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『パラレルワールドより愛をこめて』 『パラレルワールドでも恋におちて』

『パラレルワールドより愛をこめて』 『パラレルワールドでも恋におちて』

ザ・プレイボーイズ

シアター711(東京都)

2025/02/02 (日) ~ 2025/02/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/02/02 (日) 15:30

『…恋…』を観劇。初見のユニットだが、帯金ゆかり出演というので観に行った。とんでもなく面白い!(1分押し)55分。
 ミチル(まちだまちこ)がカレにふられて呆然としていると、突然、未知瑠(帯金)が現われ、カレにふられていないパラレルワールドを探そう、と誘われ、ミシェル(砂田桃子)のいる世界に行くが、…の物語。3人の「みちる」はそれほど似ているとも思わないけど、とにかく笑わせてくれる。設定の妙。伏線もしっかり張って回収するし、ただただ笑っていればよい舞台だった。12月のナイスストーカーに続き破壊力爆発で大活躍の帯金だが、おなか☆すいたろうがいい仕事をしている。

藤戸

藤戸

劇団演奏舞台

演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)

2025/02/01 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/02/01 (土) 18:00

能の「藤戸」。藤戸の戦で平氏に勝利をおさめた佐々木三郎盛綱が、児島の国(現在の岡山県倉敷市)の領主に着任した場面から始まる物語というCoRichに書かれたあらすじを読んだ感じだと、どんな感じか全容が分からなかった。
 なので観始めた時はどんな感じか分からない不安の方が大きかったが、観ているうちに現代音楽や映像、不気味な程に薄暗く、時々俳優に絶妙に当てられる照明の向けかた、多少の能の所作が組み合わさって、夢幻能的な幻想怪奇な独自な世界観の現代劇で、思わず現実世界を忘れその世界観に引き込まれていた。

 源平合戦の中で海上合戦が得意で児島周辺を支配していた平家と藤戸海峡を挟んで舟を持たない源氏軍が対峙する状況。
 そのなかで、源氏の武者「佐々木三郎盛綱」が先陣切って藤戸海峡を馬にて一気に児島に向かってかけ渡り源氏の状況を打破する。
 だがその為に、藤戸海峡から児島までの距離を測る為に児島の村人を水先案内人に児島の浜辺まで案内させ殺害するという衝撃的な残虐ピカレスク劇で、劇の前半から中盤に掛けての殺害再現場面や村人の母親の老婆の責められる場面、自分が殺害したことをいつまでも後悔と今を生きようとする心の狭間での葛藤でもがき苦しむ人間臭い佐々木三郎盛綱が、児島の国の領主となった際眼を失ったことからもギリシア悲劇『オイディプス王』における父殺しで実母と分からず結婚して犯し、眼を失うという同じではないが似通っており、日本版『オイディプス王』と言っても過言ではないと感じた。
 しかし劇の中盤から終盤にかけて、眼を失った上で水先案内人の村人の母親が佐々木三郎盛綱を刺殺しに来るというような安易な復讐ではなく、水先案内人の村人の亡霊によってか、佐々木三郎盛綱自身の懺悔の念が呼び起こすものかは知らねど、悪夢のように村人を殺害した後の島に上陸直後の同じ日を気付いて起きると何度も繰り返し、不死身の身体となり、無限にループし続ける、これこそが悪戯に殺された村人の怨霊によるある意味どんな呪いや復讐よりも、佐々木三郎盛綱を精神的にも肉体的にも窮極に追い詰める手段としての最大限の復讐だと考えると、スーと背筋が凍り付き、恐怖に慄いた。何より、いつの時代でも永遠の時間というものに対する恐怖と憧れは変わらぬものだと感じた。
 どんな恐怖映画やお化け屋敷にも匹敵するものを感じ、『藤戸』という能がもはや古典と化しているものの、全然忙しい現代でも通じるものを感じた。

