ITOYAの観てきた!クチコミ一覧

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タンゴ-TANGO-

タンゴ-TANGO-

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/11/05 (金) ~ 2010/11/24 (水)公演終了

満足度★★★

長い!私にはやっぱり難解!役者さんたちの演技や舞台美術は面白い。
長い!
そして、長塚圭史さんの舞台は、私にとってはやはり難解。
いや難関かな。
一幕はかなりつらかった。
役者さんたちの演技は面白かったのですが、
話の内容について行くのは(ついていけなくなりそうなのは)大変でした。

第1幕の混沌とした中、訳も分からないまま
いろいろ聴いているうちに終わってしまったような。
その中で、吉田鋼太郎さんの暴走=劇中実験演劇は…変?
確かに笑ってしまうけれど。
そして、片桐はいり さんはなんて自然なんだろう。
秋山菜津子さんの存在感も凄い。
「ガラかめ」でも観ていた奥村佳恵さんは、美しく可愛らしい。特に二幕。

全編一人苦悩し、二幕で大きく動く森山未來さんの、
このエネルギーは圧巻。
これを毎公演やっているなんて…。

橋本さとし さんもまた二幕で大きく動き出す。
この変わりっぷりが見事。
そしてまた、いつもはいかつく、ゆるぎない
辻萬長さんの振る舞いもまた変わる。

難解と思っていた話も、クライマックスは良くわかった。
要するに権力とは?ということが言いたかったんですよね?
(違ったりして^^;)

串田和美さんの舞台美術がすばらしい。
透明アクリルの壁、テーブル、椅子、それだけでなく
パンフを読むと演出家の長塚圭史さんが
小道具を持ってくる…なども串田さんの指定だったとは。
演出でなくて舞台美術だったのか。
そんなのもアリですか!
面白い。
けれど、「演出家が小道具を持ってくる…」とかって、どういう意味があったのだろうか???

【これだけは絶対言いたい!】
この充実したパンフレットが1000円で買えるなんて素晴らしい。
他の舞台も是非見習ってほしい!

図書館的人生 vol.3 食べもの連鎖

図書館的人生 vol.3 食べもの連鎖

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2010/10/29 (金) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★★★

イキウメらしい作品。メイン料理は見た目と違って意外と重い。
毎回欠かさず観ているイキウメの新作は、短編集の第3弾。
今回は食の連鎖に関する話。
短編4本から構成されており、当日配布のパンフレットでは、
料理のフルコースに例えられていて、重みのバランスと
長さが、まさにそれに比例しているよう。

#1”前菜”人の為に装うことで、誰が不幸になるっていうんだ?
料理学校に通っているベジタリアンの妻は、
夫にも同じくそうなってほしい。
そして、選んだ方法は…。

やっぱり「やってはいけないこと」「譲れないこと」
ってありますよね。

#2”魚料理”いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ
必要なものしか盗らないというポリシーを持つ、
万引きのプロである男は、懸賞マニアの女の部屋に
転がり込んで共同生活を始めていた。
ある日を堺に、遊び半分で棚ごと盗む万引き犯が出没し、
近所のスーパーは閉店の危機に。
行きつけの店が無くなってしまっては元も子もない。
彼は、地域の万引同業者と協力して、対策を立てるが…。

ポリシーはあっても犯罪は犯罪です。
懸賞マニアは犯罪ではないので、同類に扱えませんよね。

懸賞マニア役の加茂杏子さんが普通でありながら、
いい味出してました。

こういう理屈っぽい役をやらせたら、
安井順平さんがダントツのうまさです。
冷たいようでいて、実は優しいところがとってもイイ。
安井さんは、毎回出ているような気がしますが、
劇団員じゃないんですね。

一方、森下創さんは、万引きグループの親玉とか、
#3の食を追及する師匠?とかが合いますねぇ。
教祖とか、仙人ぽいと言うか。

#3”肉料理”人生という、死に至る病に効果あり
食を研究していた男は、”飲血”が長寿をもたらす
ことを発見、続けるうちに見る見る若返るが、
もう普通の食事はできなくなっていた。
また、皮膚が太陽光線に弱いことがわかったため、
昼は外出せず、夜間だけ行動するようになり、
周囲の目からも隠れるようになった。
その有様はまるで「吸血鬼」のようだった。

