ズベズダ 公演情報 パラドックス定数「ズベズダ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    この{ズべズダ」は青年座公演で21年に見ている、素材は二次大戦のナチの技術者争奪戦の米ソ秘話がその後の両国の宇宙開発に現在にまでも影を落としていくハナシだ。思わず耳をそばだてるような秘話に巧み盛るのは上手い野木萌葱が青年座に書いた本で、よく知らない世界と言うこともあって面白かった。今回は全体をさらに詳しく全編三部にして一挙上演と言う。全6時間半と聞いて、長くなったのなら後半だろうと当てをつけて第三部を見た。今回は作者自身の劇団パラドックス定数に小劇場ではよく見る俳優を集めての公演である。
    これがかなり当てが外れた。
    青年座版の内容は今回では一部、二部になっているらしく、第三部のパラドックス版はアメリカが月面到着に成功した後の取り残されたソ連科学者の内部抗争が軸になっている。従って、第一部で特に面白かった、米ソという異国にいわば拉致されたドイツ科学者たちとソ連の科学者との、科学の発展と成果をかけた米ソ対立、と言うこのストーリーの面白く、おいしいクライマックスは、はじまってすぐ、慌ただしく決着が付いて、第三部の中身はほとんどがその後の後始末になっていて、すっぱり落ちていて意気あがらない。ソ連が負けたのは社会体制にも原因はあるわけで、先の青年座版では当時我々にもおなじみだった米ソのリーダーたちも少しは登場してハナシが面白くなったのにそこもない(ワンシーンだけフルシチョフが出てくる)。次第に追い詰められていくソビエトと、その先端を任された科学者たちの苦悩は、ソビエト型国家予算の取り合いでしか描けないから、小国になった我が国の予算審議のようなチマチマしたよくあるハナシになってしまう。青年座版にあった米ソの情報合戦も科学的成果も勝負が一方的に付いてしまった後では発展させようもない。また、いいネタでもあるドイツ拉致科学者が三部では全く描かれなかった。
    出演者たちの背景も役柄もはっきり設定されていなくて、ドラマのシーンとしては物足りない。つまり、アメリカにスパイに出かけるというのと、喰うためにNASAに転職するというのでは分けが違う。
    青年座版では宇宙を思わせる抽象舞台で何もかも会話で処理していて、それが上手くいった。テキパキした出し入れもロケット発射も、照明も音響も頑張って効果を上げていた。3時間ほどある長尺だったが飽きずに見られた。三部では、アメリカの月到着のシーンがあるのに、そこへ至るまでの経過もふくめかなり速いスピードで事実報告のような進行になっていて、そこも疑問だ。そこのソ連側への衝撃が上手く描かれていないと、後が持たない。
    三部のパラドックス版は(1,2部は見ていないから分からないが)そこもかなり不利だったとおもう。作者はこの話はどうしてもかきたかったと劇場パンフでは熱弁を振るっているので、是非改訂版を頑張って、もう少し大きい劇場でせめて、トラムや、あうるすぽっと(天井の高い小屋)でやって欲しいものだ。また、科学をドラマに中で大きな比重を置くのはこの作者の魅力だが、そこも今回は薄味で残念だった。総体でいうと、この第三部は折角の異色の企画のしめどころなのに、青年座が俳優も演出もでがたくまとめる方向で成功したのに比べると、作者、演出両立で時間もまとめる時間も足りなかったのではないかと思う。

    0

    2025/02/27 22:57

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大