1
神様はつらい。 ご来場ありがとうございました。
演劇ユニットG.com
病室
永い無動無言症から目覚めて、私は神々の国から戻って来た!と証言する男。
まるで海外のSFドラマみたいな世界観に導入部からもう一気に引き込まれ
この男の言っている事が事実なのか、はたまたスケールのでっかい妄想なのか、どうにも疑わしい中、様相は明らかな方向へ・・・
地球滅亡とかいった不吉な提示がありながらもコミカル要素を6割くらい(もしくはすっごく威力ある3割)を含んでいるので非常に面白&奇怪な展開を楽しみながら追っていく事ができました。
一言で表現するなら大人のSF!
普段ならうっかり見過ごしてしまいそうな道を入ってすぐの会場「アトリエ第Q藝術」
成城学園前駅近くにこんな素敵空間があったなんて全く知りませんでした。
舞台はこの施設の特質を遊び心たっぷりに活用、背後のライブモニター映像や演出・演技・小道具等々の相乗効果も相まってまさに不思議空間。
拝見したのは昼の回でしたが、夜の回はきっと雰囲気が変わってこれもまたよさげそうだな~と。
舞台がとても近い。
どんなに近くても舞台と客席間を透明板がほぼ仕切っているので飛沫の心配を感じる事もなく
決して大きい劇場ではないはずなのに舞台も客席間も広~く感じ、ゆとりたっぷり安心感に包まれて本当に贅沢な空間旅行でした。
2
ME AND MY LITTLE ASSHOLE
藤原たまえプロデュース
これはめちゃくちゃ面白い!
「何でこの人は挨拶出来ないんだろう?」
「あれ、今のは余計な一言で怒らせちゃった?」
「今日はこの人機嫌がいい気がするけど何かあった?」
日常の中で、何気なく相手の様子から感じ取っているあれやこれや。
そんな他人の心の内が全て詳らかになったら・・・
エスパー的な物語というわけではなく、観客だけに「心の内」を見せる演出となっている本作。
この演出が加わっただけで、どこにでもありそうな、ごくありふれた職場風景が、見事なエンターテインメントに大変身してしまうのだから目から鱗としか言いようがありません。
ちょっとした事からまるで地獄絵図(笑)
こんなの見せられちゃったら人の心が読める超能力なんて絶対欲しくなくなります。
もうこれだけで完結しても立派に面白い作品として成立しているのですが、更に一歩先に踏み込んだ本作は、やがて誤解や想いの届かないモヤモヤなど、人間関係の煩わしささえ愛しく思えてきてしまう大傑作に仕上っていたのでした。
例え会社員でなくても人は何某かのコミュニティーに参加しているもの。
そういう意味で本作は誰もが自身にも思い当たりがあったり、思いを巡らせたりの連続で楽しめる作品になっていると思えます。
3
ドント・コールミー・バッドマン
24/7lavo
観終わって、振り返ってみれば、全ての登場人物がそれぞれに絶妙な個性を持ち寄って作品世界を彩っていたのだなぁとしみじみ。
独特のプロット、構成力がもたらす妙、直球の演技にすっかり酔いしれました。
既に観に行く事が決まっている方は、予備知識なしで、ただただ目の前で繰り広げられる世界に身を委ねるのが良いかと。
同時進行で描かれる3つのストーリー。
その3つ中で一歩前に立っているのは、
場面1「劇場」 作・演出オシムによる旗揚げ公演。
立ち稽古での前途多難っぷりに思わず笑えて、やがて湧いてくる劇団への親近感。
小演劇バックヤードものとしても中々興味深く、うん!これは面白いなぁと。
そして
場面2「中学校」 担任教師の無配慮っぷりが気になる転校生のエピソード
と、
場面3「喫茶店」 どうやらカップル成立には無理がありそうなマッチングアプリ男女のエピソード。
これらのエピソードが後にどう繋がってくるのか分からないけれど、とりあえずそれぞれに惹きつける吸引力があるし、アプローチが異なってその先が気になる。
舞台立ち位置のバリエーションが目に楽しく、人物個々の輪郭もハッキリとしてきて、・・・それはもう興味深く楽しんでいたわけです、それぞれの場面が突然繋がるまでは、ずっと自分のペースで
3つの関係性が繋がった途端に、隠れていた意味も一気に立ち上がり、別の表情に変わって押し寄せてくる物語の力強さ、痛み、演技の迫力といったらもう。
まさに胸を打つ「夢の途中」の物語。
