KUNIO07『文化祭』
KUNIO
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
楽しい!
「文化祭」って何だろう?と考えてみると、とにかく「楽しいお祭」で青春時代の若さと勢いだと思います。
それを思いっきり形にしたこの企画。
はじまるまでは何をやるのか全く分からなかったけど、始まってみるととにかく勢いがあって楽しい!
文開祭をそのまま舞台にするのではなく、印象を元に構成されたこの舞台は大人による大人のための文化祭で、元気をもらえました!
ネタバレBOX
帰宅部の親友ふたりがサッカー部の男子に「おまえらってホモ?」と言われた事をきっかけに、ホモじゃないことを証明しようとキスをする男子ふたり。
このやりとりが細かくて、爆笑ものでした。
でも、それを壊してしまう体育会系や不良たち。自分の身を守るために親友を裏切る。裏切られた親友が切ない・・・。
人形劇。とにかく雑なのが味。
男の子と女の子がバス亭でバスを待っている間に男の子が告白しようとするシチュエーション。ただそれだけなのだけどおかしい!
人形の扱いが物凄く雑なのが逆に面白い。
最後は人形を持ち上げて「アレ?俺たち今空を飛んでない?」。
端から見ると人形を手にしたいい年した大人が人形片手に飛行ごっこしてるだけなのだけど、何だかロマンがあった。
遊び歩いてる風女子高生が毎日7時には帰宅。「門限が厳しくて。ゴメーン!また誘って!」
実際は家に居るボケたおばあちゃんの食事を作らなければいけないために帰っていた。家ではおばあちゃんがその日によって言う事が全く違う。
やりたいことを我慢して食事を作っておばあちゃんの世話をしているのに全く理解してくれない事にイラだって怒ると「イジメルー!」と子供のようなおばあちゃん。我慢の限界を超えた女子高生は、おばあちゃんのご飯も作らずに夜10時まで遊び歩いて帰ってみるとおばあちゃんはいない・・・。
バカ騒ぎだけでなく、しっかりしっとりしたお芝居も見せてくれました。
本当に良い座組みなんだな、という雰囲気がヒシヒシと伝わってきました。
誰かのコメントに書いてあったけど、これが本番の文化祭で座組みの卒業式なんですね。
演劇の公演っていつもこうなんでしょうね。
稽古を繰り返して、飲みに行って、仲良くなって。
文化祭のようなお祭り騒ぎでも舞台が楽日を迎えたら座組みは卒業。
にぎやかさの裏にそんな寂しさも感じた、人生の縮図を見たような思いがありました。
この文化祭、大好きです。
おふとんのなか
演劇企画集団LondonPANDA
王子小劇場(東京都)
2010/06/17 (木) ~ 2010/06/20 (日)公演終了
満足度★★★
もう少し刺激がほしかったかも
王子の小屋を横長に使って、凸型をして真ん中がボコっと飛び出た舞台。
ステージの真ん中には意味ありげな不思議なデカい白いボックス。
客席は凸型ステージの上手下手の二手に配置。
変わった形の作りにちょっと期待が高まるけど、当パンの中にある用語集でちょっとトーンダウン。
こういう話になるのかな、と思ったらその通りだったという感じで、丁寧に描こうとしているのは分かるのだけど意外性はなくて、もう少し刺激が欲しかったかな。
90分。
ネタバレBOX
当パンにはネットゲームのオタク用語の解説。
そういうなのか、とちょっとトーンダウンしてしまいました。
本編もゲーム中のチャットが多くをしめ、それがコミカルで面白い反面、リアルの生活とリンクしたチャットや、リアルにプレイヤー同士が集まってみての一幕等、予想の範囲を出なかったのが残念でした。
ただ、舞台上の大きな箱の中が現実世界で、小さな汚い引きこもりの部屋になっていて、前と左右の壁をワイヤーで上げ下げするあたりは手が込んでいて面白かったです。
役者さんは個性的で芸達者で面白かったです。
引きこもり役の用松亮さんが実際にいそうな現実味のある演技で、役の痛さが伝わってきました。
野口雄介さんという役者さんが特に笑いを誘っていたけど、存在感ありました。最初声がひとりだけデカいなあと思ってたら、ゲーム中のフォントの設定が大きかったという事で、笑ってしまいました。あと拍手するアクションが出来るようになると、何度も繰り返すところとか。
KING役の国重さんはダメサラリーマンだけど、ウマいところだけ持っていくズル賢さとか、味があって良かったです。
そして、何と言ってもヒロインの楠見藍子さんという女優さんが魅力的でした。
はじめて見た女優さんだけど、とても惹き付けられました。
