mqの観てきた!クチコミ一覧

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ルルドの森(平成28年版)

ルルドの森(平成28年版)

バンタムクラスステージ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2016/02/19 (金) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

つながり、癒やし、こころを求めて
いつものバンタム公演にある「画の美しさ」はそのままに
連続殺人事件を追う刑事たちに軸を置いた実にエンタメ要素の多い作品である。
エンタメではあるが舞台には緊張と美が必ず在り眼前に並べられた道具たちが背筋に冷たいものを這わせる。

バンタム公演にしては小道具が多い印象。
バンタムといえば、な椅子も多用されており、今回も場転を見せるスタイルながら完全な暗転もある。
場転が多いのも初期作品の特徴か。(場転の多さ・場面の多さがより映像的な印象を見る者に与える)

演劇である以上演劇の要素は当然多いのだが、
起こったことをわりと時系列でそのまま見せてくれるので
連続ドラマを見ているような気分にもなる(よくこの作品は「映画のよう」と評されるが、個人的にサスペンスといえばテレビドラマな印象)。

刑事たちの立ち位置、性格などとてもわかりやすくえがかれているし話の筋もわかりやすい。
二転三転する「追う相手」が観客にわかるように作られていて観客が「こうなるだろう」と予想する方向へ話が進む快感もある。
それでいてラストがああなのだ。面白い。とても面白い。
裏切られたようなラスト、でありながら、実は観客を裏切っていると言い切れるわけでもない。うまいラストだ。

本作品は五度目の上演で、実に丁寧に練られた感がある。
確かなキャスト陣で贅沢に作られた作品だった。

パンフレットも見事。
役柄をよく表現した見事な写真たちでした。
対談が非常に興味深かったです。
以下、ネタバレ欄にとりとめなく雑記。(今後の再演に備え、決定的なネタバレ部分は削除しました。)

ネタバレBOX

特筆すべきはあらすじにある通り扱われている事件が猟奇殺人事件ということだが「物」はあまり見せず、「言葉」で観客に想像させる表現。
これが後半になると逆に「言葉」ではなく「物」を持ってくる。

細川作品はある種「家族」が軸である。
今回も父性と母性は大いに作中にあらわれる。

三島と香乃子、マコトとメイ、あるいは黒船と菱見玲子もか、惹かれ合う描写を削ぎ落とした物語になっていることで、観客は納得できず状況を冷静に眺めてしまう状況になる気がする。
作品に観客が入り込みすぎないようにしているようであり、ある種だましうちを仕掛けているのでもあり。なんにせよ、感情描写を抑えている部分がこの「ルルドの森」の気持ち悪さの一端であろう。

終盤に行くにつれ、物語から「救済」「癒やし」を感じるようになる。
「連れて行って」という台詞にある切なさがたまらない。
最後の台詞も救済なのだろうと思うとわたしにはハッピーエンドに思えた。が、そこからの「彼女」の表情である。
次の目的を得たという意志、のようにも、自分がとらわれているものからの解放は果たされなかったという怒り、のようにも取れる… きっとほかにも推論は出てくるだろう。
こうやって見終わったあとにいろいろ想像がかきたてられる作品は良い作品だと思う。

舞台装置。
まさかあそこが動くとは。
昭和レトロ感のある床に、くすんだ色の薔薇柄レース。良い。
ただし見にくさが難点。「見せない演出」に細川さんのSさを感じた。笑
もどかしい。

音楽。
いつもながら美しい。

銃器、あれがないと始まらない!
調子が悪いときがあったのか、ときどき光らないことがあったのが本当に残念。
ミキシング・レディオ

ミキシング・レディオ

OIL AGE OSAKA

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2015/11/26 (木) ~ 2015/11/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

