JANIS
DULL-COLORED POP
タイニイアリス(東京都)
2008/10/08 (水) ~ 2008/10/13 (月)公演終了
満足度★★
難しい…
これは…… 感想をまとめるのがなかなか大変。
それなりに充実した時間・空間を過ごしたけれど
演目の中でジャニス作品&主演 武井さんの歌が
かなり大きなウェイトを占めるため、
「ジャニス=ジョプリンが興味深かった」
「武井さんの歌が素晴らしかった」
という感想になる。
芝居としてどうだったのか問われると…
うーわからない。
☆☆の理由はそこで、歌とジャニスが良かったので
「わざわざバンドセットを組んだ劇場に行かずに、
スタンディングのライブハウスでカバーバンドを
聴くだけにしたかった」と思ってしまった。
また、劇団員の女優2名は大変インパクトのある
芝居で存在感を残したが、
劇団員とそれ以外の俳優になんとなく
力量の差が見えた。
芝居パートは、歌と比べて圧倒的ではなかった。
そういったところも、芝居が演奏に対抗するのに
不利な要素だったかもしれない。
見ようによっては「演奏を見せるための芝居」
のようにも映った。(AVのドラマ部分みたいな)
曲数を少し削って、もうちょっと劇団員の仕事を増やし、
「芝居」を観せてくれるか、
芝居を無くして完全に演奏だけを観せてくれるか
どっちかがよいと思った。
実際は演奏時間をトータルしても上演時間の
3分の1くらいにしかならないのかもしれないが、
観客として観た時のインパクトは歌が7割だった。
演出意図としては「歌はモノローグの代わりで、
演奏パートも芝居の一部」なのだろうけど、
ジャニスについて全く知識のない俺は、
「演奏を聴きながら、字幕でリリックを読んで
芝居の状況と重ねて味わう」なんて作業は
一度にできず、フツーに歌を聴いていた。
フツーに歌を聴いちゃうと、曲ごとの違いは
あんまりわからないし、芝居とつながりにくい。
「ジャニスを聴き込んでいる人(たとえば作者 谷くん)
にとっては芝居」なんだろうなーと思った。
この劇団、旗揚げから全作品を観ていて、
出演させていただいたこともあるから
どうしても過去作品と比べてしまう…。
今回は旗揚げ公演と同じくらい不安定で、
若くて、芝居として楽しみにくかった。
また、大変充実した傑作であった第2回公演
(画家 ユトリロの生涯を劇化)と比べると
危なっかしかった。今作のほうが第2回公演みたいだった。
ひらかなくてもよい
COLLOL
アサヒ・アートスクエア(東京都)
2008/10/04 (土) ~ 2008/10/05 (日)公演終了
満足度★★★
生・万華鏡
言葉と声がきれいな模様を描いて散らばっておりました。
生・万華鏡。
万華鏡であるがゆえに、いつまでも続いてくれていいし、
いつ終わってくれてもよい。
舞台上にごろ寝しながら観たかったかも。
Aメロ ⇒ Bメロ ⇒ サビというありきたりな展開ではなく、
テクノ的な発想で創られているのが興味深かった。
声に特徴がある俳優が多く、さらりと喋るだけで
鮮やかにステージが彩色される。そこも素敵だった。
値段相応のクオリティーを誇っていたが、
脚本なり演出なり役者なり美術なり、圧倒的なもの
は特になかった。
舞台上に散らす万華鏡なら、維新派のほうが上手だ。
絡まりあって、カラメル。
オッセルズ
TAROZ(東京都)
2008/09/27 (土) ~ 2008/09/27 (土)公演終了
満足度★★★
酒のつまみに芝居?!
芝居のつまみに酒という公演はけっこう増えたのでは?
『4×1h Play』でもビールを販売していたし。
椿組など野外系はいつものこと。
ライブハウスやカフェで芝居するのは当たり前になりつつある。
でも、「酒のつまみに芝居」という公演は少ない。
というか初めてだった!
主宰の河野真子さんの意図がそこにないとすれば
大変失礼な感想になってしまうが、
「呑みに行くきっかけになる芝居」という点において素敵な企画だった。
店のチョイスもよい。終わって呑みに行く手間も省ける。
いろんな人とコミュニケーションを取れる。
「店」と「酒」という存在なくしては一切成り立たない公演。
なんというか、商才を感じた。
すさまじいポップ感。
家でテレビ観てるよかこっちのほうが断然いい!!!