裏切りの街
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2010/05/07 (金) ~ 2010/05/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
集中して見入ってしまった・・・
ポツドールは最近の何作かを見てますが、それとはまた異なる感触の作品でした。
今までポツドールは見た作品はもっと激しさがあったけど、この舞台は「静」という印象。
決して熱くならない、今の時代をリアルに生きる人々を丁寧に描いていて、3時間と長い作品なのに全く飽きる事なく集中して見入ってしまいました。
「静かな芝居」の青年団でももっと声を張るのに、このサイズの劇場で声を張らずに、でも確実に耳に言葉が届くという事で、役者さんの実力が高くないと成立しない芝居をサラリと見せてくれて素晴らしかったです。
ネタバレBOX
やはり三浦大輔さん演出なので、秋山菜津子さん、田中圭さんら役者陣の濡れ場は用意されていて、しっかりとそれに応える大胆さ。
松尾スズキさんの存在がこの作品でひとつの染みのような存在になっていて、最初は愛妻家の旦那と思っていたら段々と正体が見えてきて、でもあくまでクールなままで。
段々その存在が怖く見えてきました。
自分の子供じゃないと分かっているのに自分の子供として産ませようと考えるのが怖かったです。
パラデソ
タカハ劇団
小劇場 楽園(東京都)
2010/05/02 (日) ~ 2010/05/11 (火)公演終了
満足度★★★★
チラシからは予想つかない
チラシやWEBの宣伝なんかだと抽象的で「楽園」「天国」という文字が先行するイメージでした。
今回の会場が「楽園」だからそこからヒントを得たタイトルなのかもしれないけど、会場に足を踏み入れたら全くイメージと異なる空間に入り込んでしまった、という別の世界がありました。
しかも完成度というか雰囲気というか、もう完璧という美術。
逆にどのような話が展開されるのかが全く分からなくなって混乱する開演前。
でも始まってみると話は分かりやすく、役者陣の魅力に引き込まれてあっという間に終わる90分。
「プール」以降は全部みていると思うけど、この「パラデソ」が個人的には一番好きです。
ネタバレBOX
会場は完全に居酒屋でした。
開場時ずっとラジオが流れてます。
劇中でも、このラジオが完全にタイミングを合わせて話に絡んでくるところが絶妙。
で、店員らしき女性が出てきてしばらく椅子に座っていて。
一度舞台からはけると電話が鳴り響いて、そこから芝居が開始だけど、何となく雰囲気的にKAKUTAを見ているような感じでした。
父親が経営していて娘が手伝っているらしい居酒屋。
もう時間も遅くて客もいないので締めようとしていた矢先に6名の喪服の一団の来客。
かつての友人のお通夜に出席するために10年ぶりくらいに集まった彼ら、彼女ら。
友人は自殺だったというが、元新興宗教の信者で、店に来た彼らもその仲間だったが今は教団も抜けて自立してそれぞれの社会生活を送っている。
そんな彼らの現在と過去が語られていくのだけど、久しぶりに集まったぎこちなさや、おおっぴらにはしたくない「神の子」と言われていた過去等が語られてゆく。
お酒も進んで段々と話も盛り上がってきて、という時に招かれざる客が登場。
かつての「神の子」のひとりで、未だに教団で活動を続ける彼が入ってくる事で雰囲気が一変する。
この辺りの空気の変化、作り方が素晴らしかったです。
恐らく舞台上に流れている時間は実際の上演時間と同じ長さだと思いますけど、その中で亡くなった友人への思いや暗い過去、そして思ったほどはパッとしない現在等が丁寧に表現されています。
未だに教団で活動を続ける男を演じた古木知彦さんの存在感が圧倒的。
素直じゃない女を演じた高野ゆらこさんや、結婚して地方で小さな幸せを手に入れた女性を演じる石澤美和さん、そして居酒屋の娘を演じた内田亜希子さん等、「いる、いる」と思わせる自然な人物像で素晴らしかったです。
最後に明かされる「神の子」と呼ばれた彼らは本当に超能力を持っていて、唯一今でも教団で活動を続ける彼だけがその力をもっていなかったという真実も、リアリティはないけど真に迫るものがあって好きでした。
柴幸男クラス『さよなら東京』
ENBUゼミナール
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/05/01 (土) ~ 2010/05/02 (日)公演終了
