園田喬しの観てきた!クチコミ一覧

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キロキロ

キロキロ

ストスパ

「劇」小劇場(東京都)

2025/02/12 (水) ~ 2025/02/16 (日)公演終了

実演鑑賞

高校の同級生が結婚し、式を終えた出席者たちが二次会としてカラオケボックスに集う。そのカラオケボックスで働いている主人公も同じ高校出身で、実は同級生のひとり。案内状は実家に届いたのか、主人公は式の存在を知らず、結婚の事実も知らなかった。35歳を迎えた登場人物たちは、各々の生活事情を抱え、それぞれの「人生の岐路」を意識せざるを得ない状況に陥っていた。

ネタバレBOX

そんな二次会に集う同級生たちの群像劇。人間には「岐路」と称されるタイミングが何度か訪れるが、35歳はそのひとつと言えるだろうし、登場人物たちの悩みや葛藤は、観客が感情移入しやすい要素かもしれない。ただ、これは個人的な感想だが、劇中にはエネルギッシュな大振りの表現が多く、それに圧倒されているうちに、なんとなく物語の流れに乗り損なってしまったことが残念だった。
CHAiroiPLIN FES 2025

CHAiroiPLIN FES 2025

CHAiroiPLIN

本多劇場(東京都)

2025/02/06 (木) ~ 2025/02/16 (日)公演終了

実演鑑賞

太宰治作品をモチーフにした、おどる小説シリーズの『ERROR』の再演版。僕は初演も観ていて、おそらく初演時にも似た感想を抱いたと思うのですが、ダンス作品でありながら強くストーリー性を感じる一作でした。朗読した記録音声を「聴く小説」と称するように、今作は正に「おどる小説」だと思います。

ネタバレBOX

太宰治の『人間失格』と短編『失敗園』を土台に創作されたそうで、登場人物たちが野菜や植物などに置き換えられ、育成・成長などの「失敗の過程」を語ります。印象的なのは、舞台中央に吊るされた長いポール。劇が進行する度に登場する小道具などをポールに吊るしていき、その「バランス」こそが重要と語ります。生きていく過程で得た経験を自身に蓄積していき、それらの要素が複雑に絡み合い構成されていくのが人生だとすると、それを簡略化し視覚化したものと言えるのかも。踊るシーンも多くダンス作品であることは間違いないが、それ以上に「小説の舞台化」というイメージで観劇しました。
GOTTANI!!!

GOTTANI!!!

CHAiroiPLIN

本多劇場(東京都)

2025/02/09 (日) ~ 2025/02/09 (日)公演終了

実演鑑賞

本多劇場で観るCHAiroiPLIN。公演期間中に既成作・新作を織り交ぜた短編集を一日限定上演。「ごった煮」と言いつつも、統一感のあるラインナップだと感じましたし、団体の特性なども見えやすかったと思います。

ネタバレBOX

既成作ふたつと新作ひとつ、合計3作のラインナップ。上演の合間に映像で団体の活動歴を流すのですが、それぞれの会場、作品名、受賞歴などが時系列で紹介され、改めて「しっかりした活動実績をもつ団体」だと感じました。社会性を帯びたモチーフの作品、群舞で魅せるスポーティな作品、短編小説を原作とした都会的で幻想的な作品、等々、多彩な創作を展開しつつ、どこか統一感も感じさせる構成でした。
「No Woman, No Cry」

「No Woman, No Cry」

ROCKSTAR有限会社

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

前回公演で好評だった「DJスタイル」を取り入れたコンドルズの新作公演。会場も同じスペース・ゼロで、空間の作り方もほぼ同じ。勝手な想像ですが、カンパニー自体がこのフォーマットに手応えを感じており、その土台作りや発展型を意図しているような気がします。ラジオDJとして実績もあり、しかも声質もとても良い(←これは個人の感想ですが)勝山さんがDJ役を担い、ダンス、パフォーマンス、映像などの合間にDJとして進行したり喋ったりするスタイル。

