Takashi Kitamuraの観てきた!クチコミ一覧

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ミネオラ・ツインズ【1月25日~28日公演中止】

ミネオラ・ツインズ【1月25日~28日公演中止】

シス・カンパニー

スパイラルホール(東京都)

2022/01/07 (金) ~ 2022/01/31 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

敬虔で保守的なマーラと奔放で進歩的なマイラ。外見はそっくりだが、中身は真逆の双子の姉妹の、戦後40年近くの仲違いの歴史と、深奥の絆を描く。保守と進歩、マッチョと寛容、ストレートとLGBT等々のアメリカの分裂を二人に寓意した芝居である。

大原櫻子の下着姿も晒した一人二役を体当たり演技で頑張っていた。小泉今日子はマーラの若い恋人のジムと、中年のマイラのパートナー・サラを演じていたが、キョンキョンらしくもうすこしはじけたいところ。八嶋智人は、二人の子供役で14歳を演じる。いずれも実年齢とは関係ないのだが、八嶋智人はさすがに、マリファナに飛びつく場面とか、笑いをよんでいた。

ネタバレBOX

同じアメリカの二つの顔を、一人二役で示すのだが、それは頭で考えて掴むところ。一人二役なので、マーラとマイラが二人同時に舞台上に立てないのは最大の制約。そのため、二人がぶつかるシーンがない。それが一番物足りないところだった。
マイラのいる全米家族計画の事務所を、中絶反対派のマーラが爆破するクライマックスは、さすがにドキドキしたが、その後のサラとマイラのベッドの中のエンディングが弱かった。
ガラスの動物園

ガラスの動物園

東宝

シアタークリエ(東京都)

2021/12/12 (日) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

2年前文学座で見たときよりも発見が多かった。「追憶の劇」という冒頭の宣言のとおり、数年後のトムの回想であること、ローラがビジネス学校に通うふりを半年も続けていたこと、開戦で異国の冒険が(映画俳優だけでなく)自分たちもできるというトムのセリフ。遠くに憧れて家族を捨てて「異国へ行った」父の存在が意外に大きいこと。等々。

ローラと踊ったジムが、誤って ガラスのユニコーンの角を折って壊してしまう。ローラはあまり気にせず、というか清々したかのように「これでこの子も普通の馬になれて、良かったのよ」という。ローラ自身が、普通の幸せを手にできたかのように。その直後、ローラの夢は崩れ去る。天国から地獄へのこの落差は、やはりすごい芝居である。

一幕目は、これが名作戯曲なのだろうかと、不遜にも疑ったが、終幕すると、名作だと確信した。さらに今回は、麻実れいのデフォルメしたワガママで自分勝手で世間知らずの母親ぶりが、自然主義的リアリズムの退屈さを救った。倉科カナの美しさ、愛らしさは、目立たない人物というローラの役柄とは相反したように一幕では思った。しかし二幕の極端な引っ込み思案ぶりから恋の喜びへ、輝く幸せからどん底への、短時間でのジェットコースターなみの落差は見事だった。

ネタバレBOX

一番の発見は、ジムが実は婚約済みで、もう会えないとわかったあと、姉のローラがずーっとセリフも動きもないこと。倉科カナはその間、恍惚の表情を浮かべて虚空を見つめていた。現実を遮断して、夢の世界に逃避していたのか。そしてジムが去り、トムが家を出ていったあと、やっと悲しみを取り戻して母と抱き合って泣く。
母は「職場の同僚が来月結婚することを知らないなんて」とトムをなじる。トムは「職場は仕事するところだ」と開き直るが、このセリフは実はトムの胸に刺さっただろう。ローラを決定的に傷つけた、その引導を渡したのは自分だと。前回見たときより、この一夜の出来事がローラの精神を決定的に崩壊させ、トムを一生自責で苦しめた致命的意味を感じた。
それは、母(麻実れい)が、それ以前のデフォルメとコミカルから、切々たる悲しみに変貌したことからも受け止められる。
泥人魚

泥人魚

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2021/12/06 (月) ~ 2021/12/29 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

唐十郎の中でも第一級のワケわかな戯曲である。それを演出の金守珍が音楽、照明、音響、背景の映像(諫早湾の牧歌的風景から、嵐の海、流れ星、被爆後の浦上天主堂等々)を駆使して、あえて通俗的スペクタクルで見せた。魚と人の境界の存在のヒロインやすみ(宮沢りえ)の、憑依的演技は素晴らしい。とくに後半(第二幕)の、自らの出自と、鍵のゆくえをめぐるクライマックス。彼女の存在で輝いた舞台だった。