観に行かれる方はここに書いた事を一旦忘れて、ただただ目の前で繰り広げられる世界に身を委ねてみてほしいです。
目に焼き付くラストシーン
イジメの主導者だった彼はオシムの公演を観て何を思ったのか。
もしかすると良く分からなかったかもしれない。
もしかするとエロ目線で観ただけかもしれない。
そして全体的な評価、もしかすると散々だったかもしれない。
何せテーマ(テンバイヤーに向けての個人的恨み)が共感しづらい(笑)
何を解決した、誰かの傷が癒されたという事でもないが、とにかく良いコンディションで公演初日を迎えられた。
もうそれだけで相当な達成感、充実感。
評判なんてまぁいっか!・・・いや良いのか・・・
面倒な自分を抱きかかえながらも、特別な人生を目指して、とにかく先へと進む👍それが良い
4
好きで嫌いな珈琲と煙草
ふれいやプロジェクト
小さなビストロで奮闘中の彼氏。
小劇団女優として奮闘中の彼女。
そんな頑張る二人の同棲生活に共存する“煙草”と“珈琲”
お互い苦手なアイテムであっても何ら障害にならない微笑ましい日常生活から物語は始まります。
実際に友人とか知り合いとかにいても全然おかしくないッていうくらい舞台上の人物達に近しさを感じるものだから、ごくごく自然に引き込まれ・・・やがて忍び寄るコロナ禍・・・徐々に変わりゆく彼等の状況、それぞれの思惑を考察しては心揺さぶられてしまうのでした。
感情移入してしまう生舞台は、こちらへの連動力が強い。
なので、辛い部分(特にコロナ関連)がモロに伝わり過ぎるとホント困ってしまうところだけれど・・・音楽と光なのかなぁ・・・電子ピアノの生演奏と照明が作品と一緒に呼吸しているが如く共演していて・・・プラス何気に笑いを取り入れた演出のさじ加減もあってか、痛みは痛みとして優しく彩ってくれており、しっかりと寄り添えました、ラストまで。
もちろん大いに楽しんで。
そして"縁"というものに想いを馳せて劇場を後にしたのでした。
そして七味まゆ味さんである。
役どころは、男性主人公の友人であり、女性主人公の所属する劇団の大ファン。
舞台上人物達と観る側の心の距離間をグッと近づけてくれた有難き存在。
たった3名だけで劇団という集合体がしっかり表現出来ていたのも見事でした。
5
ぶっかぶか
ここ風
人を笑わせるって中々難しい事だと思うけれど、ここ風さんはそんなハードルをふわっと乗り越え、無防備に人を笑わせてしまう術を持っている。
多分、それが演劇通で気難しいご年配であっても、観劇初体験の若者であっても。
会場に入ってまず目に入ってくるのは薄明かりの中、細部までこだわり尽した舞台美術、小さな古民家風ペンション。
良質な物語がこの場所で、まさにこれから始まる!
確信にも似た安心感からのスタート。
ちょっと事情を抱えた家族が経営するペンションに訪れる、これまた訳ありの宿泊客。
どちらかと言うと良くありそうな真っ新なキャンパス生地(設定)に登場人物達がそれぞれの色彩を放って瞬く間に息を吹き込んでいく、その力量が何とも心地良く、ちょっぴりビターな大人味なのも良い。
自然と巻き込まれ可笑し味に包まれていくのが良い。
6
優しい嘘
劇団BLUESTAXI
年季の入ったスナック空間を観客も一緒に共有して味わえた、笑いと哀しみミックス盛り。
ヤニが染みついた壁、酔っ払い、幸薄き姉妹、男と女、母と娘。(㊟喫煙シーンはありません)
コロナ禍がやって来て以来、「良し」とされなくなった濃厚で猥雑な人間関係をここでは思う存分、豪快に堪能できるという幸せ。
SNSなど介さない人と人と人、泥臭い酒場コミュニティーからは、惚れた腫れたや胡散臭い話、これからの話や終わらすべき話などが溢れんばかりにテンコ盛り、懐かしい匂いもしてきてもうたまりません。
散々笑い、憂い、楽しんだ後に押し寄せてくる哀愁。
カラオケの余韻に浸りつつ、まだ大晦日でもないのに「今年も色々あったなぁ~」と、まるで劇中の一員になったが如くしみじみとした思いに包まれながら帰路につくのでした。
ママがずっと隠してきた、それと全く同じ言葉を受けた女性を知っています。
自己肯定感を完全に封じてしまう、とても罪深い言葉です。
そこから抜け出して幸せになるためにも上原の様な真面目で、真っすぐに愛してくれる男性と一緒になれば本当に良いと思うのだけれど、う~む真面目なタイプには見向きもしないんだよなぁ、これが(*´Д`)
