満足度★★★★
歴史物がこの劇団の強みなら、この手のジャンルはこの劇団「らしさ」だと思う。
かなり多くのピースが広がった状態で纏めるのには感服。
突っ込みどころは多少あるもののストーリーとしては十分楽しめる。
この公演は再演にあたるようだがリライトで上演時間を短縮した部分は評価したい。
だがもう少しリライトに時間をかける必要があったのでは無いだろうか。
笑いを取る部分が随所にあるので「サスペンス・コメディ」と銘打っているだけはある。
しかし笑いを散らしすぎたせいでせっかくのシリアスな部分も散漫としてしまったのでは無いだろうか。
くっきりと色付けをし客を笑わせる部分、真面目に考えさせる部分を分けたほうが良いと個人的には思った。
何回か観劇したが公演開始数日の粗が目立ったように思える。
セリフの詰まりや噛んでしまう場面が気になった。
逆に後半はテンポが上がりすぎて全体的に早口に聞こえた。
初見の人間には少し優しくない速さのように思える。
話として楽しむことはできるが、何か持ち帰ることができるストーリーだったかと問われると疑問が残る。
共感できる部分も無く上澄みだけすくって楽しむ印象。だとするとこの長さは辛い。
教訓めいた話は嫌煙されがちだが、何か心に訴え掛ける物が欲しかった。
個人的には好きなストーリーだったので評価は高めにしておく。
ネタバレBOX
どうしても気になったのが無関係な人間が巻き込まれているということだ。
どこまでを無関係と線引くのかは難しいが、
容疑者の中でも織川に好意を寄せた和哉と織川が死ぬのは酷な話だ。
和哉は完全に無関係。織川千夏は望広人の恋人と言うだけで巻き込むべきでは無かったのでは?
望広人が故人であるだけに疑問が残った。
何より一番無関係なのは刑事では無いだろうか。
彼に一言も無くただ巻き込まれているのが納得できない。
隆也の妻には「巻き込んでごめん」の一言がある。記者にも「巻き込みたく無かった」の一言がある。
だが刑事には救済措置も無ければ詫びの一言も無い。
たった一言「巻き込んでしまってすまない」の一言があるだけで違う。
もしくは過去の事件を黙認していたなど、何かしらに絡んでいたら納得できた。
リライトの時点でこの理不尽さを修正して欲しかった。
あとは壺のくだりが余りにも突飛すぎて腑に落ちない。少し設定がファンタジックに思える。
またこの劇団の脚本によくあるのだが妙な言い回しに違和感を覚えることが度々ある。
故意であるなら申し訳無いが「やわらかい壺」と言われて、
イコール「壊れやすい壺」にならないのは自分だけだろうか?
柔らかいからイメージされるのはぷにぷにとした物で、
実際劇中の壺は壊れやすい、脆い壺では無いだろうか。「消える壺」も少々ファンタジー気味な印象。
それまでシリアスに現実的な設定できているせいもあり、
急に興ざめするようなことを言い聞かせられ疑問が浮かんだ。
前述した細かい部分が解消できれば、より面白い作品になったと個人的には思っている。
満足度★★
面白いギミックと個性が際立ったキャストが織り成すコメディ。
前評判がかなり笑えるということだったので期待値を上げてしまったのが失敗だったかもしれない。
ハマる人にはハマるのだろうが、自分的にはイマイチだった。
どうにも「ドタバタしている内に終わってしまった」という印象が否めない。
例えるなら同じ大きさのビー玉が勢いよく流れていく感じ。
キャスト一人一人の見せ場が満遍なくあるのはファンにとっては嬉しいものだろう。
しかし満遍なく見せ場があることにより、物語を均してしまい大きな起伏が無い物になってしまった気がする。
笑ってバタバタして・・・・・・・・で? みたいなことになっている印象を受けた。
要所要所に訴えるものは感じるが全体を通して何を伝えたいのか。
確固たるメッセージ性が無いように感じて、結局観終わった後に何も残らない気がする。
ギミックとキャストと脚本の歯車が微妙に噛み合っていないような気さえした。
キャスト一人一人のキャラクター性は立っているのでそこは問題が無いと思う。
舞台の題材に限らず、開演時間やCFのリターンにも面白い試みが見えるので勿体無いと感じた。
ネタバレBOX
根本を否定する形になってしまうかもしれないが、この「時間」を用いたギミックは裏での苦労が分からないと楽しめない物では無いだろうか。