ネタバレBOX

個人的にこのスタイルはカンパニーと相性バッチリだと感じていて、複数の多様なパフォーマンスを組み合わせる構成の中に「トーク・進行」というポジションが加わることで、ライブ体験としてより自然で親しみやすくなっています。会場で募集した川柳を発表するコーナーはラジオの公開収録のような一体感がありました。ダンス公演としてのキレ・見せ所を近藤さんが要所要所でしっかり締め、全体のバランスも良いように感じます。コンドルズが長年活動してきた実績や経験値がしっかりフィードバックされ、更に尚新たな発見を模索し続ける様子は、さすがコンドルズ、という印象です。
逆VUCAより愛をこめて

逆VUCAより愛をこめて

劇団スポーツ

駅前劇場(東京都)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ステージ上を主に三分割し、現在、未来、そして未来視?のような、未来の要所要所が見える状態を行き来しながら展開する時間軸コメディ。みたいな印象を受けました。満員状態の会場を、劇の序盤からしっかり掴み、笑いが起こるポイントでドン!と笑いを起こす様子は、この劇団の成長と実績の証のように感じられ、頼もしく思いました。

ネタバレBOX

アイディアの源泉を時間軸にしたコメディで、未来の様子が見えること、そして、バッドエンディングを回避しようと右往左往しながらタイムリープのような状態を繰り返すこと、それらが笑いの基点になっています。フレーズやネタで笑わせるのではなく、お客さんと共有できる「困った状況」を作り、そこにツッコミを入れたり絡んだりすることで笑いを起こしていたので、ライブ感、グルーヴ感を意識したアプローチだと思いますし、演劇的な笑いだと感じました。劇団員3名が「お笑いトリオ」という設定で、息の合った掛け合いは観ていて安定感がありました。
消失

消失

キューブ

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2025/01/18 (土) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

KERAさん既成戯曲を、招へいした演出家がそれぞれ手掛けるシリーズ「KERA CROSS」の第六弾。『消失』は個人的に大好きな一作で、過去の思い入れなしに語ることは難しいのですが…、戯曲の魅力と出演俳優の魅力に引っ張られ、最後まで集中して観劇できました。どこか異国のような、でも現代に通じるような不思議な世界観で、会話で魅せるSF悲喜劇。

ネタバレBOX

早くに両親が離婚し、二人で助け合いながら生きてきた四十代の兄弟を中心に、彼らの家に引き寄せられる人々の会話劇。クリスマス前夜から大晦日までの時間軸で、暖炉を囲むようなシックな屋内セットもどこか異国情緒がある。前半のゆったりした家族ドラマ調の物語と、後半の人間関係が破綻していく悲劇的な物語のギャップが観客を惹きつける。やはり、この戯曲が描く世界が抜群に面白いです。物語の中心的な存在である兄弟を、藤井隆さんと入野自由さんが演じていて、その姿も印象的でした。
きみはともだち

きみはともだち

果てとチーク

アトリエ春風舎(東京都)

2025/01/16 (木) ~ 2025/01/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

女子校の教室を舞台にした『はやくぜんぶおわってしまえ』の続編にあたり、前作より10年後の世界を描いている。この団体の強い問題意識が反映された前作、そして続編であり、性的マイノリティとの向き合い方、これからどう思考を続けていくべきか? など、観劇後の観客が考えるべきことは多い。今作の創作は心身への負荷が容易に想像できるため、創作に関わった皆さんには、どうかご自愛して欲しい。

ネタバレBOX

テーマのひとつに「人間関係の分かり合えなさ」があると思うが、人間が生きていると、何度かこの絶望に打ちのめされる。何度か、ならマシかもしれず、何十、何百と経験する人もいるだろう。この絶望を、極めてドライに、客観的に、描いているシーンが複数あり、客席から観ると痛々しいとすら思える描写に、団体が演劇表現と向き合う「本気度」を感じる。この本気度も、上演作品や団体の特徴のひとつと言えます。
おもいだすまでまっていて【東京公演】