ストーリーはつかみにくい。舞台であるブリキ店が、諫早でなく東京あたりにあるということも、(聞き逃したせいかもしれないが)「ここに上京して」という後半のセリフでやっと分かる。赤いスーツに厚底超ハイヒールのタカビー女の月影小夜子(愛希れいか)が、諫早湾干拓工事をしきるボスを象徴していると、観劇後気づいた。すると、小夜子配下の、六平直政はじめのやくざたちが干拓工事一味であり、それに苦しめられるやすみと蛍一(磯村勇斗)との対立が基本軸とわかる。六平直政一味がブリキ店に並べるブリキ板は、潮受け堤防のギロチンの象徴である(ヘイホーの歌で、面白い場面にした)。小夜子が「三秒以上誰も見てくれない。はぶられてきた」というのは、諫早湾干拓にたいする住民、国民の反対世論ともとれる。

脈絡の繋がらないところは多いが、一つ一つのセリフの詩的でロマンチックなイメージと、歌舞伎のように場面場面のかっこよさと見得を楽しむのが唐十郎芝居の特徴。冒頭とラストの諫早湾の干潟風景にながれる「耳に残るは君の歌声」(ビゼー「真珠採り」から)の音楽が、この舞台のロマンと郷愁を凝縮していた。
とはいえ、このわかりにくい芝居が満席であることに驚いたのも事実である。

ネタバレBOX

ラスト近くの鍵を巡るシーンががカギ。砂利採取船で育ったやすみが、行方不明の船長から預かった船の鍵。やすみを助けたゲンさんも、難破したと思われていた船長も現れ、鍵を求める。その鍵は7つの船(工事船、漁船ではない)を動かすマスターキーであり、結局、干拓工事の元締めの小夜子のものに。しかし、やすみは、小夜子に渡す瞬間、諫早湾の調整池の泥水の入った大きな水槽に落とす。これが、工事を止めさせる、せめてもの抵抗だと、あとでわかった。そしてやすみは自ら死んでいくのだが、なぜ死を選ぶかはわからない。
疚しい理由2021

疚しい理由2021

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/22 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

最初はもたもたして見えるが、新婚妻である後輩が、夫を亡くした先輩女性と、同伴の保険営業マンに「一億円の生命保険にはいります。キリがいいから」というところから、俄然面白くなる。この、予想外の落差。続いてさらに大きな落差がある。責める者と守る者の攻守が逆転しての心理的駆け引きが面白い。

ワンアイディアをうまく転がした短編。50分なのだが、思った以上に時間を早く感じた。巧みな脚本(ブラジリー・アン山田)、シンプルな演出。最初可愛くみえて(「子供扱いしないで下さい」のセリフもある)、後半、怖くなる後輩(小野里茉莉)の、キャラがクルッと変わる小悪魔ぶりに翻弄された。先輩(星澤美緒)の否定したり開き直ったり、怒ったり愚痴ったり落ち込んだりの感情のグラデーションもなかなかだった。

本サイトの口コミが結構評価高いので見に行ったが、行った甲斐があった。

群盗

群盗

CEDAR

赤坂RED/THEATER(東京都)

2021/12/18 (土) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

森の中の貴族の屋敷の東屋風のセット。開幕前、ヨーロッパのアンティーク調の椅子がひとつおいてあって、貴族風だなと思っていると、名家の父と、互いに反目する兄弟の話が始まる。弟フランツ(桧山征爾)は、醜い容貌で父や女の愛も得られなかった妬みから、権力欲に取り憑かれ、兄を讒言し、父を騙す。シェークスピアのリチャード三世やイアーゴーのような悪役である。騙された兄カール(フクシノブキ)は、盗賊団の首領となり、正義と復讐のために多くの人々の血を流す。シェークスピアの人物では思い浮かばず、巌窟王のエドモン・ダンテスか、義賊ロビン・フッドのようだ。私生児で下僕となっている三男がいるのは、カラマーゾフのよう。

老人のカネを若者が奪うのは、無駄カネの有効活用だといい、修道院も平気で襲って女たちを犯すシュピーゲルベルクはニヒリストである。ラスコーリニコフか「悪霊」のスタヴローギンのよう。
兄カールへの愛を貫く聖女のようなアマーリア(高崎かなみ)は、ソーニャかオフィーリアだ。