イッセー尾形の右往沙翁劇場 2025 in 福岡

イッセー尾形の右往沙翁劇場 2025 in 福岡

イッセー尾形事務所

西鉄ホール(福岡県)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/02/02 (日) 15:00

座席1階e列8番

価格5,500円

 タイトルには「2025」とあって、実際、公演は2025年の1月31日(金)〜2月2日(日)なのだが、全国巡業は昨2024年から行われており、そのシリーズとしては福岡公演が最終公演、千秋楽である。
 イッセーさんは、毎年必ず、八本の新作を制作、八人の全く別のキャラクターに扮して、全国九都市を巡回する。北は北海道から南は福岡、たまに九州各県に。昨年の「妄ソー劇場」も終演は福岡だった。そうして一年が終わると、次の新作に取り組む。イッセーさんは殆ど再演を行わないので、その年の舞台を見逃すと、もう一生、その年のキャラクターに出会うことはない。まさしく「一期一会」の舞台なのである。チケットが完売するのも宜なるかな。
 毎年、通しでテーマが決められるのも十年前の独立後のイッセー舞台の特徴。今年はタイトルにも「沙翁」とある通り「シェークスピア」であったが、実際に舞台を観てみると、どこにシェークスピア要素があるのか全然分からない。老人教師やバスガイド、神主さんや紙(お面)芝居屋や流しのギター弾きなど、イッセーさんの演じるキャラクターは多彩だが、シェークスピアの戯曲に登場しそうな人物はただの一人もいない。
 イッセーさん曰く、「予習は一切必要ありません」とのことだから、多分、最初からシェークスピア云々の話は釣りのフェイクだったのかもしれない。
 実は各編ともにイッセーさんの深遠な意図があるのに私が気が付かなかっただけならまことに申し訳ない。

ネタバレBOX

 全公演のラストだからと言って、イッセーさんの演技に緊張感は見られない。軽妙洒脱、当意即妙なのはいつも通り。
 ただ、毎回一人はいた、心底悪辣な人物、でも外見は穏やかな善人で、舌先三寸で他人をだまくらかして、実は陰で笑っているような詐欺師的人物、天性の偽善者(映画『沈黙』での長崎奉行みたいな役ね)は、近年とんと見かけなくなった。
 他人を意図的に騙す役には膨大なエネルギーが必要になる。イッセーさん、全国ツアーで何十公演も演じ続けるのは厳しいと避けたのかもしれない。

 今回、目立った役は、これもイッセーさんの舞台ではお馴染みの「世間の常識からちょっとズレてしまった人物」である。ズレているけれども、それで人見知りしたり慌てふためいたりはしない。実に堂々と、そのズレを押し通そうとする。常に俺が正しいんだと押し通す、歩くパワハラみたいな人物た。現実にいたら迷惑だし鬱陶しくてたまらないが、舞台上で見ている分にはひたすら可笑しい。
 例えば病休の息子の代わりに中学校の教壇に立つことになった、老教師。七十歳は超えてそうだが、滑舌もはっきりしているし、頭脳も明晰だ。ただ、知識が30年くらい昔で止まっている。おかげで、教える内容も教え方も全くの的外れ。1492年にコロンブスはアメリカ大陸を発見してないし、1192年に鎌倉幕府は成立してないんだよ、と突っ込んでやりたくなる(苦笑)。
 ここ十年のイッセーさんの持ちネタ「雪子の冒険」、役に扮するための仮面を、台の上にたくさん並べた中からなかなか探し出せずにオロオロするのはいつものパターンだが、毎回思う。イッセーさん、ホントにお面をどこに置いたか忘れてないか。アドリブ芝居はアクシデントすら笑いに変えてしまうことがしばしばだが、「雪子の冒険」はその頻度が高いのである。
 コント一つ一つの解説をしてたら書く時間も膨大になるし、体力も消耗するのでこの辺で。イッセーさん、髪の毛はすっかり真っ白になってしまわれたが、舞台上の動きはまだまだカクシャクとしていらっしゃる。また来年も一人芝居の舞台で福岡に来て頂きたいと思う。

