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なまえ(仮)

なまえ(仮)

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2025/01/08 (水) ~ 2025/01/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

2023年新春公演でも同じ演目「なまえ(仮)」を観ているが、前回に比べ その内容(小話)が増えた分、<なまえ>に対する拘りが強くなったような気がする。小話毎に訴えたいことは違い、その濃淡も異なる。

2023年時に演じた小話は、題名こそ違えているが 内容的には ほぼ同じ。しかし増えた題目は、<なまえ>の重要性・必要性というよりは、便宜的な曖昧さの中にも名前というか呼称が必要なことを挙げている。同時に題目間の繋ぎのような役割も果たしているようで、その意味では場転換はスムーズだ。
(上演時間 1時間35分 休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は暗幕で囲い、冒頭は中央にテーブルと椅子が置かれている。暗幕には紅い短冊に、舞台と客席の間には白い短冊に文字が書かれている。しかも天井にも貼られ、薄暗い場内だが おめでたい紅白幕を連想させる。最後の獅子舞も合わさって正月公演らしい。

勿論、<なまえ>は人間が付けた便宜的な記号・符号のようなものであるが、その共通性が大切。言語は国によって異なるが、<なまえ>という概念は ある程度共通認識を得ている。その意思疎通・情報伝達から曖昧な呼称まで様々。公演は、その曖昧模糊とした題材に着目した点が妙。

さて「おしながき」の「なまえ(仮)」と構成・梗概は次の通り。
①「ゴッドハンド(仮)」
小学校教師の胃痛を執刀する医者の名(苗字)が「藪(やぶ)」、その語感から手術に対する不安が生じる。医術的なことより先に、名前が重要だと言わんばかり。人格や技術等は名前と関係ないが、外見的なことに拘りが出るというオーソドックスな話。
②「病名(仮)」
病名で患者の気持が一喜一憂するという不思議さ。例えば風邪ならば安心し癌ならば深刻になる。勿論その気持はよく分かるが、医師は何でも病名をつけ、患者はその診断名を欲するという奇妙な現実を突き付ける。
③「電話(仮)」
電話口で「サルワタリ アイコ」という女性は もういない。名前は人物を特定することに関しては便利であるが、その人物自身を表すものではない。例えば女性は婚姻によって姓が変わる。それによって姓+名の語呂が怪しくなる場合もあると。これって夫婦別姓への問題を意識したものか。
④「私の伯父さん(仮)」
「ワーニャ伯父さん」を劇中劇仕立てにしており、伯父と姪の なさぬ恋のよう。「なぜあたたは伯父さんなの?」という台詞は「ロミオとジュリエット」の「ああロミオどうしてあなたはロミオなの」のパロディで、「家なんて関係ない、その名を捨てて私を愛して」に通じる。
⑤「胡散(仮)」
名前は その人物の特定に役立つが、呼称のようなものは それを曖昧にする。例えば 怪しい人物、それも中年以上になれば「胡散臭いおじさん」という一括りで呼ぶ。この題目は2023年の時にはなかったと思う。
⑥「中華満珍楼(仮)」
中華飯店で働く男、その名もチンさん。語感だとどの漢字のチンさんか判然としない。揶揄われることに嫌気がさし、衝撃の告白。本当の名は別にある。外国人が日本人の名前を買うには高額すぎる。だから”珍”さん、何ともシュールだ。
⑦「CHIBA(仮)」
千葉県にあるのに、東京ドイツ村や東京ディズニーランドというイメージ戦略、一方 成田国際空港は、当初 新東京国際空港としたが、いつの間にか今の名前に改称した。国や企業等の思惑によって恣意的に付けられる名前や呼称の曖昧さ。
⑧「列車にて(仮)」
電車内、失恋した男の悩みを聞く牧師。世の中にはもっと辛い思いをしている人がいる…夫が事故で生き埋めになり、その妻が夫の名前を呼び続ける話。それ自体良い話だが、失恋男が誤って「神父さん」と呼ぶが、自分は「牧師」ですと返答する。そこには厳然とした違いがあるという。
⑨「小竹林(仮)」
この読み方は何でしょう。フリップを使い 福井県大野市(越前)という地名までだし、さぞかし難しい読み方のような思わせぶり。実は「コタケバヤシ」という素直な読み方。名前というか漢字の読み方に対する先入観の妙。
⑩「ぐっち(仮)」
アベックが高級貴金属店で買い物をする。男は女のためにGUCCIの指輪を購入するが、店員は それをロゴなし袋に無造作に入れる。アベックは、品物に相応しい(見せびらかす)袋を用意しろと…。目に見えない袋を用意されたアベックは、宛ら「裸の王様」の寓話のようだ。
⑪「市民土木課の一日(仮)」
市民課と土木課の統合で生まれた新設課。配属された人の中に元恋人同士、その喧嘩や日和見の新人の言動を面白可笑しく描く。しかし、原発誘致が白紙になり 日々暇を持て余す課員たち。そして関係のない課を一つにし市民蔑ろの行政、ここでは どちらの名を先にするかが問題。銀行の合併じゃあるまいしは辛辣。また「課長」<権威>という呼称は、個人の名とは関係なく歩き出す習性の怖さ。全員登場による共演。

