2011/12/20 (火)公演終了

満足度★★★★★

緊張感溢れるストレートプレイ
総理官邸にある総理大臣執務室を舞台に突然、発覚した官房長官の女性スキャンダルの裏に潜む、日本を揺るがすエネルギー問題が隠されていた。先日観たチャリT企画公演で鉢呂大臣ネタがあったが、この舞台でも鉢呂ネタが仕込んであってなんとなく繋がりを感じた。笑

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初の女性総理誕生をキッカケに内閣支持率は急上昇し、中川総理自身もただのお飾り総理ではなく、MOIL(藻が作るオイルの俗称)によって世界のエネルギーを変えようとする九州エネルギープラント構想に取り組んでいた。そんな折、官房長官の女性スキャンダルが発覚した。これが記事になることを阻止するべく、組織「内閣情報調査室」の内閣情報官が奔走する。そしてこれを補佐すべく、またスピンドクター(=メディア対策アドバイザー)として夕刊タブロイド紙「東京TODAY」の編集長を抜擢する。

しかし、内実は官房長官の女性スキャンダルではなく、総理のMOIL構想を知った各エネルギー関連会社がMOILの発売を阻止しようと「MOILは危険だ」という捏造を企んでいた。
同時に「東京TODAY」には多方面から圧力がかかり、企業の広告収入源が撤退することに。更に追い討ちをかけるように総理の献金疑惑が持ち上がる。

一度、メディアの標的になったら報じる側にとっては、それが悪でも善でも同義的責任を追及できるから、献金を受けてようが受けまいが関係ない。国民を洗脳する操作くらい簡単だ。というようなセリフには観ているこちらにもそれなりの緊張感があった。

このようなメディアの餌食やエネルギー関連会社の軋轢から逃れる為には日本の未来を変えられるという壮大な構想・MOILの栽培のノウハウを公開するほかないという結論に達し、総理は迷いの中、この決断をし公開するが、内閣情報官の塚原が総理より上手で次の時代は自分だと次の座を密かに狙っている様子を見せながら幕を降ろす展開は流石だった。

どのキャストも素晴らしい。特に中川総理役の矢代朝子のふてぶてしい演技力が、あまりにも素晴らしかった。同時に強かさを兼ね備えたデキル男的な演技力で魅せた天宮良が抜群だった。

脚本といい演出といい、ワタクシが観た劇団東京フェスティバルの舞台では一番良かったと思う。きたむらけんじ、素晴らしい!!
SUPER☆STAR

SUPER☆STAR

天幕旅団

Geki地下Liberty(東京都)

2011/12/14 (水) ~ 2011/12/18 (日)公演終了

満足度★★★

「DJside」を観た。
客席から眼の前のキャストをみていると当時の「笑劇ヤマト魂」を思い出してあまりにも懐かしい。きっと観客のこんな気持ちを出演者は案外知らないのだろうな・・なんて考えながら観ていた。

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寡黙なDJは夜に語る。このお話は夜の東京で、スーパースターを捜す彼らのお話だ。彼らの元に届いた、差出人不明の一通の葉書。「スーパースターは待っている。」 この「待っている」という謎めいたスパースターを探す為に物語は起動する。スーパースターの名のとおり、シューティングスター、ギャングスター、ラッキースター、TVスター、スターダスト、ロックンロールスター・・・と登場するキャラクターはスターばかりだ。笑

これらのキャラクターを誘導する(ナビ役)のがDJこと加藤晃子だ。
舞台の立ち上げ方やポップな演出は「笑劇ヤマト魂」と同じだが、それもそのはず、作演出はヤマトと同様の渡辺望なのだから、当然といえば当然なのだ。

序盤の複数のスター達の伏線を撒きすぎて解り辛い部分があったが、物語が流れていくうちに「ああ、この物語は孤独な夜を過ごす人々、あるいは人生に行き詰った人々の風景を描いたものなのだな・・」と感じた。

中でも、ギャングスターのキャラクターであるボク(吉永輪太郎)が傍若無人にファミレスで無銭飲食したり、コンビニで勝手に袋を破って食べてしまったり、赤いクラウンを盗んだりする光景があまりにも愉快で面白かった。これを補佐する彼(長谷川友貴)のやれやれ・・ぶりもめちゃんこ面白い!