満足度★★★
柴幸男作品に仕上がっていた
柴幸男さん作・演出という事ならどうしても見ておきたい、という事で見てきました。
ENBUゼミの卒業公演ということで、本格的に客の入る舞台ははじめてというゼミ生たちによる舞台。
でも、あまりそういった事を感じさせない舞台でした。
役者が誰でもどうとでも出来る演出という感じで、役者個人、個性はなかなか感じ取れなかったけど、こういったアプローチの仕方もあるのかと。
上演時間は45分くらい? + アフタートーク15分
ネタバレBOX
ことば遊びが多用されたセリフ。
誰かが誰か特定の人物を演じる、と決まっているのは主人公を演じた、開場時から舞台のイスに座っていた女の子のみで、それ以外は流動的。
そして、役者陣に細かく言葉を割って、ある時は同時に、ある時は掛け合う感じ。
フォーメーションを組んで、色々な動きを見せつつシーンを椅子と映像で転換してゆく。
今回は映像を大胆に取り込んだのが、柴演出としては新しい試みだと思います。
東京の雑踏の映像だけど、どこか無機質に、背景として写し出されていく。
「さよなら東京」のタイトルだけど、柴さんの話を聞く限りだと東京との別れよりは「上京するということ」がテーマになっているようです。
妹は姉がいる東京へ出てきた。
けど、姉は更に遠く、海外へ行ってしまった。
そして、最終的に帰らぬひととなってしまう。
追いかけても追いつかない、そんな「東京」という幻想を姉の背中に映したような感じで、何か特別なストーリーが展開されるわけではない。
柴さんは、まさにこれが役者としての第一歩という今回のゼミの生徒たちに、10年前の自分の姿を映して書いたという。
けど、分析はもっと冷静で、今は「上京」という、東京に行けば夢が叶う的な幻想は希薄になっているのではないか、とも語っていました。
10年前の柴さんは東京で戯曲化として成功することを夢見て上京してきたというけど、今回のゼミ生はあまりそういった意識もないようで、「会社に行けと命じられたから東京に来た」とかリアルな話がトークでも飛び出していました。
作品としては、柴さんらしさを感じました。
対話ではなく、感覚で選び出した言葉たちを言葉遊びしつつ声を揃えてつなげてゆくあたり。
そして役者の個というか人間性というか、それらを感じさせないあたりがそう感じさせたのかもしれません。
でも主演の女の子はいるだけで存在感があった事も事実でした。
何だか不思議な柴ワールド全開の作品でした。
アメリカン家族
ゴジゲン
吉祥寺シアター(東京都)
2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了
満足度★★★★
島田曜蔵さんの存在感が舞台を支える!
もう島田曜蔵さんなしではこの舞台は成立しないでしょう。
そう思わせる存在感でした。
素晴らしいです。
頑固で不器用で自分勝手で、でも家族を家族として守りたくて。
今回のゴジゲンは、嫌な感じの家族の微妙な空気を、緊張感とユーモアを持って描き出すことに成功していました。
ネタバレBOX
他の役者さんも、どの方も魅力的。
中国人を演じていた目次さん、実はストーカーという津村さんなどは特に目を引く存在でした。
途中で学生の友人が人を刺してしまうのだけは、唐突すぎるし必要なかったんじゃないかなあと思いました。
結局刺されても死なないし。
全体通してあれだけ浮いていた印象でした。
最後の、そこまで築いてきた劇構造をぶち壊す家族の大暴れには爽快感があり、同時に悲しさが溢れてました。
アンポテンツ
劇団チャリT企画
王子小劇場(東京都)
2010/04/28 (水) ~ 2010/05/02 (日)公演終了
満足度★★★
初見でした。
王子小劇場の一面にそびえる壁と門。
威圧感のあるその前で繰り広げられるドタバタ劇。
チャリT企画さんは初めてみたのですが、楽しかったです。
でも、役者さんの個人技とか力技で笑いを取りに行ってる感じが今時の小劇場の演劇の流れとちょっと違って古い感じも・・・。
あと、安保闘争60周年の年という事だけど、この舞台自体は「安保闘争」としてわざわざとりあり上げる程の意味合いを感じられませんでした。
とりあえず自作に期待します。
2人の夫とわたしの事情
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2010/04/17 (土) ~ 2010/05/16 (日)公演終了
満足度★★
そんなに面白いかな・・・?