三人の役者のセレクトもいい。
テレビドラマより品があって、映画よりとっつきやすい感じ。
ピース!!!
4x1h Play #0
4x1h project
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/09/20 (土) ~ 2008/09/28 (日)公演終了
満足度★★★
軽食で満腹
観劇前に疲れてたって平気なお手軽さが◎。
手軽なのに2000円に見合う濃い内容だった。
軽食だからってコース料理よりランクが下がるかって言ったら
そうではない。観てよかった。
おいしいものを少しだけ食べることが幸せな日曜の昼もある。
満足度は「ひとさまにみせるもんじゃない」が☆☆で、
「いそうろう」が☆☆☆☆。
俺が快快を観たことがないということが影響してんだろうか??
「いそうろう」素敵だった。快快が観たいと思った。
観たことがない人が観たくなるんだから
この企画のこの作品の上演は成功だと思った。
シンプルでどちらかというと『整った』ルデコの空間。
模造紙にペンで絵を描いていく演出や、2名の俳優のプレイが
見事に『散らかった部屋の中の散らかった心情』を現出させていた。
スムーズに共感できるという点、あっさりしてるけど軽くないという点
において、まるで角田光代の短編小説を読んでるかのようだった。
「舞台上で深呼吸ができる演劇」の創り手と相性ぴったりの逸品だった。
『ひとさまにみせるもんじゃない』はこのメンツ・この演出家で上演する
意味が分かんない!ってくらい不満だった。
『いそうろう』で快快が観たくなったのと逆の意味で、柿喰う客が観たくなった。
柿食う客から「色気」と「悪さ」「と「音楽」を引いた感じがした。
「生真面目さ」や「良識」や「努力」を感じ、音楽に頼らん分
役者衆がけっこう無理無理にリズムをつくっているような気がした。
完コピするか、全く違うものにするかしてくれたほうが
観客としては良かった。
※完コピするなら … もっと華のある役者衆のほうが良い。
※全く違うものにするなら …
たとえば、台詞量をめちゃめちゃカットして、たたみかけずに喋り、
静かでリアルな演出を施したら、別役芝居みたいな不毛なシュール感を
出せないだろうか。
と、批判するからには代案を出して終わります。
葡萄
THE SHAMPOO HAT
ザ・スズナリ(東京都)
2008/09/10 (水) ~ 2008/09/23 (火)公演終了
満足度★★★★★
繊細かつ大胆。
いつも自分の知らない世界へ連れてってくれるシャンプーハット。
全く想像がつかない「30代後半所帯持ち」という異界。
様々な事情が複雑に絡みあう舞台上は、
見てくれだけは毎回シンプルだが、
何とも形容し難い微妙な空気を度々発する。
ドラスティックに照明音響が変化するわけでもなく
過剰な演出はほとんどない。でも、飽きない。
睡眠時間3時間以下でも眠くない。
観る者がどんどんと舞台上に色をつけていけるんだよな。
何気ない一言でも、観客の中で充分に色付けがされた
劇中で発されると爆弾級の破壊力を誇る。
脚本演出家と俳優陣の力関係が互角に思える。
俳優が主宰だと、二権分立になるのだろうか。
それがすごくイイ。「このメンツで創ってます」って感じがする。
作家のことも俳優のことも心底尊敬する。
※また、客演の起用法・劇団員と客演のパワーバランスもgood!