 公演後のサイン会で、妻が亡くなったことをイッセーさんに伝えた。ワークショップに参加していた頃は、妻が一番丸々としていた時期で、あのあと妻はどんどん痩せて30キロも減量、力石徹並にガリガリになってしまった。ペンダントの写真を見せたが、誰だかピンと来なかったかもしれない。亡くなったのが半年前だと言ったら、イッセーさん、「もうちょっとだったのにね」と仰った。また会いたかったなって意味だろうか。だとしたら嬉しい。
 来年もイッセーさんはきっと福岡に来てくれるだろう。私もあと数年は生きていたい。
『リビングルームのメタモルフォーシス』

『リビングルームのメタモルフォーシス』

神戸文化ホール

神戸文化ホール(兵庫県)

2025/02/01 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2025/02/02 (日) 14:00

岡田利規氏は音楽劇と言っている。演奏者が前方にいて、力の強い役者が後方にしている演出。役者の動きが見づらく効果を下げている。後方でいいのだが段を高くして演者の動作が見えることで演奏者と対等になる気がした。雨の音を楽器で表現している等面白い試みもあった。個人的には作品の物語性、演奏者の静と役者の動等ありうまくアンサンブルになっていないように思えた。初期の作品「三月の五日間」は単純に面白かったが最近の作品は観念的になっている気がする。

ごはんが炊けるまで(仮)

ごはんが炊けるまで(仮)

演劇企画アクタージュ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2025/01/30 (木) ~ 2025/02/03 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

茶わんチームを観劇
何だか隠し事が多そうな家族の正体が大方判明したところで、また新たな「何故?」が生まれ、その「何故?」をひとつひとつ解き明かしていくほどに考えさせられる事も増えていくという面白い構成

ここ数年、主催の大関雄一さんと半々の割合で、今回の作・演出は坂井和さん
ふたつ前の公演では出演者の竹下亘さんも作・演出されていて、いずれも3つの個性があるのと同時にアクタージュ節というか、アクタージュだけの空気感がしっかり存在している
超リアルの芝居とはまた違って、描かれる内容によってはマイナスに作用する可能性もあるのだけれど、本作みたいに家族の多様性を描いた作品にはとても良い方向に作用していると思う

拝見した回では公演後、全員参加のアフタートークが
演出家に劇団員や準レギュラー、新顔の役者さん達が入り混じったアフタートークは、これまで観てきたどのアフタートークよりも生々しい面白さがあってとても良かった
これもまさにアクタージュだけの空気感

骸ノ巣

骸ノ巣

夢腐論

アトリエ昭和薬局前(愛知県)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『骸(むくろ)ノ巣』には【夢】【腐】【論】の
三つのバ-ジョンがあって
それぞれ結末が少し違うとのことだったのですが
私は【夢】の方を観させていただきました。
4人の少女達が、かつて一緒に遊んだ屋敷の2階に集まり
とりとめのないことを語り合う。
それは意味のあることなのかないことなのか
何もかもがおぼろげで訝(いぶか)しい。
強いて言えば、醒めない夢の中を彷徨っている感じ?
この世のものなのかどうかすらもわからない
報われない魂たちの心の叫びだったのでしょうか?

藤戸

藤戸

劇団演奏舞台

演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)

2025/02/01 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

オープニングの波や蝶の映像の美しさが圧巻です。
祝の楽しげな始まりから恐ろしい場面へと変換される音と照明が演者さん達の迫力ある演技に合っていて魅入ってしまいました。
エンディングの音楽のカッコよさが映画のようでした!