切り口は「100歳以上の老人の所在不明」問題。
ある男が語る一代記を歴史を追って再現していく様子から、
うねるような人生の流れのようなものが見えて圧巻です。
飲血と「吸血鬼」の設定が表裏になっているのも上手い。
「吸血鬼」一族が増えていくのではないかといった
不安も垣間見えて、ゾッとする。恐ろしい。

#4”デザート”マヨネーズの別名は、全体主義的調味料
菜食の料理研究家とその助手は、
テレビの料理番組に出演する。

デザートはエピローグのようなものですね。

次回は、ついに「散歩する侵略者」が観れる!!

ファントム

ファントム

梅田芸術劇場

赤坂ACTシアター(東京都)

2010/11/02 (火) ~ 2010/11/22 (月)公演終了

満足度★★★

なんと篠井英介さんが歌う!杏さん初舞台で初ミュージカルでこれは凄いと。
あの「オペラ座の怪人」をベースにしたスズカツ印ミュージカル。

個人的には大沢たかおさんは少し苦手ですが、
それよりも、杏さんは、初舞台+初ミュージカルで、これだけ本格的に堂々と歌うのは凄い。
何といっても、オペラ座のディーバの役ですから、かなりの重荷のはず。
声が出切っていない場面もあったりしましたが、総じて言えば良かったかも。

そして、スズカツ組からは篠井英介さんの登板。
そのために観ました!
静かで物腰の柔らかい英国紳士というイメージで、前オペラ座支配人を演じられました。
日本人とはとても思えない立ち居振る舞いが素晴らしかった。
また、1曲だけ歌う場面が珍しく、それも観ものでした。

亜門版ミュージカル「ファンタスティックス」

亜門版ミュージカル「ファンタスティックス」

ホリプロ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/10/09 (土) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★★

この配役にして小劇場向け。本来は、軽快な中編。
あなたが思いだした、ある時あるところ、若い男女の普遍的な恋愛寓話。
俳優と数名の生演奏、大道芸的なアクロバティックなダンス、菱形の八百屋舞台で、いくつかの小道具と紙吹雪のみで奏でられるコメディーミュージカル。
鹿賀丈史さん 田代万里生さん 神田沙也加さんという配役でも、実際は小劇場向けとも言えるような、このコンパクトで軽いノリが魅力です。

今回ステージシートを狙ってGET,きっと舞台上から客席に向けての席だろうから、役者の後ろ姿ばかり見ることになるだろうなぁ…ということは、ある程度は覚悟の上できめました。
結果、やはりそうで、かなりの部分は後ろ姿を観ていましたが、ステージ上、手の届く距離で役者さんたちが観れる、献じれるのはやはりメチャクチャイイです!
(あ、音も聞き取りにくいかも。)
ただ冒頭の急なハイテンションとスピードについていけなくて、本当に目の前数センチを駆け抜けた神田沙也加ちゃんとハイタッチし損ねたのは、一生の不覚!!
…というような感じのノリで観るのが正解でしょうね。

ストーリーは第一幕が、ありがちな?展開ながらもスピード感とコミカルさで楽しく面白い。
二幕から暗雲たちこめ波乱が起きて面白くなっていくのかと思いながら…あれよあれよと、よくわからないうちにフィナーレになった感じ。(私だけ?)
そこが残念かも。
鹿賀さんも軽いノリが良く、神田沙也加ちゃんは明るさ軽さ加減のイメージが、今回のヒロイン にぴったりでした。

今がいつかになる前に

今がいつかになる前に

空間ゼリー

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

これだけ観る前コメントが多い芝居に、最初に感想を書くのが怖いですが…
年に一度の空間ゼリー(空ゼ)本公演。
舞台は、私立女子小学校6年生の生徒達と教師達を、ある事件を中心に描写。
空ゼの「今」も投影しているという。
小学校を舞台に、実際の女子小(中)学生が5人出演する小劇場演劇は珍しい。
(空ゼがアップフロントエージェンシー(モー娘。とかハロプロ関係が所属)とコラボしていることも少し影響している?)