ネームバリュー関係なく、ばっちり役を想定してベストな
役者を使っていた。
東京戦争 戦後秘話~地獄三景・真夏の夢
大谷蛮天門 (「演劇無宿」)
planB(東京都)
2008/08/29 (金) ~ 2008/08/30 (土)公演終了
満足度★★★★★
演者がそこに立つ意味。生きる意味。
元風の旅団 大谷蛮天門さんの反戦授業。
作品ではない。もちろん演劇でもない。
これは、テント芝居の鍛錬に裏打ちされた
生き様の証言であった。
一人の男の思想がとめどなく溢れる舞台上。
聴かせる声。もちろんスキルあってのことだけど
彼の言葉に一番説得力を持たせているのは本気の想いだ。
思っていることをストレートに書いて、ストレートに叫んでいる。
特に大震災後の在日虐殺に関するモノローグ、
戦時下のダム建設現場でのモノローグは
真に迫るものがあり、グッと引き込まれた。
蛮天門さんがワンカップをあおってよたよたと
千鳥足で歌うアリランは、儚げで情けなく
なんとも言えない味わいがあった。
その軽妙な立ち振る舞いの奥に、
「俺は差別や暴力を排してゆくんだ」というダンプカーのような
力強いバイブスも感じ、感動した。
また、朗読イベント『謳わず騙れ』で対バンしたことのある
蜂蜜劇場の伊牟田耕児さんと、
知人のアルチュール佐藤さんがサポートアクトを担当しており、
それがまた最高だった。
二人とも十二分にテント芝居のキャリアを積む怪優である。
特に伊牟田さんの真髄を知って痺れる。
痙攣しながら鼻水垂らし、半裸でキノコを齧って
浮き輪を抱いて叫ぶ台詞は尋常ならざる狂気を帯びており、
意味はわからぬが、とにかくカッコよかった。
『浮き輪の空気穴から世界を覗いておりました!!』
この熱量と勢いを舐めてはいけない。
まず、思想統制されているといえる唐組よりも彼らは自由だ。
また、どんどんメインメンバーが減って磁力を失っている
(と俺は思っている)新宿梁山泊や水族館劇場よりも、
この3人が放つグルーヴのほうが断然調子いい。
3人とも若者とは言えないベテランなくせして絶好調なのだ。
東京に住んでてよかった。衰えないアングラぶりを観ることができた。
熱すぎる。 ……の割りに一般人に無名すぎる。
こういったライブをコリッチで紹介せんでどうする?って思う。
もっと皆に知って欲しい。
台詞(言葉)の力を使わずに存在感だけで勝負して
勝てる気がしねー先輩方は、多くいるほどイイと思う。
俺は悔しいから稽古あるのみだ。
40歳を越えたらこんなカッコイイ大人の河原者になるんだい!
国道五十八号戦線異状ナシ
国道五十八号戦線
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2008/08/28 (木) ~ 2008/09/01 (月)公演終了
ポケットパーク
劇団恋におちたシェイクスピア
pit北/区域(東京都)
2008/08/15 (金) ~ 2008/08/17 (日)公演終了
満足度★★★
美意識の宇宙
独特でした。音と光の使い方にこだわりが感じられ、
ダンサーをフィーチャーしたりと進んで冒険する集団。
台詞の言い方も、全員が抑揚なくつらつら喋るのが
印象に残りました。主宰の方のビジョンが濃いというか。
それに座組みがきちんとついていってるというか。
自分のイベントの打ち上げで朝まで呑んで、残務処理して
その後の観劇であったせいか眠そうにしてしまい、
演者の皆さんに申し訳なかった…。
(ナユタさん、ごめんなさい!)
ただ、眠くなるというのは、このチームの問題の一つでも
ある気がした。主宰が一番濃くて、他の演者のプレイが
皆薄いと感じた。
看板役者みたいな人って必ずしも必要ないと思うが、
独特な世界を具現化するには説得力が必要で、
主宰より強い奴が数人いないと心もとないと思った。
もっと酔っちゃいなYO!
主宰と同じくらい酔えて、酔ってもカッコイイ俳優を!
