コナンが投票した舞台芸術アワード!

2023年度 1-10位と総評
チョークで描く夢

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チョークで描く夢

TRASHMASTERS

実演鑑賞

あまりに胸がいっぱいに、感動に包まれ終演後しばらく席を立てなかったです
長きに渡って知的障害者雇用を続けてきた企業の物語ではありますが、社会生活を営むうえで、全ての人に共通する大切な考え方がギッシリ詰まった公演であったと強く思いました
できるだけ多くの方々が、可能であれば一緒に働く会社の人達と(学生さんであればクラスメイト達と)観劇して感想を共有することが出来たのなら、かなり貴重な体験になるのではないかと願いにも似た気持ちになりました

TRASHMASTERSさんの公演であるから徹底した取材をもとにリアルな迫力をもって訴えかけてくる作品であろう事は過去の公演で実証済
なので障害者雇用に伴う問題点やその会社の奮闘ぶりを部外者の立ち位置からドキュメンタリー的な観点で堪能するつもりだったのですが、いつの間にか一緒になって解決の糸口を見つけだそうと躍起になっている
登場人物それぞれの想いを噛みしめてはどうすればいいのかと困り果て、どっぷり作中にハマり込んでいました

障害者と健常者、いやそれだけでなく色んな立場の人間が己の利益や尊厳をかけてぶつかり合うのは至って自然な事
現実にはもっと自己中心的な人間(他者の事情を一切気にかけない人間)がいて、ただでさえ難しいコミュニケーションを修復不可能にしてしまう事もあり得るわけで、その方がよりリアルかと一瞬思ったりしましたが、あえてそこまでの配置をしなかったは見事な英断
全ての事には意味がある
とことん他者を理解しようという意義と難しさ
その先に待ち受けている「幸福」がテーマであったと思えました
力強く とことん深い、素晴らしかったです

生きてるうちが華なのよ TAIAI

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生きてるうちが華なのよ TAIAI

グワィニャオン

実演鑑賞

ゾンビ系の映画やテレビ番組を何作か見た事がありますが、街中をぞろぞろ徘徊する気味悪さや、モンスターにしては動きや知能が鈍いちょっとお間抜けな感じ、元々は下町の日常を生きて来た善良な人達なのに…といった不条理感、追い詰められた人達からなる個性たっぷりなせめぎ合い等々、面白いとされるゾンビ作品には必須な萌えポイントがほぼ押さえられていました、お見事!
それに加えてオリジナル生舞台こそのオモシロがいっぱい詰まっているものだから、可笑しいやら怖いやら哀しいやら、もういろんな感情に揺さぶられっぱなしの2時間15分でした
この状況、貴方ならどうする?と じりじり迫ってくる場面も大きなポイント
観終わってから改めて見るフライヤー表紙が何とも味わい深い

歴代ゾンビ作品の名作紹介においてはどうしても映像作品ばかりになりますが、演劇界での金字塔として是非取り上げて欲しい公演

瀬戸内の小さな蟲使い

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瀬戸内の小さな蟲使い

桃尻犬

実演鑑賞

登場人物達の置かれた状況がとんでもなく面白い!
生で観劇しているからこその緊迫感から一時たりとも目が離せない
のに加えて、そこからポロポロこぼれ落ちてくる人間性の妙味を思いっきり堪能できてしまう仕組みがもう天才的
こんなに人が困っているというのに笑ってしまって良いのだろうか…と思うくらい、ヤバい!人間というものがあまりにも面白過ぎる

“蟲使い”というキーワードは特に後半から生きてくるのだけれど、もうその頃には妙ちくりん能力もすっかり受け入れ態勢モードに
あぁそうなったか、そうか、そうなっちゃったかぁ…申し訳ないが、可笑しい(笑)
この公演自体が舞台空間の空気感を自在に操ることのできる”空気使い”だったのではないかと思えてくるほど鮮やかなシーンさばきの“瀬戸内の小さな蟲使い”ワールド

老若男女、全タイプの観客が固唾を飲んで楽しめる全方位型エンターテイメントでした、力強くお勧めします

しあわせのかたち

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しあわせのかたち

藤原たまえプロデュース

実演鑑賞

めっちゃ親しみやすいホームドラマ
ホームドラマならテレビで観れば良いって?いやいや全然違う!
引き込み力が違う、一体感が違う、そもそも生の迫力が全く違う

心のツボを突いて容赦なく笑わせてくれるこの感じは三谷幸喜作品にも共通しているなぁと感じたのに加えて、思いっきり笑った後に優しく染みわたってくる感慨深さはもう格別
これって最高の心の栄養源だと思う
特に地方に実家がある人にお勧め
共感とか色んな思いがないまぜになってしみじみ、そして思い出し笑い
良い表情を沢山観ることができました、ホント面白かった!


長男さんの役柄が演劇人で、観ているうちに劇団ノーコンタクツ(残念ながら活動休止中)の茗原直人さんとオーバーラップしてきました
喜劇にぴったりな面白い役者さん
弟妹がいらっしゃるなら劇中みたいなやり取りもあったのかもしれない と思わせるリアル
実家に帰られてお母さんと元気にされているかなぁと
何だかいろいろと刺さります

イエスタデイランド

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イエスタデイランド

青春事情

実演鑑賞

時代の流れに取り残された遊園地、そこで働く従業員たちの日常
この遊園地における日常的なやり取りだけでも わび・さび ある可笑しさと言えば良いのか、大変そうな中にも思わず笑みが
園内に一石を投じる出来事に至ってはもう大笑いしてしまったけれど
共感できたり、親近感を覚えたり、笑いをメインに狙ったコメディーとはまた違ってそれらの何気ないやり取りが何とも心地良い