変わらない正義感を持ち続けるのか、自分を・個性を抑えて周りに合わせるのか…小6にして、すでに大人のような処世術を自然に身につける子供たち。
それとは正反対に、外見は大人でも、実は自信が持てずに大人になりきれない教師たち。
教室での教員達の会議の様子は、小学生の授業における人間関係と何ら変わらない。
それでも、子供は子供なのか。

「学校もの」ということで類型的な話なのかと思いきや、微妙で意外な切り口があって、深い。
そこが坪井さん・空ゼならでは。

それにしても、5人の子たちの輝きは、それだけでインパクトが大きくて圧倒されてしまう。
特にカーテンコールで見せる素の部分の方が強烈に感じるのは、単に自分が年を取ったせいでしょうか。

ちなみに、潘めぐみさんのお母様は『機動戦士 ガンダム』ララァ・スン、
『美少女戦士セーラームーン』ルナなどの声で有名な声優の潘恵子さんでした。
池田秀一(シャア)さんから花束が来てたので気付きました。

ネタバレBOX

あと不謹慎ですけれど?小学校の教室での教師同士のラブシーンに、ドキドキの緊張感。
特に「演劇」は、映画と違ってリアルタイムで目の前で進行している。
実際の小中学生が一緒に演技している同じ「空間」だからか。
カエサル

カエサル

松竹

日生劇場(東京都)

2010/10/03 (日) ~ 2010/10/27 (水)公演終了

満足度★★★★★

「2000年以上前に起きた」うねるような人間ドラマ。
松本幸四郎が渾身の演技で挑む、英雄ユリウス・カエサル(英語名ではジュリアス・シーザー)の半生。
ユリウス歴(太陽暦)をはじめ、7月の英語名ジュライの語源でもあったり、ルビコン河、「賽は投げられた」、「ブルータスお前もか」など、現在に至るまで様々な事柄にその存在を残した英雄カエサルの物語。

10月2日のゲネプロ観劇以来、いよいよ本公演の観劇です。
その時から公演回数を重ねてきているので、当然かもしれませんが、幸四郎さんをはじめ、みなさん役がしっくりきている感じがします。

中でも、瑳川哲朗さん演じるポンペイウス、勝部演之さんのクラッススとの三者会談での幸四郎さんが生き生きしてて良かったですね。
瑳川さんも、勝部さんもグレーの髪と衣装が実にしっくりきていて、そのまんまローマ人になってます。
特に瑳川さんの髪と立派なひげの自然な貫禄が印象的です。

さて、今回あらためて観ると、カエサルも英雄ではあれど、最善を尽くした普通のローマ人の一人にすぎない。
彼を暗殺する側にも一理があって、双方とも悪意があるわけではない。
キケロもブルータスも、誰もがカエサルの人間の大きさ、寛容さの前では、自分の矮小さをまざまざと突き付けられているように感じてしまう。
そのことが怖くなり、焦り、その結果、反発や否定してしまう。
しかし、その「独裁を許さず共和制を守るため」だったはずの暗殺が、結果的にはローマ帝国とローマ皇帝による真の独裁を生むことになったともとれるこの皮肉。
民衆の圧倒的な支持を得た、善意の優秀な英雄であっても、独裁は許されないのか。
能力や意識が低く社会が良くなくても、話し合いと合意による政治のほうが良いのか。
月並みな表現ですが、大きな時代の波に流されながら翻弄される人間の姿は、2000年以上前から変わっていないのだなぁと、しみじみ感じたのでした。
類型的な「ブルータスお前もか。」の名場面が無いのは、そんな陳腐なことでは、とても表現できないからだろう。
…深い。

微笑の壁

微笑の壁

城山羊の会

ザ・スズナリ(東京都)

2010/10/22 (金) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★★

主演:吹越満+石橋けい夫妻役=久々のシュシュトリアン共演!あり得ないのにリアル、不思議な話。
「有言実行姉妹シュシュトリアン」「ウルトラマンティガ」「女優霊」の 石橋けい さんが出演。
前回の舞台を観れなかったので、今回こそは!と思ったら、なんとスズナリだったのでラッキー。
しかも「シュシュトリアン」で共演していた吹越満さん(「ガメラ2」「全力坂」)と夫婦役。
奥さん役の結構自然な演技が良かったです。 メガネも似合ってます。(萌)
そして、吹越さんの自然な演技と存在感はさすが。