ロックンロールスターの歌手の自殺願望や、負け続ける社会人バレー部の「世田谷スターダスト」の廃止や、TVスターの世代交代劇・・これらは世相を風刺したような芝居だったが、現実の世界でもある。こうしてワタクシ達は世の中に少しずつ抗いながら戦っているんだな、と妙に共感できる物語だった。

終盤に撒き散らした伏線をきっちり回収しまとめたが、きっと観劇初心者には解り辛かった公演だったと思う。
ある日の出来事

ある日の出来事

リブレセン 劇団離風霊船

ザ・ポケット(東京都)

2011/11/09 (水) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

あまりにも素晴らしい!!
1983年の旗揚以後、大橋泰彦さんと伊東由美子さん、二人の座付き作家の作品を 上演し続けている劇団離風霊船。おおよそ30年の歴史を誇るだけあって、ものすごおく素晴らしい作品でした。まさに圧巻!7年ぶりの伊東さんの新作公演は「あっ」と驚く構造と演出を盛り込んだ作品展開や舞台仕掛けが特徴で、テーマは、人間の善悪やエゴイズム。

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現代社会に対して投げかける「伊東由美子版 罪と罰」ともいえる作品だ。当初、劇団の名前を読めなかったが「りぶれせん」という。その描写はおどろおどろしい印象でもあり、アングラ的な香りもあって次第に、じわーっと深い味が広がってくるのが体感できる。選曲も素晴らしく、幕開けと同時に殺人シーンから魅せる舞台は観客をいきなり舞台に引きずり込む力量がある。

物語は主人公・市川がゴミのような仕事に就いてから、自分自身を卑下し、また回りの同僚達もおのずと自分達はクズのような人間だと嘆きながら、自らの人生をこんなはずじゃなかったと後悔し愚痴を吐く。こんな掃き溜めのような職場で独裁的で嫌われ者の主任を殺してやりたいと常々考えていた市川はある日、本当に主任を殺してしまう。

実際に手を下した人間と、手は下さないけれど、死ねばいい。と考えてる人間のその差は何だろう?などと同僚は言う。そして同僚は市川に主任を殺すことを共感し、そのように囃し立てる。また市川自身が母親と妹から多大な期待をかけられていたことも重荷となっていた。

やがて市川が主任を殺してから市川自身が妄想の世界に入り込み、何度もこの描写が繰り返される。現実と妄想と過去を錯綜するかのように市川の小学生の過去にもフラッシュバックして市川の心の闇も映し出される。

市川は「前にもきっとあんたを何回も殺してるんですよね。こんな馬鹿げた繰り返しはもう止めにしたいけれど、ここだけは変わらない。」と青光りした眼で人を見るようにのたまう。
それが仕組まれた輪廻で抗えないかのように・・。

物語は二重にも三重にも複雑な構造を仕掛けながら人間と言う奴は何かが重なって殺意に変換するさまも見せ付ける。やがて・・市川が刑務所で母親と面会するシーン。この物語だけではこれほど感動しなかったと思う。一にも二にも演出が飛びぬけて素晴らしい。更に劇中に導入されるダンスも面白い。秀逸な芸術作品だった。願わくばもう一回観たいほど。全てのキャストの演技力も秀逸で文句のつけようがない。特に山岸諒子の演技が神的だ。

劇団離風霊船、噂には聞いていたけれど、あまりにも素晴らしい舞台だった。大絶賛!
岸田國士傑作短編集

岸田國士傑作短編集

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2011/11/04 (金) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

家族の機微
戯曲賞の冠にもなっている岸田國士は、文学座の創立メンバーだ。その彼の短編を3本一気に観れるチャンスなのだから、観ておくにこしたことはない。なんつって偉そうに(岸田を既に呼び捨て!笑)言っちゃう!
またセットの画が素晴らしい。モチーフはクリムトの「接吻」だ。美術:奥村泰彦。
また今回のキャストは「連結の子」で拝見したキャストらが登場しており、なんとなく勝手に親しみを感じた。

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『明日は天気』
海岸の旅館に避暑にやってきた一組の夫婦。雨に降り込められ暇を持て余す2人の会話はことごとく噛み合わない。とある夫婦の等身大の会話を描写したシンプルな物語だ。夫を演じるのは浅野雅博。本当に良くしゃべる夫で、ほぼしゃべりっぱなし。笑
夫が妻の幸せをいつも考えているセリフが温かい。
また、浅野の声のトーン、ちょっとした視線の配り方、そして“間”が絶妙だった。また浴衣の下に着ていた夫の水着が囚人のようにヨコシマで、思わず仰け反った。オマエは楳図かずおかっ!!