各題目ごとに 「なまえ」という切り口で緩い寓話らしきものを垣間見せる巧さ。その内容は多義にわたり面白可笑しく観せ、2023年に比べると時事的な事柄も随所に描く。また題目によっては<なまえ>のダジャレのような描き方だが、そこには繋ぎという別の役割を持たせており巧い。

演出は各題目によってテーブルや椅子の配置を変え、シンプルであるが状況を表出する。同時にキャストは衣装替えをし、観せる工夫をする。勿論、音響・照明などの舞台技術も効果的な役割を果たしていた。薄暗がりの無人舞台、暗幕に貼られた短冊、そしてラストには天井から短冊が舞い落ちる。その光景は、<なまえ>が重いのか軽いのか、人それぞれの思いと状況によるような。
次回公演も楽しみにしております。
ハッピーバッドエンドロール

ハッピーバッドエンドロール

route.©︎

王子小劇場(東京都)

2024/12/25 (水) ~ 2024/12/31 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/12/28 (土)

28日の13時と18時で両チームを観劇。
不思議の国のアリス/鏡の国のアリスにインスパイアされたファンタジー。
なるほど確かにほぼ原典そのままの場面アリ、残酷さや毒が割増しの部分アリで元ネタを知っているとより楽しい。
そんな中で芋虫とチェシャ猫の「舞台表現」に感服。
また、衣装も凝っていて芝居の魅力をさらに際立たせていたと思う。

ネタバレBOX

そう言えば「何だか不可思議な世界に入り込み、最後には追いかけられるコワさ」というのはいかにも「夢の世界」だなぁ。
<2025年1月公演>朗読キネマ『潮騒の祈り』

<2025年1月公演>朗読キネマ『潮騒の祈り』

idenshi195

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2025/01/08 (水) ~ 2025/01/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

上弦チームを観劇しました。
男性3人で女性を演じていましたが、違和感なく幻想的な雰囲気で、とても良かったです。
3人の語りから情景が浮かんできて、どうなるのか?とハラハラしながら聴き入りました。
良い舞台でした。

ミュージカル『アリスの翼』

ミュージカル『アリスの翼』

カンパーナ・プロジェクト

サンモールスタジオ(東京都)

2025/01/03 (金) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2025/01/05 (日) 13:00

価格6,000円

序盤も序盤、良い雰囲気だな、懐かしさを感じるなとほっこりしていたのだけど、、、
何か伝わってくるものが感じ取れず、とてももったいないミュージカルだったなと個人的には思うのでした

ネタバレBOX

キャストの技量の差がありすぎ、またピアノ?を多用しているのでかき消されてしまう、またもう少しアカペラがあるといいなと、ゲストをいれるのは良いものの、世界観にのめり込みたい方にとっては一気に冷めると思うかな
もろもろ…ね
「BLUE? or RED?」

「BLUE? or RED?」

伊藤えん魔プロデュース

ACT cafe(大阪府)

2025/01/11 (土) ~ 2025/01/13 (月)公演終了

実演鑑賞

BLUEもREDも笑いだけでなくしっとりした部分もありどちらも面白かったです。
勝手にBLUEの話とREDの話が何か関係してるのかと思って見てましたが関係なかったみたい

『逆さまの日記』『ベイカーストリートの犬』

『逆さまの日記』『ベイカーストリートの犬』

サルメカンパニー

駅前劇場(東京都)