話は、あり得ないのに、リアルな空気。
しかし、アメリカのおじさんの登場で、また一気に荒唐無稽に。
シリアスなのかコミカルなのか、不思議なような。

登場人物たちの周辺で自殺した人がいたり、
その後登場した全くの他人がその人に似ていたりという
不気味な因縁が本作の原案になったといい、
その不穏な空気が、なにかざわざわとした感じとなって
舞台に流れていたのかも知れません。

10月突然大豆のごとく

10月突然大豆のごとく

シティボーイズ

新国立劇場 中劇場(東京都)

2010/10/17 (日) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★

年に一度、名トリオ絶妙のバランス+1+若手コンビ。
シティボーイズが新国立劇場!?
毎年恒例シティボーイズライブ、オフビートでシュールで
くだらない…力の抜けた独特の笑いの世界です。
きたろう さんは、緊張感なくマイペース、ときどき細かい
思いつきのアドリブ。
斉木しげる さんも、とぼけながら勝手にいろいろひきのばしたり、
それをいちいち笑ってしまいながら怒って突っ込む大竹まことさん、
このバランスが絶妙です。

今年は、いつもの中村有志さんと、ザ・ギースとラバーガール
という若手コンビ2組(どちらも好きですが…)
が加わってのシティボーイズミックスです。

この組み合わせは意外でしたが、ちょっとシュールで静かで
マニアックという芸風は、確かにシティボーイズに通じるところがあって
こうして観ると全く違和感がありませんでした。
音楽は、大人でカッコイイ。

名探偵ポワロ

名探偵ポワロ

PureMarry

THEATRE1010(東京都)

2010/10/05 (火) ~ 2010/10/12 (火)公演終了

満足度★★★★

すっかり板についた三波豊和ポワロ!はまり役です!
本当に少ない推理物戯曲の一本で、2009年1月の博品館劇場上演の再演。
(今年は同じくクリスティー作・浅丘ルリ子主演『検察側の証人』が控えてますが)
すでに初演で話は知ってますが鑑賞しました。
クリスティー自ら手がけた、非常にスタンダードな戯曲です。

前作でもポワロを演じていた三波豊和さんは、今回の再演ですっかり板についたようで、まさにはまり役になっています。
小太りな体格、ユーモラスな演技からひっくくひねった通りのいい声まで、ぴったりです。
イメージは、テレビ版ポワロ(演:デビッド・スーシェ/声:熊倉一雄)そのままですが。

ヒロインが初演の山崎美貴さんから貴城けいさんにバトンタッチ。
山崎さんを応援していたので少し残念。貴城さんのほうが派手ですね。

前作に続きジャップ警部役の倉石功さんも、昔からのダンディなイメージのままで演じてます。
初演では、カーテンコールで倉石さんが車椅子の被害者の衣装で登場し、舞台上で変装?をといてジャップ警部に、というサービスがあったのですが、今回は無くて残念。
相棒ヘイスティングスとの(人が死んでいるにしては)明るくて軽すぎるやり取りも、テレビ版でもたまにあったそのままの雰囲気。
(唯一、医師役での安倍さんの演技が、もうひと役の警官との違いを出そうとするあまり、わざとらしくて興ざめでした。)

三波ポワロでクリスティーのほかの作品も観たいです。

ヘッダ・ガーブレル

ヘッダ・ガーブレル

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2010/09/17 (金) ~ 2010/10/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

主演:大地真央が素晴らしい! 将軍の娘ヘッダが巻き起こす事件の顛末。
プライドの高さゆえに行動したことが巻き起こす、周囲の人間への衝撃の波紋。
とにかく主演の大地真央が素晴らしい。
大規模ミュージカルの主演女優とは思えない、小劇場に合ったキメの細かい心理描写、心の動き。
だからと言って複雑に演じているわけではなく、極めてわかりやすいのに、まさにヘッダそのものの存在を思わせ、その佇まいに貴族のスケールを感じさせる。

奥行きを感じさせる舞台美術もイイ。
非常に内容の濃いパンフレットにも感心。
新国立小だからか、普通なら大きく載るであろう大地真央の写真すら、小さな稽古場風景のショットしかないストイックな作り。

(一点だけ、「普通するかぁ」っていうセリフは現代風すぎないだろうか?)

