『牢獄の森』『うれしい悲鳴』
アマヤドリ
吉祥寺シアター(東京都)
2024/08/17 (土) ~ 2024/08/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『牢獄の森』『うれしい悲鳴』両作観劇。
『牢獄の森』
犯罪者予備軍と判断された人たちが、一般社会から隔離され、半ば強制的に自然豊かな「森」で共同生活を送る近未来SF。
「犯罪者」の素養を持った人は、はたして「矯正」できるのか?犯罪者予備軍として排除するのは、優生思想ではないのか?クズはどうやってもクズなのか?犯罪者予備軍でない多くの人たちは犯罪行為をしないのか。
テーマは重めで、登場人物もそれぞれ自分勝手だし、なかなか進展しない会議での個々人のぶつかり合いは激しいし、2時間15分があっという間の濃密な会話劇。
ラストの余韻がいい。
『うれしい悲鳴』
こちらも近未来SF。
今の政治を見ていると、あるかもしれないと思えてしたいディストピア。
幼少期のエレベーター事故を語るマキノの長いモノローグと、小学校卒業式の日のミミと亜梨沙、そしてミミと母のシーンは、自分の体も心もマキノに、ミミに、亜梨沙に、母に、同化してしまいそうな感覚になった。
静かな雪のシーンの美しさたるや。
ラストのダンスは圧巻。
非常な満足感の高い舞台だった。
地の面
JACROW
新宿シアタートップス(東京都)
2024/06/14 (金) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
実際の地面師事件がモチーフ。
なぜ騙されたのか、なぜ気がつかなかったのかと、事件が明るみになった時、多くの人が思ったあの事件。
なるほどと思う説得力の流れと、縦社会のサラリーマンの常識や悲哀がコミカルに描かれていて、とても面白かった。
役者陣がみな非常にいい。
そしてラストがとてもいい。
今回は話がわかりやすくて、JACROWは難しそうだなと敬遠して来た人にもオススメ。
除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。
キ上の空論
新宿シアタートップス(東京都)
2024/05/09 (木) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
キ上は何作か観ているけれど、中島氏が「今、僕ができる最高傑作」と言うように、確かに傑作だと思う。もちろん、好き嫌いはあるだろうが。
前作『けもののおとこ』も観劇したが、個人的には圧倒的にこちらが好みである。
寝取られの性癖や医療機関を通さない精子提供など、なかなかセンシティブで重いテーマだが、演出がポップなので必要以上に暗く重厚になることもなく、性的なシーンも軽やかでコミカルですらある。
ラストがいい。
観劇後は、心が重いような、でもどこかふわふわしているような、不思議な感じがした。
役者陣は皆とてもいい。それぞれの静と動の表現が素晴らしい。
イノセント・ピープル
CoRich舞台芸術!プロデュース
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/03/16 (土) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても良かった。
時代がいったり来たりするのだが、演出が良いのはもちろんだが、役者の力量であろう、全く混乱することなく観ることができた。
誰が悪いとか悪くないとかではなく、その時代で精一杯「良いこと」だと信念を持って生きて来た人たちの物語。
素晴らしかった。
天使の群像
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/29 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇場に入り、あの舞台セットを見た時、これは今までの鵺的とかは違うようだ、演出家も小崎愛美理さんだし、どうなんだろう?と思ったが、やはり鵺的は鵺的であった。素晴らしかった。
教師という職業をどう捉えて仕事をしているのか、それは様々であって、でも誰も悪い人なわけではない。それは生徒も同じで。
学校が舞台の芝居はたくさんあるし、同じようなテーマの芝居もたくさんあるだろうと思う。
でも、そこは鵺的。
嫌なところを突いて来るなというか、なるべくなら見たくない、見ないようにしているところを見せて来る。
素晴らしかった。
役者さんたちはみんなとてもいい。
そして舞台美術、照明、音響、脚本、演出。
改めて、芝居とは総合芸術であると思った。
染明色
Prelude
王子小劇場(東京都)
2023/03/08 (水) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
パワハラや性的マイノリティへの差別発言、動物虐待や性暴力の間接的表現があるR15の舞台。
Aチーム観劇。
優しい耳障りの良い言葉で「多様性」を認めると言うけれど、「多様性」とは何なのか、「普通」とは何なのか。
美術もいい。
コミカルなシーンと重いシーンのバランスもいい。
救いのないラストもいい。
脚本、演出の方はまだ若いと思うが、非常に良い舞台だと思いました。力作でした。
次回作も期待したい。
デラシネ
鵺的(ぬえてき)
新宿シアタートップス(東京都)
2023/03/06 (月) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
時は現代なのに、今どきこんな師弟関係ないだろ、でもそこはフィクションで誇張もあるからねって思いながら観ていたけれど、こういう男性は確かにいたし、今もいるんだろうと思う。