おもいだすまでまっていて【東京公演】

Pityman

シアター711(東京都)

2025/01/16 (木) ~ 2025/01/21 (火)公演終了

実演鑑賞

広島県出身の作・演出家が全編広島弁で綴る一作。高齢の母と、その娘姉妹の三人を中心とした家族の物語(傲慢な兄も少し出てくる)。姉妹が十代だった頃の話、大人になった姉妹と高齢の母の三人で東京旅行へ出掛けた話、認知症の傾向が見られる母と、その母を介護する娘、主にこれらの時間軸を行き来しながら物語は進んでいく。

ネタバレBOX

全編を通して起伏の激しいエピソードは少なく、日常的な出来事が広島弁で淡々と綴られていく。母親と姉妹の感情的なぶつかり合いは見られるものの、そのやりとりもどこか人間的な熱量を持ち、悪意なく受け止めることができる。個人的に、こういう「淡々とした時間」を描いた物語は好きなので、興味を持って観劇できた。
何時までも果てしなく続く冒険

何時までも果てしなく続く冒険

ヌトミック

吉祥寺シアター(東京都)

2025/01/17 (金) ~ 2025/01/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ギター、ドラム、シンセサイザーの3名による生演奏と、出演俳優たちによる音楽劇。演劇的なアプローチと音楽的なアプローチが並列にあり、どちらかが主ではなく、演劇と音楽の「共演」のような印象を受けた。それでいて、ここぞ!というシーンではバッチリ音楽が活きる構成になっていて、そういう創作自体がこのカンパニーの強みであり、大きな特徴だと感じた。

ネタバレBOX

11年前の某日。一人の女性が新宿のビルから落下した。その出来事にまつわる人々の「記憶」を辿る物語。現場近くに居合わせた人、姉妹、友人、etc…。物語性と音楽性が併走するような音楽劇で、全体の構成も譜面を書くような感覚なのかな?と想像。そういう意味でも珍しいスタンスの創作であり、その創作プロセスを紐解くことにも興味が湧いてくる。個人的には「現代東京」のような同時代性も感じ、東京に暮らす観客には、より共有できる感覚を放つ作品だと思いました。
『Another side of RK』

『Another side of RK』

セッションハウス

神楽坂セッションハウス(東京都)

2025/01/11 (土) ~ 2025/01/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

セッションハウスで長く活動する近藤良平のダンスソロ公演。「ソロ」ではあるけれど、近藤の「分身」というコンセプトで複数のダンサーが共演し、更に実の娘も参加する「ダンスソロ」。近藤さんのダンスシーンをたっぷり堪能し、新年から近藤良平が持つ唯一無二の魅力を実感しました。

ネタバレBOX

過去公演のソロダンスも取り入れ、近藤が共演者を引っ張ったり、共演者が近藤の「らしさ」を再現するなど、近藤良平の魅力にスポットを当てた構成。上演時間は約70分だが、時間以上に近藤の身体を堪能することができる。ユーモアも、独特の間も、キレのある身体も、全てが近藤良平らしい。観る人を強烈に惹きつけるのに、極めて自然体で、ダンサーと観客の間に垣根がない。共演ダンサーたちも目を引く人が多く、「近藤の分身」というコンセプトも納得できたし、チーム全体のまとまりもよく、公演そのものを楽しむことができた。
海まで100年

海まで100年

スヌーヌー

象の鼻テラス(神奈川県)

2024/12/11 (水) ~ 2024/12/15 (日)公演終了

実演鑑賞

笠木泉さんのユニット「スヌーヌー」の新作公演。近年の笠木さんは演出家として作品に携わる機会も増え、スヌーヌーの活動にも一層注目が集まっています。会場が横浜の「象の鼻テラス」であることも注目ポイント。海の見える、劇場とは一風異なる開放的な空間で上演され、会場自体が作品世界の構築へ作用していました。

