すいかの種の黒黒 公演情報 う潮「すいかの種の黒黒」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    小学校2年生から27歳迄、その約20年間という長い時間軸を紡いだ女性2人の心の彷徨劇。たしかに 生活環境や生き方が違う2人の女性を描いているが、何故か1人の女性が立ち上がる合わせ鏡のような存在に思える。家庭環境・境遇という条件(物質)的違い、物事に対する思考(精神)的違い、その溝のようなものが年齢とともに少しずつ大きくなり、いつの間にか疎遠になる。学校やクラスが違えば、会うことも少なくなり といった経験は誰にでもあるだろう。そんな等身大の女性を描いている。

    27歳迄の生き様は、順調・不遇といった対照的な描き方だが、その根本には(自己)承認欲求 その腹の底が透けて見えてくる。お互い、自分の方が自分らしく生きているといったプライドをちらつかせる。相手の中に嫌いな自分の姿をみる その不気味、不穏な感情が怖い。しかし共通点があれば独特・相違点もある。その違いを受容できるか否か を問うているような気がする。コロナ禍を経て不寛容といった風潮が広がったが、そんな世相を人間観察をするといった視点で捉えた好作品。
    ちなみに、客席はL字型で座る位置によって観え方が違うかも…。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、奥の壁際に大きな本棚、その反対側に小さな収納棚。木のテーブル2つといくつかの椅子。ソファとミニテーブルが対になって配置されている。配置の特徴は2人の女性の家庭、その光景を表している。裕福で文化的な家庭に生まれ育った燈の家は、その象徴として大きな本棚で表す。歳の離れた兄弟と共に都営住宅に住む夏の家は、ミニテーブルやおもちゃ箱。その光景は、燈と夏という2人の女性の精神構造のよう。

    見どころは、2人の隔たり 疎遠になっていく様子と過程が 実にリアル。そこに演劇という虚構に実在感ある人物を描き没入感を出す巧さ。2人の女性…燈は頭もよく 私立中学を経て希望した職業に就く。さらに自分でやりたかった演劇の世界へ、そして周りから認められるまでになる。一方、夏は勉強嫌いで 努力することもしない。好きでもない専門学校に入るが中途退学し風俗嬢として働く。そんな2人が或るきっかけで再会する。

    燈が、舞台の題材として風俗嬢の取材をすることになり、現れたのが 夏。世間で言われるほど 大変ではない。むしろ自分には向いていると嘯く。そこに夏の燈に対する意地を見る。表面的には 燈の仕事は順調、しかし 内心は周りの期待に応えようと無理をし自分を見失いそう。親が介護状態になっても仕事のせいにして実家に帰らない。一見、二人の精神的な立場が逆転したかのようだが、実は 夏にも気になることが…。異なる世界を歩いてきたが、それぞれ27歳という女性の岐路、そして これからどう生きていこうか という自問自答する姿がリアルに描き出されていた。ちなみに子供の時と現在で、2人の すいか の食べ方が入れ代わったのが 面白い。

    演出は、2人の成長に合わせて衣裳やメイクを変え、舞台セットも場景に応じて動かす。2人の女性以外は、1人複数役を担うが それほど違和感なく受け入れられる。照明や音響・音楽の印象がなく、心情劇としては もう少し舞台技術による効果、印象付けがあってもよかったのでは。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/03/01 07:36

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