自分が初見の時に感じたのだが、正直時間や時計を気にしている暇など無く物語を追うので精一杯ということだ。
ぶっちゃけ時間というギミックは設定でしか無く、見ている方からしたらストーリーが追えればどうでもいい。
凄いことをしているのだとは思うが、その凄さが観客に伝わらないのがこのギミックのネックかと思う。
こういう調整をして○時○分までに台詞を間に合わせている、○時○分に間に合わない場合は台詞をカットしている、など
そういった努力が見えてこそ面白くなるものでは無いだろうか。
これがリピート(もしくは上演台本を購入)しないと分からないというのは難点だ。
「成功ルート」が分からないと急遽セリフをカットしていることもトラブルが起こっていることも初見の観客には分からない。
これをどう「凄い」と思わせるか、もしくはリピートさせてそれを分からせるかが課題では無いだろうか。
次があるならばここを解消させるプロデューサーや制作の手腕が見たいものである。
物語の具体的な部分についてだが、『オーコネ』が具体的にどんな物であるか。
この説明は早い段階で欲しかった。
前頭と横背後が何者でそこに居ない芹田が何者なのかさっぱり分からないまま話を追うのは少し辛かった。
徐々に紐解かれるものの根塚が語るような内容を序盤に聞きたかった。
あとはテレビ局をジャックしたという内容だが、地方局を細菌ウイルス(でしたっけ?)で攻撃するとは余りに突飛だ。
それに対して要求が安すぎる。すぐに内部に犯人人が居るのでは無いかと疑ってしまう。
せめて誰かを人質にとった程度にしておけば良かったのでは無いか。
もしくは地方局でなく、もっと大きな局にするなど。
先の展開が読めてしまうような違和感を感じる設定だったので少し残念だった。
直接公演の内容には関係無いが物販で気になった点を記載するが、
パンフレットにキャストの所属、経歴が記載されていないのが残念だった。
ネットで調べれば良いのかもしれないが、初めて知った方も居たので過去の経歴は知りたかった。
あとはランダム物の販売。
ブロマイドは種類が多すぎだしゲネプロ写真はどんな写真が何種類あるかも分からず購入まで至らなかった。
あとはアンケート用紙が無いのも気になった。
今ではSNSに匿名性はほぼなくなっている。
紙のアンケートはまだ必要なツールだと思っているので用意して欲しかった。
(もしくはネットで入力できる形にするなど)
演劇界で今までに無いことをしよう!という心意気は感じるし、そこに期待したい部分もある。
もし次回があるなら楽しみにしています。
満足度★★★★
コメディ色とエンタメ性が強く出ている作品。
その中にシリアスが入り絶妙なバランスで緩急がつけられ起承転結のバランスも良い。
あまり頭を使わず目の前のお話を追って笑っていればあっと言う間だと思う。
前回の公演で苦手意識のある人には是非、本作を見て欲しい。
上演時間も2時間弱とベスト。
またキャスティングも文句のつけ所が無い。
劇団員の配役もベストであると感じるし、ゲストで呼ばれた役者さんについても
ちょうど欠けた穴を埋めるようなかたちになっていて納得の存在感を出している。
「この人物は果たして必要か?」ということが過去作品ではあったりしたが、
今回はそういったストレスも無い。
この劇団の公演を初めて見る、という人には是非とも勧めたい作品になった。
ネタバレBOX
ただ一つ苦言を呈するとすれば主人公の左之助が抱える問題から
『逃げた』ように感じることだろうか。
シリアスの部分が持つテーマは端的に言えば
武士が「人を殺すことに疑問を持ってしまった」ことになる。
このテーマを消化することは不可能かと思う。
おそらく答えは出ない、と思っている。
現代の倫理観を戦国時代に落とし込み
『問題提起』で完結しているのは脚本家の意図しているところかもしれない。
しかし左之助がその問題を消化できず、
「とりあえずやってみればなるようになる」というような形になっているのは消化不良気味だ。
せめて妻の恵那に「あなたが決めたことならば信じてついていきます」
くらいのことは言って欲しかった。
それによって左之助の行動は肯定される。
恵那の性格上、素直では無いようなのでああいう言い方になったかもしれないが。
しかし前述した内容は粗探しをして見つけた程度のことなので、