※ダンサーの方はたっぷり酔っていて、
酔っててもカッコよかったので例外。
由比正雪 ゆいしょうせつ
流山児★事務所
本多劇場(東京都)
2008/08/09 (土) ~ 2008/08/12 (火)公演終了
満足度★★
足し算のプロデュース公演
期待して行ったが、マジックは起きなかった。
チケット料金に見合う保村・奈佐・塩野谷・伊藤・沖田・イワヲ氏の
貫禄あるプレイ。でもそれは観る前からわかっていたこと。
ミラクルがほしかった。
また、初演時とは時代の空気感が異なる現代に再演する意味を
考えてしまった。どのくらい原作に忠実なのかわからないが、
脚本を半分書き換えるくらいの大胆なアレンジが必要だったかもしれない。
血が出て幸せ
クロムモリブデン
新宿シアタートップス(東京都)
2008/07/29 (火) ~ 2008/08/03 (日)公演終了
満足度★★★★
フロントマンがいっぱい
共演者に薦められ、初めてクロムを観劇。
レシピ・材料・調理法ともに相性ばっちし。
また、具沢山な印象。具が大きい。多い。
次から次へと華やかで力強いフロントマンが登場する
Jリーグ開幕当初の東京ヴェルディのような元気なチーム。
ひょっとこ乱舞・ダミアン・キリンバズウカと
板倉チヒロ氏が客演する舞台は何回か観てきたが
客演先でやたらと際立つ彼の「身体性」や「華」は、
ホームチームだと良い意味で目立たなかった。
チーム全体が上げ潮に乗っているような勢いを感じる。
そのグルーヴを感じて愉しむだけなら、もしかすると
日本語が分からない人でも幼稚園児でも可能かもしれない。
何が起きているか、そんなにチマチマとチェック入れながら
観なくても、絵を見ているだけでいい気分。白昼夢のよう。
ダンスシーンとか乱れ舞う色彩がとてもキレイ。
もっともっと近い席で観たかったなぁ。
次回の円形、対バンも派手でいい感じなので足を運びたい。
事前に眠くならない程度にアルコールを入れて
ツラに近い席で観れたら。
閃光
reset-N
王子小劇場(東京都)
2008/07/24 (木) ~ 2008/07/28 (月)公演終了
満足度★★★
「私演劇」じゃなくてもよかった
●「私演劇」じゃなくてもよかった
約4年ぶりのreset-N観劇。
なんだか悲壮感に満ちた感じで
「挑戦している」「苦境を打開しようとしている」
気合が漲っていた。
けど、俺は夏井さん個人やreset-Nの内情には興味が無くて
単純に4年前に観た作品『Rose』が素敵で、
今回時間とお金の都合がついたから観に行ったのだった。
だから、「ヌーベル何とか」という宣言や「私演劇」という新提案は
むしろ無いほうが素直に物語を愉しめたなぁ。
というのが観劇後のストレートな感想。
夏井さんパートを全部カットして、舞台上の
2組のカップル・先生・劇団員の女性だけの物語にしたら……
きっとreset-Nとしては「たいして新しくない」のだろう。
でも、無理して「新しく」しなくてもいいのにって思う。
夏井さんパートがなければ☆☆☆☆☆だった。
フライヤーに「皆さんの期待をかきたてるような
何かを書かなくてはいけない」と書いてあった。
劇中にも「自己ベストを更新してゆかねば」(?)
みたいな台詞があった。
「ベスト」や「期待」は客が勝手に判断するもんやし、
好きなもん好きな時に書いたらええやんって思う。
(フランス寄りの考え)
これまでも、そうやって自らにプレッシャーをかけて
書いてきたのだろうけど、作家の無理してる感に
あまり好感が持てなかった。
ありえないことだけど、「私演劇」という今回の試み自体が
reset-Nの演技だったらトリッキーで気持ち悪くて面白いなぁ。
夏井さんのプライベートは全然違って、
実は離婚していなくて…とか。
でも、そんなことは当然ありえない。残念。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
●「私演劇」をやるなら
この作品の「私演劇」というフレーズが何故こんなにも
気になったのかというと、これを書いている自分自身が
最近「私演劇」ばかりやりたくなって、「演劇」を辞めた
からだと思う。
(さらに、現在ちょうど締め切りに間に合わせるべく新作執筆中)
「私演劇」の世界はけっこうドープで中毒性が高くて
たしかに魅力的。朗読のオープンマイクなんかに出ると
皆「私演劇」である。
交通事故で障害を負って、満足に身体が動かないことを
満足に回らない口で叫ぶ詩人がいて、感動した。
友人にも私演劇ばかりやっている者がいて、
自らのぜんそく治療体験なんかをネタにして劇中で独白する。
なので、俺は決して「私演劇」に否定的なわけではなく
むしろ興味関心があり、「私演劇」好きとして
実は今作を肯定的に観たかったのだ。
でも、なんとなく無理してる感&中途半端感があって、
それほど肯定的に観ることはできなかった。
どうせ「私演劇」とするならば、夏井氏自身が作家を演じ、
劇中に元妻とのシーンまで創り、町田カナさんも出演して
いたら本当にスリリングだったのにと思う。
それは中途半端じゃない。それはヤバイ。それは観たい。
四方を観客に囲まれた中で、本音を言い合うのだ。
夏井さんに興味がなくとも、そこまでリアルな企画なら
期待しちゃう。
でも、そんなことは当然ありえない。残念。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
※俳優陣のプレイ、スタッフワークは大変素晴らしく、
立派で、お金を払うに足るものだった。
特に客演の俳優さんの活躍が目立ち、うっとりした。
吉田ミサイル7時間一人芝居・第三弾《夏だ一番!ドラえもん奉り》
東京ディスティニーランド
タナトス6(東京都)
2008/07/26 (土) ~ 2008/07/26 (土)公演終了
満足度★
ある一線を、越えた。
大変ヘビーな7時間30分……。
「演劇ではない」のは当然としても、
最早「舞台芸術」や「パフォーマンス」の
領域からも少々逸れてきていると感じた……。
「何かを観に行こうとしている人」には
今回のイベントは向かなかったかもしれない。
吉田ミサイル本人から
前日にスタッフ宛のメールが届いて
以下のことが宣言された。
・「あしたの公演は公演ではありません」
・「僕が舞台をやるのではなく、
僕そのものがただ居るだけ」
・「面白くするつもりも
つまらなくするつもりもありません」
まさに…その通りになった(笑)!
