海まで100年
スヌーヌー
象の鼻テラス(神奈川県)
2024/12/11 (水) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
笠木泉さんのユニット「スヌーヌー」の新作公演。近年の笠木さんは演出家として作品に携わる機会も増え、スヌーヌーの活動にも一層注目が集まっています。会場が横浜の「象の鼻テラス」であることも注目ポイント。海の見える、劇場とは一風異なる開放的な空間で上演され、会場自体が作品世界の構築へ作用していました。
「避難」「七人の部長」
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
青年劇場スタジオ結(YUI) (東京都)
2024/12/11 (水) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
リーディング形式の2本立て公演。どちらも高校演劇のコンクール参加作品で、60分以内の作品として創作されている。ステージ上の椅子に座り、台本を持ち、時に動いたり歩いたりするスタイル。
病室
劇団普通
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2024/12/06 (金) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇団普通の代表作(と思う)『病室』の再演で、会場は前回上演と同じ三鷹市芸術文化センター。全編茨城弁で語られる会話劇は、全体的にとても静かで、登場人物たちの背景が少しずつ浮かび上がる。
星降る教室
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2024/12/07 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
吉田小夏が2016年に書き下ろしたラジオドラマ脚本を朗読劇に仕立て、劇団初の「クリスマス公演」として上演。これまで「青色文庫」として朗読劇の上演経験も豊富にあり、安心して没入できる朗読劇でした。青☆組らしい、人の温もりを感じる、冬の一夜にほっとできる公演と言えるでしょう。
LifeとWork
ぺぺぺの会
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2024/11/27 (水) ~ 2024/12/02 (月)公演終了
実演鑑賞
「ぺぺぺの会」と「いいへんじ」という2団体による合同公演。1団体3名×2で、6名の俳優による一人芝居。ぺぺぺの会は普段から作・演出を担当する宮澤大和が3作を手掛け、いいへんじは3名それぞれが「作・演出・出演」を担う。結果、俳優それぞれの個性が反映されつつ、同時に団体の個性も反映された企画になったのでは(ただし6作全部観ていないため、想像も含みます)。6名の出演俳優のことを知る、俳優のことを好きになる契機になり得る公演だと感じました。
たずね先
ワワフラミンゴ
プーク人形劇場(東京都)
2024/11/28 (木) ~ 2024/12/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ワワフラミンゴ×プーク人形劇場。この情報だけでかなり興味をそそられて、楽しみに劇場へ伺いました。プークは、入り口やロビー、劇場内の木製の椅子が醸す雰囲気など、個人的に好きな劇場。ワワフラの世界観とマッチする劇場だと思っています。上演自体も、劇場の機構を積極的に取り入れたりと、「ここで表現すること」を意識されたものに感じられました。
害悪
果てとチーク
座・高円寺1(東京都)
2024/11/22 (金) ~ 2024/11/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
戯曲は(おそらく)三度目の上演で、団体のキャリアから考えると上演機会多め。自信作なのだろうと想像するし、実際に、団体の特性や活動意義を反映させた力作だと感じます。同時に、より広い観客層に響き得るというか、適切な言葉ではないかもしれないが、ポップな作品、間口の広い作品に感じられました。集客状況も良く、あらゆる意味で、団体の今後の可能性を感じる公演でした。
ビッグ虚無
コンプソンズ
駅前劇場(東京都)
2024/10/16 (水) ~ 2024/10/20 (日)公演終了
実演鑑賞
タイトルの『ビッグ虚無』が正に言い得て妙で、持て余すほどの巨大な虚無とどう向き合うか? つうか向き合えないからビッグ虚無じゃん!! という絶望の果てを描いているように感じられました。序盤は物語もあって、その筋が進んだり寄り道したりしつつ、徐々に世界が破綻していく。中盤から終盤にかけてずっと悪夢的な展開が続き、不条理であり、夢想的であり、その結末が幸福へ向かうはずもなく、崩壊的なラストを迎える。ただ、それが「つまらない」という感想ではなく、この世界観、この文体でしか描けない現代が必ずある。と思いました。
アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国
お布団
アトリエ春風舎(東京都)
2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了
実演鑑賞
紀元前に書かれた戯曲、そして第二次大戦後にブレヒトが改作した戯曲、そして2016年にお布団の得地弘基によって書かれた戯曲と、長きに渡り紡がれ続ける『アンティゴネ』の物語ーーと言えるかもしれない。近年の演劇界では、こういう「時間軸を超えて複数作家によって描かれた一作」の上演も見かけられる。これもまた、演劇の魅力と言えるかも。
ギリシャ悲劇の『アンティゴネ』を基点に、20世紀、そして21世紀へと受け継がれた、暴力、そして戦争について。
THE STUBBORNS
THE ROB CARLTON
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
京都を拠点に活動する団体で、僕は初見。ただ、噂は耳にしていて、一度観てみたいと長く思っていた団体さんでした。ボタンのかけ違いや勘違いで笑いが起こる、王道タイプのシチュエーションコメディ。理屈っぽい台詞の掛け合いはコメディ愛好者に好かれそうな作風で、これから東京でも注目を集めそう。僕は好きです。
The Human Condition
人間の条件
テルプシコール(TERPSICHORE)(東京都)
2024/09/25 (水) ~ 2024/09/30 (月)公演終了
実演鑑賞
公演概要などは作品ページを読んで頂けたらお分かりになると思いますが、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件をモチーフにした作品です。非常に、非常に残忍な事件であり、報道されたニュースの記憶を辿ったり、(いま実際にWikipediaを読んだのですが)事件について調べたりするだけで心の落ち込みが尋常ではなく、観客にとって受けとめることが困難な一作と言えるでしょう。観劇だけでこのショックですから、創作サイドに立っていた公演関係者各位は、さぞ大きな負荷と対峙されたと想像します。そして、事件を「特異」なものとして取り扱うのではなく、「私たちの問題」として向き合うことを前提に、今作を創作し上演する意味は大きいと考えます。
三人吉三廓初買
木ノ下歌舞伎
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2024/09/15 (日) ~ 2024/09/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
良い意味で、キノカブ初見の方を含め、様々な観客を招こうとし、実際に招いている公演ではないかと感じました。休憩込みで5時間20分の三幕もの。食事や軽食の機会を設け、丁寧かつ内容充実の観劇パンフレットを配布し、幕見席チケットも用意。そして、目や耳の不自由な方へ向けた音声ガイドやポータブル字幕機の提供など、あらゆる点で観劇環境が整備され、「今日は1日プレイハウスで歌舞伎鑑賞に浸ろう」という気持ちになります。上演も、現代演劇や小劇場が好きな方も、歌舞伎が好きな方も、共に没入できる内容に仕上がっていたと思います。
リビングルームのメタモルフォーシス
Precog
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/09/20 (金) ~ 2024/09/29 (日)公演終了
実演鑑賞
今年6月に観劇した『消しゴム山』に通じるコンセプチュアルな一作に感じられました。ロジカルかつ未来志向的な演劇実験作。この「実験(実証)」要素が、観客である受け手によって評価の分かれるところだと思います。当日パンフレットやホームページなどに記載されたテキストを読み、創作プロセスなどをある程度頭に入れた上で「…なるほど」と理解の手掛かりを得られる。その難解さが存在することは事実でしょう。ただ、モチーフとして描かれる物語はロジカルに構成され合点のいくものだし、俳優が紡ぎ出すシーンからも大いに刺激を受ける。今作は音楽劇なので、もちろん音楽そのものや、劇中での存在の仕方も興味深い。結果的に演劇的なカタルシスというか、観劇後の満足感が観客の心身にしっかり残る。難解だけどある意味明瞭でもある、でも一人で読み解き理解するのはハードルが高い。だからこそ誰かと語り合いたい作品と言えるかもしれません。