全体的には申し分ない内容になっている。
大いに笑い楽しませてもらった公演になった。
またシリアスだけでなくコメディでも十分観客を楽しませる力量を見せつけられたのではないか。
浅草でやることにも大きな意味があった公演だったと思う。
最後の『アイドルタイム』には驚く人も多いのでは無いだろうか。
面白い試みだとは思うし、今の市場ニーズに合わせてきたとも思えて戦略的な部分も垣間見える。
この公演で卒業する劇団員が演じた吉乃殿、非常に愛らしく彼女に合っていた役どころだったと思う。
最後まで明るい笑顔で居たのが印象的でした。
新しい門出が良いものになるよう心から願っています。
満足度★★
10周年という記念公演での挑戦的な舞台。
劇団の新たな一面が見れる内容になっているように思える。
いつもは長尺の舞台も今回は約90分ということで不安視していたが、急かされたりついていけなくなるような事は一切無く、ストーリーとして綺麗に纏められていた。
希望としてはこれからも2時間程度に収めて欲しい。
決められた時間の中で十分なものを見せられることはこの公演で証明できているのだから。
演者にとってはストレートに力量を試される公演であり、かなりの緊張感がある。
一人一人の演技をしっかりと見ることが出来る良い舞台だと思えた。
古くからのファンには新たな一面を提示するような内容なので一度は見て欲しい。
この公演を劇団公演として初めて観る人には次の公演も見て欲しい。
そんな風に思えるような内容だった。
ネタバレBOX
この公演が挑戦的であり実験的であることは十分伝わってきた。
劇団の「定番」を削ぎ落とすような内容。
笑いどころはほぼ無し、音楽も最低限、ほぼ無音のストレートプレイ。
「これまでとは違う」ということと10年での成長を見せる内容であったことは理解できたし評価したい部分である。
ただそれによる弊害が少し大きいように思えた。
一つは観た後の後味が悪すぎること。
今回のような作品はどちらかと言えば好きなのだが、それを10周年の公演で見たいかと言われれば「否」である。
しかも約1ヶ月のロングラン。何度も観たいかと問われると足が重い。
また打ち出す時期も悪かったように思える。
年末年始の華やいだ気分で迎えたい時期に、この救いようの無い残酷な話は観たいとは思えない。
別時期での1週間程度の公演であればまた違った見方ができたかと思う。
約90分という時間も良い面と悪い面が垣間見えた。
いつもより上演時間が短いということで観劇のハードルは下がる。
初見の人間も足を運びやすいかと思う。
しかしこの尺で簡潔に収まっているからこそ、1回の観劇で十分と感じさせてしまう。
一度見ただけでストレスを感じさせないのは見事だと思うし、それが観客にとって優しいものであるとも思う。
しかしこのストーリーと観劇中の疲労感を思うと「もういいかな」と思わせてしまう。
そこが残念に思えた。
後述するのは個人的な印象になるが・・・
観客を焦らす時間が少しだけ長いように思えた。
「何があったのだろうか?」と思わせる時間が長く、徐々に何を見せられているのかわからなくなっていく。
いざ蓋を開けてみると大した秘密でも無いことがわかり若干の肩透かしを食らう。
(大したこと無い、というのが中学生の幼さを表しているのは分かっているのだが・・・)
ほんの少し短い方が良かったかなぁという印象。
あとは最後の「その後」の描写が蛇足に思えて仕方が無い。
徹底的に絶望的なラストにするなら部屋から全員いなくなりドアを閉め暗転、の方が美しかったように感じる。
「その後」を描くなら別の手法の方が良かった気がする。
万人の意見に応えることは難しいとは思うが、様々な意見により良いものが出来ることを期待したい。
そろそろ帰り道を晴れやかな気持ちで辿れるような話が観たい、というのが個人的な希望です。笑
満足度★
大風呂敷を広げるだけ広げ、畳みきれていない印象。
全ての伏線を回収していない訳では無いが、説明不足という印象が否めない。
それに加えて中だるみしたようなシーンの多さ。
もう少しスッキリと見せることもできたのでは無いだろうか。
また厄介なのが登場人物の誰ひとりとして共感できないストーリー。
設定としても無理がある部分が多く、そこを含め感情移入できなかった。
キャスティングに関しては文句なし。
