TOCTOC あなたと少しだけ違う癖
株式会社NLT
ザ・ポケット(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
心の疾患を題材に、こんなにポップでエキサイティングな作品が出来上がるなんてフレンチコメディー恐るべし(笑)
役者さんの存在感には各々華があり、交錯する会話も実に賑やかなる長編喜劇でした。
患者さんが一人増えていくごとに、面白さが増幅していき患者さん全員が揃ったところでMAXに。
そのまま揃い踏み状態がずっと続くのですから、つまりはMAX状態がず~っと続くということ。
治療を試みるシーンでは、観ているこっちも思わず力が入り、その後プッと噴き出してしまいました。
この作品で炸裂する笑いの法則のひとつには、昨年のM―1グランプリで3位に輝いたジャルジャルの可笑しさと通じるモノがあると思ったのですがどうでしょう。
軽快なテンポと絶妙なノリがとても重要、見事な連携プレーでした。
コマギレ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/04 (月)公演終了
観終わっても暫くはじっとしたまま余韻に浸っていたい、と思う公演でした。
ラビット番長さんの将棋モノはこの作品で3度目ですが、将棋の知識が無くても大丈夫というか、むしろ知識無い方が純粋に楽しめるのではないかと思えるほどです。
フィクションと分かっていながらも、ひとつひとつの試合の行方に固唾をのみ、その結果から生まれる物語の流れに心地よく乗ったまま、とうとう最後の試合へと流れ着いてしまいました。
千秋楽、主演・雪島さら紗さんの本当のラストステージ。最高に輝いていました。
人魚のウタ
ガンガンガング
シアター711(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★
旗揚げ公演でありながら、もう既に脂が乗っていましたね。
生命力弾ける演技の見事にまとまっている感「人魚のウタ」ワールドがしっかり出来上がっていました。
人間に捕らえられた人魚は意外と控えめな印象で、その人魚を取り巻く村民達の思惑がビシバシ駆け巡る物語。
特に人魚をかくまう兄と、世間に疎い彼等を利用して甘い汁を吸おうとする男との1対1の掛け合いは火花バチバチ、観ていて壮観でした。
村全体に教養さえあったなら、違った展開になっていただろうに、ユーモアの中に無知なる人間の恐ろしさが漂ってくるこの感じ・・・知らず知らずのうち集団の中の一人として残酷な言動をとったまま、分かった風でやり過ごしている可能性・・・他人事ではないかもしれないと思うと空恐ろしい話です。
サンカイ
やみ・あがりシアター
サンモールスタジオ(東京都)
2019/02/27 (水) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★
やみ・あがりシアターの定石とも言えるウィットに富んだやり取りに加え、魅せるテクニックにますます磨きが掛かって、客席も超満員。イイ感じにイイ流れに乗った劇団さんという印象です。
それにしても、別れる?別れない?こじれた関係の各階を這いずり回るヘビっていったい・・・なんて不思議な発想力。
同じ年月を共有した者同士ならば泥臭さをもう少し・・・とも思いましたが、ヘビ出てきますから・・・なんちゅう奇妙なスパイス。
人がひしめき合い各々の自我が交錯する集合住宅、変幻自在 やみ・あがりシアターの館でした。
WEEK END
劇団ピンクメロンパン
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/02/20 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
いろんな味が混ざり合って一言では言い表せないテイストの群像劇。
訳あり家族や個々が関わり合うことで巻き起こる予想外の展開は、様々な特性を持った人間を駒にしてハプニングを楽しむ、ちょっと残酷な神目線なゲームみたいです。
ある人間は人狼や共犯者であり、ある人間はまんまと餌食となり、ある人間は見事脱出成功みたいな・・・
最初はどの様に観て楽しめば良いのか戸惑うところもありましたが、勝手が分かってくるごとに世の不条理に巻き込まれる人間模様を俯瞰で観ているような感覚に。
独特の世界観。不思議な立ち位置で観ている気分にさせられる作品でした。
グッバイ・ルサンチマン
劇団サラリーマンチュウニ
上野ストアハウス(東京都)
2019/02/21 (木) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
サラリーマン、OLでありながら同時に舞台俳優。
それに甘んじない為、貴重な休日・土日をフルに使って稽古されてきた姿が目に浮かんできますし、何より自ら楽しむことも忘れず演じる姿勢にほっこりします。
ストーリーは、一部で大人気のカリスマ作家とお騒がせ女性との奇妙な同棲生活・・・のみならず「玉の湯」の存続問題、更には怪しげなヨーガ集団も登場。10周年記念作品だけあり何とも盛り沢山。
私としてはサラリーマンチュウニさんって「サザエさん」の世界観がきっと似合うのではないかと思いながら観ていました。
一家モノでなくとも、ごくごく何気ない日常の可笑し味に時事ネタを添えた作品。
誰もが身近に感じられる魅力が最大に活かせるのではないかと思えるのです。
あじさい
大森カンパニー
本多劇場(東京都)
2019/02/20 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
2015年の初演も拝見しましたが、もう一度観たかった作品。
会場は初演時の中野テアトルBONBONから本多劇場へ。
ロビーに入って当日パンフを丁寧に手渡してくれたのが何と主演の役者さんだったのでビックリ。
キャパは随分大きくなりましたが、距離間は近い!