脚本をさらに魅力的にした役者力
脚本の時点で☆5つの作品を、役者陣が余すところなくおもしろみを引き出した…いや、脚本よりももっと膨らませたおもしろさを見せてくれた、まさに演劇らしい演劇、極上の作品だった。
特に舞台作品に初めて触れるというひとには間違い無く舞台の力を感じて貰えただろう作品。
ほぼほぼ舞台からおりることなく膨大な台詞で演技に見えない演技を繰り広げた演者の皆様に最大級の賛辞をお送りしたい。

二人芝居オムニバス オリンポスの神々

二人芝居オムニバス オリンポスの神々

ポップンマッシュルームチキン野郎課外活動 増田赤カブトのこうのとり研究会

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2015/09/20 (日) ~ 2015/09/21 (月)公演終了

満足度★★★★

二人芝居の密度は充分
吹原幸太さんが「監修」のクレジットのみとなったPMC野郎の課外活動、二人芝居×3本の公演。オムニバスとは言うが単に3本並べただけである。とはいえそこはPMC野郎、前説および幕間にサイショモンドダスト★さんが体を張った。お疲れさまでした。(個人的に短篇集なら幕間に何か無いと寂しいのでこれは嬉しかった)

「アラサンデレラ」はあらすじから受けた印象の範疇。気持ちよく笑わせていただいた。渡辺美弥子さんも増田赤カブトさんも客席を沸かせる力のある方だった。
「白い象のような山並み」小岩崎小恵さん・吉田翔吾さんの演技力とニシオカ・ト・ニールさんの演出力が素晴らしい一本。ヘミングウェイの戯曲は読まずに観劇したが、これは元が気になる。うまく行くのか行かないのか綱渡りのような緊張感、どちらかというとマイナスの印象を受け続けつつ、とりあえずこの場はおさまる20分。演出によって印象が変わりそうな作品だった。表情で見せる時間が長く、この一本が最も観客に集中力を求めた作品かと思う。
「Mexican standoff」バンタムクラスステージ細川さんお得意の追い詰められたマフィアの話だが、実に予想外な展開に。4分の3くらいは笑っていた。宮吉康夫さんの寄り目や素っ頓狂な声が忘れられない笑。いつも横尾下下さんの演技に安定感を抱くが、宮吉康夫さんはそれを上回る安定感。見応えのある20分だった。

クロッシング・ハニーズ

クロッシング・ハニーズ

バンタムクラスステージ

シアター風姿花伝(東京都)

2015/08/20 (木) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

しっかりバンタムで、しっかりコメディ
冒頭からしてバンタムクラスステージ十八番の構図。
いつものシンプルなパイプ椅子・テーブルに加え、今回はボックスも使用。場転を見せるスタイル。

ドタバタと、おちゃめさと、愚直な夢と。素晴らしく作り込まれた銃声の鳴り響くコメディ。
スピンオフという観点から言っても、満足です。

バンタムの感想を言うときによく「美しい」をつかってしまうのだが、初日の時点ではその観点から言えばやや甘さがあるか。

結びのシーンの緊張と弛緩も見事。
はああと息をつかせての終幕も計算ずく。
ぜひ!

ネタバレBOX

紅一点の中園彩香さんが良い女!とてもバンタム女子でした。

マークとヒューズは2013年12月公演からキャスト変更でしたが驚くほどスムーズに自分の中でイメージが塗り替えられました。
(冒頭には登場していないのも功を奏しているかと)
レニー、この口が巧そうでちょっとズレている感じ、馴染めていない感じ。。
懐かしい三人組です。

CR岡本物語さんの芝居は鉄板。秀逸です。
樋口靖洋さんの異様な存在感、すごい。ビビッドな黄色いネクタイの存在感もすごい。笑
重鎮らしく登場するガラかつとしさんも笑わせます。

樋口靖洋さんが登場するときのお約束に笑ったり、
小芝居の雰囲気にクスッとしたり、
CR岡本物語さんの格好良さからの落差にびっくりしながら安心して笑ったり。
昨年のコメディフェスティバルを経験したバンタムクラスステージが、まさにバンタムクラスステージのコメディを送り出したという感じ。
ガンダムネタもしっかりあります笑。
映日果-アンジール