エリザベート

エリザベート

東宝

帝国劇場(東京都)

2010/08/09 (月) ~ 2010/10/30 (土)公演終了

満足度★★★

実は暗い!珍しく暗いミュージカル。けれどそこに惹かれる。死の帝王と恋をした実在の王女の一生。
やはりただのミュージカルではなかった。
実は暗い!珍しく暗いミュージカル。
けれどそこに惹かれる。
死の帝王と恋をした実在の皇妃の一生。

今日の主演は朝海ひかる さん。
まず、死に魅入られる前の娘時代、大きな目が印象的。
皇妃となり、自らの美貌を意識して、それを武器に立ち向かう姿が凛々しくも哀しい。
死の帝王トート役、山口祐一郎さんはあの歌い方から何から本当に個性的。
プリンシパル(メイン)キャストで唯一のシングルキャスト、
語り部である暗殺者役の高嶋政宏さんは、悪くはないけどいまひとつはじけてない感じ。
そして歌詞が聞き取りにくい。

カエサル

カエサル

松竹

日生劇場(東京都)

2010/10/03 (日) ~ 2010/10/27 (水)公演終了

満足度★★★★

松本幸四郎渾身の演技でシーザーの半生に挑む.水野美紀も大活躍!(ゲネプロ観劇)
松本幸四郎が渾身の演技で挑む、英雄ユリウス・カエサル(英語名ではジュリアス・シーザー)の半生。
ユリウス歴(太陽暦)をはじめ、7月の英語名ジュライの語源でもあったり、ルビコン河、「賽は投げられた」、「ブルータスお前もか」など、現在に至るまで様々な事柄にその存在を残した英雄カエサルの物語。

まず目についたのが、通路に敷き詰められた、当時の服装をイメージしたような白い木綿か麻の絨毯。
幕も同じ素材が素朴な感じで縫い合わされ吊るされている。

冒頭、行き交う多数の民衆の影がシルエットが、幕に映されて効果的なビジュアルから始まる。
そして、カエサルが戦士たちを鼓舞する演説の場面に。
この演説が戦士の心をとらえる様子から、人心掌握に長けた英雄の一面をのぞかせ、この後も、政治家としての策略ぶり、愛人との関係では英雄色を好む姿など、様々なエピソードを通じて、カエサルの人間性を描いていきます。
しかし、誰もが知っている有名なその最期は、終始影を落としています。
これに並行して、政敵のキケロと、愛人の子であり側近となるブルータスが逐次登場し、やがて観ている者の興味は「その時」に向かって、カエサルに対する心情がそう変わっていくのか、なぜ「そうなった」かに収束していきます。

共和制が揺らぎだしていたローマ。
カエサルは民衆の絶大な支持を得ていたが、その独裁がゆえに暗殺に至る。
それでも後継者によって「ローマ帝国」が築かれたという歴史の大きな流れを改めて認識。

松本幸四郎さん演じるカエサルは、幸四郎さん自身の人格がにじみ出て、人種を越えた人物として感じさせてくれます。
いくつかの場面だけで、人間カエサルを描くにはもう少しエピソードが厚いほうが良かったかも。
そこを本人の人間が埋めている。

瑳川哲朗さん、勝部演之さん、ご両人はさすがの存在感。
あの短時間のみ、主に一幕のみの出番では非常にもったいない。
そして、小島聖さんがクレオパトラだったとは!
美しさと存在感とその貫録に、勝気でありながら憂いを持ち、王でもあった姿を好演。
高橋惠子さんはいつになく、ふくよかで穏やか、でも芯は強く。