なので、俺は付き合いきれるが
とてもじゃないけど友人知人には
薦められるものではなかった。
「作品」として各演目がかなりの密度と迫力を
もって並び、「公演」としての充実度を感じた
3月の『ロンダルキアでピクニック』が懐かしい。
今後の吉田ミサイルの世界の創作の動向が
大変気になる(もしかしたら転機になるかもしれない)
自分にとってはいわくつきのイベントであった。
つーかカンパ制のホームパーティーだった(笑)。
それでも不満が無いのは、彼が事前に宣言していたから。
つまり、狙って行われている逸脱だからである。
それが彼のやりたいことなら興味があるし、関わりたい。
逆に客としてはちょっと勘弁!!!
むじなの逆襲
劇団河馬壱
ウッディシアター中目黒(東京都)
2008/07/25 (金) ~ 2008/07/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
ノスタルジーと別役的おかしみ
奇妙な劇団である。
昨年も観たが奇妙。
しかし、昨年の免疫があるため
「観方」がわかってきた俺は今年異常に楽しめた。
詩的な言葉の羅列と、珍妙な替え歌。
いくつも重なるイメージのコラージュのような
シュールなシーンの数々。
別役作品ばりの不思議な静けさ漂う脱力系。
こみあげてくる「おかしみ」はじわじわと
観る者を侵食する。
50歳近い劇団員達(最高年齢65歳)は、
加齢のためか日常的に稽古をしていないせいか
声がでなかったり動きにキレがなかったりと
一部問題はあるのだが(笑)、
やたらと存在感があり、チャーミング。
手勢を巧みに配置する
演出 中川さんの力量を感じさせた。
また、今回は作家がよかった。
戻れない少年時代の「あの夏」や
いつの間にかなくしてしまった
思い出のアイテムに捧ぐ優しくも
寂しげなイメージのオブジェ90分。
夏を感じました。
戻れない夏も感じました。
この戻れない90分のことを
来年の夏もまた思い出すのだろうな。
おそらくこの芝居を観に来た20代の客で
こんなに感銘を受けている者はいないだろう(笑)。
観劇時の体調や気分の影響もあるのだろうが
あまりにもグッときたのでコリッチにアップした。
2008年7月27日、東京で上演されている芝居の中で
一番面白かったのではないかと思っちゃうほど、
今年の河馬壱はキレキレだった。
デビットリンチの映画より河馬壱だ。と言っとく。
戦国HEROES
YANKEE STADIUM 20XX
シアターサンモール(東京都)
2008/07/18 (金) ~ 2008/07/27 (日)公演終了
満足度★
TVより軽薄な、笑い。
話題のヤンスタを初めて観劇。
俺にとっては苦行のような3時間15分。
4000円支払って、苦行。
本当に応援してやりたい教え子が出演していたので
途中で帰るわけにはいかない。意地になって最後まで観る。
かなりの忍耐が必要だった。
原因の一つは構成にある。
10分ほどのベタなショートコント、ダンス、アクションが
物語上に計15個くらい配置されていて
休憩一回を挟んで延々見せつけられるのである。
ダンス・アクション・コント・芝居と
どれが一番やりたいのか不明瞭であった。
おそらく全部やりたいのであろう。
でも、この演出力じゃ不可能だと思った。
「織田信長が爽やかに暴れて、謎の悪鬼集団と対決する」
というよく分からない安易なストーリーだったが、信長を演じた
座長の独裁っぷりを想像すると、この劇団自体が織田軍団
のような狂った偏りをもって見え、怖かった。
何故かロビーの壁に(トイレの中にも!)座長や劇団員自作の川柳が