絶賛する声が多い中、申し訳ないですが正直それほど面白いと感じなかったです・・・。
段田安則さんの安定感はさすがでした。
松たか子さんは、パイパーを見たときにも思ったのだけど、声のトーンがひとつ上がっていて、どうも自然体に見えないのですけど。
でかい劇場なので表情までは良くわかりませんでした。
表情が分かるとまた違ってくるのでしょうけど。
話も確かに面白いけど、これなら今の小劇場の若手の方が面白いものを書いていると思います。
そして、何より平日に18:30開演というのが、一般的な社会人を拒絶しているようで嫌でした。
平日のチケットしか取れなかったので仕方なしに水曜日に見にいったけど、間に合う訳もなく、最初30分は見逃しました。
社会人はそれほど暇ではないのです。
演劇をもっと気軽に見てもらえるようにしたい、というのは演劇関係者誰もが思っている事と思いますが、こんな事をやっているから一般の社会人は演劇を見に行かないのです。
「上演時間が長いから開演も早くした」という言い訳も聞こえてきそうだけど、高いチケット代だから3時間みせなければいけない、というものでもないと思います。
充実した密度の濃い2時間の芝居の方が、3時間のダレた芝居よりずっと満足できます。
正直この作品はこれだけ長い意味がなく、途中ダレてました。
動け!人間!
鰰[hatahata]
アトリエ春風舎(東京都)
2010/04/16 (金) ~ 2010/05/05 (水)公演終了
満足度★★★
なんとなく「淡水魚」と呼ばれている方
【プログラム『た』→なんとなく「淡水魚」と呼ばれている方】を見ました。
「創作過程を公開する」事を目的とした公演という異色の公演で、正直面白いのかどうか不安でした。
結果、役者さんの魅力がズイっと出てきて、とても楽しめました。
ネタバレBOX
ただ、演劇はやはり完成された作品で勝負してほしいという気持ちも強く、最初と最後に見せてくれる発表作品があまり面白くないのが難点だと思いました。
稽古は本当に面白くて、演劇は本番より稽古場のほうが面白い、というのがひしひしと伝わってきました。
でも、本当はそれじゃいけないのだとは思いますけど・・・。
この日はクライマックスのシーンを作る、という事で斉藤美穂さんと高須賀千江子さん対象にタップリ時間を取って、正に1から組立てていってました。
その作品作りを見れただけでも十分満足でした。
普通の台本があって、それに沿ってシーンを作っていくだけの演劇ではないから、こういった稽古の面白さ、魅力というのも大きいのだと思います。
斉藤さんに「自分は何だったら高須賀さんに負けないと思いますか?」と問いかけるところから始まって、答えは「陰気」。
「じゃあ陰気を表現してみてください。」
と言われても陰気なんて表現できなくて、逆に「じゃあ高須賀さん、陽気を表現してみてください」と言われて、悩んだ末笑顔で陽気なダンスをする。
「一緒に踊ってみてください」
とかやってるうちに、うまくいかないということで方向性を変えて、「力士を演じてください」「ディズニーランドの思い出を語ってください」とか演出の指示が出て、汗だくで取り組む姿が魅力的。
「ディズニーランドには行ったことがあります。2回あります。高須賀山は?」とかセリフもその場で作られてて。
途中どうしても笑ってしまう役者に「笑わないで真剣にやって。思ってるほど面白くないから」という冷静な神里さんの指摘が、浮ついた稽古場を冷静に見ていて、さすが演出家でした。
最後に通して上演してみたけど、うーん、出来てる作品はあまり面白いとは言えないんですよねえ。
15 Minutes Made Volume8
Mrs.fictions
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了
満足度★★★★
充実6団体
他にもいくつかの劇団の集まった公演が行われますけど、プロデュース面で15mmは優れていると感じます。
この企画を行う趣旨がはっきりしているし、参加団体も単なる団体紹介ではなく渾身の15分を見せてくれるのが嬉しいです。
毎回作品を上演している主宰のMrs.fictionsさんの作品を、今回初めて「面白い!」と感じました。
今までは観念的な抽象的なものや無理のあるお芝居が多かったけど、今回はMrs.fictionsでこんなに笑うなんて、と思うほどおかしくて、でも笑えるだけじゃなくて、コミュニケーションに真っ向から取り組んだ衝撃作でした。
ネタバレBOX
国道五十八号戦線はちょっと遊び過ぎた感じだったけど、好きです。
劇団芋屋は初めてみました。
ストレートで良質のコメディですね。サルの衣装がちょっと・・・、と思ったけどそれ以外は15分で起承転結付けてしっかり楽しめました。
時間堂はどうしちゃったのだろう・・・?という作品でした。
作品自体は良いのだけど、役者さんがちょっと・・・。
若い男性の役者さんが、舞台に居れてなかった感じで、残念でした。
黒澤さんは演出に専念した方が良いと思います。
Mrs.fictionsは素晴らしかったです!