作品としても変わらぬ心地良い時間が流れてきました。
舞台となるのは年季の入った建築会社の元請け食堂。
ここに集うのは現場のおっさん達とカタコトのホステスさん(この女性めちゃくちゃ可笑しい)
おっさん達の日常会話、背中を丸めて飯を食う姿、がなる笑い声、どれにも味があって生命力に溢れています(小浦一優さん=芋洗坂係長が新キャストで更にパワーアップ)
若いもん達も加わって動き出す人情劇場。
温かいダブルコール、熟練のほっこりパワーをたっぷり頂きました。
幕が上がるなら
演劇商店 若櫻
ひつじ座(東京都)
2019/02/16 (土) ~ 2019/02/21 (木)公演終了
満足度★★★★★
舞台裏のあれこれ、これでまたひとつ詳しくなってしまいました(笑)
特に今までぼんやりとしか把握していなかった舞台監督(&舞台監督助手)にもしっかりスポットが当たっていたのが新鮮です。
ストーリーはさながら毎回開演30分前になって様々なトラブルに見舞われる楽屋を描いたフジテレビ深夜ドラマ『GAKUYA~開場は開演の30分前です~』のスペシャルバージョンの様な雰囲気で、本作ではトラブルを引きずったまま開場、開演へと突入していきます。
本作はドタバタコメディーであり、それに必要不可欠な力量が役者さん達には充分備わっていたと断言できるものの、笑いの沸点までには達することができず・・・各回ごとの微妙な空気感で受けたり受けなかったり、とも考えられますし、内容として劇中劇公演が上手くいくか、いかないか、リアリティーの妙の加減かなと思ったりもしましたが、そんなことは割とどうでも良く、結論として本作が良く無かったかといえば、否よかったのです。
キャラ立った面々。やり過ぎ一歩手前の絶妙なテンション、小気味よいテンポで可笑しなトラブルが次々と・・・確信的な笑いの連鎖・・・のはずなのに起きない爆笑・・・役者さんの胸中は如何に。
いやいや役者さん達、全く動じもせず気持ちの良い演技を続けるのです、最後まで。
これは作中で描かれる劇団の姿ともリンクして、何とも言えない素晴らしい感慨をもたらしてくれました。
個々の心意気もあるでしょうが、劇中と同じ演劇を創る面々の、強い結束力がなければここまで心に迫ってこないはず。
”show must go on” の精神。偶然私も含め観客の反応が大人しい回だったかもしれませんが、それ故に突き刺さる観劇となりました。
最期の作戦行動
有機事務所 / 劇団有機座
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2019/02/15 (金) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
有機座さんの作品は3度目の観劇となりますが今作品が本来の規格路線だったのですね。
「なるほどなぁ」と過去作の経緯を鑑みながら、納得しながらの有意義な公演でした。
舞台は1980年頃の喫茶店。
新たな出逢いが生まれる交流の場として、何ともまったりした時間が流れておりました。
まったりが過ぎるのじゃないかと言えなくもなく、表現のぎこちない方もおられましたが、もし全てが効率的で完璧な演技であったなら。と考えると、それもまた違う気がしています。
隙がある処が味になるという事か、上手く表現できないのですが・・・
舞台上には演者として気概ある方が多く、小劇場ではこの気概がダイレクトに伝わってくるので、かなり有効な強味だなと思えたのは確かです。
あ~ぁ劇友さんがいれば、あーだこーだ色々ツッコミしながら帰りたかった!