もうひとつイメージしたのは、近年の岡田さんの創作への興味・関心が、これからの社会基盤にフィットする「新しい価値規範」の模索にあるのではないか?ということ。短期間で解答を導き出せる取り組みではないからこそ、岡田さんの作品には常に実験が組み込まれていると感じます。
来てけつかるべき新世界
ヨーロッパ企画
本多劇場(東京都)
2024/09/19 (木) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
2016年初演で岸田國士戯曲賞受賞作品を8年ぶりに再演。ヨーロッパ企画は再演する演目を厳選している印象があるので、この再演も団体にとって意味あるものと推測できます。出演者に変更はあるものの、舞台セットや劇構造は初演を継承しており、良い意味で「メモリアルな演目を再び上演する」ツアー公演なのかも。客席の受け方は、さすがヨーロッパ企画という安定感がありました。
バード・バーダー・バーデスト
南極ゴジラ
すみだパークシアター倉(東京都)
2024/09/19 (木) ~ 2024/09/23 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
素直に「いい狙いどころだなぁ」と感じました。生演奏ありの学園青春群像劇。けれど登場するのは肉食、草食など各種恐竜たち。学園ものなので、生徒たちの日常、冒険(修学旅行)、感情のすれ違い、未来、等々を描いていて、内容盛り沢山。全体を整えるバランス感覚もよく、演出家が各所へ目を光らせているのだろうなぁ、と想像しました。
バサラオ
劇団☆新感線
明治座(東京都)
2024/08/12 (月) ~ 2024/09/26 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
上演時間は休憩込みで3時間半強。たっぷり魅せて満足感高しの「新感線的王道」をひた走る公演だと感じました。新感線の魅力は、物語、演出、音楽、俳優、殺陣、外連味、熱量などの要素をひたすら合体させて創りあげる「巨大合体ロボ」的なものだと考えているのですが、今作はそれらがガッチリ噛み合う総合力の高さがうかがえました。「さすが新感線」と言いたいです。
三ノ輪の三姉妹
かるがも団地
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2024/08/31 (土) ~ 2024/09/08 (日)公演終了
実演鑑賞
タイトル通り「三姉妹」のお話であり、三姉妹含む家族の物語。章立てしてあり、一人ずつ人物を描いていき、終章で全体をまとめあげる構成。家族の人物相関が描かれる群像劇で、ねじれた糸の塊が少しずつ紐解けていき、登場人物の内面や物語の全容が明らかになっていく。
ガチゲキ!!復活前年祭
『ガチゲキ!!』実行委員会
アトリエ春風舎(東京都)
2024/08/08 (木) ~ 2024/08/18 (日)公演終了
実演鑑賞
三人の劇作家、三つの団体によるオムニバス企画公演。1回で3作分の短編(ダイジェスト版だったりアナザーストーリーだったり)が観劇できる上演と、1作ずつ観られる上演があり、観客それぞれがタイムスケジュールを組むことが可能。会場はアトリエ春風舎。三団体共通のテーマは「月9」。こういうテーマ設定はやや珍しいかも。
邦子狂詩曲 クニコラプソディー
東京芸術劇場/ヨウ+
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/08/09 (金) ~ 2024/08/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ダンス公演で意外と例が少ないのが「テキストを多用するダンス公演」で、今作はそれに類する一作だと感じました。物語性は勿論のこと、モノローグやダイアローグを用いつつシーンを展開するダンス。上演は2作品からなる連続上演(休憩アリ)で、前半と後半でアプローチが異なる点も興味深かったです。前半はテキストと身体表現の二重奏のような、後半はそこに更に音楽、映像、視覚的なアイディアなどを取り入れ、舞台表現の総合力を提示した、という印象。遊び心も感じられる、全体的に伝わりやすい公演だと思いました。
はやくぜんぶおわってしまえ
果てとチーク
アトリエ春風舎(東京都)
2024/08/01 (木) ~ 2024/08/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
昨年上演された作品が早くも再演、とのこと。僕は初見でした。タイトルから連想するのは「我慢を強いられていることへの耐え難き怒り」で、それを思うだけでも胸が痛い。
舞台は、私立の女子校(中高一貫校?)の教室。放課後を過ごす五人の生徒と一人の教師による会話劇。校内のイベント「ミス・ミスターコンテスト」が突如中止になり、その話題と、生徒たちの日常を綴りつつ物語は進んでいく。