DNA
劇団青年座
シアタートラム(東京都)
2019/08/16 (金) ~ 2019/08/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/16 (金) 19:00
JACROW主宰の中村ノブアキが自劇団以外に初の書き下ろしで青年座に書いた脚本を、宮田景子の演出で上演する、というところを興味深く観た。悪くない。自劇団では社会派と呼ばれ、実話や実在の人物・事件などを描くことが多い中村だが、プログラムで自身も言っているように、家族の問題を入れたあたりは少し珍しい。PC事業部の主任である夫は結婚前の約束に反して子どもを欲しがるのだが、妻は欲しくないと反発する。一方で、会社では若い社員が「限りなく黒に近いグレイ」な処理に不満を述べる…、という物語。会社も妻も一定の落ち着きを見せて終わるのだが、その終わり方は本当に順当なのか、という疑問を(特に家族に)持ってしまうのは私が少しひねくれているのだろうか。役者陣はさすがに青年座と思わせるシッカリした演技力で、巧みに見せてくれる。シリアスな場面でも時折笑いが起こるというのは、演出の力もあるのだと思う。
夢見る喜世子レヴュー
ピストンズ
王子小劇場(東京都)
2019/08/15 (木) ~ 2019/08/18 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/16 (金) 15:00
若いエネルギーは感じる舞台だった。再演だということだが、初演は観てない。戦後のパンパン達の溜り場になっている劇場跡を舞台に、元女優の高級娼婦、という存在を中心に置いた群像劇。軸になるのは高級娼婦の話をする別の娼婦なのだが、個々の娼婦達にも少しずつ焦点を当てるシーンを割り振るなど、細かいエピソード作りは物語に一応のふくらみを与える。ただし、女優陣が可愛過ぎてパンパンのスレタ感触が全く出ていないのが何とも惜しい。使う歌も考証が甘い。
’72年のマトリョーシカ
風雷紡
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2019/08/14 (水) ~ 2019/08/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/15 (木) 19:00
有名な浅間山荘事件を扱った芝居だが、こうくるか!、と思わせる視点の持ち方が吉水の脚本らしいなと思った。人質となった管理人の妻の事件後を中心に、時に回想シーンを混じえる手法はよくあるものだが、大きなフィクションを一つ入れたことで、物語が家族を巡る展開になった。家族というキーワードは近年の風雷紡の一つの軸となっているが、今回も妻の家族と犯人の兄弟(という家族)という2面を持ち、深みある芝居になっていた。事件をリアルタイムに(TVで、だが)見ていた自分にとっても、いろいろと考えさせられる舞台だった。
工場
青年団リンク 世田谷シルク
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/08/13 (火) ~ 2019/08/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/15 (木) 14:00
面白い。動きに特徴のある世田谷シルクにとっては珍しいストレートプレイ。と言っても、動きが目立たないだけで、シルクらしい感触はある。とある「王国」(どう見ても日本にしか見えないのだが)の工場が「外の人」を受け入れることになって起こる混乱や軋轢を描く。ある意味で社会派の芝居とも言えそうなのだが、そこは堀川らしく、ファンタジー的に収束させる。ただし、物語はしっかりある。
ママの恋人
ミュージカル座
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2019/08/07 (水) ~ 2019/08/12 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/12 (月) 12:30
ミュージカル座によるストレート・プレイ。1990年に初演して以来、何回も同劇団で上演されているというコメディを千秋楽に観劇。面白い。瀬戸早妃改め咲嬉がママを演じるというのに興味を持ったが、戯曲が良くできていて、ホンワカする舞台になっていた。恋多き女優とその小学生の娘を取り巻く人々の話だが、タイトルにあるように、娘がストーリーテラーを演じる面もあり、娘りえ役の番場愛理が実年齢で重要な役をしっかり演じていたのは見事だった。
フローズン・ビーチ
KERA CROSS
シアタークリエ(東京都)
2019/07/31 (水) ~ 2019/08/11 (日)公演終了
月がとっても睨むから
Mrs.fictions
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2019/08/03 (土) ~ 2019/08/12 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/04 (日) 19:00