このように、ヨーロッパの名作の見どころを多数取り込んで一つにまとめたような舞台である。(ドストエフスキーはシラーのあとだから、シラーが影響受けたわけではないけれど)シラー19歳のときの処女作で、「ドイツにシェークスピアに匹敵できるのは彼しかいない」と言われたそうだ。なるほど、さもありなんと思う。終盤のフランツが、自分の悪事が露見して、罪の意識に苛まれて錯乱するのはマクベスのようだ。シラーがシェークスピアから受けた影響は強いのではないだろうか。

三文オペラ JAPON1947

三文オペラ JAPON1947

Pカンパニー

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

翻案ものだが、ブレヒトの原作の筋をほぼ踏襲している。19世紀のロンドンの話よりも戦後の東京のほうが身近で、この設定は成功した。天皇の行幸が重要な話の要素になっている。これは創作かと思ったら、原作も女王の戴冠式のパレードがあるという話だった。絶妙な符合で、びっくりである。一番の違いは進行係(磯貝誠)をつけたところ。各章の内容をはじめに掲げる代わりに、進行係がうまく話を繋げていく。進行係が開けしめするカーテンのようなブレヒト幕も、スピーディーな場面転換でよかった。

ギャングのボスのメッキースこと牧村(大宜味輝彦)が、はじめは存在感が薄いが、牢屋に入れられ、脱獄し、また捕まって絞首台…という展開で、だんだん主役らしくなる。ブレヒトは彼を、ブルジョア=市民階級も一枚かわめくれば、強盗と変わらないというつもりで書いたらしい。ただ、原作もそれほどブルジョアっぽくは見えないし、今回も、そういう「異化」効果は希薄だった。ただ、あまり露骨にやると、説教臭くなる。分かる人にはわかる、というほのめかし程度だから、初演当時大ヒットし、今でも演じ続けられているのかもしれない。

主役以上に、何より良かったのは女たち。乞食の元締めの娘ポリーこと美智子の須藤沙耶はピチピチと輝いていた。いつもの雰囲気よりもスマートで、意志的で情熱的。母親のいまむら小穂も、憎めないしたたかさがあった。情婦のジェニーこと明美のみとべ千希己は、男っぽくさえも見えるほどの図太さで、牧村を裏切るしたたかさを演じていた。歌もうまい。
テーマ曲ともいえる「マック・ザ・ナイフ」のメロディーが何度も繰り返され、耳に心地よかった。
休憩10分含む2時間半。

ネタバレBOX

最後、絞首台の穴に落ちて死んだと思ったマッキーが、天皇に肩車されて、這い登ってくる、この恩赦の演出は傑作だった。
雪やこんこん

雪やこんこん

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2021/12/17 (金) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

小難しいことを考えず、舞台上の苦労、悲しみ、かけひき、喜びを素直に味わえる作品である。初の女座長役の熊谷真実に明るい華と芯の強さがあって、適役だった。前半の、自分の別れた子の話をする「北極と南極をつないだような長ーい話」は、客席の目と耳を釘付けだった。
女将の真飛聖は、初めて見たが、後半のストリップを押し付けるくだりの愛嬌ある迫力は見事だった。新派くずれの二枚目・藤井隆と、元国鉄労働者の女形・小椋毅の悪口合戦、なじりあいも、役柄ぴったりの演技と息のあった掛け合いで、大いに笑えた。

作者自らが「昭和庶民伝三部作」としているが、戦争をテーマにしたほかの二作とこれは明らかに異質である。ぼくは、無理に三部作にしなくていいのではないかと前から思っている。2時間35分

ネタバレBOX

鵜山仁が、井上ひさしは「元役者の元を取る、それだけの話しです」と言っていたと、パンフで語っている。たしかにそのとおりである。どんでん返しに次ぐ、どんでん返しが終わってみれば、最初の母子の再会も、座員の喧嘩やドロン騒ぎも、全ては女将を再び舞台に引き戻すための「お芝居」だったということになる。たったそれだけのために、これだけ、大掛かりな話をこしらえ、座員一同が演じ抜いた。この贅沢な無駄こそ、演劇そのものと言える。

女中のお千代が、セリフがなくてもずっと舞台にいる。お千代が見聞きしたことは女将に筒抜け、という設定なので、みな、お千代に見せるために、仲違いや、梅子座長への不満などを言っていたわけだ。お千代が観客なのである。
大衆演劇の名台詞が、普通の会話にもふんだんに散りばめられている。七五調の歯切れのよさと、比喩やイメージを伴った言葉の枝葉の豊かさ。これ、この芝居全体が、中村梅子一座の「お芝居」だったとわかれば、全てが芝居がかっていたのも無理はなかったわけである。

俳優(女優)を目覚めさせるためのお芝居という点では「キネマの天地」と似ている。芝居讃歌という点では、「元の黙阿弥」も似ているところがある。
Hello ~ハロルド・ピンター作品6選~