映日果-アンジール

XZM

遊空間がざびぃ(東京都)

2015/07/01 (水) ~ 2015/07/05 (日)公演終了

満足度★★★

期待しすぎたかな
バンタムクラスステージ細川氏の脚本演出。照明音楽場転どれもまごうことなき細川作品の感をもちながら、小さくまとまってしまった印象。
(もっと、観たあとに胸にぐるぐるとうずまく感情が残る作品にもできるところをあえてそうしなかった?などと考えてしまう。)
バンタムクラスステージの公演ではないのでプロデューサーの要望にこたえ抑えた部分もあるのだろう。東京での好評は素直に嬉しい。

ネタバレBOX

根路銘さんが殺されるシーン、秀逸。そこはさすがの細川さんでした!

びりびりしびれるような、という芝居、
主人公は枯れかけた刑事。
退廃的、というふうにも、退屈、というふうにも取れる展開とテンポで
ついていけない人には苦痛だったかも。
アンソロジー

アンソロジー

ACRAFT

笹塚ファクトリー(東京都)

2015/07/01 (水) ~ 2015/07/05 (日)公演終了

満足度★★★

残念な公演
舞台は総合芸術だということを悪い意味で考えさせられてしまう公演だった。
脚本が☆3つという印象で、そこから星を増やす機会はたくさんあったのにどれも中途半端になっている感じ。舞台装置、音楽、照明、衣装、音響、演者の動き・演技、どれも中途半端だった印象。衣装と髪型・メイクに関しては、よくできていると感じる役もあったのだが。そこが残念な役もあり。もったいなかった印象。
序盤にあった殺陣の合間のダンスは必要だったのだろうか?わたしに起こったことをありのまま言うと、あまり入り込めていなかった芝居からさらに気持ちが遠ざかってしまったのである。これは残念だった。

あまりみない飛鳥時代ということで、天皇の前で「陛下」ではなく「天皇」とはっきり言うセリフがあったり殺陣が刀ではなく剣だったりとなかなか楽しめた。
大海人皇子・額田女王・天智天皇のよくあるフィクションはあまり好きではないのだが、そこをどろどろえがくものではなかったので個人的にほっとしたり。
踊り子にショートカットの娘はどうなの、と思ったがそれはちゃんと回収されていたし、なかなか、本当に、なかなかだったのだが。
やはり振り返れば、いろんなものが中途半端。そして、そういう作品は尾を引かないのだ。

一部キャストが明らかに舞台の発声をできていなかったりといったこともあり、総合すると残念でもったいない公演であった。

かべぎわのカレンダリオ

かべぎわのカレンダリオ

バンタムクラスステージ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2015/05/14 (木) ~ 2015/05/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

美しいバンタムクラスステージ、健在
舞台は総合芸術、そう感じることのできる公演はあるにはあるわけだが、とりわけそれを感じる公演。
キャストのたたずまい、声、語る言葉の抑揚といった役者の魅力に、音響、照明、舞台美術、音楽。そして、場面の構成。物語。物語に登場する人物たちに対して観客が感じるものまで含め、きっとすべてがうまく醸成されるよう計算されている。細川さんによって。

B公演はロマンティック・コメディと謳われているだけあって笑えるように作られたシーンが用意されているわけだが、A公演もうまくガス抜きができるようなシーンがありライトに仕上がっていると感じた(もちろん重いシーンもある)。ハードボイルドタッチの長編ロマン。まさに。

よく見かけるお涙頂戴の感動モノではない家族の物語、もっと娯楽に振れた作品である。
ハードボイルドというエンタメを突き詰めたもの。
ABともやさしい気持ちを持てる物語であり、くらいものに気付かされる物語でもある。かつ、キャストの個性・役の個性が際立つ作品。25日月曜日まで。ぜひ。