『驟雨』
倦怠期が見え隠れする夫婦。ある日、新婚旅行に旅立ったはずの妻の妹が突然訪ねてくる。離婚したいという妹に狼狽する妻を尻目に、普段無口な夫は雄弁に語りだす。相変わらずセリフに含まれる男と女の気持ちのズレが絶妙で、なおかつ夫婦の秘訣みたいなセリフも勉強になった。夫婦の日常の生活に起こるさざ波ような出来事があったからこそ、夫婦の機微を今一度確認するような物語だった。

『秘密の 代償』
休暇をとって海辺の避暑地の別荘にやってきた高級官吏・池田一家。本宅から連れてきていた小間使いのてるが唐突に暇を申し立てる。妻は夫か息子がてるに手を出したのではないかと疑い、ふたりを試そうとするが、大枚を盗んで逃げようとしていたてるは、妻の疑いを利用して夫と息子の気持ちをたぶらかし、まんまと大枚を持って逃げてしまう。その後、警察から大枚を持った女が駅に居ると通報があったものの、池田家では世間体を重んじて盗まれた大枚を追求せず、てるのほうが強かで一枚も二枚も上手だったという物語。

今回の3本の戯曲はどれも夫婦の秘めた心の内を表現した舞台だったと思う。美しい日本語のセリフと同時にエロスを色濃く漂わせ、また人生に於いての見損ないや、男とは困った生き物だという夫婦にしか解らない独特の空間が楽しかった。所々、クスッと笑える箇所もあり、演技力も充分だった。
死の町

死の町

劇団チャリT企画

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/12/13 (火) ~ 2011/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★

コメディ×時事ネタ
「死の町」と発言した鉢呂大臣が解任までの流れを時系列に解明する演劇だった。コメディと真面目さを併せ持つ興味深い舞台だった。

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鉢呂大臣がなんで辞めさせられたのか?という素直な発想からこのお芝居を作ったらしいが、概ね成功だったように思う。大臣が、マスコミによる大バッシングののちにどうやって辞任に追い込まれたのかや、オフレコ発言で「放射能つけちゃうぞ」というような不謹慎な発言をして大騒動へと発展した過程を、松本先生、探偵コナン、探偵マーブル、探偵ホームズ、探偵松田優作らがあれやこれやとコメディ的に検証し、解明していくのだ。笑

オフレコ発言が大臣自身の記憶にはなく、報じられた発言内容もマスコミ各社によってバラバラなことから真実は隠されてしまった形だ。メディアが流した鉢呂大臣の発言を時系列に追っていくと、なるほど・・メディアにしてやられたな。という印象を強く受ける。

いつの世も、噂とか風評は民衆の数によって操作されてしまうことが多い。マスコミのように電波によって流される情報はそれが正当でも間違いでも瞬時に世間を動かしてしまう力がある。よく考えれば末恐ろしいことなのだけれど、一人の大臣が簡単に辞任に追い込まれるさまはメディアの報道を見るよりも解りやすくて興味深かった。

終盤で、鉢呂大臣の福島に対する思いや、福島県人が鉢呂大臣に対してツイッターやネットで称賛していた事実や、辞任阻止の署名活動が起こった事実、福島の現状を一番辱知していたのは鉢呂大臣だったこと、大臣の原発エネルギー政策見直しの功績を説明していたところをみると、これを書いた脚本家も鉢呂大臣擁護派なのかな?とか思う。

作品『死の町』は、一人の大臣を辞任に追い込むのに、さほど時間はかからなかったという徹底解剖だった。新たなる挑戦的な舞台でひじょうに楽しめた。

鉢呂大臣役の雷 時雨が、まんま鉢呂かと思うほどの熱演。またルパン三世だと思っていたキャラクターは松田優作だった。つまり、同じキャラ!笑



ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

ソウル市民
投稿が前後してしまったけれど、こちらが一番最初。

1909年、夏。日韓合併を翌年に控えたソウルで文房具店を営む篠崎家の一日を淡々と描いた作品。日本植民地支配下で平凡な日本人一家の下に働く朝鮮人女中は一見、差別もなく自由に幸せそうに働いているかのように錯覚しがちだか、彼女らの名前は日本人名をつけられ、同じ日本人女中と篠崎家の子供達の会話の中から、悪意のない朝鮮人への侮蔑が入り混じって発言される。

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これらの言葉は日本人たちが意識していないという「悪意なき罪」なのだが、この無意識の行為こそが問題なのだとこの舞台で提起した作品だと思う。また篠崎家の長男・謙一が朝鮮人女中を巻き込んで駆け落ちするシーンでも、謙一の行為を家族はまたか・・、と思うなど遊びをはらんだ家出だが、どうやら謙一と付き合っていたトシ子(朝鮮人女中)は真剣な様子で、その双方の心のギャップも浮き彫りにされていた。