Hello ~ハロルド・ピンター作品6選~

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2021/12/03 (金) ~ 2021/12/15 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ピンターが、「景気づけに一杯」のような、政治的な芝居を書いていたとは知らなかった。看守役の石橋徹郎の陰湿な陽気さにすごみがあって、怖い芝居だった。タクシーの本社の指令(上川路啓志)と運転手(藤川三郎)の頓珍漢なやり取りの「ヴィクトリア駅」は、ディスコミュニケーションの滑稽という典型的な不条理劇だった。二人の演技も緩急と余白があって、大いに笑えるピンターだった。
これが、一層大規模に話が食い違いすれ違う「家族の声」「灰から灰へ」になると、寝てしまった。
晩年になって戯曲がはっきりと政治化するのは井上ひさしとも似ている。

GREY

GREY

conSept

俳優座劇場(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

SNSによる言葉の暴力が、若い歌手志望の女性を自殺に追い込む。本作では、攻撃される方だけでなく、攻撃する人の抱えたトラウマ、葛藤も描かれる。被害者、「加害」者が、自分の抱えた魔物と向き合うことで、許しと再生がもたらされる。楽曲も静かなバラードに、いい曲があった。

デビューを目指す若い女性歌手shiro(佐藤彩香)の歌唱場面(ビデオチェックの設定)、そのときに彼女の自殺、救急搬送の知らせが来るところから始まる。なぜ自殺に至ったのかが紐解かれていく。
shiroの大学の先輩で、小説家を目指す矢田(西田藍生)が、構成作家を務めるテレビのリアリティーショー。矢田は自信ありげに振る舞うが、自分の才能に疑いを持ち、書きたい小説もなかなか進まない。軽薄だが出世街道にいるディレクター久世=クゼ(遠山裕介)から矢田は「天然で明るいshiroの人気が、メインの女優(スポンサーが付いて、デビューが内定している)を食っているから、shiroの人気を落とさせろ」と指示を受ける。ところが、なかなかうまく行かず、逆にshiroを局もスポンサーも応援して、デビューが決まる。が…。
西田が目指す物語を語る「素晴らしい物語」と、佐藤が死を考える「もしも私が神様だったら」がこのミュージカルの白眉。両人の歌もうまい。とくに西田は、ここまで聞かせる歌がないので、初めて内面を語る歌には目を見張った。

脇筋の曲だが、リアリティーショーの影の仕掛け人である広告代理店の大物プロデューサー黒岩(羽場裕一郎)が歌う「死ぬのは怖くない」がよかた。私自身、詞に素直に共感できた。「意外と楽しい人生だった。仕事も遊びも満足できた(やりたいことはそれなりにやった=私の解釈)」。そう思えるのだから、「ワーニャ伯父さん」のように思っていたこの人生も、意外と悪くないのだろう。

ネタバレBOX

先輩アナウンサーの九条紫(ゆかり、高橋由美子)がよかった。道化役のように見えて、実は深い心の傷を追っている。娘が交通事故で死んだ怒りに任せて、言葉の暴力で他人(居眠り運転の相手)の人生をめちゃくちゃにしたことで。「許せなかった、やりきれなかった、そのはけ口を正義に求めた」と歌う。芝居の影の主役と言ってもいい。最終盤でのその告白と、「悲しむことの儀式」=死んだ人のことをいい点も悪い点もまるごと心を込めて語るによって、初めて泣くことができるようになる。許しと再生のキーパーソンである。

また、黒岩のいう娯楽の仕組み「(人間は)困っている人から目を離せない、それを利用した遊びが物語」「困っている人を高みの見物、それがテレビ」というのは、怖い真実だ。先日もテレビでコロナ禍で家を失う女性たち、母子家庭をやっていた。これも多くの人にとっては、娯楽の側面があることは否めない。私は、本当に困っている人を行政任せにせず、みんなの力で助ける寄付金・基金ができないものかと思ったが。貧困家庭の子の教育支援のNPOなど、実際の活動例もある。

笑いも所々あるのだが、意外と客席の反応は静かだった。シリアスな題材なのであまり笑いにくいというところだろう。
飛ぶ太陽

飛ぶ太陽

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2021/11/26 (金) ~ 2021/12/08 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