ネタバレBOX

藤戸まんじゅうが美味しかったです!
遠くの霧に紛れて

遠くの霧に紛れて

演劇集団エスキス

表現者工房(大阪府)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★

不条理感はあったが、ミステリー感はどこ?という内容 中々他の劇団とは異なる展開は良かったと思うし、途中朗読劇?と思う場面もあったが、台本は白紙でよー覚えてるなと感心しました 主役の女性(ノン もしくは アイダ役)が、とても上手かったと思います❗

「妥協点P」(追加公演)

「妥協点P」(追加公演)

甲南大学文化会演劇部 甲南一座

イカロスの森(兵庫県)

2025/02/02 (日) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★

中々興味わく内容 教師としてはタブー領域だし、憲法では言論表現の自由は保証されているし… 日本は、矛盾ばかり これを正せない政府(自民党)が、情けない 早く政権交代し、強い(軍事力とかではない)日本を構築して欲しい

ごはんが炊けるまで(仮)

ごはんが炊けるまで(仮)

演劇企画アクタージュ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2025/01/30 (木) ~ 2025/02/03 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

湯のみチームを観劇しました。
まずは劇場に入って、良く出来た舞台セットに驚きと感心でした。
違和感のある家族の関係は?と、どんどん惹き込まれました。
共感できる部分と、正直共感できない部分もありましたが、考えさせられる部分もありました。
役者さん達の熱演も良かったです。
面白かったです!

て

ハイバイ

兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)

2025/02/01 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

令和7年2月2日14時公演

藤戸

藤戸

劇団演奏舞台

演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)

2025/02/01 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
「藤戸」は、能・謡曲の演目として知られているらしいが、この公演では現代語訳を礎に上演しており分かり易い。そして演奏舞台ならではの臨場感溢れる生演奏が心情を揺さぶる。また今回特筆すべきは、生演奏とともに照明・映像(プロジェクションマッピング)が美しく抒情的な雰囲気を醸し出し、意味合いは違うが 能の様式美のようなものを感じた。

謳い文句であろうか「夢か現か幻か…」、この言葉が公演の肝。時は平安時代末期、登場人物は4人で それぞれの立場は明確に描かれている。この観える人物と観えない人物、それを肉体的・精神的な対比として表出していく。そして新領主と領民、母親と息子といった関係性、さらに主人公の心の有り様といった情感が実に巧みに立ち上がる。誰も為政者を罰することが出来ない、そして恨みを抱くものを懐柔しようと…。その如何ともしがたい気持がじっとり纏わりつく怖さ。合戦における生死とは別の生々しさ、それが力のない老婆と亡霊によって脅し迫られるという皮肉。卑小だが気になることが1つ。
(上演時間1時間10分) 【team奏】 2.3追記

ネタバレBOX

舞台美術は中央に白い菱形を重ねたような幾何学衝立、左右にも同型のもの。天井部には照明を房付きの赤い板枠(フレーム)で囲ったもの。シンプルだが、この色彩は源平をイメージさせるもの。また白色は、そこへのプロジェクションマッピングによる効果的な演出を狙っている。この映像が秀逸で、抽象的なものから左右への遠近法を用いて立体的に館(ヤカタ)内を映すなど巧み。狭い空間が一気に広がりを持ち、同時に世界観も豊かになる。途中に床几を持ち込み、武者の立ち 座りといった動作が静かな舞台に動きを現す。

物語は、源氏の武者 佐々木三郎盛綱が先陣をきって藤戸海峡を渡り 平家に勝利した。その功績としてこの地 児島の国の領主になった。領民を前に公正な裁きと安寧を約束した。盛綱は 馬で海峡を渡る際、地元の漁師に浅瀬の場所を教えてもらい、手柄を我がものにするため口封じに漁師を殺した。盛綱の前に漁師の母が現れ、息子は殺されたと訴える。公平な裁きをするためには自分自身を罰せなければ…その苦悩が肝。殺されたところを村人が見ていた、その抗えない事実。しかし その結果手に入れた領主という地位も事実。その相反する行為と結果によって自縄自縛する真情と信条。その葛藤が実によく表現されていた。