まだまだ賑やかなスナックの夜が続きそうです。
7
「紅一点」
演劇ユニット「みそじん」
3部構成、全てのパートに代表の大石ともこさんが別役で出演されていましたが、コレ事前に知っていなければ全く別々の女優さんだと信じ込んでしまうくらいに、演じ分けが見事。
芸人 柳原可奈子さんが様々な女性になり切った面白味に通じているかも。などと思いつつ、その完成度、女優としてのポテンシャルがめちゃ高い。
「紅天女」を演じたわけではないけれど、まさに「ともこ・・・恐ろしい子」といった感じ。
マンション3室で繰り広げられる3種の人間模様。
もう自分もおじさん、おばさんかなぁを意識しだす年代には、琴線をくすぐられまくるであろうニュアンスの嵐。
ヘンテコな状況にしろ、修羅場にしろ、いつの間にか場面をめちゃ面白い空気に変えてしまうコンビネーションの良さ。
これが今回限りの座組である事が非常に勿体無くて、それ故そんな巡り合わせがこの上なく贅沢に思える舞台でした。
笑いだけでなく熱い女優魂も伝わってきて・・・何というか、感動した。
「ガラスの仮面」を引き合いに出したのは満更でもない、と思えてくるのでした。
8
ちーちゃな世界
青春事情
手堅く面白い。
青春事情といえば都会における悲喜こもごもを描くのが巧い!というイメージがあり、今回、田舎町というのが意外だったけれど、拝見してみれば東京からやって来た登場人物がめちゃ多い(笑)
都会の喧騒から逃れてとはいうけれど、結局人は人から逃れられるわけもなく、
ましてや小さなペンション(まさにちーちゃな世界)では一人一人の人となりが自然と浮彫りとなって、舞台としてもピッタリな状況を作り出していたのでした。
リモートワークやネット通販等々、都会と田舎の意味が曖昧になってきている妙味、
そんな現在を生きる情報バランスや世知辛ささえもことごとく面白味や可笑し味へと昇華させていく魅力たっぷりな時間。
喫煙所問題さえ何とも面白い。
気楽に旅行できないご時世ではありますが、劇場一体でちょっとしたペンション気分、田舎町での悲喜こもごもを存分に楽しめる公演でした。
ゴジゲンで独特強烈キャラな本折最強さとしさんが、また違った濃ゆさでもってペンションオーナー役を好演されていたのも新鮮。
9
時代絵巻AsH 特別公演 其ノ四『草乱~そうらん~』
時代絵巻 AsH
歴史の教科書に載ってはいても謎多き「天草四郎」
どの様な解釈、背景でもって描かれるのか
『草乱~そうらん~』の世界、興味深く拝見させて頂きました。
時代絵巻AsHさんの舞台世界、時代絵巻は誠実さに満ちて、何なら笑わせ方も誠実。
切々とシーンを重ねていくごとに清濁入り交ざった人間模様を浮彫りにしていきます。
2時間30分(休憩込)途中うっかり気を抜いてしまっても物語に置いて行かれる心配こそなさそうですが、すべての物事に登場人物達の人となりが映し出されているので、観ているこちらも全集中態勢。
少年たちの島原の乱。最終的に負け戦と分かっていても、若き者たちの姿に、ヤバい!涙が・・・
こういう時、マスクっていいかも・・・と思っていたら鼻水まで
事前にマスクを頂いてホント助かりました。
これからの伸びしろも期待しますが、ここまで泣かされてしまったらもう降参★5つでお願いします。
10
スペキュレイティブ・フィクション!
NICE STALKER
『本当のSF』なる公演が具体的にはどんな内容となるのか、未知数だらけの観劇でしたが蓋を開ければ予想外にも「学園ラブコメ」!?
これで一気に敷居が低くなるも、当然普通のラブコメであるはずもなくSF研の部員が織りなすSFこじらせ系とでも言えばいいのか。
マメSF論が随所に織り込められて、こんな切り口のラブコメは今まで観たこと無い!
二人を取り巻く登場人物達もパンチが効いて、各々の立ち位置と台詞回しの妙味で着実に笑いをさらっていくのだからもうたまりません。
このまま難儀な恋のスクランブルを見守って、と思いきや何やらオカルトチックな雲行き・・・ちゃっかりSF作品にも仕上がっていたのには驚きました。
ラブコメ&SFのゴールデンコンビ。
SFマニアともなれば、改めてひとつひとつのプロットを検証したくなりそうですが、かなり綿密に練り上げられた構造になっていた事はマニアではない私にもしっかり感じ取れたのでした、お見事!