ただ『劇団公演』として考えると疑問と不満が残る。
今回に関してだけかもしれないが、笑いを取るようなシーンも若干さむいように感じられた。
いつもは割と大笑いするポイントが何度かあるのだが……。
ラストシーンの演出はどこを取っても素晴らしかった。
あのラストで手前2時間の話がどうでも良くなるくらいの仕上がり。
役者の演技と、音楽と、動き全てにおいて文句のつけようが無い。
ネタバレBOX
・佐津川瞳、木山早織、北島愁矢の三角関係
若さ故のすれ違いと感情的な行動は理解できるが、助かる見込みの少ない早織に対して瞳の言葉が酷すぎる。その上長い。「あんなにだらだらと言葉で攻撃することは無いだろう」と思ってしまう。
その上、愁矢の発言が全くもって理解できない。
理由はあれど瞳と早織二人に対して好意を伝えるとは一体なんなのか。
単なる最低男にしか映らない。(自分でも最低だとは言っていたが)
・黒川医師の判断
いくらなんでも遺族の承諾無しに移植手術は無理だろう……。
本人の意思よりも遺族の意志の方が尊重されると聞いたことがある。それを承諾無しに行い、それを妻が支援するような発言はどうだろうか。逮捕だけでは済まない問題に思える。
・黒川の妹
命懸けで助けた妹がギャンブラーとは如何なものか……。
生きてるだけでも有難い話なのかもしれないが、自身の臓器を提供した佐津川瞳からすれば浮かばれない気がする。
全てに理由をつけようとするのはナンセンスかもしれないが、個人的にはもう少しリアリティを追求した話にして欲しかった。
全体的な要素が「ストーリーを彩るエッセンス」にしかなっておらず、一つ一つが生きていない印象。
人の一生を描き、そこにテーマをおいている訳だから安易に多用するのは一部の人間の気分を害する危険性すらあると思う。
途中から何を見せられているのか理解し難い話だった。
ロジカルな部分だけ見せつけられてドヤ顔されている気分に近いかもしれない。
もう少しエモーショナルな部分も掘り下げた方が良いのでは。
満足度★★★★
今回の観劇で時代物はやはり得意分野のように感じた。
正直な所タイムスリップ系はこの劇団の十八番なので「またか」と思ってしまったが、そんなことを綺麗にとっぱらってくれたのが魅力的なオープニング。
あの目まぐるしく動く演者と殺陣と照明の切り替え。出演者名を出さないという変化を加え、且つ今まで通りのスクリーンを使った演出もあり。
裏切りながらも裏切らないスタイルでぐっと引き込まれ前のめりになるようなオープニングだった。
ストーリーとしては難解な部分や疑問点もあるが、そこまで深く理解しなくとも大筋と表面上の人間関係・感情の動きさえ追えれば問題無いように思える。
(もちろん深く知ったほうが面白みは増す)
正直なところ理解してなくても楽しめる作品、とも言える。
今回の作品の大きな強みはそこだと思う。
理解できない、よくわからなかった部分がそこまでストレスに感じない。その点は一度しか観劇できない人間、歴史に詳しく無い人間には優しいつくりになっていると感じた。
また今回は配役、登場人物のバランスが良かったように思える。
全キャスト均等にスポットが当たり、またそれがきちんと印象に残り見せ場がそれぞれある。それは非常に好印象だった。
いつもとは雰囲気の違う役を演じる役者を見て、それだけで良いものを見たと感じられる。
また女性陣が良い。戦う女性は格好良いし、城内の女性は可憐で、笑いをかっさらう女性も居て良質なキャスティングだったと思う。
ここに書き尽くせないくらい、それぞれの役が印象に残り愛着も沸く部分があった。
ただ全体的に詰め込みすぎなイメージは否めない。
これだけの人数が出ていれば仕方が無いかもしれないが、上演時間はもう少し抑えるべきというのが個人的な考えだ。
詰め込むことは簡単だが、そぎ落とすのは至難の技。けれどその「削ぎ落とす」手腕が脚本家には求められると思う。
見せるところを見せ、そうでないところは削ることは必要かと思う。
劇場の立地の問題もあったがせめて開始時間を前倒してくれれば、もう少し観劇の機会は増えたかもしれない。
けれどもまた観たい、理解しきれていない部分を理解したいと思わせる作品。
スカッとするような上向きなラストにも好感が得られる。
前回の不満点が解消されていたのも含めて評価したい作品だった。
ネタバレBOX