いくつも貼ってあり、こりゃヤバイと感じる。
構成に加え、「笑いの感覚」が合わなかったことも
観ていて苦しくなってしまった一因である。
昭和のセンスだ。ドリフみたいなのである。
そのため、子どもからお年寄りまで楽しめるメジャー感が
あったが、ちょっとあまりにも安っぽ過ぎる。
小中学生向け(=ヒーローショー寄り)といった感じだった。
(※注…別につまらないわけじゃないし、笑えないわけじゃない。
たとえば、休日の浅草花やしきで15分観るだけなら
充分楽しめるものであった。)
首謀者のセンスに疑問を感じたが、
出演者の皆さんは皆チャーミングでキラキラとしており
観ていて愛着の湧くキャラクターばかりであった。
特に加藤清正役の山崎タカヤスさん、
濃姫役の田島実奈子さんの二人が素敵だった。
また、オーディエンスのテンションも高かった。
お客さんが舞台に上げられたり、コールアンドレスポンス
があったり、ダンスシーンでは皆起立して踊ったり(笑)。
そうだ。皆、この劇団をTVでスマップを観て楽しむ感覚で
応援しているのだ。劇団員一人一人を愛してる感じがした。
ううう。俺はTVを観ないけど、TVの笑いのほうがだいぶハイレベルで
視聴に4000円もかからないし、マシだと思った。
これと同じ感覚を過去に二度味わったことがある。
とある筋との付き合いで、渋谷公会堂に第14帝國の公演を
観に行った時。99%が女性客でかなりアウェイであった。
途中でお客さんにプレンゼントが振舞われたりする。
二度目は仕事の付き合いで前進座劇場に声優の関俊彦さん
が出演する舞台を観に行ったとき。
劇中で関さんが出てくるとすごい拍手が起こったりする。
こういった公演は動員・興行成績共にかなりの業績を
上げていそうで複雑な気持ちになる。
俺の中でますますポツドール支持を固めた観劇でした。
「ポツドール、こいつら全員、ぶっつぶせ。」
今の気持ちを川柳にしてレポを終わります。
GEIDO
48BLUES
アトリエフォンテーヌ(東京都)
2008/07/11 (金) ~ 2008/07/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
これぞGIG
48ブルースを初めて観た。
彼らは公演をGIGと呼ぶ。BOWYかっての。
とても流行らないことを高いチケット料金で演っている。
それなのに、俺を含めて客席の満足度は高かったように思える。
何故か。好感度(親しみやすさ)とギャップ(起伏や意外性) の
なせる業だと思う。
演出が人懐っこい。だから、つかこうへい的なストロングスタイルが
下地にあっても、鹿殺しや柿喰う客などの若手人気劇団に
通じるポップさやチャーミングさがあった。
バンマスの虎さんを中心にチームが一枚岩で、
スキルのあるなし関係なく燃えていた。
このGIGをやることに萌えていた。
そういったグルーヴ感はすごく大切で
むしろ俺は観劇に行く際には、脚本の内容とか演技スキル
ではなくてグルーヴを体感しに行く。
これが48だ!という生き様が、それを伝えたい熱意が
ステージに篭っており、凄まじい殺陣の迫力とともに
オーディエンスを惚れさせていた。
終演後晴れやかな気持ちで劇場を去った。
目当てのヤナカケイスケさんは
こんな真夏の太陽のような人たちの中、
独り晩秋の哀しみを帯びて存在しており(笑)、
その陰がいい意味で作品を深めていた。
「芝居ジャンキーの光と影」が本作品のテーマだと
すればヤナカさんの存在が影を象徴していた。
来月、初めてヤナカさんに役を書く。
この「影」を使わん手はないなと思う。
とにかく、お見事!