篠崎家の文学少女である長女の愛子がヒューマニズムという言葉を吐くのも滑稽だった。彼らの生活を通して、植民地支配の本質と、植民地に生きる人々を滑稽に描いた物語だ。第一話では手品師を篠崎家当主が招き入れるがこの手品師は見えないものが見えるとのたまい、作品にシュールなコミカルさを強調させていた。

この物語の続きはソウル市民1919へ。
ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

サンパウロ市民
1939年11月、ブラジル・サンパウロ。移民開始から三十年を経て、成功者も登場し始めた日系移民。その代表格である寺崎家は、サンパウロで文房具店を営んでいる。欧州での大戦勃発による、日本人学校の閉鎖など、遠い戦争の影響はないわけではないが、それでも寺崎家の日常は平穏である。そこにやってくる相撲取りや、写真花嫁と呼ばれる新移民たち。『ソウル市民』四部作の地球の裏側で展開する、もう一つの「植民」の物語。


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今回の舞台はサンパウロの寺崎家。しかしソウル市民の篠崎家と、殆ど描写は同じで家族設定も同じ。違うのはサンパウロと寺崎家だけ。そんなだから叔父の慎二(山内健司)と書生が文具店店主の酒を盗み飲みしているシーンから始まる。笑

そして、ソウル市民では朝鮮人を差別していたが、ここではブラジル人とブラジルのジャングルに居るという土人を差別しているのだ。そして今回も相変わらず、毎日、この家には色んな人々が来て、ソウル市民1919と同じように阿蘇山という力士がやってくる。
1919の時にも書いたが、青年団のなかで力士役が出来るのは島田曜蔵しかおらず、やっぱり島田が登場して「ごっつあんです!」を連発するのだが、今回の島田の座り位置が舞台手前の左側で、顔が客席からは見えにくい位置だったのが残念だった。

これで全ての回を観たわけだが、やはり島田の目や表情の演技力が凄まじく、力士の回のソウル市民1919とサンパウロ市民が楽しかった!公演は12月4日まで続くので機会があったら再見したい。
ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

ソウル市民1939・恋愛二重奏
1939年11月、ソウル。日中戦争からすでに二年が経過し、日本国自体は、長期にわたる戦争状態という泥沼にのめり込んでいた。一方、30年代中盤から始まった好景気、軍需景気の影響を受け、満州への中継点としての役割を担う京城は、虚構の繁栄を謳歌する。国家総動員法の制定、欧州での世界大戦勃発、迫り来る軍靴の音に耳を澄ましながら、相変わらず、篠崎家の人々はそういった世相とはかけ離れた生活をし、つかの間の恋愛に興じる。

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今回で4編目を観たことになるのだが、全体を通してみると篠崎家の人々は「桜の園」に登場しそうな人たちで、やはり浮世離れしているように感じた。だから当事の戦争勃発の緊張感や戦慄はまったく感じられない。また今回のタイトルは恋愛二重奏となっていたが、ワタクシはどちらかというと、寿美子と昭夫の夫婦のズレを露呈させた舞台だったように感じた。

戦争という地獄を見て帰ってきた夫・昭夫は人が変わったように遊びや女に興じて全く働かなくなった。そして寿美子の父・謙一に小遣いをせびる様な始末だ。そんなことから夫婦関係は次第に冷え込む一方だった。昭夫役の古屋隆太が実にいい。彼ほどヤクザ的な・・ってかチンピラ風な役をやらせたら右に出るものは居ない。やさぐれ感のある演技力が素敵だ。

また昭夫が働かなくなったことから家族との折り合いが次第に悪くなっていく光景や昭夫の疎外感や孤独が見事に描写されていたと思う。また1編と2編で堀田家の妻・律子役だった松田弘子が今回は篠崎良子(母)役を演じており、まるで騙し絵を観ているようだった。笑

今回の余興はドイツ人のヒットラーかぶれ。笑
The Girls next door 公演は無事終了いたしました。ご来場ありがとうございました。

The Girls next door 公演は無事終了いたしました。ご来場ありがとうございました。

遊戯ヱペチカトランデ

APOCシアター(東京都)

2011/12/08 (木) ~ 2011/12/12 (月)公演終了

満足度★★★★

ファンタジーミュージカル
会場に入ると電子ピアノで生演奏の調べ。当日パンフに書かれたモスクワカヌのメッセージが美しい。彼女の繊細な言葉の使い方は独特で、こちらの感性をくすぐりながら物語をみついでいくさまはワタクシの好みのど真ん中だ。だから、女子高校生らが合唱するシーンで、まず泣けた。この涙はたぶん当時の女子高校生だった頃の光景を思い出したからだ。