松本隆志さんにいちいち爆笑してしまいました。
宇宙人が地球にやってきて、ヤンキーのボスに祭り上げられているけど、それが自分の星に帰ってゆく話。
周りで頭悪いけど人情に厚いヤンキーたちに囲まれて、ボスの「ヒカルくん」が冷静に周りを分析した言葉を羅列してゆくギャップが楽しかったです!
「時間堂上等」とか特攻副に書いてあるし。
PLAT-formanceの公演は見た事無いので、ここで見れて良かったです。
なかなか一筋縄ではいかない、入り組んだ話のふたりコントで、人質が死ぬ時がおっかしかった!
安藤理樹さんはこゆび侍「はちみつ」で見ていたけど、ホームでの演技の方が活き活きしてました。
器用な役者さんですね。
TOKYO PLAYERS COLLECTIONは和知龍範さんをメインに据えての短編で初お披露目。
役者さんが良いから見れたけど、これを90分とかやられたら途中で帰りたいし、本公演がどのようなものになるのか想像がつかない作品でした。
期待してただけに残念なデキ。
背伸び王(キング)
コマツ企画
小劇場 楽園(東京都)
2010/04/21 (水) ~ 2010/04/25 (日)公演終了
満足度★★★★
今回も面白い!
毎回違う演出スタイルに意欲的に挑んでいくコマツ企画、小松さん。
今回は楽園の使いづらい舞台でどうなのかと楽しみにしていたけど、ほぼ素舞台でイスが4つあるだけの、役者の実力を信頼した演出でしっかり楽しませていただきました。
約75分。
ネタバレBOX
いつも新しい演出に取り組むコマツ企画ですけど、今回は4人の役者が細かくお互いの立場を入れ替えて演じあいながら、それぞれの個性と人生を浮かび上がらせていて、見事でした!
役者の力量がないとできない事をサラリとやってのけてくれる、劇団員への信頼があるからこそでしょう。
もうとにかく役者さんから目が離せない。
浦井さんの変態な感じや本井さんの人の良さそうな、でもボケた感じ、川島さんの常人離れした感じ。
それもが濃くて、それが妙にズレた脚本の中で絶妙に活かされてました。
残念なのは、佐野さんが他の役者陣に押されて浮いてたかな、と言うと事。
まあ、そういう役だったから仕方がないのだけど。
ある空間で目覚めた男。
先に目覚めていた男がひとりと、倒れている男がふたり。
そんな彼らが死後の国へ旅立つ直前のグレーゾーンな世界で自分を見つめなおす話。
ストーリーと呼べるものはほぼないのだけど、それでも実は最初からしっかり伏線を張りつつ、最後に落としてくれる巧みさ。
同じものは二度と見れないので、コマツ企画は毎回見ておかないと。
紙風船、芋虫、かみふうせん❤
オクムラ宅
TARA(東京都)
2010/04/10 (土) ~ 2010/04/18 (日)公演終了
満足度★★★★
演劇への愛情が詰まった小空間
奥村さんの演劇への愛情がたっぷりとつまったオムニバス公演となってました。
役者もセリフも同じひとつの作品を演出ひとつで別の作品に仕上げてしまうセンスが演劇です。
そして「芋虫」は遊び心に溢れた力の抜けた作品でユーモアたっぷり。
この作品は奥村さんの芝居がなければ成立しないですね。
人によって見方も感じ方も変わってくると思われる構成で、それ自体が演劇的でした。
ネタバレBOX
「芋虫」はとにかく遊びに走った作品で、その遊び心が楽しかったです。
乱歩のまがまがしい世界を気ぐるみによってポップに演出して軽やかに見せてくれます。
話自体は重たいのだけど、全然重くない。
でも、しっかりと伝わってくる。
そんな丁寧な作品作りが素敵でした。
「紙風船」「かみふうせん」は実際に見比べてみてこその2作品。
飾り気のない会場だけど、その分しっかりと芝居に集中できて、無駄をそぎ落としたとても良い舞台です。
会場のクッションが、思いの外見ていて疲れなくて良かったです。
夕焼けとベル
カムヰヤッセン
王子小劇場(東京都)
2010/04/03 (土) ~ 2010/04/11 (日)公演終了
満足度★★★
TRICKみたいな
人里はなれた過疎化の進む村に、古い不思議な因習の残る村や事件、そしてそれを追ってくる刑事たち。
普通の小劇場のお芝居を見ているのとはちょっと違うスケールの作品で、ドラマのTRICKを見ているような感じでした。