敗戦直後の大事故で147人も死んだのに、占領軍案件なので、新聞はどこも沈黙し、被害者住民の訴えに、弁護士たちはこぞって背を向けた。福岡の二又トンネル爆発事故。この事故を、2週間前に復員して火薬処理作業に参加した朴訥な青年与一(古田知生) と、老いた小柄な母トワ(鈴木めぐみ)を中心に描く。戦争末期に陸軍が秘密裏に運び込んだ大量の火薬、担当した占領軍中尉の無造作な焼却処理、興味本位で見物していた住民を襲った突然の悲劇、肉片が飛び散り、呻き声が溢れる地獄絵。医師(斉藤とも子)と元従軍看護婦(もりちえ)の熱く冷静な現場の采配が見事だった。巡査部長の原口健太郎も好演。

さらに、行商仲間の姉典子(板垣桃子)と、国民学校教諭の妹文子(宮地真緒)の姉妹の話がもう一つの柱になる。どんぐり拾いに行った29人のこどもが巻き込まれて死んだ。文子は自分の病気が良くなるようにとどんぐりを拾いに行った子供らの死に、精神を破壊される。典子はその介護に疲れ切り、妹が死んで涙も流さなかった。そんな自分こそ「破壊されてしまった」という典子。しかも典子はトワと、何も知らずに火薬運びを手伝った負い目もある。両腕を失ったトワと、典子に見られる、傷つき生き残ったもののその後の生活をいろいろ考えさせられた。

長期にわたり、説明するだけでも一苦労の話を、母子と姉妹の悲劇を中心に、心揺さぶるドラマに仕上げた。背景から現場の混乱、事故後の補償裁判闘争、現在の駅舎状況までを、ぐいぐい引き込んで見せた。コロス的住民たちの言葉が、ナレーションでもあり、叫びと訴えでもあって、効果的だった。冒頭12分で崩れ落ちる橋と紅葉🍁のセットも見事。1時間55分

ネタバレBOX

事実を報道しようと奮闘する地元の小さな新聞(筑豊新報)記者(大手忍)の記事を、西日本新聞が掲載し、三日間の続報を行う。占領下の新聞の気骨を示した話だ。また、東京の弁護士が一人だけ「長い戦いが考えられますが、信念を持って取り組みたい」と、住民代表の典子の手紙に答えてくれる。ここで目頭が熱くなった。理不尽を許さず、困難に立ち向かう人の凛々しい姿こそ感動を与える。
彼女を笑う人がいても

彼女を笑う人がいても

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2021/12/04 (土) ~ 2021/12/18 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

及ばずもその志やよし。60年安保の学生運動と、福島の原発事故による避難者を重ねている。それぞれを取材する新聞記者(祖父と孫、瀬戸康史が二役)を中心に、権力の監視・告発の役を投げ捨てた大手メディアを批判する。
メディア批判というテーマは鮮明だが、それが具体的な人間ドラマして描ききれなかった。60年安保の学生の暴力批判の「7社宣言」をめぐる、記者吾郎と主筆(大鷹明良)の対決が、この劇の要になっている。ここは両者の熱演も相まって、迫力ある、考えさせる場面だった。
1時間45分

BRAVE HEART~真実の扉を開け~

BRAVE HEART~真実の扉を開け~

ミュージカル・ギルドq.

光が丘IMAホール(東京都)

2021/04/07 (水) ~ 2021/04/10 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

メディア批判が多い中、頑張る新聞記者が成功する、明るく前向きな舞台だった

ダウト 〜疑いについての寓話

ダウト 〜疑いについての寓話

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2021/11/29 (月) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

緊迫感がハンパない恐ろしい芝居だった。舞台60年代のアメリカのカトリック男子校。厳格な校長のシスター・アロイシス(那須佐代子)が、生徒にも信者にも人気のある気さくなフリン神父(亀田佳明)に疑いを持つ。生徒にイタズラをしているのではないかと。何の根拠もない。しかし、若いシスター・ジェームス(伊勢佳世)が、校長の疑いに影響され、唯一の黒人生徒ドナルド・ミラーが、神父と二人きりで話した後、様子がおかしかったと報告に来る。
校長は神父を呼び出して問いただす。これも、逡巡し、嫌がるジェームスを説き伏せて同席させて。最初、クリスマス会の話題という口実を持ち出し、人気の雪だるまの歌も異教的だと批判する校長の「不寛容」を神父がネタにするなど、ユーモアもある。

校長の追及に神父は「はっきりさせない方が生徒のためになる」と逃げていたが、ついに折れ、ドナルドがミサで隠れて祭壇のワインをのんでいたのが見つかり、それを庇っていたと説明する。しかし、校長は神父の説明に納得せず、執拗に神父の正体を暴こうと絡みついていく…