全編いかつい話の中で、ユーモラスで気が抜けるのは、渡辺いっけいさんと、水野美紀さん。
特に水野美紀さんが大活躍!
これまで延々と「踊る大捜査線」の雪乃役の大人しいイメージの役ばかりでしたが、今回ばかりは、自身が立ち上げたユニット・プロペラ犬公演での役に近いコメディエンヌぶり。
本作での笑いの部分を、ほとんど一人で背負っているのではないか。
それだけにともすると浮いてしまいそう。
しかも笑いだけではなくて、メインキャストではほとんど唯一、市民以下の奴隷の立場から、カエサルとローマ社会を見ている、観客の目線に最も近いとっても重要な役です。
その真価は、本公演で大勢の観客がいてこそ、わかるものだと思う。

第一幕1時間5分、休憩20分、第二幕1時間5分、計2時間30分。
 

窓

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2010/09/16 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★

PPPPにしては不思議度が低くて内容が暗い。1年半活動休止
避暑地、スキャンダル女優の別荘に集う得体の知れない
人々と、隣りに泊まっていた男女の数日間の悪ふざけ、
騒ぎを描く。

何かバブル時代を思い起こすような、業界人?たちの
バカ騒ぎ。
PPPPにしては不思議度が低くて内容が暗い。

本作で1年半活動休止だそうで残念。
・・・っていっても気づくとあっという間なんだな。これが。^^;)>

シダの群れ

シダの群れ

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/09/05 (日) ~ 2010/09/29 (水)公演終了

満足度★★★

岩松了 今度は、やくざものに挑戦!
岩松了 今度は、やくざものに挑戦!

岩松作品では、重要なことが舞台の外で起きる。
でも、今回はちゃんと舞台上でもドンパチ
がある。

そして、突然のエンディングにびっくり。
閉鎖された狭い社会でのいざこざで
命を落とす愚かさを感じたりしました。
こうして舞台という枠の中で見てみると
それが強調される感じがします。

また、皆、やくざっぽくて、上手いなぁと
感心しきり。
(やくざものはハッキリしてるから、
キャラクターを作りやすいかも。)

特に女優陣がいいです。
伊藤蘭さんの腹の据わったところなんか、
組長の姐さんらしい。
時効警察組の 江口のりこ さんの
安っぽくてけだるくてケバいところや、
組の若いもんに絡むところとかも。
黒川芽以ちゃんの京都弁も良くって、
ほんと大抜擢でしたね。

男優陣では、風間杜夫さんは、
力の抜け具合とかがいいです。
さすがです。

阿部サダヲさんは、あの役には少し
大人すぎた感じ。
江口さんも二枚目過ぎて遊びが無くて
逆に大変だったでしょうね。

でもパンフレットの岩松さんが
銃を構えてるところなんか、
一番かっこよくて似合ってましたけれど。
(出演はされてません。)

ハーパー・リーガン

ハーパー・リーガン

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2010/09/04 (土) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

無断欠勤し家族にも知らせず家を出たハーパーの旅.現代イギリスの社会問題やインターネット問題を反映して描く.
これもまた財政難から観劇を迷った1本でしたが、観て良かった!大正解!
迷った理由は地味なテーマと暗くて難しそうな長塚作品というイメージ。
それでも観たのは、「エレンディア」以来、一方的に役者根性が凄いだろうと思っている美波、芸達者な木野花、全面的に信頼できる山崎一・大河内浩という魅力的な配役。

2006年のイギリスが舞台。
父親の危篤の知らせに、夫や娘にも知らせず、無断欠勤して帰省した40代の女性ハーパー・リーガンの2日間の旅。
旅で出会った見ず知らずの人間たち、そして母親、義理の父らと関わったことで、家族のもとに帰った彼女も、家族も、何かが変わり始めた。

出会った人々は、皆、問題を抱えている。
現代なら普通のことかもしれないけれど。
人間はいびつだけれど生きていく。

下手をすると、ただの主婦の2日間の自分探しのささやかな冒険の旅。
悪いことをしたのを自慢げに話す、ありきたりな話の一面もありながら、今の社会のさまざまな問題が背景にあるために、それだけにはなっていない。
インターネットや、音楽プレーヤーが、少しずつ人間性を失わせつつあることも盛り込みながら。