2025/01/10 (金) ~ 2025/01/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ミステリの元祖の古典二作の連続上演。パスカヴィルの犬を下敷きにした「ベイカーストリートの犬」は結構複雑な家族関係がイングランドの沼地を背景に崩壊していく因縁話である。原作は19世紀に書かれていて英国怪談(ホラー)の原型らしく、その後も同じような物語ではパルコ劇場で大ヒットした「ウーマン・イン・ブラック」があるし、「ブラッケン・ムーア」も似た世界である。底なし沼に異形に犬の咆哮が響いたり、田舎貴族の巨万の相続話とか、都会から殺人犯の脱走犯が現われたり登場人物も事件も盛り沢山だ。
あまり経験がない若い劇団なのに、と言う危惧は当たって、注文の多い公演である。脚本は。原作をなるべく生かした上にもう一ひねりという壮図は良いが、どこも行き届いていない。小劇場で2時間45分(休憩10分)は台詞に続く台詞で十人あまりの登場人物を説明する。しかも事件は原作から随分沢山とっていて動きのあるシーンが多い。しかし舞台は駅前劇場の低い天井で奥の詰まった舞台である。切り出し風の装置でロンドンのベイカーストリートも田舎の沼地も貴族の館も全シーンを始末する工夫は、条件を見ればよくできたとは言えるのだが、なぜ、変形の斜めに舞台を曲げて組んだのか解らない。音楽をナマバンドでやるのは劇団の主張らしく今回も金管を軸に4人のバンドは入り、女優が歌ったりもするが浮いている。
俳優も一本調子にならないように構成演出も工夫しなければ。舞台進行だけで手一杯である。趣向も拡げるだけで絞らないと恐怖も、サスペンスも深まらない。
コロナでほぼ忘れられていたミステリ劇が次々復活上演され、若い作家でもこの作家や須貝英がとりくんでいる。本格系のミステリは閉鎖された世界だから、作り物の面白さの実験には良い素材であるが、二人とも原作からとりすぎである。三島は乱歩の「黒蜥蜴」でとったのは人物名と場所だけで台詞も中身もろくにとっていない。思い切って自己流に今の時代にあわせて作り替えなければ若さが生きていない。満席ではあったがうぬぼれてはいけない。もう一つ、この舞台は2.5と演劇との分かれ目に立っている。観客は、この物語に初めて接するようだ。結構熱心に話で見ている。若い男女の良い客層である。ここを、演劇の客にするか、2.5の一時的な「推し」で終わらせるかは、ここからほんの少し、どちらへ進むかにかかっている。折角の才能が演劇に向かうように期待もしたい。


躾

SCOOL(東京都)

2025/01/11 (土) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

父と暮せば

父と暮せば

酔ひどれ船

北千住BUoY(東京都)

2025/01/10 (金) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

上演頻度が非常に高い井上ひさしの名作だが、これはまた何とも素朴な味わいのある公演だ。これこそこの名作が描いている父娘の姿ではないかと感じられた。廃業した銭湯の跡を利用した劇場で上演されたのも味わいある素朴さの醸成に貢献している。立派な劇場で上演されていたら、この素朴さは出なかっただろう。

冥途遊山(めいどゆさん)

冥途遊山(めいどゆさん)

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2025/01/03 (金) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

江戸人情時代劇、死者の地獄巡り御一行が生前の生き方を問われてというお話。笑いあり泣きありで楽しませてもらいました。

卒塔婆小町 葵上

卒塔婆小町 葵上

東京大学芸能研究科

駒場小空間(東京大学多目的ホール)(東京都)

2025/01/10 (金) ~ 2025/01/11 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

三島由紀夫の近代能楽集から「卒塔婆小町」と「葵上」の2編。本演目は未見で戯曲も読んだことがないため、興味津々で東大多目的ホールへ。登場人物の少なさやシンプルな舞台装置、薄暗い中での飄々 時として濃密な会話は別役実作品を観ているような印象。

この両作品とも、二項対立させながらテーマらしき比喩が浮かび上がる。「卒塔婆小町」は「若い」と「老い」や「生」と「死」といった対比の中に抗えない人の宿命が描かれている。「葵上」は「愛情」と「嫉妬」や「情念」と「諦念」といった人が、特に男女間で起こる感情の縺れを情緒的に描いている。しかし近代能楽とは言え、元が能楽ゆえ若干違うが、「あの世=ワキ」と「この世とあの世との『あはひ』に生きる者=シテ」という基本的な構造は変わらないようだ。