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卒業記念公演に演じる舞台を演劇部の顧問、木村絵里子先生が指導する場面から。現在の木村と10年前の高校生だった木村の過去を舞台上で交錯させながら演出していたが、過去と現在の一線の描写が曖昧な箇所があり分かり辛かった点が残念だった。

10年前に消えた高校生の謎を現在の卒業記念公演の舞台の内容に盛り込みながら、当時の彼女たちが何を考え行動していたかを表現した物語だったように思う。相変わらずワカヌが役者に吐かせるセリフの一つ一つが美しい。

毎年、夏の終わりに願い事を書いて流す「勾玉流し」を信じていた彼女らは、海の向こうにいる神様に願い事を書くが、自分で直接、神様に伝えたい、と思うようになる。残酷で危うい年頃の彼女達は純真さゆえの自殺への憧れも同時に持っており、人の心に新しい世界を創造する魔法(空想)を夢見ていた。彼女達は願いは叶うとか、愛は国境を越えるとか信じて疑わなかった多感な年頃だったのだ。

「少年たちの夏休み」みたいに、私が死んでも貴方が覚えていてくれたら、私は失われず生きている、なんてセリフも自分達のもう一つの世界である、ネバーランドのような感覚だ。私の姉妹は坂本さちお(女生徒)を愛し、悪い夢に囚われて死んでしまったが、あの美しく残酷な同性愛が真実の愛の物語だと締めくくる。

くだらないおとぎ話の中で真実を隠そうとする悪い魔女の話とか、ママのような魔女になれないとかのセリフは映画「ハリーポッター」を思い起こさせ、彼女達はまだ未熟な魔女だ。彼女達の吐くセリフに「ママ」がよく登場し、「私を愛して」とのセリフに重なり合う、この物語は基本的に渇望する愛を描いたものだとも思う。

導入生音楽は勿論のこと、演出が素晴らしい。

劇中、様々なシーンで感極まって泣かされた。
未熟な魔女達のファンタジー。

ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

ソウル市民昭和望郷編
1929年10月24日、ソウル。篠崎文房具店にも大衆消費社会の波が押し寄せ、新しい経営感覚が求められていた。この家の長女に求婚したアメリカ帰りの新進企業家は精神を病んで、入退院を繰り返している長男を毛嫌いする。一方、エリートとして総督府に勤めながらも植民地支配への協力に悩む篠崎家の朝鮮人書生。関東大震災以来の重苦しい不景気を打開するため満州への進出を企てる日本国家。

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世の中がまるでビデオテープのように早送りして怒涛のごとく回転しているが、篠崎家の女性たちはつかの間の饗宴を楽しむように、相変わらず浮世離れな生活を送っていた。

一群の若者たちの姿を鋭く切り取ったシリーズ第三弾では、満州へと向かう道すがら、京城を通り過ぎる謎の若き芸術家集団が登場する。篠崎家では第一弾は手品師を、第二弾は力士といった具合に必ず余興めいた人物を登場させているが、今回の芸術家集団は青年団の中でもアニマル軍団的な要素の強い輩たちだ。笑

ボインの山本裕子、カンガルーのような石橋亜希子、ヤクザ顔の二反田幸平、妖怪っぽい木引優子が揃って芸術家集団という設定なのだから怪しいにもほどがあるのだ。しかも二反田に至ってはダンスなのか体操なのか理解に苦しむ踊りを踊らされて寸劇そのものを披露しちゃうのだ。二反田は第二弾でも書生として登場したが、個人的にはもっとセリフを与えて欲しい。

またこの回は長野海と渡辺香奈の民族の舞があったが、これが実に美しい。
惜しむらくは朝鮮人が吐く言葉がさっぱり解らず、字幕が欲しかった。
ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

ソウル市民1919
1919年3月1日、ソウル(当時の呼び名は京城)。この街に住む日本人の一家、篠崎家の人々は、今日も平凡な日々を過ごしている。ただ、今日は少しだけ外が騒々しい。噂では、朝鮮人たちが、通りにあふれているという。篠崎家からも少しずつ朝鮮人の雇用者が姿を消していく。三・一独立運動を背景に応接間で唄い、この独立運動を「まさか・・」なんて嘲笑し合う支配者日本人の「滑稽な孤独」を鮮明に表した物語。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