最もそれほど遊びに走った訳ではなく、トリックもある訳でもなく、内容はストレートに。
ネタバレBOX
HPでは世界の終わり的な事が色々と書かれていますけど、実際の舞台は世界の終わりと言うわけではなく、もっとスケールは小さくある島で展開する話。
中心になるのは3組の集団。
理想を求めて行動しているうちに強盗事件を起こして島へ逃げてきたテロリスト5名。
一度は島を出たけど島に戻ってきて見合い結婚をして、知的障害を持つ娘を持ち最近家庭の事で色々としっくり来ていない駐在さん。
そして古い不気味な因習を守る、島外れにすむ母娘。
それら3つの異なるカテゴリーの集団が、テロリスト集団の存在によってひとつの大きな流れの中に巻き込まれてゆく。
テレロリストは最初は「映画の撮影」と言って民宿に泊り込むのだが、その民宿の旦那は駐在さん。でも仕事に信念を燃やしているわけではない駐在さんは指名手配されているテロリストの存在に気づかず。
いざテロリスト言う事がバレて、彼らは民宿の奥さんとふたりの娘を人質に取って逃避行を開始する。でもそんなにうまく行くわけでもなく、仲間割れによってバラバラになって、ひとり捕まり、ふたり捕まり、という感じで捕まってゆく。
最後に残った女性は最初からそのテロリスト集団の中でも知能が優れて、人の心を思い通りに操る事に長けていた。
けど、そんな彼女が最後に行き着いたのは、実家の妹のところ。
彼女はこの島の古い因習の残る一家の生まれで、その家では娘は父親と交わって子供を宿すことになっていた。しかし彼女はそれを嫌って東京へ出てきた。代わりに残された妹が父親と交わり、子供を宿して、その子供ももう10歳になっていた。
そんな妹と話をしたくて最後に行き着いたのだった。
でも、そんな所に警察が踏み込んできて、女は妹を人質として銃口を向ける。。。
ドロッドロの人間ドラマが展開される、家族について考えさせられる物語。
サスペンスとしてみると良くできていると思います。
役者さんは、テロリストの女を演じていた川村紗也さんが怪しい魅力満載でした。競泳水着の「そして彼女はいなくなった」よりも全然魅力的。
駐在を演じた松下仁さんの人の良さを前面に出した、ちょっと頼りないところもよかったです。そしてその妻役の今城文恵さんが、年齢とかけ離れた役柄だと思うのですが、とても印象的でお母さんに見えてくるところが素敵でした。
次女役の重実百合さんの無邪気な魅力もとても光っていました。
とりあえず寝る女
箱庭円舞曲
駅前劇場(東京都)
2010/04/02 (金) ~ 2010/04/06 (火)公演終了
満足度★★★★★
傑作は時間を感じさせない!
出色の役者陣を揃えに揃えて、その魅力を最大限に活かしつつ練り上げられた構成。
前作のハイライトの激論のような見せ場はなかったけど、複雑な人間関係がもつれにもつれて、全てがひも解かれるわけでもなく、でも暖かく迎えるラスト。
2時間15分というのが嘘のようにあっという間でした。
ネタバレBOX
役者さんはどの方も魅力的でしたが、演じる姿をはじめて見た赤澤ムックさんのガハハ系のおばちゃんが可愛らしくて魅力的でした。
変態な役を演じる小野哲史さんも本当にいやらしくて嫌な感じに。
同じく変態な小林タクシーは安定して面白すぎ。
爺隠才蔵さんの、居るだけで空気を作り出すトボけた存在感が今回は更に効いてました。正にドラえもんチックで、憎めないキャラなんですねえ。
そんな変化球キャラに対して、本格的なストレート演技で対抗する須貝英さんの存在はやはり特筆もの。
村上直子さん、、片桐はづきさんの姉妹は対立しあいながら、異父姉妹でありながら、本当に姉妹に見えてきます。
玉置玲央さんは前半あまり出てこないし、使い方が勿体ないなあと途中まで思っていたのだけど、クライマックスで実は彼女の妹に手を出していて、しかもその妹が処女だった時で、そのたった1回の過ちが引きずられてこの家の関係を複雑なものにしているというキーポイントとなる役で納得でした。
Corichはこの作品を舞台芸術祭にエントリーしなかったことを後悔するべきと思います。
恋2 【満員御礼!ありがとうございました!】
ろりえ
王子小劇場(東京都)
2010/03/03 (水) ~ 2010/03/07 (日)公演終了