Mrs. fictions らしい「いい芝居」を観せてもらった。江東区が海になってしまった近未来、不幸な事件の加害者と被害者として出会った少女と少年が、20年後に偶然に出会い、周辺の人々もその事件と関わりを持ち…、という設定がなかなか良い。登場人物のキャラクターもある種独特だし、伏線の張り方も巧妙で、最終的にきちんと回収するあたりは、いかにも中島の脚本らしい。本来は1年前の夏に上演する予定だった作品だが、脚本が不十分ということで公演を中止したものを、そのときと同じキャストで上演した。ある意味で理想的な修復作業だが、それができたのは奇跡的と言ってもよいように思う。役者も力量をしっかり表出し、素敵な舞台となっているのだが、日曜の夜の所為かもしれないが空席が目立つのが残念でならない。ちょっと行きにくい劇場ではあるが、是非観てほしいと感じる作品だった。
水の孤独×蝶の哭く空
白狐舎
東京おかっぱちゃんハウス(東京都)
2019/08/02 (金) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/02 (金) 18:30
二人芝居2本立てで50分×2。緊張感ある舞台だった。2作とも、死者が現われて配偶者と語り合う型式。『水の孤独』は東日本大震災で行方不明だった夫の骨が発見されたところで、夫が妻の前に現われる。『蝶の哭く空』は地下鉄サリン事件で20年間植物人間だった妻が死に、葬儀から帰った夫の前に妻が現われる。型式は同じだが、夫婦の愛情を感じる前者と、愛憎を表現する後者の違いは場の空気にも現われ、興味深く観ることができた。
フローズン・ビーチ
KERA CROSS
シアタークリエ(東京都)
2019/07/31 (水) ~ 2019/08/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/01 (木) 18:30
言わずと知れたケラの岸田賞受賞作。やはり戯曲がよく、面白い。2002年のナイロンによる再演を観たが、そのときにケラ自身は本作の再演はこの年が限界と言っていたと思う(2003年が第3幕なので)。それを、KERA CROSS と、演出こそ鈴木裕美だがケラの名前を冠して上演するというのは、実は一種の冒険なのだろう。非常に多くの劇団に上演され、役者・演出等で質が変わってしまう作品だが、初舞台のブルゾンちえみも健闘し、良い舞台になっている。
恋のヴェネチア狂騒曲
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/28 (日) 13:30
勢いで千秋楽に3度目の観劇。前日に観たのと大きな違いはなくて、ただ、何も考えずに笑っていればよいコメディ。無理矢理な終わり方も、古典喜劇だと思うと何故か許せる。
恋のヴェネチア狂騒曲
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/27 (土) 13:30
前楽に2度目の観劇。改めて観てみると、アドリブかのように演じられていた部分も脚本に組み込まれていたのだと分かる。公演期間を通して、役者の連携も一層しっかりしてきて、より面白くなっている。
深情けシスターズ
演劇ユニット「みそじん」
OFF OFFシアター(東京都)
2019/07/24 (水) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/26 (金) 19:30
みそじんらしい「いい話」だった(^_^)v。愛媛の田舎町の銭湯を舞台に、母と銭湯を継いだ姉、東京に出てグラビアアイドルをやってる妹と、銭湯に来る人々の絡み合いを、ニシオカ・ト・ニールが描く。ニシオカの脚本は、流れはスムーズなのに、起伏がしっかりあり、自然な物語となっていて、いつも感心させられる。今回も、登場人物のキャラがきちんと書き分けられているし、役者陣も適役としか言いようのないキャスティングで、役者2人のユニットとは思えない底力を感じる。特に、母親役の矢野の演技には、ホッコリさせられた。
余計なことだが、銭湯の中に張り紙がいっぱいあるのに、開いてる時間の掲示がないのは、やや違和感がある。あれば、姉がどんなに長い時間働いているかが、分かりやすいのに、と思った。
古~inishie~
エヌオーフォー No.4
シアターサンモール(東京都)
2019/07/24 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/25 (木) 19:00
初見のユニットだが、小野寺ずるが出るので観に行った。シンプルに面白かった。10周年記念公演を前に空中分解した劇団の団員達が、荷物置き場にしていたスナックの立ち退きで、片付けのため5年ぶりに集まる。芝居を続けているもの、定職についているものなど、それぞれの立場の違いを超えて昔話をする内に徐々に明らかになる、団員達の間の細々としたエピソードが、いかにも現実にありそうで小劇場ファンの自分としては興味深く観ていられた(10年で紀伊國屋というのは、ちょっと無理がありそうだが…)。ただし、最終盤のあれこれは、伏線が充分でなく唐突感が否めないのが惜しい。
『その森の奥』『カガクするココロ』『北限の猿』
青年団国際演劇交流プロジェクト
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/07/23 (火) 19:30