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やがて、「まさか・・」なんて本気にしなかった日本人らの耳にも朝鮮が本当に独立したという情報を朝鮮人女中から聞くことになる。そしてお世話になりました。と、次々に去っていく朝鮮人女中達。2話となるこの作品でも相変わらず浮世離れした篠崎家の女性たちが露呈される。そして篠崎宗一郎の長男・謙一が文房具店店主となった2話ではキャストの入れ替えがあった為に、慣れるまで戸惑ってしまった。

こういった続きの物語はキャストは継続して同じ役柄を演じて欲しかった。「ソウル市民」の篠崎慎二(叔父)を山内健司が演じていたが、「ソウル市民1919」では山内は篠崎謙一を演じており、極めつけは天明留理子が「ソウル市民」では謙一の義理の母を演じているのに、「ソウル市民1919」では謙一の妻を演じているのだ。オマエ、いつのまに義理の母親と結婚したんだよ!みたいな錯覚。

またこの回は余興として力士を登場させる。力士といったら青年団のなかで島田曜蔵ほどどんぴしゃの役はない。すもう=島田なのだ。いっそのこと島田金剛山みたいな名前のほうが良かったくらいだ。しかし島田が登場しても「あれ?島田じゃないな・・」と感じたほど髪を上げるとガイジンっぽい。だけれど青年団に島田ほどのデ、巨漢はいないはず!なんてジーーーっとガンミしていたら、発した声が島田だった。笑

そんなこんなで「ソウル市民1919」は島田力士のお陰でバカ馬鹿しくも滑稽なお話に出来上がっていた。

さてこの続きは「ソウル市民昭和望郷編」にて。。
シャッフル

シャッフル

劇団スパイスガーデン

東京タワー 1F 特設ホール(東京都)

2011/10/28 (金) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★

サスペンス
戸辺コウヘイの元に突然届いた案内状。そこには「拘束期間はわずか1日、報酬は200万。ただこちらの指示に従って頂くだけの簡単なモニター調査です。」と書かれていた。・・・・・から始まる物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


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これをきっかけにとあるワイン工場に呼び出された5人は、かつて共に銀行強盗を企て5億の金を盗んだ仲間だった。

しかし襲撃直後に自分達の中に裏切り者がいることを知るメンバーたち。さらに不慮の事故により盗んだ5億円を運んでいたレイモンドが記憶喪失になってしまう。裏切り者も金の在りかも分からなくなった4人はレイモンドの記憶を取り戻す為にプロジェクト「シャッフル」を企画する。しかし、そしてこの「シャッフル」のモニター担当者・神宮寺によって「シャッフル」は進まれるが彼の出すむちゃくちゃな課題に状況は二転三転する。

レイモンドの記憶を取り戻す為にこの企画は練り上げられていたはずだったが、レイモンドは元々、記憶など失ってはおらず、裏切り者はレイモンド自身だったことが解るも、時は既に遅し。レイモンドは仲間を殺し、5億を独り占めにしたというサスペンス。

物語は良くあるお話で想定内。レイモンドが結婚詐欺師だった過去も暴かれ、こtらはどちらかというとこの物語を彩る過去に過ぎない。また以前観た「バンカラ」ほど熱いメッセージはなく、物部ユウサクとレイモンドのおちゃらけた動作もあったことから、コメディサスペンス的な描写が多かった。だから終盤に混乱と狂乱のシャッフルがあったとしてもワタクシを刺激するほどの緊張感や恐怖感やワクワク感への誘導力に欠けたように感じた。

それでも出演したキャストが魅力的だった為に女子の観客が多かった。ワタクシの観た回は空席がちらほら。
犬笛

犬笛

ThreeQuarter

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2011/11/03 (木) ~ 2011/11/06 (日)公演終了

満足度★★★

盛り込みすぎ
客席は満席。これは劇団にとってとっても嬉しいに違いない。しかし本日の客席誘導はしごく丁寧だったものの、通路をたった一人の客の為に塞いでしまったのは、やはりマズイ。観客だって生ものなのだ。急に気分が悪くなったり貧血になる場合もあるのだ。そんな時、通路を塞いでしまったらそういった緊急時にどうするんだろ?と老婆心ながら思う。

以下はネタばれBOXにて。。

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そして芝居が終わった時点で、案の定、スタッフは通路に置いたこの椅子と観客のことをすっかり忘れてしまった為、観客が自ら、後ろからせかされるように片付けていた。どうなってるんだ、ここの劇団は?!