満足度★★★
見切れすぎた
最前列の観劇になってしまって、色々な細かく割られたセットのどこで演じられても見切れてしまって残念。
評判が良い団体だけに、ベストの状態で見たかったです。
見切れを極力無くすのもプロの仕事だと思う。
2時間の長い舞台のわりには、全体的には悪ふざけが印象に残ってしまったかな。
ネタバレBOX
セカチューをやりたかったのか、最後の風を起こすシーンをやりたかったのか、何だか中途半端でもったいなかったです。
その前の、好きだった女性がエイズだった事、ヤリたい一心だったけどヤラせてくれなかった彼女の気持ちをその時理解できた事、なんかは良かったです。
あそこで終わっても良かったのではないかな、と思いました。
そして、彼女が死んだ時、自分もエイズに犯されていた事実。
「だったらやっちゃって良かったんじゃないか?」なのかどうか。
男がエイズになった時の「エイズの世界へようこそ!」がインパクトあって、一番印象に残ったシーンでした。
アンチクロックワイズ・ワンダーランド
阿佐ヶ谷スパイダース
本多劇場(東京都)
2010/01/21 (木) ~ 2010/02/14 (日)公演終了
満足度★★
長いなぁ・・・
実際の上演時間は2時間くらいだけど、えらく長く感じてしまった。
物語がないならそれでいいんだけど、興味をひきつけるだけのものがないと集中できなくて厳しいです。
役者さんの演技はどれも素晴らしいのだけど、それだけを見に劇場まで足を運んでいるわけではないので残念な印象でした。
青
reset-N
ザ・スズナリ(東京都)
2010/02/10 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★
ヒヤリとした質感
「眠るために目醒める」を見て、もうこの劇団は見なくてもいいかなと思っていたけど、今回は作風がまた変わったようなので見に行ってみようかと思いました。
でも、今週は見たいのが沢山ありすぎてあきらめていたのだけど、たまたま見れる事に。
そして、今のreset-Nの真の実力を見せつけられました・・・。
黒をベースに作られた飾り気の少ない舞台は、執拗なまでの照明へのこだわりで別空間を作り出す事に成功していました。
このセンスを感じさせる舞台美術と、オープニングから見せてくれる光と影の芸術的な使い方から一気に異世界を演出して引き込まれました。
話も作家の内省的な話は前回で終わって、レイシズムに心酔する日本の若者たちとその首謀者たちとのギャップからくる苦悩を、ヒヤリとした冷たい質感で見せてくれました。
これ程素晴らしい作品を見せてくれるとは。
★は4.5で。
役者陣は、正直なところこれだけのキャストは必要なかったように感じたけど、ノグチを演じた鶴牧万里さんの淡々とした、それでいて情熱を秘めた語り口が心地良かったです。
ネタバレBOX
オープニングの女性ふたりが「私は男の所有物」だの何だの言ってるところは正直あまり好きではなかったです。
そういう考え方がイヤ。
でも、段々と話はレイシズム吹き荒れる日本列島で、その発端を作り出した男とその理想と現実のギャップへの苦悩へとシフトしてゆく。
それを取り巻く人々それぞれも苦悩を抱えていて、様々な人が「青」の隠れ家を訪れては首謀者のひとりノグチとの対峙によって抱える問題を浮き上がらせてゆく。
あくまで冷たい質感で演出された裏に、熱い情熱と信念が隠れていて、緊張感を最大限に引き出していた。
ミサカを演じた藤堂海さんは、登場時間は短いけど存在感が魅力的でした。
最後の刺客が突然現れてその場にいた人間を片っ端から簡単に殺してしまう終わり方は「やっぱりそうなんだ」とある程度読めてしまったけど、それまでの冷たい質感の中に銃の轟音がつんざく辺りが衝撃的で、演出のうまさだなあと思いました。
最初は期待はしてなかったけど、非常に充実した内容で大満足でした。
ムートンにのって
むっちりみえっぱり
アトリエヘリコプター(東京都)
2010/02/04 (木) ~ 2010/02/07 (日)公演終了
満足度★★★★
脱力
現代口語の短編コント集を見ているようでした。
決して力む事なく、ゆるーくおかしな雰囲気に笑いっぱなし!