血の通った人間なのか、正義と信念だけの塊なのか。厳格な正義と、寛容な優しさとの対決。那須佐代子なので、厳しい校長にも人間味が感じられる。しかし、神父に対する疑いは、言いがかりとしか思えない。不寛容な潔癖さが人間を追い詰めていくのは、魔女狩りの「るつぼ」を思い起こさせた。あるいは罪のない噂から無実の人間が追い詰められて行くリリアン・ヘルマン「子供の時間」とも重なる。アメリカの、左翼作家がこうした主題を度々描くのはなぜだろうか。大衆の誤まれる一方的行動への恐怖を身近に感じることがあるのだろうか。

ドナルドの母と校長のシーンでは、そっとしておいてくれという母親と校長の狙いがぶつかる。ここでも家庭の秘めた事情と、生徒の意外な素顔もわかってきて、一層、校長のやっていることは平穏をかき乱すだけに見える。それでも、校長は神父に「告白しなさい」「学校を出て行きなさい」と追い詰めていく。スリリングな1時間50分だっった。

ネタバレBOX

フリン神父が、「真実は曖昧で、さまざまな問題を孕んでいて、説教にむきません。譬え話がいいのです」という。この芝居のことを言っているようだ。校長が暴こうとする「真実」が人を傷つけるという意味で、あるいは、この芝居も譬え話だから人々に教訓を与えられるという意味で。この相矛盾する二つの意味で。

神父と校長の対決で、神父は盛んに「司祭に言えば、あなたが辞めさせられる。出ていくのは私ではなく、あなただ」という。そうなるのかなと思っていると、大逆転で、最後は神父が出ていく。(司教に面談して、栄転という形だけれど)

最後になってみると、もしかしたら神父には悪癖があったのかもしれないという疑いが残る。「全てを話すことはできないんです」と泣き言を言うところもある。校長が前任校のシスターに電話して、前科があることを掴んだ、というブラフを否定仕切らなかった。校長は「出て行ったことが、彼の告白よ」というが、そうとも言い切れない。神父にすれば、校長を追い出して、外で行動の自由を与えると、逆に自分への攻撃がエスカレートするので、自らが出て行ったとも受け取れる。どちらの言い分が正しいのか、曖昧という点では「アンチゴーヌ」のようでもある。
糸桜 黙阿弥家の人々ふたたび

糸桜 黙阿弥家の人々ふたたび

新派の子

日本橋公会堂ホール「日本橋劇場」(東京都)

2021/11/29 (月) ~ 2021/11/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

台本は読んだことがあるが、舞台で波乃久里子さんや喜多村緑郎さんの声と仕草で見ると、また格別の面白さで、いい舞台だった。蚊帳を張っての本読みの場面や、「作者になるのは止める」と訴えたあとの諍いなど、波乃久里子さんの可愛さと喜多村さんの優男ぶりに見とれた。
坪内逍遥の只野操も貫禄があった。勘当された元養子でおいの三五郎(市村新吾)も、憎めないコワルぶりがよく、女形を思わせるようななよやかさがあった。

ネタバレBOX

最後「お前は私の本当の子だから」という場面にはやられた。血の繋がらない者同士が本当の家族になる、というのは「嘘から出たまこと」だ。
鴎外の怪談【12/16、12/19、12/25公演中止(12/19は1/30に延期公演決定)】

鴎外の怪談【12/16、12/19、12/25公演中止(12/19は1/30に延期公演決定)】

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2021/11/12 (金) ~ 2021/12/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

松尾貴史の鷗外がすごくハマっている。コミカルな雰囲気の松尾にこんなに鷗外が似合うとは意外だった。おかげで、出色の舞台になった。戯曲のいろんな細部や仕掛けも生きている。
嫁姑の争い、エリスを裏切った負い目、津和野で少年の時に見知ったキリシタン弾圧、鷗外の俗友にして引き立て者の賀古鶴所(池田成志)、紀州のドクター大石の助命をすがる女中(木下愛華)、遊び人だが根は真面目な永井荷風(味方良介)等々。「沈黙の塔」「食堂」の、大逆事件批判を込めた鷗外の作品の解釈もうまくハマっていて、非常に楽しめた。

作者は初演の7年前、特定秘密保護法と共謀罪に危機感を持ってこれを書いたそうだ。しかし当座の政治課題を超えて普遍的な意味を持つのが優れた文学の力だ。権力に首を垂れるメディア批判として今に重なる。朝日新聞連載の「危険なる洋書」とか。司法が政府の悪政を追認して、三権分立が果たされないのも今日的だ。