一方、従者の謹厳実直で世故に長けた話しぶり、その現実を見据えた対応こそが盛綱の苦悩を一層際立たせる。何の迷いもない、そして最後の判断(裁き)は領主自ら行うものと突き放す。また息子(漁師)を殺された老婆は、息子の無残な死を悲しみ、その下手人を裁きたい。そして殺された息子が亡霊となって…。老婆曰く、この世は仮の宿、その一時でも親子の契りを結んだからには情がある。それに対し、盛綱は瞍となっても心に見えるのは恐ろしい亡霊だけ。これからの人生は、その陰に怯えて暮らすだけ。その孤独・懊悩が老婆や亡霊の対になっているよう。救いは、鮫に殺されたという村人たちの話、犠牲になった人の霊を永さめる供養が…。これらの話の流れが、夢か現か幻か…。

卑小だが、気になったのは盛綱の衣裳。その時代の領主の衣装かどうかは分からないが、従者のそれらしい出で立ち、それに比べると羽織りなどは色鮮やかだが 紐の帯に太刀を差すなど違和感があった。その軽い外見と内面の苦悩する姿のアンバランスが気になった。勿論、役者陣の演技力は確かで観応え十分。
次回公演も楽しみにしております。
藤戸

藤戸

劇団演奏舞台

演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)

2025/02/01 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

盛綱の苦悩が深く描かれていると感じました。あと、役者陣の迫力の演技とセリフ間の呼吸の間合いが素晴らしいです。演奏との相乗効果もあり、至れり尽くせり、丁寧な舞台でした。

藤戸

藤戸

劇団演奏舞台

演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)

2025/02/01 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 team奏を拝見。圧巻、ベシミル!! 凄い迫力、脚本の態と少し飛躍して演者たちの想像力を刺激する方法や、それに応えて為される役者陣の力、舞台美術にマッピングされるイマージュの美しさ及び的確さとこれまた見事に呼応する生演奏。華5つ☆ 追記2.19

ネタバレBOX

 物語は平安末期源平合戦の最中、主人公・佐々木三郎盛綱が現在は埋め立てられ消失したが岡山県倉敷に在った『藤戸海峡』を馬に乗ったまま渡り先陣を切って武勲を立て児島の領主となった際、何故海上合戦を得意とした平家に対し挙げたような戦法を採って先陣を切ることができたのか? この時点で船を持たなかったと伝えられる源氏がこの合戦に勝利し得た根本的理由即ち騎馬で海を渡るということが何故可能だったか? 
 板上、展開としてはこの合戦で盲いたものの新領主となった佐々木着任の模様から描かれる。能の方は拝見しておらず、その脚本も読んでいないので形式・内容を知らないが、一般論で言うなら複式夢幻能の常として前場と後場に分かれているのだろう。今作の肝は、前場のシテ役、老婆が上段で挙げた疑問の理由を告げ、その理由故に殺され子を失った母の慟哭を切々と訴える。新領主盛綱は船で着任時信頼する従者から領地の民が集まっていることを告げられ、その理由を訊ねる。従者は新領主佐々木の新たな布告即ち‟新たな掟を知る為“、また新領主を拝する為に集まったのだと答える。そこで盛綱は民の面前で新領主としての布告をする。「最大の罪は殺人である。その他、人としてあるまじき行いに対しては厳正に対処する」という極めて倫理的に真っ当な布告をした。
 民らが引き上げると従者は献上された島で最も熟成された酒で領主をねぎらうが、盛綱は浮かぬ風情。暫く後、一人の老婆が現れる。これに応じた盛綱は、図らずも村で狂人とされる老婆が一人息子の惨殺の有様を事実通りに語る相手となった。結果、己の為した所業と着任時に行った布告の矛盾が齎す匕首を自らの魂に突きつけられることとなった盛綱には、騎乗のまま海を渡り先陣を切ることができた理由、更に他の源氏武者に情報が漏れ手柄を横取りされることを恐れた盛綱自身が浅瀬を案内した息子を惨殺したことも、ありありと再現される。結果懊悩が彼を迷妄・幻影の時空に導いた。
 後場で老婆の語る話は息子は鮫に食われたという村人たちの話を踏襲する嘘に変じている。代わりに怨霊の真打として惨殺された息子自身の幽霊が登場、生きている限り盛綱に取り憑き苛む。即ち苛む者が前場と後場では異なるのである。ひょっとするとこの部分が能と現代劇として演じられた今作の大きな違い、演奏舞台の脚本家が最も工夫した点なのではあるまいか?
ところで今作を観る者にひしひしと迫る迫力は、盛綱の狂乱のシーンが恰も「東海道四谷怪談」に登場する元赤穂藩藩士・民谷 伊右衛門が妻・岩を惨殺後化けて出られ狂乱を呈するに至った場面を彷彿とさせるし、任地到着直後に行った布告に真っ向から対立する矛盾を突きつけた老婆の真実に己の領主としての存在意義及び人間性の総てを打ち砕かれ裸形を突きつけられて苦悩する盛綱の姿が映し出される。この場面の持つリアリティーは「マクベス」一幕五場でマクベス夫人が王の使者からマクベスの居城に王が宿泊するとの知らせを告げられたあとの台詞。殊に・・・死をたくらむ思いにつきそう悪魔たち、この私を女でなくしておくれ(小田島雄二訳)云々以下の決意表明を想起させることで「マクベス」という作品そのものをも今作観劇中に同時に観る者の想念に嵌入させた。
無論、老婆の最初の登場は前シテとして二度目の登場は後シテの先触れとして機能しており、自分の想像では能でもこのような前シテと後シテの違いはあるかも知れないとは考えるが無いと考える方が今作の脚本が如何に練られたのかを考える上では面白い。
 作品の三大要素は世間体を意識した従者の冷静な対応(世間)と盛綱の狂乱が見事に対比される点。その原因となる異界の者(惨殺された息子の幽霊)と仲立ちをしたその母の念(情念の凄まじいエネルギー)が三つ巴の展開をダイナミックに遂げることだ。が、その各々を舞台上で表現してみせた役者陣の力量が素晴らしい。殊に従者役・鈴木浩二さん、盛綱役・森田隆義さんお二人の演技は格段であった。無論、あやかしである念の権化・老婆を演じた岸聡子さん、息子の幽霊を演じた典多磨さんのアモルフな感じもグー。
誕生の日