『北限の猿』Bバージョンを観た。平田オリザの科学シリーズとして1992年に初演されてから、青年団以外も含めて、多く上演されているそうだが、初めて観た。平田の同時多発会話を使いつつ、猿を人間に近づけようというプロジェクトに関わる人々の群像劇。猿に関する話をしていると見せて、実は現実の人間関係を扱っているようなダブルミーニング的セリフも多く、最初に振ったエピソードを最終盤で回収するような丁寧さも見せる。
骨と十字架
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/07/06 (土) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2019/07/12 (金) 19:00
タイトな舞台ではあった。実在の人物や事件に題材を取る劇団「パラドックス定数」の主宰の野木萌葱の書き下ろし新作は、イエスズ会司祭であり古生物学者でもあったテイヤールを軸に、信仰と進化論の対立を描く。クリスチャンではない私(と多くの観客)にとっては、違和感、というほどではないが、素直に腑に落ちて来ない題材を選んだことで、評価の難しい作品になってしまった気がする。演出は新国立劇場の芸術監督である小川絵梨子が担当するが、特別なことをしているわけではないように思う。テイヤールの置かれた立場や周囲からの処遇を軸にするのではなく、テイヤール自身の内面の葛藤を扱っているように思えて、それが巧く表現されきれていない気はした。
民宿チャーチの熱い夜17
デッドストックユニオン
ウッディシアター中目黒(東京都)
2019/07/10 (水) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/11 (木) 19:00
初見の劇団だが、かなり面白かった。主宰の渡辺熱がライフワークとしている、沖縄の教会跡に作られた民宿「チャーチ」を舞台にした連作の17作目という、ある種の定番的公演。民宿を運営する人々、泊まりに来る人々の関わりを描くコメディだが、沖縄という独自性を出したいというのが渡辺の思いなのだろうか。今回は、沖縄の独立というキーワードはあるが、正義のあり方というのがメインテーマと言える。役者陣もしっかりした演技を見せるが、終盤の大事なセリフを渡辺自身が語るところは、やや勿体ない。笑えるセリフがいっぱいあるのだが、他の客が笑わないのは何故なのだろう…。
恋のヴェネチア狂騒曲
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/05 (金) 18:30
とにかくとても面白く、楽しい2時間半だった。18世紀の古典喜劇をベースにしつつも福田ワールドが炸裂し、マンガチックなセリフ・演出をする一方で、古典的な側面もしっかり大事にする。役者陣もきちんと演技し、役割を果たしている。特にマンガチックな側面を担うのが賀来賢人と池谷のぶえだと思えるが、この2人はサイコー。主演のムロツヨシも、カワイイ!、と言いたくなるような存在感が見事だ。
三人ヨシコ
888企劃
王子小劇場(東京都)
2019/07/02 (火) ~ 2019/07/07 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/07/02 (火) 19:00
他劇団が2017年に上演した作品を、主宰の馬原の演出で上演する。何を言いたいんだか、焦点が絞れていない感じが勿体ない。山岳ライターの梢は雲取山の取材中に迷い、吸血鬼が棲む館を訊ねる。吸血鬼といっても、人間の血を吸って吸われた人間が吸血鬼になるというわけではなく、梢は怖い思いをするわけではない。3人いるヨシコの中から吸血鬼の母「セイコ」になる1人を選ぼうというのだが…、という不思議な物語。オープニングが非常に美しく、エンディングが切ないあたりはよいのだが、余分なエピソードが多く、細かいギャグもすごく面白いわけでないあたりが残念。
You're a Good Man,Charlie Brown
Sweet arrow Theatricals
シアター風姿花伝(東京都)
2019/06/27 (木) ~ 2019/07/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/06/30 (日) 19:00
とにかくとても楽しい舞台だった。観るべし!有名なコミックのピーナッツ・シリーズをミュージカルにしたものだが、劇場に入るなり、舞台美術も含めてマンガチックな世界に入り込むようになっている。元が4コママンガなので、短いシーンの連続で繋いで、さまざまな有名なエピソードを歌って踊って演技する。衣装も演技も、マンガの世界観を描くのに成功してて、見事な作品だった。
渡りきらぬ橋
温泉ドラゴン
座・高円寺1(東京都)
2019/06/21 (金) ~ 2019/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/28 (金) 19:00
女性初の劇作家である長谷川時雨の評伝劇、というより、彼女が創刊した雑誌「女人藝術」を取り巻く人々の群像劇だと思う。面白い。明治末期という時代背景や「青鞜」の平塚らいてうや樋口一葉に関して知っていないと分からない部分もあるように思うが、そのあたりの作劇は巧い。女性の役も男性が演じるという手法は、演出のシライケイタが当パンで語っているように、「男らしさ」「女らしさ」でなく「人間らしさ」という形の表現を目差しているように思えた。