小林聡美のキャラクターの優しさが、主役のハーパーにもにじみ出ていて、自然と親近感が湧きます。
そして、美波、うまい。まさにその場で感情が動いているように。
当然のことながら、出番が短いのに、木野花もうまい。
「今にして思えば、これから人生がスタートすると思っていた、その時こそが人生だったのだと。」
この母娘三代が、合わせ鏡のようにお互いに反映されているのが面白い。

ラスト・シーンも受け止め方は人によって違うかもしれないけれど、私にはほほえましく希望を感じました。

蛇足ですが、オールモノクロで統一されたパンフレットの内容は、演出者・俳優インタビューから複数の専門家の寄稿まで非常に面白くて充実の一冊。
これで1200円なら納得。
製本・閉じ方までもが凝っていて、うれしい。

エゴ・サーチ

エゴ・サーチ

虚構の劇団

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/09/10 (金) ~ 2010/09/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

お気に入り「虚構の劇団」の第5回公演。ITと、幽霊と、妖精を合わせた話は本劇団の十八番。
「エゴ・サーチ」とはネットで自分をググることらしい。
私は同姓同名が3,4人おられました。
以上。
…なんかさびしい。

今は、就職のとき人事担当者は、まず採用者の名前でネットで検索するという。
劇中にあるように、もしかしたら自分の名を騙ったブログやプロフィールがアップされているかもしれない。
そうならないように、自分から情報を積極的にリーク、いや公開してコントロールする時代だという。

物語は、自分と同じプロフィールを持つもう一人の自分のブログを発見した、書けない新人小説家の話。
そして、彼の書く、沖縄の離島を訪れた若い女性と、木の妖精キジムナーの小説、
売れない街頭ミュージシャンと、その売り込みを請け負ったIT企業「エゴ・サーチ」の戦略、
事故現場に新しい花束を片っぱしから供えてまわっている謎の若い男などの話が並行して描かれ、
終盤で一気に収束する展開。

お気に入り「虚構の劇団」の第5回公演。
より安定し、全員が活躍した、楽しい作品でした。
鴻上さんは、IT、ネット系の新ネタに詳しくて、
ITと、幽霊と、妖精を合わせた話は本劇団の十八番。
とにかく話が面白く、役者と各キャラクターが明確に立っているのが魅力です。
過去の作品「グローブジャングル」とかとのリンクもあったりするのがファンには嬉しい。

インターネット、IT最先端を題材に、しかし、語られる
テーマは、魂だ。
「魂は永遠ではない。
すべての人の記憶から消えたとき、魂もなくなる。
逆に誰かが思い続ければ魂は不滅だ。」

イリアス

イリアス

サンライズプロモーション東京

ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)

2010/09/04 (土) ~ 2010/09/23 (木)公演終了

満足度★★★★★

馬渕英俚可めあて,新妻聖子も。3000年前から語り継がれた壮大な最古の叙事詩の初舞台化!
3000年前、神々と人間が共存していたころの話。
やがて、「トロイの木馬」によって、神をも欺くようになってから
神とも決別し、共に生きることができなくなっていく…。

何千人の合戦を十数名で演じるというイメージの壮大さ。
(なんか「銀河英雄伝説」を連想してしまった^^;)
神と人間の関係。
基本的には、人間は今も変わっていないという驚き。
壮大な物語と、それに挑戦する俳優さんたちとスタッフにも感動しました。

堂々と凛として演じる馬渕英俚可さん、すごいです。観て良かった!
歌う巫女のような新妻聖子さんも。
内野聖陽さんのパワーも、殺陣も圧巻。(二幕で一転する性格も。)

木の皿

木の皿

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2010/09/08 (水) ~ 2010/09/12 (日)公演終了

満足度★★★★

50年たっても状況は悪くなっている。 話がうまくおさまってほしいような、そうでないような心情。
老人介護問題の話。
`50年代の話であって、現代とは微妙にニュアンスが違う点もあったかもしれないが、基本的には何も変わっていない。
当時でも、手紙を出しても十数年間返事もくれない兄弟の関係とは、驚かされる。
また、施設も当時は本当にひどい扱いだったらしい。

しかし、現代では、核家族・少子化によって、より深刻になってきている。
今では、家族がいるだけ幸せかもしれないと。
うがった考えでは、子供たちが自分の面倒で争うくらいなら、いないほうが幸せか?