舞台装置や演出は、幽玄といった雰囲気を醸し出しており観応えがある。しかし演技がその雰囲気の中に溶け込んでいかないのが憾み。外見(観)や発声等は学生演劇の域を出ないのは止むを得ないとしても、演技は工夫の余地があると思う。例えば腰を曲げた老婆(99歳)、その割には俊敏と感じられるような動き。腰を曲げているにも関わらず吸殻を簡単に拾い上げる等…。台詞は 丁寧に発音しており、情感がこめられているだけに惜しい。
(上演時間1時間30分 休憩兼転換10分)追記予定

なまえ(仮)

なまえ(仮)

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2025/01/08 (水) ~ 2025/01/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

入り口から短冊に書かれた名前中の壁一面天井にもかかれていました あっかんでした

なまえ(仮)

なまえ(仮)

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2025/01/08 (水) ~ 2025/01/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

相変わらずの安定感でした。とても面白かったです。いつもよりシュール感は少し控えめだった気がしましたが、今回は今回でよかったです。軽快にいろいろなお話が展開して、途中に入る語りもテンポ良くあっという間の1時間34分でした。名前に縛られる、守られる、支配される、名前、名称とは?みたいなこともあらためて感じた時間でした。
最後の獅子舞も良かった、今年も楽しみにしています。

冥途遊山(めいどゆさん)

冥途遊山(めいどゆさん)

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2025/01/03 (金) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

龍組を拝見。2時間弱のお芝居でしたが、歌ありダンスありお笑いあり、ホロッとする場面ありと盛りだくさんで、時間を感じさせない良くできたお芝居だったと思います。エンターテイメントととして、気楽にとても楽しく拝見しました。個人的にはラストハッピーエンド?な感じで良かったです。

純烈公演

純烈公演

明治座

明治座(東京都)

2025/01/07 (火) ~ 2025/01/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

楽しかったです!第1部「俺たちはダディじゃねえ!」って、本当は?
小林綾子さんが歌も歌う方とは知らなかったので驚きましたが、しっとりとして素敵でした。
第2部 純烈コンサート2025『BIG♨LOVE』もいつものコンサートのように客席に降りてきてくれて、写真撮ったり握手したりできて良かったです。みんなでタオルを振り回すシーンでは「なんでもいいですよ〜」とのことで、ミッフィーのハンカチを振っていたことは内緒です。

冥途遊山(めいどゆさん)

冥途遊山(めいどゆさん)

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2025/01/03 (金) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

死んでからの選択も色々ですね!?
面白かったです!

ネタバレBOX

閻魔さまはお地蔵さんだったとは!?
『ヂアロオグ・プランタニエ、下校の時間』

『ヂアロオグ・プランタニエ、下校の時間』

ユニットあっちとこっち

Social Kitchen(京都府)

2025/01/10 (金) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

満足度★★★★

短編と中編の二本立ての会話劇 良作共にリズミカルなテンポで進む 短編は時代背景が明治大正?の二人の女性が共に好きになった男を…
中編は、現代の女子中学生の転校をメインに自分一人ではまだ生きていけないもどかしさと、家族との繋がり?絆を中学生目線からとても上手く描いていた 乱痴パックの脚キレーでした オヤジだけに…😢

冥途遊山(めいどゆさん)

冥途遊山(めいどゆさん)

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2025/01/03 (金) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

龍チームを観劇しました。
正に、エンターテインメント作品でした。
ストーリーの面白さ、本格的なダンス、華やかな衣裳、こだわりの演出等、とても良かったです。
そして、楽しくて笑えるのですが、何だか切ないストーリーでした。
役者さん達は、個性的な登場人物を好演して、とても良かったです。
楽しい時間を過ごせました!

なまえ(仮)

なまえ(仮)

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2025/01/08 (水) ~ 2025/01/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 如何にも夢現舎らしい作品である。新春公演とあってそれにふさわしい出し物もある。ショートストーリーをオムニバス形式で繋いだ時間、ゆっくり楽しみたい。(1回目追記1.11、2回目最終追記1.13アップ)