誕生の日

ONEOR8

ザ・スズナリ(東京都)

2025/01/23 (木) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

ONEOR8の『誕生の日』を観劇。

あらすじ:
バーを経営している加寿美の店では様々な客が訪れている。
人生の話し相手として客の悩みを聞いたりして、流行っているようだ。
そこで高校時代の友人たちが、店の10周年を記念してパーティーを開催するが、記念のビデオを作成するフリーディレクターが、加寿美と友人たちの関係を暴露してしまい、混乱を極めてしまうのであった…。

感想:
小さい頃から男性のような成り立ちをしているから、恋愛をすることを諦めてしまい、自我を殺したまま40歳まで生きてしまった加寿美の人生に、疑問を呈する闖入者に唖然とした観客は全員であろう。
誰にでもある淡い高校時代の思い出が挿入されながら、彼女が何故?このような生き方しか出来なかったのかが描かれている。性同一障害の悩みを抱えているからか?と勘繰りながらも、成長と共に生きていく難しさに焦点がゆっくり合っていく。
少年時代から青年、大人になり、自我の成長と共に他者との関係を築きながら、上手くいかない箇所は諦め、都合よく生きてしまった人生。己の生き方を振り返りながら観劇している観客の心理と物語の構成の流れが見事なまでに合致しているからか、闖入者の暴露に加寿美と共に反応してしまう我々はそこにいるのだ。劇作家の狙いに「お見事!」なんて言っている暇はないほど混乱してしまったのは確かだ。
見事な作劇であった。
Yes Means Yes

Yes Means Yes

serial number(風琴工房改め)

ザ・スズナリ(東京都)

2025/01/10 (金) ~ 2025/01/20 (月)公演終了

実演鑑賞

鑑賞日2025/01/19 (日) 14:00

2025年1月期のTBS日曜劇場でも注目される詩森ろばの新作は夫婦の間の性的合意をめぐって。1月20日までスズナリ。105分。

https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/02/post-b83b21.html

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!