そう思わせる魅力。
良くも悪くもひっくるめて人間味の詰まった舞台、結論は「とても楽しめました!」です。
Collapthree ~SF3x~
MANIAX
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2019/02/13 (水) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
マルチBバージョンを観劇。
会場に入ると既に男女4人の演者さんが舞台でフリートークを。
ステージ映えする華のある容姿と、イイ感じに温まっていく会場に、演劇ではなくまるで音楽ライブに来たような雰囲気。
そして演出家さんがフリートーク終盤に登場、黒ずくめながらもう完全にバンド系でしょう(笑)
ここで演出家本人から事前の簡単な作品解説が入るのですが、中々に凝った設定であることを知りちょっとビックリ。
この解説、観劇を楽しむうえで随分助かりました。
ジャンルとしては下北沢カルチャーと秋葉原カルチャーが融合した、といえばいいのでしょうか。
冒頭での現代風刺の効いた斬り口の角度や深さがあまりに絶妙なので、もっと多用してほしいと思えたほど。
ひと公演3パートで構成される組み合わせは、マルチエンディングを含め全5通り、何だかカプセル玩具が出てくるガチャガチャみたいです(笑)
若い役者さんばかりなので同年代中心の観客層かと思いきや意外と中高年のファンの方々も多く、ライブ感と共に和やかな雰囲気の中、楽しめました。
世界で一番可哀想な境遇の人々
劇団ボンボヤージュ!
APOCシアター(東京都)
2019/02/09 (土) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
今をときめくIT業界ではあっても下請は社畜の宝庫?!その他の業界エピソードにも結構なリアリティーが。
タイトル通り、全くもって報われない可哀想な人々のオンパレード。
めくるめくドツボの数々を全て笑いに昇華していく爽快感がたまりません。
ミュージカルのオマージュは時折無駄に迫力があって、いや妙に巧ければ巧いほど異様な豪華さ&面白さに拍車がかかって、冒頭からこちらのテンションもあがってしまいます。
存在感ド~ン!ミュージカル演技の巧い役者さんの散在が、高ポイント要素のひとつだったのは間違いないかと。
ドラマとしても誰の動向にも目が離せない丁度いいブス加減の人間賛歌“超大作”でした。
大安不吉日
ウィークエンドシアター
Arise 舞の館(東京都)
2019/02/02 (土) ~ 2019/02/23 (土)公演終了
満足度★★★★
身も心も普段着の気軽な気持ちで参加できる披露宴。
歌舞伎町の地下を降りると、さっそく式場スタッフ(役者さん)がうやうやしく案内してくれるトリップ感が嬉しい。
受付で飲物を注文した後、式場に約20席ほどある好きな座席へ。
コの字に並んだ、どこも特等席。
どんな式になるのか。途中花嫁が逃げ出すのは知っちゃ~ぁいるものの、新郎新婦の入場!やっぱりワクワクします。
途中、来るべくしてやってきたトラブルのリアルに説得力を持たせるのは中々難しいものだと思いながらも、乾杯やケーキカット(お約束の記念撮影)、ゲーム等々々心地良い気配りの数々、楽しい披露宴でした。
先週観劇レビューをされたオヤジ♪さんの指摘どころであった噛みは現在きれいに解消されています♪
非日常の中にスルッと入る事ができる面白い企画公演でした。
『十年希望』
きくち万ゴールディング
ワーサルシアター(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
大学卒業を迎えたサークル仲間の男女8人。
今どきの若者らしいというか、皆 ウェ~イばかり(笑)
10年後も変わらぬ友情を誓った彼等のそこから先の物語。
当然、実社会に出たからには、いつまでもそのノリで通用しない訳で・・・
毎年、集合して各自の夢や近況を映像に記録する「約束の日」が節目になっており、1年ごとに変化していくそれぞれの「現在」の姿。
移ろいゆく状況、友人として自分ならこういう場合どう対処するだろうと想像しながら興味深く拝見しました。