ネタバレBOX

最後、薙刀を振り回して鷗外を止める母(木野花)の迫力も凄まじかった。こちらもあっけにとられて、山縣有朋への直訴をあそこまで決意しながら、結局実行しない鷗外の行動に納得させられてしまう。
イモンドの勝負

イモンドの勝負

キューブ

本多劇場(東京都)

2021/11/20 (土) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

物語よりも、その場その場のコントを楽しむような芝居。ブニュエル的な笑いと、パンフでケラ氏は言っているが、私はモンティ・バイソン的なずらしの笑いが多いと思った。くだらないことでとにかく笑わせて、3時間飽きさせない。

ジャンケンで大倉孝二が勝ち続けたり、三宅弘城が後出ししても負け続けたり。火事で死んだはずの人たちが、ノコノコ起き出して「この人たち、自分が死んだと認識してないだけ」と言われていたのが、実際死んでなかったり。「生まれ変わった良い探偵です」「どこが変わったの。前と変わんないじゃない」「いや、言ってみただけです…」等々。書いても笑えないし、キリがない。
芸達者の俳優たちで実際笑える。105分、休憩15分、80分。計3時間20分。

蜘蛛女のキス

蜘蛛女のキス

ホリプロ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2021/11/26 (金) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

よかった。牢獄の政治犯と同性愛者の話なのに華やか。同性愛者のモリーン(石丸幹治)の憧れの大女優オーロラ(安蘭けい)が、モリーンの苦しいときほど明るく艶やかに歌い踊る。石丸の歌、安蘭の抜群のスタイルと歌が魅せる。
1幕100分2幕60分、休憩20分。オケが生演奏で13人もいた。かなり贅沢な編成。奥で演奏してスピーカーで響かせていたが。

ネタバレBOX

政治犯のバレンティン(村井良大)に、反政府派の厳しさと確信が感じられないのは残念。わがままな青二才のよう。原作の小説と比べると、政治的内容がかなり薄められているのも残念。
ラストのモリーナの死は、納得しにくかった。原作は違ったはずと読み直すと、やはり違う。原作はバレンティンの反政府活動への協力が、命の危険に関わるから死ぬ。舞台では、バレンティンのブルジョアの恋人への伝言になっている。その秘密を守って死ぬというのが、ピンと来なかった。活動と無関係のブルジョア娘を、政治犯の恋人というだけで、権力は拷問したり危害を加えたりしないだろう。
ニュルンベルクのマイスタージンガー【8月4日、8月7日公演中止】

ニュルンベルクのマイスタージンガー【8月4日、8月7日公演中止】

東京文化会館 / 新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2021/11/18 (木) ~ 2021/12/01 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前奏曲は有名だが、全曲ははじめてみた。素晴らしかった。第一幕、第三幕はワーグナーの芸術論になっている。芸術の判定を一部の職人から民衆に解放せよ、韻律や形式にしばられた古い芸術の枠を革新せよ。一幕でマイスターの指導者であるザックスはそういいつつ、三幕ではマイスターに認めてもらうことも重要なのだといって、騎士ヴァルターに、形式に(ある程度)寄せた詩作を手伝う。芸術における伝統と革新、変化と持続の両面の尊重がある。

音楽としても大変聴き応えがあった。前奏曲にあるモチーフが一幕のマイスター会議では散りばめられていて、耳に馴染む。2幕はザックスとエーファの抑制されたロマン的音楽は見事。ちなみに3幕でザックスは「トリスタンとイゾルデの悲劇を知っているから、マルク王の幸せを望まないんだよ」という。自作への言及で、ほほえましい。トリスタン的なうねりある音楽や、あちらでは最後の最後に響いた調和の和音が、こちらではヴァルターの「優勝の歌」の導入に際立って鳴るのも、うっとりさせられる。

2幕はほかにエーファとヴァルターのかけおち、ベックメッサーのコミカルな(にせエーファの窓辺での)ロマンス曲、ザックスのハンマーによる妨害(快調なリズムはジークフリートの鍛冶場面を少し思わせる)等、聞きどころが多い。エーファがザックスをしたいつつ、ヴァルターを選ぶ、自立した女性として現れるのも、現代の女性客には共感的だ。知り合いの女性は「1幕より2幕がずっとおもしろかった」といっていた。

そして3幕、「春だけでなく、辛く苦しい秋や冬にも春を歌うのがマイスター」など、セリフもいいものがある。ザックスの歌う「妄念」と血みどろの争いを批判する歌も素晴らしい。歌くらべの開始を告げる豪華絢爛音楽は、前奏曲を再現するようで、これぞワーグナーという圧倒的高揚を作り出す。すばらしい。
2幕ラストの喧嘩シーン、3幕の民衆のまつりのシーンなど、民衆性も高い群衆シーンが素晴らしい(指輪4部作などにはないもの)。これらはワーグナー自身が見た喧嘩や、祭りから着想しているそうだ。現実から学んだ部分と言える。