歴史の中でもマイナー寄りの題材を扱った作品でありアレンジの幅が広く、観客にとってはそれによる嫌悪感もさほど無いかと思う。
同時に歴史有識者の批判的な意見や野暮なツッコミも受けにくいのでは無いだろうか。
ただそのマイナーさが逆効果となりストーリーを追うのが困難な人も居たかと思う。
聞き慣れない登場人物の名前は覚えるのも一苦労だったりする。
特に中盤あたりの三好家衰退の件はとにかく早い。早すぎて目まぐるしい。
あの場面で三好長慶、松永久秀の人間性を表現しているのに、観客にそれを理解する暇を与えないのは本当に勿体無い。
個人的にはあそこでじっくりと彼等の人となりを理解し、心情に寄り添いたいという気持ちが強くあった。あの場面で深く感情移入できるとまたその後のシーンの感じ方が違う。そういった意味でもあの場面は本当に勿体無いと思った。
ただ二回目以降の観劇になるとそのスピードが逆に鳥肌物になる。
それが狙いかとは思うが、やはり初見が飲み込むには厳しい速さ。
残念なのがどうしても印象が薄い島左近組。
正直なところいなくても良いのでは、と思うくらいの印象の薄さ。
行動にはしっかりとした理由があるもののそれが印象的に語られないのが理由かと思う。もう少し彼等の行動理由、彩芽の兄の詳細など知りたかった。
他にも細かく語られない点や気になる部分は多かった。
けれどそれは「受け取り手の想像に任せます」というようなもので、明確な事実をぼかしているように思える。それが不満や消化不良に直結せず、想像力に委ねられるのでストレスにならないのかと感じた。
ただ複数の時系列が一点で交錯する場面や、突然時間軸が変わるシーンは唐突で理解しずらい箇所がいくつかあった。全てを事細かに理解するには難しいものがある気がする。
以下、個人的な妄言に過ぎないが
舞台のつくり、演出の一部など端々に劇団の人間が出演していた某2.5次元舞台の影響を受けていると感じる部分があった。
また劇中の台詞「正しい歴史を捻じ曲げてまで~」的なセリフも踏まえると、この舞台は主宰なり(もしくは劇団なり)のアンチテーゼなのでは?と思ったり思わなかったり。
近年もてはやされてる商業的な舞台に対し、「ウチはこうやりますよ」という意思表示をされてるようにも思えた――のは気のせいだと思いながらも書き留めておく。
満足度★★
斬新な試みを感じる舞台
ストーリーとしても(特に後半の)展開も面白いのに関わらず、印象に残らない作品だったというのが率直な感想だった。
前半は笑いが起きる場面でもそれが最終的には伏線になっていたりするのは流石。何度も鳥肌が立ってゾッとした。
印象に残る場面や人物は居るが、それがほぼこの劇団の人間で無いのが少し残念だった。園田、辻堂、久遠は確実にそのキャスティングでしか見れないものが見れたと思う。
しかし主要人物の印象が物凄く薄い。その上共感もできないし感情移入もできない。特に渡部に関しては『物語を動かす単なるピース』でしか無い様に思える。
小説でしか体験できないようなものを舞台上で表現していたのは面白かった。(自身の中で勝手に作られたイメージと現実との相違のようなもの)
舞台で表現するとこうなるのか、と興味深く感じられた。
また、回転する舞台というのも初めてだったが「観ている側にこういった感覚を与えるのか」と演出上、効果的な部分が見えて楽しかった。
また設定も過去作品で見たことのあるようなものがちらほら。
そのせいで新鮮味に欠けている気がする。
それを待ち望んでいるファンもいれば、初見の人は気にならない程度のことかもしれない。
個人的にはあらすじを読んでも「またか」と思ってしまった。観劇してからそれが覆されたので良かったが。
脚本やテイスト自体は好きなので、もう少し違う角度・切り口での作品も観てみたい気がする。
ネタバレBOX
タイムマシーンと称されたあの装置に関してだが疑問が残る。
過去を体験している最中に第三者が横槍を入れても、それがその世界に反映されるようだが、渡部が体験している最中にそれが反映されているのは何故なのか。
倉下の場合は理解できる。同時に特捜の人間も「それ」を見ている(もしくは体験している倉下を見ている)からだ。
けれど渡部の場合は『過去体験の回想を聞いている状態』では?その『回想』の中で特捜が言ったことが反映されるのはおかしいのでは?