ありそうな話、おめでたい話、良くない予感は、そのまま良くない状況へ・・・奇をてらうことの無い実直な演出は、円熟の演技ではなくとも実直に演じる役者さん達にはとても合っていたと思え、もう腰さえ許せばいくらでも観ていられるし。
どうにもこういった話にはめっきり弱くなってしまい、途中からウルウル状態キープのまま最後の「約束の日」を迎えてしまいました。
劇としては最後でも、その先まだまだ人生は続いていくのですね ウェ~イ
年を重ねても誰も老けていかないのが難点ですが(笑)切なく好感のもてる公演でした。
この海のそばに
えにし
「劇」小劇場(東京都)
2019/02/05 (火) ~ 2019/02/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
前作「クラゲ図鑑」は警察からの事情聴取というカタチをとり、主宰前田氏と母親との過去を粛々と紐解くように描かれた作品。
そこでは、若くして独り残されてしまった主人公の孤独と、彼を取り巻く歴史の壮絶さにただもう驚くばかりでした。
その後、この公演をきっかけにドキュメント番組「ザ・ノンフィクション」に取り上げられ、局の後押しで前田氏が25年ぶりに故郷の韓国を訪れお世話になった人々や,何と存命しておられた生みの父親と再会するシーンも興味深く拝見することに。
縁があって更に更に深く母親の歴史に向かい合うことになった前田氏はこの取材を通して何を思ったか、今回の「この海のそばに」にはその答えがあるように思えて楽しみにしていました。
本作「この海のそばに」は件のテレビ取材を通したカタチ(取材形態は演劇的に脚色を加えているとは思いますが)で、前半にていま一度、経緯の再現。
前作に比べると落ち着いた目線で主要な事実ひとつひとつを淡々と振り返る感じだったものの、やがて来る運命の日が近づくにつれ詳細な描写へと・・・
何より印象的だったのは現実に対して受け身的な印象だった青年が、取材を受ける本作ではひとまわり大きくなっていたこと。
自分自身を演じられた前田氏はつらい過去を背負い、想像もできないご苦労もされてきたでしょうが、しっかり事実と向き合って人と痛みを共有し、これだけの仲間の協力のもと、その思いの丈を発信できる環境を持てるまでに辿り着いたのは、とても素晴らしいことだと思います。
これ以上の供養はないと思えますし、劇団「えにし」さんの礎的な作品ともなるでしょう。
入場時にはジトジト降っていた外の雨が、終演後カラッと上がっていたのが何とも象徴的でした。
夜が摑む
オフィスコットーネ
シアター711(東京都)
2019/02/02 (土) ~ 2019/02/12 (火)公演終了
満足度★★★★★
異彩を放つセットに、普通じゃない時間がこれからやって来るであろうと予見させるものの、役者さんが舞台に現れると予想など軽く飛び越えた普通じゃない時間がやって来た!
演劇だからこそ伝達可能な唯一無二の表現テクニック、そしてナルホドこの原作を体現するにあたって選び抜かれた役者さん達だと大納得。
酸いも甘いも噛み分けた人達が創り上げる世界なので、さぞかし順調な過程の中完成された作品なのかと思いきや、この世界観実現のために、相当難儀して出来上がった賜物であることが、後に当日パンフを読んで分かりました。
そんな作品を・・・つくづく有難いです。
安普請なマンモス団地の中の一室。
彼にとっては耐え難い、他人のふてぶてしさに飲み込まれそうな夜。
心の城が壊れないよう必死に自身を守ろうとする男の心は、哀しいことにもう充分に壊れていて、うっかりこちらもリンクしてしまと・・・ヤバい、想像しただけでも空恐ろしいです。
甘美を含有した狂気。作者の方は実際このレベルまで追い込まれた経験があるとしか思えないほど突き詰められた表現世界だと思いました。
公演中の艶∞ポリスさんといい、またもやこの地で発見の芳醇な演劇パラダイス。
下北沢の底力を思い知りました。
PARTY PEOPLE
艶∞ポリス
駅前劇場(東京都)
2019/01/31 (木) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
沢山笑えて、いろんな意味でなんだかゴージャス!
