これから 公演情報 アンティークス「これから」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    大絶賛な「これから」
    アンティークスの舞台は妄想と現実の世界が交錯するのが特徴だと常々思っているが今回の2編はまさにその表現方法だった。特に『これから』は文句なしに素晴らしい作品で後半は涙ナシでは観られなかった。


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    裏日記はこちら→http://ameblo.jp/misa--misaki/


    「ある日見た坂道で」
    高校生のゆきとその教師・海人はつきあっていたが、デートの日に海人は交通事故でなくなってしまう。これをきっかけにゆきは悲しみのあまり現実の世界から逃避し独特の妄想の世界に入り込んでしまう。それは海人とゆきの魂だけが入れ替わるという映画「転校生」のようなものだった。ここまでなら映画でも小説でもよくある話で、ふんふん・・なんつって普通に楽しく観るのだが、物語はゆきがそういった妄想の中で海人と結婚し海人が浮気をしている様子も描く。

    そして現実の世界ではゆきがあの頃から10年もたっているのに未だに精神科に入院してるらしいゆきをかつての同級生らが芝居を演じてゆきの記憶を呼び戻そうとしているのだった。
    絶望の果てに現実逃避したゆきの物語。
    えっちゃんこと柴田和美の小学生バージョンが中々笑える。



    「これから」
    これほどまでに落涙した舞台は久しぶりだった。
    主人公しのぶは現在30歳。100回以上の就活に落ちまくりフテテいたが、いつも笑っている母がしのぶを元気付ける。そんな二人きりの生活に突如として表れた父と妹。彼らは奇妙にケケケケ・・・と笑いながら普通の人間とは違った生き物のように見える。しかし母は「お父さんと妹は前からここに居たでしょ。」なんて呆れた顔でのたまう。

    少しは抵抗したものの、やがて、しのぶ自身、この奇怪な父と妹にいつしか癒され奇妙な生活にも慣れ家族として受け入れていく。4人家族としてどうにか枠組みが整った頃、家族旅行の話が盛り上がり母は初恋の人に逢いたいと言い出す。これをきっかけに時空に歪みが出来て1974年の過去、母・ゆみこが高校生だった頃にフラッシュバックし母の初恋と疾病と妊娠の秘密が暴かれるのだった。余命いくばくもないと悟ったゆみこは恋人、つまりしのぶの父親・学と別れることを決意し一人でしのぶを育てる覚悟を決める。

    それからというもの、母はしのぶが生まれてから常に自分としのぶをビデオに収め、こういった事情を知らないしのぶはそんな母親をウザク思いながらも愛情たっぷりに育っていったのだった。しかし眠り病の突然変異性という疾病は少しずつ記憶を失いながら、やがて最後には死が待っている。事実そのように母は静かにいつも笑顔を絶やさずしのぶと向き合いながらも、死んでいった。

    しのぶは自分が孤独だったことを時々思い出しながらも母との楽しかった過去を思い出す。それはしのぶが望んで止まない妄想の世界だ。その世界にはケケケケ・・と笑う他の星から来た父と妹も居る。その架空の家族は、しのぶの理想の家族像だ。だから、こうしてしのぶは孤独を忘れるように妄想に浸るのである。
    就活が思いようにならず孤独に生きる女のお話。

    後半はほとんど泣きっぱなしだった。母・ゆみこを演じた鉄炮塚雅よの笑顔が素敵だ。死に直面しながらもしのぶの為に笑顔を絶やさない心もちに泣ける。対してしのぶを演じた森口美香の自然な演技が素晴らしい。孤独感をひしひしと表現する表情もいい。そして不思議な魅力を奏でたさっちゃん(妹)こと、つのだときこがあまりにも素晴らしい。序盤コメディかと思いきや、後半になってがっつりと泣かせる演出と本がお見事!!

    「これから」だけなら文句なしに星5つだが総合で星4つとしました。

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    2011/12/18 11:50

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