『過去体験の回想』をさらにあの装置で『体験』しているのなら分かるが、ややこしすぎる。
登場人物に関してだが、園田役の椎名さんはそこまで出番は無くとも十分な背景と人格が語られていて、物語が進む中で愛すべき人物になっていた。
殺害されたのを知った時はかなりショックだった。
辻堂役の吉田さん、久遠役の高田さんはそれぞれの魅力が全面に出た素晴らしい演技だった。また『真壁』という人間に関しても厚みのあるバックボーンが語られるので十分な説得力がある。
それ以外の人物に関してはそれが感じられないのが残念だった。
あれだけの役者を用意しながらよく言えば『贅沢』。悪く言えば『勿体無い』。
ミスリードの為の渡部は本当にただそれだけの役目な気がしてならない。司冬雪もそこまで姉の死に執着する理由が明確で無い為、ただうるさい人間にしかならない。(身内の死というだけで十分な理由にはなるかもしれないが)
ストーリー全体に対する理解も作業的な感覚に近かった。
一つ一つ解明されていく謎が流れ作業のようで、そこに感情を動かされることはさほど無かったように思える。
劇団の芝居を見に行っているので、やはり劇団の魅力を感じたいと思う作品になった。
今後は本公演だけでも良いのでそういった作品を見たいと願う。
満足度★★★
アトラクション型コメディ
ハイスピードなアトラクション型コメディ、と形容するような息つく暇も無いくらいのドタバタだった。
序盤で既に出演者が汗だくになるくらいの熱量。
けれども客席だって同じ位のボルテージで食らいついて観ている。
自然と体が前のめりになるように引き込まれていく気がした。
時間軸があれだけ前後しているのに話の構造がしっかりしているのは流石。分かりやすくテンポもよく進んでいく。
あれだけの台詞量とスピードでも置いていかれる観客は少ないのでは、と感じる。
ネタバレBOX
かなり笑ったし楽しい舞台ではあったものの、個人的な感想としては満足感に欠ける作品だった。
ストーリーとしても骨組みはしっかりしているが、主役があそこまで必死になって成功の為に動く理由がもっと明確な方が響くものがあった気がする。
新子安は必死になるだけの理由がある。
両親が結ばれるきっかけとなった舞台。それがぶち壊されたら自分の存在が消えてしまう。
憧れでもあった舞台の為にも、自身の為にも絶対に成功させなければならない。
それに比べると向谷の理由は霞んでしまう気がした。
言ってしまえば『過去観た舞台を観たまま成功に導く』というだけ。「過去に観た舞台と違う!どうすればいいんだ!」的なアクシデントがあれば、もう少し感情移入できたかもしれない。
(自分の知らない舞台袖でアクシデントは起こっていた訳だが……)
自分が演出家になるかならないかのきっかけの舞台を成功させることと、自分の存在を左右する舞台を成功させること、ならば後者の方が強く印象に残ってしまう。
演出家としてはそれが十分な理由なのかもしれないが、ただの一観客である自分からすると『共感』までは至らなかった。
新子安くらいの明確な理由と、必死になるくらいの想いが分かりやすく表現されていたら主役の演技ももっと心に響いたと思う。
加藤さんが主役ということに期待をしていただけに残念だった。
自分にとっては新子安役の竹石さんの方が設定的に響くものがあった。
あとは内輪ネタ的な分かる人にはわかる、というような笑いのシーン。
自分も理解できるネタだったので大いに笑わせて貰ったが、何も知らない舞台観劇すら初めてのような人には優しく無いかと思った。
自分も一度経験があるが何も知らず初めて見た時に、ああいうネタは疎外感すら感じることがある。
わかるような説明を入れるのはナンセンスかと思うが、閉じたコンテンツにしつつあるような気がする。