そして肝心の芝居。前半は「本能寺の変」を題材に描き、後半は新撰組を軸に描いていた。2時間の公演で、これらを描写するには、いささか盛り込み過ぎの感があり、だーーー!!と疾走的に解説を交えながら展開していた。

また戦国時代を生き抜いた武将たちを演じるには役者が若く、重厚味に欠けていたことと、割にコミカルな描写もあって、それが軽薄に感じて、キャラ立ちにも違和感があった。それでも主役の斎名高志がそれなりのキャラクターで見せ場をしっかりと演じきっていたのはアッパレ!

また、折角の格闘シーン、チャンバラがあまりにもヘタ。これは今後の課題だと感じる。やはり戦国時代や新撰組を描くならチャンバラを練習してよと言いたい。更に「本能寺の変」や「新撰組」を現代の学校での勉強シーンと交差させて教育実習で未来の教師が教える場面もあり、舞台は劇中劇の三重構造になっており、その為、本来のじっくり魅せる演劇が薄くなってしまった感は否めない。

コミカルな部分を押さえ、重厚な演技力で押し出したほうが良かった気がするがいかがだろうか?それでも終盤ではホロリ・・とさせられた。
正太くんの青空

正太くんの青空

幸野ソロ

ワーサルシアター(東京都)

2011/11/01 (火) ~ 2011/11/06 (日)公演終了

満足度★★★

コメディとしては辛い
イジメを題材にした教師たちといじめられた子の母といじめた子の両親らによる完全密室会話劇。激論必死のシチュエーションコメディとあったが、題材が題材だけにコメディとしては笑えない舞台だった。

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延子(苛められた正太の母)はいじめについて教師に相談し、学校で苛めた側の親と延子との双方で話し合いの場を設けたが、いじめた子の両親らはいじめを認めない。世間体を気にしての事だった。また教師も、いじめた子の両親らに押されて明確な物言いをしなく頼りにならない。挙句にいじめた子の両親らはいじめた現場を見てないから証拠がないと言い出し、延子に解決策として現金を渡すのだった。

これに激怒した延子はいじめた子を人質にとって部屋に閉じこもってしまう。これをきっかけにいじめた子の両親らは、改心し詫びてことを丸く治める。という物語だった。
舞台上でいじめた子の両親を見るとといじめた子が解るように輪廻というか、この親にしてこの子あり・・なのだが、観ていてイラついたのと学年主任の杉山先生があまりにも頼りなくムカついた。

一方で、いじめをなんとか、いじめた子の両親に解らせようと必死になる生活指導員の井上先生がヒーローに思えた舞台だった。こういうナイーブな問題なのに無駄におちゃらけた用務員・福田のキャラクターは頂けなかったし、こういったキャラ立ては観客の反感を買うのではないか?とも思える舞台だった。
今回の舞台で唯一、楽しかったのは幕後にゲストのアダムと幸野友之のかけあいで、これには笑った!!

キャストらの演技力は秀逸だったと感じる。だって観ていてイラついたりムカっとしたから。笑
ザッツ・オーディション

ザッツ・オーディション

劇団クロックガールズ

Geki地下Liberty(東京都)

2011/11/01 (火) ~ 2011/11/06 (日)公演終了

満足度★★★

Aチームを観劇

落ち目の女優、杏子の起死回生を賭けた舞台のオーディションに集ったのは、箸にも棒にもかからない連中ばかりだった。この連中を見た途端、やる気を無くした杏子だったが、実は女優としてやる気をなくしてしまった杏子の為に、全員がオーディションに参加し、杏子のやる気を復活させるという使命を持っていた。

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劇中、ホロリとするシーンはあって落涙したものの、全体的に本にスパイスがなかったのが難点。よくあるお話でこれまたよくある終わり方をしていた。
また、こんなにしょもない連中がオーディションに参加する事態、不自然だし、緊張感もなかった。こんなんで杏子のやる気を起こさせることが出来るの?なんて考えていたが、案の定、無理無理に収束した感があった。

また女優・杏子を奮い立たせるような、ずば抜けたキャラクターが登場しなかったのが、とっても残念。遠山小春役の柿弘美が序盤、面白かったものの、キャラ建てが一本調子で仕舞いに飽きてしまった。そんなこんなで箸にも棒にもかからない緩い演劇だった。
不文律

不文律

643ノゲッツー

劇場HOPE(東京都)

2011/11/01 (火) ~ 2011/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

同じカッコー
この舞台を観終わって思い出したのが「 カッコーの巣の上で 」という映画だ。映画の中で
ジャック・ニコルソンは最終的に廃人にさせられてしまう。閉鎖的な精神病院の出来事を綴った映画だ。英語でカッコー「cuckoo」という単語には、鳥の名前であると共に、形容詞として「気が狂って、馬鹿な」という意味があるけれど、今日の舞台も映画と似たような終わり方である。そして同じようにアル中や精神的に病んだ人たちが入所している施設が舞台だ。