ネタバレBOX

三人の出演者たちが、それぞれ演じる登場人物たちの日常・近況をモノローグで語る。ある登場人物は独立的に、また、ある登場人物は同じ環境で、それぞれ物語は進行し、現代社会の不安定な日常や人々の心情を吐露する。モノローグが多いこともあり、台詞たちは詩的な響きを持ち、具象と抽象の混ざり具合が印象的だった。物語は、ある登場人物の生まれ故郷へ帰結し、作者である笠木さんのルーツとクロスオーバーする。スヌーヌー作品=笠木さんであることを再認識する観劇体験でした。
「避難」「七人の部長」

「避難」「七人の部長」

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

青年劇場スタジオ結(YUI) (東京都)

2024/12/11 (水) ~ 2024/12/15 (日)公演終了

実演鑑賞

リーディング形式の2本立て公演。どちらも高校演劇のコンクール参加作品で、60分以内の作品として創作されている。ステージ上の椅子に座り、台本を持ち、時に動いたり歩いたりするスタイル。

ネタバレBOX

どちらも「高校」を舞台設定にした物語で、登場人物たちも高校生。『避難』は、自主映画創作を通じて仲良くなった高校生女子二人が、ひょんなことからすれ違う心の機微を描く。『七人の部長』は、部活動の予算会議に出席した各部長七名が、部費の金額差をめぐって舌戦を繰り広げ、結果的に互いの部活動への関心を深めるコメディベースの作品。両作ともコンクールで高い評価を受け、現在も上演機会の多い作品とのこと。
病室

病室

劇団普通

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2024/12/06 (金) ~ 2024/12/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇団普通の代表作(と思う)『病室』の再演で、会場は前回上演と同じ三鷹市芸術文化センター。全編茨城弁で語られる会話劇は、全体的にとても静かで、登場人物たちの背景が少しずつ浮かび上がる。

ネタバレBOX

とある病室に4人の男性患者が入院している。病状、家族関係などはバラバラで、それぞれが悩みや葛藤などを抱え、静かに治療・療養している。会話は全編茨城弁で語られ、方言特有の語気の強さや心情の表出などが特徴的。

静かな設定とのギャップから生まれる笑いなどもあり、緊張をほぐしながら観劇できる。病気そのものを含む、各患者たちとその家族が織りなす、それぞれの人生模様に惹きつけられる。僕自身が茨城県出身ということもあり、興味の尽きない作品&劇団です。

数年前に再演を観た際は、感想として家父長制への嫌悪感を強く抱きましたが、今回の上演では、父親世代の悲哀も感じられ、より深い観劇体験となりました。
星降る教室

星降る教室

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2024/12/07 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了

実演鑑賞

吉田小夏が2016年に書き下ろしたラジオドラマ脚本を朗読劇に仕立て、劇団初の「クリスマス公演」として上演。これまで「青色文庫」として朗読劇の上演経験も豊富にあり、安心して没入できる朗読劇でした。青☆組らしい、人の温もりを感じる、冬の一夜にほっとできる公演と言えるでしょう。

ネタバレBOX

ラジオドラマ脚本を提供する際のレギュレーションが「宮沢賢治へのオマージュ」だったそうで、直接的な原作を持たないものの、作品世界のあちこちから宮沢賢治へのリスペクトを感じることができます。吉田小夏自身も幼少期から宮沢作品のファンだったそうです。起点がラジオドラマだったこともあり、俳優の発話や劇中の効果音など、音の響き、伝播を意識した創作に感じられました。アトリエ春風舎の小さな空間で、ステージと客席の間で共鳴するような上演だったと思います。
LifeとWork

LifeとWork

ぺぺぺの会

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2024/11/27 (水) ~ 2024/12/02 (月)公演終了