男性歌手のきかせどころの多い作品だが、いずれも素晴らしかった。やはり主役というべきザックスのバリトンはピカ一だった。休憩30分2回を含み、全6時間。95分ー70分ー2時間10分という超長丁場だが、全く飽きなかった。大傑作の見事な舞台である。

ネタバレBOX

ラストにザックスが、ドイツ芸術を保持してきた「マイスターを敬え」と、外国のガラクタに対してドイツ讃歌を歌う。「妄念」の歌を聞いたときは、反戦思想に見えたが、ここにきてナショナリズム(国粋主義)が前面に出る。ナチスが利用したのもうなずける。(ベックメッサーの扱いが可哀想と思っていたら、やはり以前から指摘があるそうで、ワーグナーの反ユダヤ主義が反映しているらしい)。
今回の演出は、最後の最後に、エーファにマイスターの肖像画を破り捨てさせ、ヴァルターと去っていかせる。ドイツ芸術讃歌をひっくり返す。あっと驚きの幕切れだった。
愛するとき 死するとき

愛するとき 死するとき

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2021/11/14 (日) ~ 2021/12/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ドイツの芝居は滑らかな物語で観客を癒したりしない。非ドラマ、アンチ演劇の舞台。ドイツ演劇の全てがそうではないだろうが、なぜか日本で紹介されるのはそういうタイプが多い気がする。
終始、説明役(コロス)がいて、これが演技にすぎないことを思い出させる。場面は断片的で、人々が苦しむ原因は背景を匂わせるだけ。東ドイツ時代を知る人には大きな喚起力を持つかもしれないが、日本の客にはぼやけた世界で少々歯がゆい。政治を背景にしているのに、セリフは「セックス」を語る方がしばしば。

東ドイツ時代、1979年の高校生時代を描く第一部。壁の中の無邪気な青春。映画監督になるため、西へ行こうとした級友(前田旺志郎)はハンガリーとオーストリアの国境で拘束されて、懲役へ、そして兵役へ。40分

第二部が見応えある。映画撮影(監督=浦井健治)のような形で、父が亡命し、母(高岡早紀)と兄弟(小柳友、前田)、かつての抵抗派の同志で12年の収容所生活(クリーニング)を終えたおじさん(浦井)の暮らし。弟の担任の女教師山崎薫)の存在がいい。今は厳格な体制派だが、かつては同志だった。夫(浦井)は辛い経験(内容は不明)で、セイシンを病む、腑抜けのようになっている。その家に母が、弟ペーターのことを頼みに、金(多分ドル)を持ってくる。1時間

第三部、壁は無くなり、ドイツ統一後。妻子と別居中らしい男(浦井健治)は、ミックスの女(高岡早紀)と出会う。男と女のモノローグが交互に続き、対話はない。壁は崩れたのに、幸せはこなかったというかのよう。ただ言明と孤独だけが残った。壁の向こうという「夢」があっただけ、社会主義体制の方が良かったというかのように。20分

休憩が2回、各15分あり、2時間半
芝居の内容についてはこちらが参考になる
https://enterminal.jp/2021/11/aisurutoki-report/

ネタバレBOX

第二部の最後、兄弟、結局弟が車で国境を越えようとして止める。恋人アドリアーナ(岡本夏美)のために。でもおとうとが兵役に行っている間に、女は他の男と。時間だけが過ぎていく。
第三部最後に男は「こうして惑星は消えた」と呟く
イロアセル

イロアセル

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2021/11/07 (日) ~ 2021/11/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

面白い設定なのだが、なんか馴染めない芝居だった。言葉に色がつくところを、グレーの壁や天井にカラフルなインクがワッと広がる。影の薄い町議の白い服が、町長の黒い発言で、黒く色が変わる。こうした設定のビジュアル化は面白かった。

俳優のセリフがやけに大声で怒鳴り合う場面が多い。あんなに力む必要あるだろうか。色のない匿名の発言が、悪意や妬みをどんどん広げていくのだが、そんな話なら芝居にしなくても、先刻承知である。色つきの言葉より、無色透明の言葉が自由と解放をもたらす面が前半はあって、そっちの方が新鮮だった。
俳優の出入りにも偏りがあって、「あのこ(町長、父親など)なかなか出てこないなあ」とか、余計なことを考えてしまった。

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