みみ
東京ネジ
アトリエヘリコプター(東京都)
2008/07/10 (木) ~ 2008/07/17 (木)公演終了
満足度★
レシピと材料は上質。
「耳」というテーマをもってきた時点で
作家の感覚が素敵だなと思う。
唐十郎のクラシックス『ジャガーの眼』では
眼球を移植して見た幻が客席を翻弄するが、
本作品は耳だ。
音を拾う。会話をする。そして単純に穴。
性感帯にもなり得る。耳って不思議。
耳をテーマにしたオムニバスになるところを
全部くっつけて120分にした感じであった。
役者は佐々木なふみさんが圧倒的によかった。
こういった幻想譚は作家が直接表現するに限る。
過去共演者の清水那保を応援しに行ったので
彼女についても書く。ホームチームと比べて
余裕が感じられて楽しかった。黒くない清水那保は
フツーにまっすぐな少女で、引力は下がるが
これはこれでポップでよいのでは。
今度はもっと「いかにも」じゃない役をくれる客演先に
出会えるといいね。
演出はつまんなかった。
起伏に欠け、2時間が長く感じられ、暑く、退屈。
こういった小劇場芝居の形式ではなく、
エアコンの効いたリクライニング席がずらーっと並ぶ
ようなところで佐々木なふみさんに脚本を朗読してもらい、
ビール片手に聴いていたい。作家自身による60分位の
リーディング。そういった形態でもこのホンの表したいものは
表現可能なのではないだろーか。
観客が舞台を観続けるには
作品に好感(知名度や親しみやすさ)とギャップ(起伏や意外性)
が必要だと思う。
時間堂・MU・柿喰う客などで
堀越さん・大塚さん・なふみさんに好感をもっており、
今度一緒にイベントやる北さんが音響で、
応援したい清水那保が出演している時点で
俺の好感度は100%
なのに飽きた。
起伏が少ない。
本当に皆こんなものをありがたがって観ているのだろうか。
おしゃれっぽいし、注目度の高い若手小劇場役者が出ていて、
コリッチで話題に上がっているから、流れで足を運んでいるのでは
ないだろーかとさえ思えてくる。
脚本の方向性が好みなだけに
大人し過ぎる演出が残念であった。もっとドキドキさせて。
決斗、高田馬場
タナトス6 プロデュース
タナトス6(東京都)
2008/06/28 (土) ~ 2008/06/29 (日)公演終了
御酢!演劇亜種異種親善試合!
吉田ミサイルと久堂秀明の一人芝居対決。
両者が1時間ずつの一人芝居を披露した後、
最後は時間無制限でセッション(エチュード)する内容。
俺は吉田ミサイルの世界の照明でした。が、観てきました。
何故なら、台本を読んでプランを組んだのが当日午後。
一度も通さずに本番を迎えたからです。
オペしながら観ました。
そして、最後のエチュードでは、何故かスタッフなのに
いきなり出場機会が与えられ、出演しました。
過激派で知られるアバンギャルド劇団、
北区うかおうへい劇団の演出家という役を考案して演りました。
いろいろ疲れる現場ですが、ライブの空気は秀逸。
今回が良い意味で親善試合だったからでしょう。
対戦相手のクドヒデさんは楽園王などで長いキャリアの
あるベテラン。大変やんちゃですが良識のある狂いっぷり。
俺はこのショウは演劇ではないと思っているのですが
大きなくくりでいえば演劇です。演劇公演でコール&レスポンス
が起きてるのって初めて観たかもしれない。
最高にピースでした。会場は4時間半、爆笑の嵐でした。
しかし、吉田ミサイルの世界の一観客として思うのは
吉田ミサイルの世界の真骨頂は今回のような
「瞬発力頼みのサブカル演芸」じゃないのではないか
ということです。もっとドープに作品をつきつめて欲しい。
台詞を覚えて舞台に立って欲しい(笑)。
それと、台本が前日には欲しい(切実)。
吉田ミサイルの世界は、イキウメよりファンタジックになれるし、
庭劇団ペニノと肩を並べるほど奇想に満ち、
ポツドールより人間賛歌を歌える可能性があるカンパニーだと思います。
……ちゃんと稽古すれば(笑)。
とゆーわけで、関係者としては☆☆☆☆☆、
観客としては☆ってとこでしょうか。
※残席情報※
6月29日(日曜)も18:30から追加公演があります。
残席ありますので、気になる方は是非!
料金はカンパ制ですのでいくらでもOKです☆
俺を縛れ!