実演鑑賞

「ぺぺぺの会」と「いいへんじ」という2団体による合同公演。1団体3名×2で、6名の俳優による一人芝居。ぺぺぺの会は普段から作・演出を担当する宮澤大和が3作を手掛け、いいへんじは3名それぞれが「作・演出・出演」を担う。結果、俳優それぞれの個性が反映されつつ、同時に団体の個性も反映された企画になったのでは(ただし6作全部観ていないため、想像も含みます)。6名の出演俳優のことを知る、俳優のことを好きになる契機になり得る公演だと感じました。

ネタバレBOX

観劇したのはAチームとCチーム。前述のとおり、一人芝居を「作・演出・出演」スタイルで創作したいいへんじと、「作・演出と出演」の二人三脚スタイルで創作したぺぺぺの会で、それぞれの団体の持つ個性が発揮されたと思う。このふたつのスタイルで創作過程や内容に変化が生まれるのは想像しやすい。LifeとWorkというテーマ、そして一人芝居というフォーマットなので、自身の日常と日々の内情を独白するような短編になるが、それぞれアプローチが異なり、その差異が作品の外郭になっていた。そして、LifeとWorkをどう解釈するか? も作品や出演俳優それぞれの根幹に関わってくるため、それらの捉え方も興味深かった。
たずね先

たずね先

ワワフラミンゴ

プーク人形劇場(東京都)

2024/11/28 (木) ~ 2024/12/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ワワフラミンゴ×プーク人形劇場。この情報だけでかなり興味をそそられて、楽しみに劇場へ伺いました。プークは、入り口やロビー、劇場内の木製の椅子が醸す雰囲気など、個人的に好きな劇場。ワワフラの世界観とマッチする劇場だと思っています。上演自体も、劇場の機構を積極的に取り入れたりと、「ここで表現すること」を意識されたものに感じられました。

ネタバレBOX

台詞の不条理さや可笑しみなどはいつものワワフラらしさに溢れ、淡々としたやりとりなのに感情豊か。どことなく児童詩というか、絵本や詩の様相が多めに感じられました。もしかすると場所を意識されたのかも。また、照明のあてかたなど、風景の陰影にもこだわっているようにも。アトリエなど、劇場以外での上演機会の多い団体なので、「劇場版ワワフラ」の魅力が目立っていたと思います。
害悪

害悪

果てとチーク

座・高円寺1(東京都)

2024/11/22 (金) ~ 2024/11/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

戯曲は(おそらく)三度目の上演で、団体のキャリアから考えると上演機会多め。自信作なのだろうと想像するし、実際に、団体の特性や活動意義を反映させた力作だと感じます。同時に、より広い観客層に響き得るというか、適切な言葉ではないかもしれないが、ポップな作品、間口の広い作品に感じられました。集客状況も良く、あらゆる意味で、団体の今後の可能性を感じる公演でした。

ネタバレBOX

現在より人工知能が発達し、AIによる統治が可能になった架空の近未来。仮想空間で行われる「第三次世界大戦」が長期化し、人々は今も戦時下を暮らしている。日常生活に戦争の色合いはさほど濃くないものの、出兵、戦闘行為、戦死などの状況が、身近に忍び寄っていた。

登場人物たちは、それぞれの関係性で「戦争」と関わりを持ち、日々の生活を送りつつ、戦争の影響を少なからず受けていた。ただでさえ生きづらい世の中なのに、そこに戦争が加わることで、更に混沌や絶望に苛まれる登場人物たち。

戦争をテーマにしつつ、論点をそこだけに集約せず、様々な社会の縮図を取り入れた戯曲に感じられ、間口の広い作品だと思う。描かれる世界観も、使用される現代口語も、共に若い人へ届き得る共感性を有していて、そういう点も興味深かった。そして何より、若き作家が渾身の力を込める、加害性への自問や社会への鬱憤、どうしても拭えない絶望感など、作家の本気が伝わってくる一作でした。
ビッグ虚無

ビッグ虚無

コンプソンズ

駅前劇場(東京都)