登場人物たちの深刻さに比べると、カトケンさんの老人はユーモラスで人懐こくいい人に見えてしまうのが少し疑問。
(話が重過ぎないように、故意にそうしたのだろうが)

作り方によっては、アラモ砦という名の養護施設との戦いに挑む老人の話として、こっけいにも作れるかなとも思った。

何より、最後のせりふが重い。

ネタバレBOX

終盤に向けて、もしかしたら話がまとまりそうになる展開(伏線もあって)に、そうなってほしいような気もしながら、そんなうまくいくような安易な話にしてほしくない!とも思って、妙にハラハラどきどきしてしまった。
つばき、時跳び

つばき、時跳び

明治座

明治座(東京都)

2010/08/11 (水) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

キャラメルボックス印のタイムトラベル+幕末物=時を越えた爽快なハートウォーミング・ラブストーリー。
演劇集団キャラメルボックスのクロノスシリーズの原作者・梶尾真治による原作を、キャラメルの成井豊が脚本・演出した、キャラメルボックス印のタイムトラベル+幕末物=時を越えた爽快なハートウォーミング・ラブストーリー。
原作を読んだ成井さんがキャラメルで上演しようと申し入れたとき、タッチの差で明治座さんの上演に決まってしまったのですが、結局成井さんの作・演出になったそうです。
明治座8月公演ということで、55分×三幕+(30分+25分休憩)という明治座フォーマットで、十分にゆったりと劇世界に浸って楽しみました。

福田沙紀さんは、恋にも武道にもまっすぐな武家の娘を、まさにストレートに好演。
スーパー戦隊OB永井大さんも、まっすぐな現代の青年。
この二人の爽やかさが心地良い。
ほかの出演者もバラエティ豊かで、そしてさらに脇をキャラメルボックスの中堅どころ?がしっかり固めていた感じ。
明治座クラスの劇場ならではの、大掛かりな回り舞台も大活躍。

タイムトラベルに熊本と幕末をうまく絡めて、過去の人間は現代に、また、現代の人間も過去の世界に行って両者が両方の世界で活躍するという、広がりのある展開。
そしてタイムトラベルもののラストにありがちな、センチメンタルな恋の終わり方などではなく、あくまでも爽快なエンディングもまた気持ちいい。

まさに、キャラメルボックスの特別作品といった感じの1本でした。

W〜ダブル

W〜ダブル

キューブ

ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)

2010/08/17 (火) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

大どんでん返しとストーリー展開で変わっていく演技、見ごたえある俳優、セリフの応酬を楽しむ 「罠」のトマ脚本。
やっと来た!大好きなのに非常に少ない推理劇。
サスペンス・ミステリー・ストレートプレイです。
年に数本しかないうえに、その半分以上が1,2年のうちの再演で(トマの「罠」とか、「マウストラップ」「ブラックコーヒー」とか)、なかなか未見の作品にはありつけません。
本作は「罠」や「8人の女」のロベール・トマの脚本。
“フランスのヒッチコック”と言われる人です。

「罠」は観たので、同じ作者の本ということを考えながら先を予想しながら観ていたのですが、よく考えると同じパターンかな、とも?
漢字をネタにしたセリフが4,5回くらい?ありましたが、フランスの話のつもりで観ているので、ちょっとそぐわない感じで残念。

それより出演者がお気に入りの人ばかりでうれしい。
橋本さとしさんの一人二役はかっこよく弟役も可笑しくて。
出ずっぱりで話の中心になる中越典子さんは変わらずうまいです
状況の変化に従って気持が揺れ動いていく、突発的な問題にめげそうになりながらも強い意志を持って進んでいくように変わっていく様子が、非常に自然に演じられてます。
これまた上手いのが堀内敬子さん。特に前半は、ユーモラスな演技で、中越さんとの掛け合いも楽しく、話を引っ張っています。
山西惇さんも真面目そうだったりしたたかだったり。
そして、リリパッドアーミーIIのコング桑田さん、パッフレット写真のカッコイイこと。
警察署長は、ごくごく普通ですが、要になる重要な役だと思います。
(でも数回軽く噛んでたのが…)

俳優さんたちの様々な演技、数多いセリフを楽しみました。

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