ネタバレBOX

 面白いテーマである。ところでヒトは何故対象に名前を付けたがるのか? 見た物、音を発する物、或いは手には触れず見ることもできないが感じるものについて。ヒトはあらゆる対象に名を付けたがる。それはなぜか? 
 私見だがそれは恐怖や不安からである。歴史的にはヒトが淘汰されず生き残ってこれた理由に共同体を作ることができたことが挙げられている。牙らしい牙も無く、動作も鈍く、爪も鋭くはないヒトが暑さ寒さに耐え食物と飲料を確保し徐々に体毛も少なくなってからでさえ自然を相手に生き残ってこれたのは共同体のお陰ということになる。では共同体が生じる為に必要なもの・こととは何か? コミュニケーションである。ここで始原のコミュニケーション論から始めるつもりはないから、言葉の骨格は既に出来上がりコミュニケーション可能なレベルでの文法も成立しているとする。{実際シジュウカラは百数十の単語(鳴き方)を持ち文法構造もしっかりしていることが既に明らかにされている}から爬虫類から進化した鳥類にも一種の言語機能が既にあるということもできよう。そしてこの能力によって彼らは卵が蛇に狙われている場合や天候の変化等々を近隣の仲間に伝え生き残る可能性を増大している訳だ。つまり文が成立している。文が成立する為には単語と文法が必須である。では言語の発展段階と裸形(身体的にも精神的にも)との間にどのような状況があったか? ヒトが捕食、被捕食の関係性の中で生き残る為にはこの関係を見切ることの他あるまい。即ち対自然のうち、ヒトにとって脅威となる生き物に対して名付けることは命を永らえる為の必然であったハズだ。その他にも気候変化や自然災害刻々と変化する生活環境の中で極めて多くのもの・こととヒトは対峙し続けてきたし今もそれは変わらない。どんなもの・ことが脅威であるかについてそれを共同体の皆に伝えれば情報を共有し得る。こうして徐々に自分達のリスクを減じてきた結果ヒトの勢力圏は拡大してきたと考えられる訳だ。以上極めて単純化した説明から類推できるように、自分は生き残り作業の必須事項の1つが名を付け共有化することでなければなるまいとの考えを抽出した。
 作品は現代のヒトの生活を描いているから名のイメージから起こる様々なマイナスイメージ問題や偏見、滑稽等も扱っている。体たらくとしか言いようのない現代日本の政治、円の下落というより相場を左右する更に深い原因である政治・経済・技術・思考の劣化・イマジネイションの矮小化・共同を阻む有象無象の理由等々で凋落の一途の我が祖国を憂いた台詞も随所に哀しく響く。深い思考が齎すこのような表現を自らの内側から感じることができる人々には極めて奥深く迄味わえる作品である。
こんばんは、父さん

こんばんは、父さん

ニ兎社

俳優座劇場(東京都)

2024/12/06 (金) ~ 2024/12/26 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

せわしない年末気分のさ中、まだ残席のあった二兎社公演を観に行った(公演間近ではいつも完売の記憶しかないが...再演である演目の注目度だろうか、と若干の懸念)。
イブ当日の六本木駅は改札から異常なスシ詰め状態、コース選択も誤り10分近く遅れて会場に入った。
場面はとある廃屋で見知らぬ男同士が遭遇し、やり合っている。若い方(堅山隼太)は相手(風間杜夫)の借金の取り立て人らしい。あちゃ・・この始まりでは冒頭台詞に情報が集中する、かなり乗り遅れたな、とアウェー感に見舞われつつ見始めた。
ただ、事前に読んだ説明には、震災後間もない時期を設定した作品とあり、それが後押しして観劇に至ったのだが、期待がそこに集中する割に「その事」が自分には見えて来ず、些か宙ぶらりんな思いでの観劇となった。(途中睡魔にも襲われコアな会話を逃したのかも。。)