2024/10/16 (水) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

タイトルの『ビッグ虚無』が正に言い得て妙で、持て余すほどの巨大な虚無とどう向き合うか? つうか向き合えないからビッグ虚無じゃん!! という絶望の果てを描いているように感じられました。序盤は物語もあって、その筋が進んだり寄り道したりしつつ、徐々に世界が破綻していく。中盤から終盤にかけてずっと悪夢的な展開が続き、不条理であり、夢想的であり、その結末が幸福へ向かうはずもなく、崩壊的なラストを迎える。ただ、それが「つまらない」という感想ではなく、この世界観、この文体でしか描けない現代が必ずある。と思いました。

ネタバレBOX

舞台は、とあるハプニングバー。複数人の男女が集い、双方同意のもと性行為をする。登場人物たちの背景や人となりが徐々に見えてきた頃、先にプレイルームにいた男女が突如消えてしまう(SF的要因で消え去った?連れ去られた?)。消えた男性の妻は、唯一の手掛かりであるハプニングバーに就業し、男性の行方を探そうとする…。

作風の特徴は、ギャグなどの笑いのシーンがしっかり挿入されている点や、サブカル、ネットミーム、時事ネタ、社会問題などが取り込まれ、笑い、シリアス、両面で活かされている点、熱量でグイグイ押し進めるシーン展開、などでしょうか。90年代以降の小劇場(下北と言い換えても良いかも)シーンからの影響も感じ取れます。個人的には、堀靖明さんが出演していることもありMCRっぽさも感じました。
アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

紀元前に書かれた戯曲、そして第二次大戦後にブレヒトが改作した戯曲、そして2016年にお布団の得地弘基によって書かれた戯曲と、長きに渡り紡がれ続ける『アンティゴネ』の物語ーーと言えるかもしれない。近年の演劇界では、こういう「時間軸を超えて複数作家によって描かれた一作」の上演も見かけられる。これもまた、演劇の魅力と言えるかも。

ギリシャ悲劇の『アンティゴネ』を基点に、20世紀、そして21世紀へと受け継がれた、暴力、そして戦争について。

ネタバレBOX

劇中に登場する、とある姉妹が受ける暴力と、その背景にある権力情勢、更に戦争など、直接的な描き方で「人が人へ与える暴力性」を描いている…と感じました。裏を返せば、その暴力から離れる為には?について想像する機会に繋がるかもしれません。劇の内容自体は残忍さが含まれたシーンもあるけれど、見え方は割とドライで、客観的とも言えます。ゲームや音楽など、現代的なモチーフを取り入れたシーンも多く、古代ギリシャから令和の日本まで、長い時間軸を繋げて融合する創作に見えました。
THE STUBBORNS

THE STUBBORNS

THE ROB CARLTON

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

京都を拠点に活動する団体で、僕は初見。ただ、噂は耳にしていて、一度観てみたいと長く思っていた団体さんでした。ボタンのかけ違いや勘違いで笑いが起こる、王道タイプのシチュエーションコメディ。理屈っぽい台詞の掛け合いはコメディ愛好者に好かれそうな作風で、これから東京でも注目を集めそう。僕は好きです。

ネタバレBOX

三人の登場人物は、それぞれ母国語以外の言語でコミュニケーションをとり、三名全員がその「言語」に精通している訳ではない。なので、時々「意味のすり合わせ」が必要となる。三名は(おそらく)大きなビジネスチャンスを抱えており、大事な会議の前哨戦として前日夜に集まった。この席で、日本語の同音異義語などを取り違え、勘違いが連鎖していく。

前半の「言葉の取り違いを中心とした笑い」はよく構成されており魅力的だったが、後半の回想シーンがやや強引な印象が残り、ちょっと勿体無い気も。ただ、後半をより盛り上げるには説明などが長く必要になり、すると余計に冗長になってしまうのかも。シチュエーションコメディを上手にまとめるのは難しい…と改めて感じた。でも、全体的に良作だと思います。

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