前田司郎さんや黒田大輔さんが出ているから、五反田団や新年工場見学会の空気そのままでした。
今度いつやるのか分からないけど、このメンバーでやるのならまた見たいです。
ネタバレBOX
「はてしない物語」のピーターパンシンドロームが最後本当にファルコンに乗っていくところがツボでした。
ファルコンがフカフカの絨毯を人が被って獅子舞のように動かしてるってのが、アイデアだなあと感心すると同時に爆笑。
「Dear アゴスティーニ」の下心を粉砕される前田司郎さんと、不思議な振り付けで踊っている兵藤さんが、自分で踊っていておかしくてニヤけてしまうのがゆるくて何だか楽しかったです。
何のオチもなく、踊ってるうちに暗転ってのも不条理ものの漫画のようでおかしかったです。
「千手観音」は前田さんのキャラと演技がヤバい。電波には乗せられない演技だけど。
「劇団シーフード」は黒田さんの無駄に力強いセリフがおっかしかったです。
ここから幕間の転換時にもショートなストーリーが加わって、舞台が終わった後、見に来てくれたバイトの同僚との現実的な話になるのが、単なる劇団ものとして終わらなくて現実を見せられた感じ。
「トップランナー」に劇団シーフードの主宰が出た話。
視聴者の質問コーナーで黒田さんがボソボソ「デップになりたいです・・・」とか言ってると「聞こえない!」と言われて最後は逃げるように会場を後にするのが面白かったです。
でも、何だか「さようなら僕の小さな名声」っぽくもあるなー、とか感じました。
「若者たち」はひどい内容なんだけど、見ていて何だかニヤニヤしてしまう。男子が集まって女子がやって来る前に作戦会議をしてるけど、完全にスレた女子の前に完敗ムードになって、思わずアンディ・ウォーホールが「男しか愛せない」サインを送ってしまうところとか、大笑いでした。
忘れ人 -公演終了しましたありがとうございました-
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「劇」小劇場(東京都)
2010/01/21 (木) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★
丁寧な話
「アショケ」という漫才トリオが20年ぶりに復活する事を中心に据えた、細やかな人情劇。
名古屋の田舎の地元民たちの雰囲気が丁寧に描かれていますね。
役者さんもその役が実際に生きて生活してそうな感じでした。
ただ、意外性は全くなくて、何となく見ているうちに終わってしまった感じでした。
ネタバレBOX
昔田舎で一緒にお笑いをやっていた仲間たちとの再会。
仲間だったうちのひとりは既に亡くなっていて。
そしてもう一度舞台に立とう!という辺りの設定はゴジゲンの「ハッピーエンド・クラッシャー」を思い浮かべました。
ゴジゲンは罪の意識とかから「格好悪さ」を思いっきり前面に押し出して切り口が鋭かったけど、こちらは非常にゆるい感じ。
死んだ友人も「周囲を楽しませる性格で、最後もできないバク転をしようとして失敗して死んだ」というけど、もう少し毒を持たせても良かったのではないでしょうか。
個人的にはこういったほのぼのした感じの本当に普通の生活のひとコマを切り取ってきた、という話は舞台で見るほどのものじゃないと思っていて、レベルは高いのかもしれないけど、のめり込めなかったです。
座席が悪いのも原因のひとつでした。
最後列で、目の前に柱がある席になってしまった。
視界に常に柱が入っていて集中して見れませんでした。
時間に余裕を持って行ったのにすでに座席はほぼ埋まっていて、「どこか空いてるところはないか?」としばらく見回していたのだけど、場内の係りの人は突っ立ってるだけで全く誘導や案内をしないので、いなくても同じじゃないかと思った。
ロング・ミニッツ-The loop of 7 minutes-
FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー
エビス駅前バー(東京都)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了
満足度★★★★
どっちか?と聞かれればこちらかな?
カフェ公演のBサイド。
こちらはギミックたっぷりの構成で、ゲームをしているような、あるいはパズルをやっているような感覚で見れました。
「ゆらぎり」とどちらかひとつ見るとしたらこちらをお勧めします。
映画を見るような感覚で気軽に見れて、誰もが満足できる作品です。
ネタバレBOX
7分間をループして繰り返すうちに、その裏に様々な事実が浮かび上がってゆく。
最初は事情を飲み込めなかった主人公も逆に馴染んでいって、繰り返しのはずなのにそれを逆手にとって色々と笑わせてくれます。
役者さんもいいですねー。
惜しいのは、席が詰め込みすぎで、エコノミー症候群のように身体が調子悪くなってしまったところ。
もっとゆったり見れる会場を新しく探した方が良いと思います。
ドリンクを置く場所もなくてグラスを手に持ったまま見ないといけない、ってのはどうかと思います。
せっかくのバー公演なのに、リラックスして見れる状況ではないのがつらい。