女を武器に上手く世渡りすること。
女を武器にせず自分の力で生きて行こうとすること。
どちらも痛みを伴う。
一見、古い昭和の物語のように見えるのは敢えてであり、昔はこうだったけど今はどうよ?良い方に変わった?ジェンダーギャップとか男女格差とかどうなった?と突きつけられたように感じた。
ラストがいい。
若い2人に希望を見る。
鵺的の舞台は俳優陣はもちろんだけれど、毎回本当に舞台美術や照明がいい。
太陽は飛び去って
Ammo
サンモールスタジオ(東京都)
2021/12/02 (木) ~ 2021/12/08 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/02 (木) 19:00
舞台は1929年。
平塚らいてう去し後の婦人運動家たちをとりまく1日の物語。
なんとまあ濃い1日でしょうか。
女性たちの理想と希望と、そこへ到達するための目的と手段。
喧喧囂囂と主張する女性たちの強く美しいこと。
そして、当時の価値観では「正しい男性像」であった男性陣や、使用人女性や子爵夫人や女学生の、それぞれの思いや振る舞いが、女性解放とは何か、フェミニズムとは何かを考えさせられる。
当日配られる「用語集」に目を通してから観劇することを強くおすすめする。(たとえば、「無産運動」の「無産」とは、子を産まないことではなく、労働者階級のことだったりするので)
美術と衣装がいい。
カラーパンフレットの衣装さんのインタビュー記事はとても面白かった。(カラーパンフの人物相関図もわかりやすくていい)
過去を生きた彼女たちの先に私たちが居て、更にこの先を生きる女性たちを思う。
良い舞台でした。
Jeanne
鬼の居ぬ間に
「劇」小劇場(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ジャンヌ・ダルクの異端審問と、死後の復権裁判を描いた法廷劇。
さらりとではあるが異端審問も復権裁判も知っていたし、どう演劇にするのかな?あの当時の一神教的世界観をどう描き、どう演じるのかな?と、大河ドラマを観るような感覚で気楽に劇場に足を運びましたが……甘かったです。やられました。素晴らしかった。
内容や演技はもちろん、セットや証明や音楽、そして衣装も素晴らしかった。
鵺的の奥野さんご出演ということで、奥野さん観たさに行きましたが、今後は知らない俳優さんばかりだとしても、必ず観に行きたい劇団に出会えました。
夜会行
鵺的(ぬえてき)
サンモールスタジオ(東京都)
2021/07/01 (木) ~ 2021/07/07 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
遅ればせながら感想を。
いろいろ考えさせられる内容でした。
いつの間にか、あの場に自分もいるような気になる臨場感。彼女たちのリアルさ。
素晴らしかった。
私は高木さんと同年代なのですが、あの話を私と同年代の男性が書いたということに衝撃を受けました。心からの拍手と感謝を送りたい。
うまく言葉になりませんが。
彼女たちの明日が明るいものであるようにと願わずにはいられない、そんな切なく愛おしい物語でした。
リビング
Nana Produce
テアトルBONBON(東京都)
2021/03/03 (水) ~ 2021/03/07 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2021/03/04 (木) 14:00
価格5,500円
寺十さん目当てで観劇。
家族とは何か。親が子どもに望む姿とは何か。
親の期待に子どもはどうすれば良いのか。正しい夫婦の形、家族の形とは何なのか。
この物語ほどではなくとも、どの家庭にも多かれ少なかれある問題を重く、時に軽やかに描いた物語だと思った。
今藤洋子さんの硬質的な佇まいが美しい。
そして、やっぱり寺十さんはすごい。
#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』
オフィス上の空
シアターサンモール(東京都)
2021/02/07 (日) ~ 2021/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
『ピーチオンザビーチノーエスケープ』観劇。
序盤の可愛い女の子たちの軽さが、後半の怒涛のクライマックスの重さを際立たせている。
音楽、舞台美術、照明の効果も素晴らしい。
ラストがいい。
これから先、桜子と河原に幸あれと願う。
男性客が圧倒的に多いが、ぜひ女性にも観てほしい。
韓国現代戯曲ドラマリーディングX
日韓演劇交流センター
座・高円寺1(東京都)
2021/01/27 (水) ~ 2021/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
『激情万里』を観ました。
日帝時代から南北戦争と、激しく移り変わる時代を生きた演劇人、芸術家たちの生き様は辛く、悲しく、熱い。
歴史に翻弄されながらも、理想を語り、演劇を愛し、模索し続ける様は、時を超え場所を超え普遍的だと思う。
観ることができて良かった。
いつまでも胸に残るであろう舞台でした。
バロック
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
客たち
流山児★事務所
新宿スターフィールド(東京都)
2020/12/16 (水) ~ 2020/12/23 (水)公演終了
満足度★★★★★
とても良かった。
外に希望を求めながら、重く閉塞的な場所から出て行くことができない少年。
ラストがたまらない。
寺十さんの圧倒的な表現力に心が震えました。