爍綽と

浅草九劇(東京都)

2025/01/29 (水) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

東京にこにこちゃん萩田氏がこの企画に過去作を持ち込んでお馴染みの役者に登場願っての舞台化。駅前劇場との違いか、若干の出演俳優の違いか、作りそのものの違いか、過去3作観た東京にこにこの方がちょうどのバランスに感じられた。放たれる小ギャグの質は同じでも場内の空気で「滞空時間」が変わる、のか、ギャグの質そのものが低かったのか。。
ベースが「お笑い」でそれに「お芝居」まで付いて来るなんて贅沢~~、というノリなら、可不足なしであるかもだが(そういう目で観てないので判らんが)、「芝居を観る」つもりで作劇を凝視すると、「超有名な悲恋物語の変奏」である今作の場合、原典との関係は緻密に書き込まれていたい、という願望がある。如何せん元が糞真面目な頭では、厳しい評価に流れる。

ネタバレBOX

二人が死ななかったとしたら・・。ロミジュリが自死を回避したその後、三人の子に恵まれた日常がナンセンスまじえて描かれるが、登場人物らが一人一人消えて行く。一人ジュリエットが事の成行きを受け入れているが、「ごめんね」が混じっている。手引きをした薬屋は、日常の中にも薬屋として登場していたが、消えるのは約束の範囲だったのか、ジュリエットが薬屋の言いつけに従わず自分の願望を優先したからなのか(祭が嫌いな薬屋の意向に反して、皆が楽しみにしていた夏祭りが話題となりそこに友情話も恋愛話も収斂していく)。ロミオの思い残しであった「バルコニー越しに二人の手が届く」場面を実現する、というのがジュリエットの「夏祭り」に寄せた願望であったなら、約束を犯してまでも断行する動機はあるし、それを最後に全てが消え去る、という儚いラストが想定される。だが一体ジュリエットが飲む事を義務づけられていた薬が何なのか、約束の中身は何だったのか等はぼんやりのまま、なし崩しで一気呵成にラストに持って行く。最後の「キメの絵ヅラ」頼みであったがこれは前の台詞から読めてしまうし、なし崩しでぼんやりした過程からあの絵に到達した所で、それをどう喜べば良いのか戸惑ってしまう。
そうした欠陥にも関わらずノリで持って行く技、細かく笑わせる役者の技量は買いであったが。
トップ・ガールズ

トップ・ガールズ

犬猫会

SOOO dramatic!(東京都)

2025/01/23 (木) ~ 2025/01/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

大変興味深い脚本であり舞台。蠱惑的な世界。隅々まで味わった。
表通りのバイクの音も侵入して来る会場だが「劇」空間がしっかり作られており、横広の客席と舞台、出はけ口は下手側の奥の奥だが移動途中にピアノが置かれ、後藤浩明氏が静かに座り終始抑えめな音を鳴らす。飲み込み易い戯曲ではないが(言葉は晦渋でないのだが)これに拮抗する密度の濃い舞台であった。

「No Woman, No Cry」

「No Woman, No Cry」

ROCKSTAR有限会社

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今回も特別限定シートで見切れ席。舞台中央に降りてくるスクリーンに対して90度になるので、映像がほとんど分からないのですが、舞台に近くて良かったです。
今回のテーマは「高齢社会」×「ジェンダー」とのことで会場で川柳が募集されていました。会場ラジオで読まれて、面白くて記憶に残ったのが「国会は親父とジジイとクソジジイ」女性が少ないですからね。
いろんな個性のコンドルズがみんなで舞台上で踊るのは大迫力。今年も楽しかったです。 
今朝(2/2)になってから届いていたチラシに同封されていた案内状を読み、先に読んでおくのだったと思っています。

SIX

SIX

梅田芸術劇場

EX THEATER ROPPONGI(東京都)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/21 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/02/01 (土) 17:00

どの演者の歌声もダンスも迫力があり、楽しめました。
曲の間のストーリーも面白かった。

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