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ここでは表向きは自然治癒を行う施設として存在し、裏の事業として患者を人体実験させていたクローンの人体研究所として機能していた。二人の医師、大橋と沢田はかつての師の意思を継ぎこの研究を継続し患者をクズと言い放ち人体実験をしている。これに気付いたもう一人の正義感の強い医師・西尾がこの間違いを訂正しようとしたが逆に西尾は廃人にさせられてしまう。

この舞台を観て感じたことは、患者たちは施設の中である意味心地よいともいえる諦めに浸っておりそこから出ようとはしなかったことと、狂人たちは一つの秩序をそこで構築し独白を始める場面もあることから、外に出て生きるという意欲が完全に失っているようにも思えた。

そんな中、二人の医師は100年後の未来を見つめて研究するあまり、今の多少の犠牲はやむ終えないと考え、研究に間違っているという言葉はないと言う。研究にあるのは成功か失敗かのどちらかだと・・。

研究と倫理の狭間で揺れ動く不文律は、きっとその昔、原爆を作った博士の不文律を覚えているだろうか。研究者というのは留まるところを知らない。一つの成功のその次も見たくなるものが研究者だ。そして二人の師である松浦先生の娘は「父は以前こんなことを話していました。人は物心がついたときに解ることがある。人はいずれ死ぬ。」と話す。

タイトルが素敵だ。そして全体をとりまく演出も素晴らしい。音響、照明も、勿論、キャストらの演技力も。特に終盤を衝撃的に飾った西尾役の海老根理があまりにも素晴らしい。ワタクシの大好きな谷仲恵輔の重厚な演技力にも満足した。本当に良いものを観たと声を大にして言いたい。東君、腕をあげたなぁ。。とつくづく嬉しい舞台だった。カンペキ!
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*pnish*

サンシャイン劇場(東京都)

2011/11/02 (水) ~ 2011/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

た、た、楽しい!
パニッシュの舞台は縁あって何度か観ているが今回は特に面白かった!
演出は毛利亘宏(少年社中)だったからキャストらへの小細工が効いていて笑いにパンチがあった。

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17世紀初頭、フランス北部の港町に建つホテルに三銃士がお忍び旅行にやってきた。
ルイ13世直属の銃士隊の中でも剣豪として有名なアトス、ポルトス、アラミス。有名人がご宿泊!!とあって支配人やベルボーイは大喜び。大層なおもてなしで大歓迎を受けるが、宿泊している事をおおっぴらにされたくない3人は戸惑い気味。それもそのはず。実はこの三銃士、真っ赤なニセ者だったのだ。

彼らは支配人に「自分達はフランスの任務でここにお忍びでやってきている。だから我々の事は他言無用だ。」と釘を刺すも、おしゃべりの支配人は、街中に触れ回ってしまう。そして三銃士の宿泊にあやかって上手くするとホテルの宣伝にもなるという売名行為も加味して、町で三銃士祭りをするという企画まで立ち上げてしまった。

弱る偽三銃士。そしてそんなパニックの中、フランスの敵であるリシュルの使者がホテルにやってくる。そこに使者を追って銃士隊に憧れるダルタニャンもやってくる。どちらも本物の三銃士を知ってる連中だ。偽三銃士は大慌てで、自分達の身の上がバレないように画策するも、エディー(偽三銃士)はかつて三銃士に憧れてダルタニャンと共に銃士隊を目指した仲だった。

これらの出来事が三重にも四重にも加わり、偽三銃士は自分達のついた嘘がばれないように嘘の上塗りをして、にっちもさっちもいかなくなる。結局薬局、大きな悪さはできない偽三銃士はルイ13世を守る為に、ダルタニャンと共に本当の三銃士のようにリシュルの悪巧みを止めようとする。

「1人は皆の為に、皆は1人の為に」の言葉を掲げながら、戦わずして英雄になれたのは、ルイ13世を暗殺してイギリスと手を組むというバッキンガム公に宛てた密書と偽三銃士がベルボーイを三銃士にするという紹介状を間違えた為だったというオチ。笑

果たして彼らは真の英雄になる事が出来たのだが、ここまでに到着する経過のコメディがまったくもって面白いのだ。偽三銃士の三馬鹿トリオっぷりも可笑しいし、キャストらが放つ仕草もいちいち可笑しい。ひじょうに楽しく解りやすい舞台だった。何でも器用にこなすパニッシュの鮮やかな舞台。お勧め。次回も観たい!

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