とは言うものの抑えられないくらいの大きな声で何度も笑わせてもらった。
一度しか観劇していない身なので、二度、三度見るとまた変わった見方ができたのかもしれない。
満足度★★★★
テンポの良い群像劇
6番シードさんの公演は初見だったが見終わったあとに不思議と楽しい気分になれる公演だった。
題材としては暗く、重いピースばかりなのに、それが各々の個性によって科学反応を起こす感覚。
テンポが良いというのは前情報で入っていたが想像以上だった。
特に笑いのシーンのテンポ感は秀逸。そのセンスも絶妙。随分と笑った気がする。
その反面惜しいと思ったのがシリアスなシーン。
場面の切り替えが早すぎて余韻を楽しみたいのに楽しめない、感情移入しきれないところが何度かあった。
個人差はあると思うが場面が切り替わる度にそこで感情が途切れてしまう。もう少し要所要所で構わないので間が欲しかった。
けれど最終的に明るく、楽しい気分で帰れる素敵な作品。
また次回の公演にも足を運びたいと思えた。
満足度★★★★
初めての観劇でした
初見ということでかなり構えて見ていたが前方列ということもあって一瞬にして作品の中に引き込まれた。
誰が犯人なのかこちらは疑いの目をかけて探る中で、絶妙な伏線の張り方と展開で登場人物とほぼ同タイミングで事実を知っていけたような気がする。先読みもせず、乗り遅れることもなく観れたのは楽しく感じた。
コメディタッチなシーンとシリアスのメリハリの付け方も上手い。
照明や映像の使い方も上手い。演出に違和感を感じずにストーリーを追える。途中の明暗を使い分けたストップモーション風な場面や、舞台の手前と奥とで別場面を表現している時も気にならない。一本の映画を見ているようで、ナマモノである舞台をあそこまで一つに仕上げるのは感動した。
ラストは決して後味の良いものでは無いが個人的にそういったラストが好きなので余韻すら楽しめる。
もう一度見る予定があるので細かい部分まで見たいと思う。
かと言って一回でも十分ストーリーの主軸は理解できる。
そこをもう一度見たいと思わせるのは流石。
ネタバレBOX
細かいところまで見れば綻びは見つかるとは思うものの初見では気にならないくらいに引き込まれる。
ただ唯一気になったのが中西に強姦された人間の妊娠率の高さ。
それだけでリアリティが失われるのは勿体無い。
また扱う題材がデリケートなだけに、もう少し気を遣って取り入れるべきだったかと思う。
そういった題材だからこそ凶悪性や悲惨さが際立ち、被害者の周りの人間が復讐に至る大きな理由になるかもしれない。
それにしても被害者全員が妊娠する必要はあったのか疑問が残る。
タイトルとかけて『誤妊』という意味合いを含ませたのかもしれないが、性的暴行を受けたというだけで十分な残忍性を持たせることができたのでは無いかと思ってしまう。
演技としては中西役の若狭さんの演技が個人的に非常に好きだった。
登場した瞬間は感情的で沸点に達しているところを、そこから徐々に観客に気づかせるかどうかというラインで冷ましていく。
ラストを知った瞬間『ああ、だからあの辺りから急に冷静に客観的になり始めたのか』と気付いた。
(物語上ではおそらく最初からなんとなく気付いていた体にはなっているが・・・)
今田を精神的に追い詰めるシーンも、それぞれの人物の衝動がぶつかり見応えがある。
直接的に関係は無いが・・・前方席だと舞台が見づらく非常に残念だった。
最前列はそうでもないかもしれないが2~4列目だと段差がほぼ無く、前の人で舞台手前で展開されている演技がほぼ見えなかった。
(舞台上手のソファ、下手の折りたたみ式椅子のあたりは全く見えない)
足を運んだ観客をできる限り入れようという気持ちは汲み取れるものの、公演を隅々まで楽しめなかったのは残念だった。