“職業もの”としてもかなり面白いが、何より“人間”が素晴らしく魅力的に描かれた上質な舞台
不器用であっても全部ひっくるめて愛おしくなる人達、猛烈に胸が熱くなりました

マギーの博物館

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マギーの博物館

劇団俳小

実演鑑賞

強い生命力が漲っているだけに壮絶な爪痕を残してくれる公演
海岸に位置する炭鉱の町
貧困から逃れるため移り住んだとはいえ、この土地には生きていく術の選択肢があまりに少なすぎる
これではどうやっても豊かになれそうもない
そんなジレンマが常に付きまとって、それでも必死に足掻いて生きている姿から片時も目が離せませんでした

男にモテないけれど明るく気丈なマギー(どうにか幸せになって欲しいと思わせる魅力に溢れている)
マギーと一緒に暮らすのは
旦那と長男を炭鉱で失い生きる気力を失っている母(元々が根明な女性だったらしく、その片鱗に救われます)
強い労働組合を目指す弟(真面目でそれ以上に不器用な男を好演)
長年の探鉱作業で塵肺を患うじっちゃん(寝たきりなので常に部屋の一角に鎮座しているシンボル的存在)
そんな生活の中、マギーと恋に落ちる心優しいニール(体格良く頼もしいのだけれど不安を予見させる一面もあり)
やがて二人は海が見渡せる小高い丘に新たに家を建てる事を誓い合う・・・
あらすじに書かれた登場人物がそのまま具現化されていて、演劇の生々しさがダイレクトに伝わってくる、それ故に強烈に響いてくる公演でありました

チョビ

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チョビ

ここ風

実演鑑賞

ひと夏のちょっといい記憶として残っていく作品
出ずっぱり 天野弘愛さん演じる愛称チョビの人生に、楽しく切なく寄り添い見守っている感覚がとても心地良い
軽快な関西弁のやり取り、気になる伏線を心に留めながらその一連のやり取りを楽しんでいくうち、チョビという女性の輪郭が徐々にはっきりと、そしてゆっくりと深く 深くへと作品世界の中へ引き込まれていきました

アイドル系公演とはまた違った劇団さんへの愛情が劇場内を暖かく包み込んでいる感じ
劇場シアター711のクラッシックな雰囲気と、ここ風さんの作風はとてもマッチして良い感じなのだけれど
着実にファンが増え続け、収容的にキャパオーバーになっていくのかもしれないと想像すると悩ましいところ

ホテル・ミラクルThe Final

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ホテル・ミラクルThe Final

feblaboプロデュース

実演鑑賞

STAY Verを観劇
こちらのバージョンもパートが変わるごとに童貞くんから泥沼カップル、マニア系まで同じラブホテルの一室ながら様々な表情が次々と
REST Verでは「行き場のない女性のモヤモヤした性欲」だとしたら、STAY Verは「行き場のない男性のストレートな性欲」の印象が強かった気がしたのだけれど、とにかくそれら人間関係の多様性といったら

これでシアター・ミラクルでの観劇が最後、そんな気持ちも合わさって感慨深くひとパートひとパートを拝見し、そして遂にラストパート
REST Verもラストは異色なパートでありましたが
これで最後だという緊張感というか切迫感というかグルグル迫ってくる強いインパクトを残してのエンディング

この劇場でしか味わえない臨場感、空気感が確かに存在していて、今まで本当に沢山の公演で楽しませてもらいました
新宿シアター・ミラクル、心よりありがとうございました!

ロリコンとうさん

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ロリコンとうさん

NICE STALKER

実演鑑賞

何という可愛いロリコンとうさんだ(笑)
これは観た人なら分かってもらえる
取材で得られたという実際の「ロリコンの方々」の貴重データ(数多くの心情)がうまい具合にロリコンとうさん他、ロリコンである登場人物達に落とし込まれていたと思う
がっつり「性」を扱っているというのにポップな感性が加わってめっちゃ面白い仕上がりに
その面白いの中にはもちろん笑える面白さもあるが、決して満たされる事のない嗜好を持ってしまった者の哀しみや畏れ、恋人や妻といった周りの人間の思惑など色んな要素が入り混じった面白さで、これなら2時間10分の長尺になっても仕方ない、むしろ納得

子供に性的被害を与える=犯罪 であって
ロリコン=犯罪 ではない
この犯罪と犯罪ではない との間にどれだけのせめぎ合いがあるのだろうと思うと何だか切なくもなってくるのでした


ロリコンの方は一生の片想いみたいで何だか切ないと思ったけれど
「少女への凌辱」が好物という流れもあって、あ~そっちもあるのかと
性というのは本当に多種多様で厄介

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人間嫌い

実演鑑賞

劇団 人間嫌いさんの強味は何と言っても女性心理の機微を多様に描くことが出来る力量だと思う
舞台スペースにはビジネスホテル(シングルルーム)の一室が
あれ一人芝居だったっけ?と始まってみれば、まるでガールズコレクション
1泊7,150円の宿泊プランを利用中の様々な女性達の組み合わせ
起承転結あるストーリーの流れというより、このプライベート空間での様子を次々と展開して観る者を惹きつけてくれる

社会人としても頑張っている女性達
この都内にあるホテルが決して高級クラスでないという世界観で攻めているのが心憎い
そのままエッセイにしても楽しめるくらいの様式にしても面白かったかも
作・演出・主宰者 岩井美菜子さんの愛くるしい姿でのお出迎え付き

総評

毎回思う事だけどどの公演にもそれぞれ違った面白さがあるので10作品に絞って更にランキングを付けるというのは本当に悩ましい

それでも1位だけは即決させて頂きました
TRASHMASTERSさんの『チョークで描く夢』
コミュニケーションの大切さがストレートに突き刺さる内容で、言葉のひとつひとつが血肉になっていく感覚に痺れました

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