お金がある人・ない人、様々な人達のお金に対する価値観の違いも面白く、金銭感覚と人の相性ってニアリーイコールかもしれないとか、何かと思いが巡るところの多い作品でした。
それにしてもパーティーピーポーの面々。
全ての舞台上人物がちゃんとそこに息づいているかのような描写力が素敵です。
表面上の生態に思わず吹き出しながら、ちゃんと内面までもが届いてくるのだから、いやー大したもんだ。
desnudo Vol.16「牛女」
ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
MUSICASA(東京都)
2019/01/30 (水) ~ 2019/02/01 (金)公演終了
満足度★★★★★
母の情念を切なく訴えかけるこの物語は読書という形でも伝わってくるわけですが、生々しくも美しい肉体に物語が宿り表現される迫力といったら
農作に勤しむ村民達の生命力・・・牧歌的でありながらもヒシヒシ伝わってくる労働者の高揚感
子猿のようにじゃれてまとわりつく息子を大きなガニ股で軽々とあやしつつ、彼を育て守るため力仕事も厭わないパワフルで温厚な母の表情・・・ずっとそのままでいて欲しいと願わずにはおられない蜜月のとき
母親の病魔にも気付かず甘えてくる息子をしっかりおんぶしながら、滲み出る苦悶の表情・・・例え死んでも息子を守り抜こうとする決意の表情
原作から想像した今回の舞台化は、どちらかというと「静」のイメージだったのですが、移りゆくシーンのひとつひとつは、時には切なく優しく、時には心撃ち抜くド迫力でもって実に表情豊か、最初から最後まで心揺さぶられっぱなしで圧倒されっぱなし。
思い返せばただただア然と見入っていた時、演者さんと一瞬目が合い「呆けた顔を見られてしまったなー」と(笑)
鍛え抜かれたドラマチックな動き、その動きで舞い上がる風、繊細な腕の表現力、ダイレクトに身体に響いてくるステップ。
あり得ない程間近でフラメンコを鑑賞したのは初めてでしたが、心から素晴らしいと思いました。
もちろん生演奏。尺八が和の差し色になっており、絶妙なパルマ(フラメンコの手拍子)奏者、語り部の染み入るような声、成長した息子の心情を歌詞にのせた歌唱、全てが融合して完成された本作はフラメンコを超えた極上のエンターテインメントといっても過言ではありません。
紫猫のギリ
アミューズ / ジェイズプロデュース / アミューズクエスト
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/01/23 (水) ~ 2019/02/03 (日)公演終了
殺陣シーン満載のビジュアル系時代劇という意味では今流行の「刀剣乱舞」的作品といえばいいのでしょうか。
シアターグリーン BOX in BOX THEATERで公演される本格的な時代劇といえば時代絵巻AsHさんのイメージが強いですが、こうしたビジュアル系作品が客席と距離感の近い劇場で公演されるというのもなかなか貴重な事ではないかと。
妖術で化け物に変えられた怪人の衣装デザインが素晴らしく、そこから漂う何ともいえない哀愁は往年の仮面ライダーを彷彿させました。
陽だまりの中で
林家畳
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2019/01/23 (水) ~ 2019/01/27 (日)公演終了
80年代、北陸のスナック。
ノスタルジックな世界観と方言に癒される~(笑)
母(スナックのママ)と一人息子を中心に、常連客、流しの女性歌手、息子の友人達が織りなす人間模様。
母親の愛情を息子がことごとく突っぱねてしまう姿が何とももどかしい。
ちょっと裏の世界を臭わせながら、じんわり泣けてくる物語を丁寧な演技でとても心地よく堪能できました。
哀しいエピソードが多く、ともすれば哀しい色が濃厚になりそでならないのは、ほんわりとした母親の温かみ。
そして極楽とんぼの山本さんが醸し出す笑いは、芸人であるメリットが活かされ良いスパイスになっていました。
『天国への登り方』
アマヤドリ
あうるすぽっと(東京都)
2019/01/24 (木) ~ 2019/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
「安楽死を推奨する町」という、ちょっと風変わりな世界観ながら、見入るほどにこれって将来無きにしもあらずな設定じゃないかと思えてきました。
「どんな死に方をしたいか」という問いには色んな答えがあり、自分だけの問題ならばそれぞれが下した個々の正解とも思えますが、看取る側の想いが加わると本当に考えさせられます。
熱い議論が交わされる中、自分と正にジャストフィットな意見を力強く述べる女医役の方がいて、非常に小気味よいと共に、劇中に参加している様な気分にもなりました。