旋盤工だった「父」が廃業した工場跡の廃屋が舞台。父が戻って来た理由は不明(忘れた)、「若者」の方は彼を追って来た模様。そして三人芝居の残る一人、「息子」(萩原聖人)は自分の仕事を辞めてか休んでか、かつて暮らしたこの場所の二階に滞在していたらしく、自室から姿を現わし二人を驚かせる。
老年と中年、若者の三世代が同じ場所で、それぞれ(の世代)が抱える困難を焙り出す狙いで書いた、と永井氏のコメントを後で見てなるほどと得心したが、しかし世代を体現した人物像としてはどうだろうか(特に息子役は特殊な役柄を演じて来た俳優でもある)、群像劇には見えて来なかった。一場劇として面白い展開が盛り込まれていたが、「風情」を感じ取るには至らず、「震災」のしの字も出て来ず、惹句にあった「2024年の日本で上演する事で見えて来るもの」を見よう、という狙いだとすれば、初演時の「震災」は長年続く「経済災害」に置き換えられでもしただろうか・・。だがそうなると場所がポツンと立つ廃屋である必然性が薄くならないか。冒頭が見られなかった事が未だに引っ掛かっているが、結果的には不本意な観劇になった。
風間杜夫氏の立ち姿(このところ梁山泊のテント芝居で観る事が多いが)が、振り幅的に自分のイメージが固まっていて(要は同じに見える)、それを裏切る瞬間(
(への期待)が訪れず、という所が大きい気が。萩原氏は柔軟さがあるがキャラのイメージが「爪を隠した鷹」だし、堅山氏は若手として飛び跳ねる運動量多い役だがガタイが良くまた生硬に見えた。
2012年初演のキャスティングは、平幹二郎、佐々木蔵之介、溝端淳平。平幹はかなりの老齢で「父」役に耐えたのだろうか?と思う所。佐々木氏は未知数、溝端淳平は中々やれそうである。
辛口になったが、期待値の高さの裏返しと言われればその通り。

さて話題は変わり・・
今年は「アワード」投票をミスる事なく終えたが、未練たらしい膨大な「ランク漏れ」舞台への言及でも触れそびれた、公演幾つか(まだあんのかいっ)をひっそりとここで挙げておきたい。(ネタバレ欄に)

ネタバレBOX

うっかりの書き忘れが、
・ラビット番長「ハクマキタル」・・「ストレートプレイの秀作のあった初見劇団」の一つとして。
・キョードー東京・ミュージカル「RENT」・・山本耕史参加の来日公演。「商業演劇」(的カテゴリー)として。「感動」の度合いで言えば確実にランクインだが、やはりこれは別枠とした。
・風姿花伝プロデュース「夜は昼の母」・・タイトルからつい前年の母娘の芝居と勘違い。こちらは同企画の原点ラーシュ・ノレーンの際どい作品。風姿花伝P継続への期待を込めて。

ストレートプレイでは攻めた舞台が、同等かそれ以上なのに端折るのも気が引けるので、という事で追記。
・・イキウメ「奇ッ怪」、文化座「花と龍」、一糸座「崩壊」、ゆうめい「養生」、果てとチーク「害悪」、M2「黒い太陽」(作演の主宰劇団のも含めて、新たに発見の部)、ZERO-ICH「隧道」、梁山泊「風のほこり」、世田谷シルク「カズオ」、夢現舎「遺失物安置室」。
リーディングでは楽園王「本棚より幾つか、」の特別公演「お国と五平」「華燭」は特筆(年末の「イヨネスコ『授業』」も秀逸)。
渡辺源四郎商店は今年も書き手二名の上演は着想の面白さ。地方劇団の公演は今後も続いてほしい。他、劇団普通、演劇アンサンブルも上質な舞台、唐組も相変わらず。初の横浜ボートシアター「小栗判官と照手姫」で説教節の世界を堪能(ProjectNyxより泥臭いのが良い)。女性ユニットOn7や理性的な変人たちも今後へ繋ぐ仕事が見られた。

別カテゴリーになるが「いきなり本読み!」小林聡美、小泉今日子の「いきなり」の対応力に舌を巻いた。
メジャー所には評価が何故かしょっぱくなる。PARCO「オーランド」は文学作品を立ち上げる事に成功してはいたが「現在」との緊張関係がもう一つ見えず。年始のbunkamura「う蝕」は能登震災を受けて急きょ書き直した作品ゆえか、ユニークな作だが「現実を踏まえたフィクション」の難しさ(よく急拵えでここまでやれたと褒めるべきかも知れないが)。unrato「月の岬」は松田正隆氏の名作を初めて舞台で観たが、何か仕掛けるのではと期待したunratoにしては割と普通だった。

一昨年亡くなったナカゴー鎌田氏作品の上映会で二作品鑑賞でき、後継ではないが期待してるアンパサンドで<ほりぶん>ばりの川上友里を拝め、東京にこにこちゃんでは<ナカゴー>で見た高畑遊を拝め、映像で画餅版だが「ホテル・アムール」が観られて満足だった。
おつかれ山さん

おつかれ山さん

近畿大学 文芸学部芸術学科 舞台芸術専攻 34期

近畿大学 Eキャンパス D館 3階(大阪府)

2025/01/09 (木) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

何か、一生懸命に生きている僕に投射してしまった・・・ 面白かったです
おすすめです

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