柿喰う客
王子小劇場(東京都)
2008/06/18 (水) ~ 2008/06/30 (月)公演終了
満足度★★★★
「新しい」の意味
初めて柿を観劇。巷でよく「新しい」と言われていて気になっていたけど
ようやくその意味がわかった。
観劇して最初の30分は、速い台詞回しとか、ふざけたテイストとか、
ショウ的な要素が強いステージを「新しい」と評されているのかと思い、
少しがっかりした。しかし、それは勘違いだった。
ネタバレにはならないと思うので全部ここに書くが、
何が違うって「玉置怜央」さんという役者の存在が新しかった。
今回の公演しか観てないから今回に限ったことなのかも
しれないけど、何てゆーか怖かった。怖い。
舞台上における
中屋敷法仁と玉置怜央の関係って他にあまり観たことがない。
江本純子と町田マリーでも
金守珍とコビヤマ洋一でも
こまつみちると本井博之でもない。
丸尾丸一郎と菜月チョビでもない。
強いて言うなら一番近いのが唐十郎と大久保鷹だ。
危なっかしい感じ。「座組そのものが喰われるかもしれない」
というドキドキ感が観ていてあって、それが中屋敷さんの
作品のスリリングさを飛躍的に向上させていたと思う。
バッキバキに演出がついてる独特な舞台だし、
作演出家のリーダーシップたるや凄まじいものであろうことが
容易に推測がつくが、何で彼(玉置怜央さん)だけが
あんなにも獣のようにフリーなのだろう。
それは演目後半の「ある出来事」に限った話だけではなく
一人だけちょっと別格だった。作品そのものと格闘してる感じ。
声量・テンション・動き・集中力・狂気性・華が
ばっちり揃っていて感動した。
ちなみに、他の劇団員はポジションが守備的だったこともあり
おとなしめ。(客演のなかでは、村上誠基さん、
梨澤慧以子さん、佐藤みゆきさん、堀越涼さん
が大変魅力的で、今後も毎回出て欲しいくらいだった。)
とにかく、稽古場では演出家が強大であろうことが
予測できるのに、舞台上ではそう見えないカオスが
渦巻いていて、それはおそらく意図された想定内の
ことであるところが凄い。パンクだ!!!
※単純にショウ的な要素や、台詞回しの斬新さや
集団ダイナミズム・スピード感・いかがわしさ・ギャグ
・物語の独創性という点だけで柿が好きな人は、
遊眠社の昔のビデオ・毛皮族・コマツ企画・鹿殺し
新宿梁山泊なんかを観たほうが良いのではないか?
柿喰う客にはそれらの劇団がどこも持っていない
人を食ったような尖がったパンク精神やスリルがあって、
それこそが「新しい」・「初めてだ」と自分は思いました。
特に役者に関しては(玉置氏は別として)スキル
だけなら例えば少年社中の井俣太良さんのほうが
動ける・叫べる・踊れる・笑いが取れると思いました。
でも、スキルとかそういうものが一番の売りではない
ように感じ、そこに観客としてすごく好感を持ちました。
これからも都合がつけば是非公演を観にいきたい!
蜥蜴少女 対 蛇人間
東京ディスティニーランド
新宿JAM(東京都)
2008/06/13 (金) ~ 2008/06/13 (金)公演終了
満足度★★
ストイシズムと逞しさ
セシル企画に遊びに行くのは3度目だ。
今までと全く違ったのは「中学生棺桶」と「ハニカム」という
本当にカッコいいバンドが2つともステージに立たなかったこと。
圧力が弱い。眠い。ヌルイ。
ストーリーの端々でモザイクをかけ、謎めいた新境地を見せた
「吉田ミサイルの世界」と、
ラガマフィンのようにまくしたてる漫談フロウで聴かす「今村つぐみ」は
良かった。特に今村つぐみさんは身一つで喋るだけなのに、
トリにふさわしいパンチの効いたライブだった。
さて、冒頭でヌルイと書いたが、それは「これまでと比べて」という意味。
当然ドラムの音もなく、マイクも使わない演目だけだったのだから
「音圧」という意味での圧力は無いし、ソロが多かったので演者の
総数も減った。表現圧力は弱くなって当たり前なのだ。
しかし、ある意味でそれは意図されたようにも感じられ、
そこにオーガナイザー セシルさんのストイシズムと逞しさを感じた。
遠藤ミチロウも、吉井和哉も、奥田民生だって、ソロになった当初は
リスナーから寂しがられることもあったに違いない。
でも、ソロアーティストにはソロの味わいがあるのだ。
「バンドサウンドを離れてこそ匂い立つもの」を追求していく
悶絶マーメード a.k.a セシルを今後も観て行こうと思った。
誰も寝てはならぬ
国道五十八号戦線
明治大学和泉校舎第二学生会館地下アトリエ(東京都)
2008/02/21 (木) ~ 2008/02/25 (月)公演終了