ネタバレBOX

これまでのバンタム作品とは違ったテイストになりそうとイベント(バンタムクラスパラダイス)でお聞きしていた通り。観劇後に「えっ?えっ!」とパニックになったりはしない作品。やさしい物語に仕上がっている物足りなさもあるが、しかしそれを補って余りある鋭利な語り口。観ている者を楽しませる仕掛けがたくさん施されている。
なにより舞台美術。素舞台にパイプ椅子のスタイルに執着せず、美しい映画館を舞台美術と長椅子で表現した。高さの演出に椅子を使うのも流石。椅子やテーブルを持って整然と場転をするスタイルは放棄したが今回の場転の美しさは感動を覚えるほど。カーテンコールまで美しく整然とキャストさんたちが動く。

ヒロイン二人にカレンダー、バラキまでが主役と見ていいのだろう。映画館で父親たちがつくった映画を観るマレーネのシーン、宮島小百合さんの演じ分けが秀逸。バラキも同じシーン、マレーネへの憎しみと憧憬が入り混じった視線からの、映像に驚く一連の流れにはっとする。
カレンダーがピストーネに拾われるシーン、ヴァンチュラさんが卑しく笑うのが堪らない。おいしいところを持っていくマルティン、盛りだくさんな感情と動きを見せてくれるアルフレド、紳士然としているのに仔犬の意見を聞こうと言ったスタヨーラ……、挙げるとキリがない魅力的な登場人物たちと、確実に表現してくれるキャスト陣。安心して楽しめるという嬉しさを胸に、残りステージを楽しませていただく。
独りぼっちのブルース・レッドフィールド

独りぼっちのブルース・レッドフィールド

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2015/02/22 (日) ~ 2015/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

全てが絶妙
タイトルも絶妙なら、フライヤーと予告編に出しているキャラクターやあらすじの「露出加減」も絶妙。キャスティングも素晴らしく、特に渡辺徹さんと沖野晃司さん、それに古舘佑太郞さんはわたしの目を釘付けにさせてくれた。

シンプルで美しい物語にいろんな枝葉をつけてはいるが、主軸たる物語はけしてぶれず、またその枝葉が絶妙であるし物語の邪魔をしていない。
多少の強引さはPMC野郎のカラーだと感じているし楽しめばいいと思っている。言葉(セリフ)のテンポや抑揚などの演出が心地よく、大変気持ちよく観られる。

マイナス点を述べるとしたら、
登場人物が多くお一人の役者さんが何役かこなされていることがあるため、
やや混乱するかもしれない、ということくらいだろうか。
それくらい、マイナス点が少ない印象。

「明日誰かに話したくなる復讐劇」のコピーに偽りなし。
こりっちでは予約できなくなっていた千穐楽、今なら予約ができる。予約可の状態になっている今のうちに予約をおすすめする。

ポップンさんの公演では毎回のことだが
主題歌もよく、iTunesで購入ができたりするとファンとしては嬉しい。

以下、ネタバレBOXにて。

ネタバレBOX

パンフレットで吹原さんが書かれている通り、「西部劇」×「復讐」×「記憶」という組み合わせがまず絶妙。よくぞここに辿り着かれたな、というくらいの快作。
復讐の連鎖を終える一撃、憎しみの感情を忘れる選択をした一瞬。
忘れたい記憶が無い人間など一握りだろう、忘れたい記憶があっても、それでも記憶と共に生きていく現実を見つめ直すような作品。

タイトル「独りぼっちのブルース・レッドフィールド」はまさにその通りなのであるが、劇中彼がまったくの独りになるのはごく一部で、最期は(長きにわたり孤独であったとしても)自分を慕う人物に囲まれて「悪くない、悪くない」と孤独でないことを喜ぶ姿が描かれる。渡辺徹さんのたしかな演技力がブルースの弱り切った最期を表現していることに感激しながら、吹原さんの愛について心を震わせる物語の最後。

感動、という2文字には違和感があっても、「心を振り動かされる」という表現であれば多くの賛同が得られるのではないだろうか。
2時間弱(開演前の寸劇も含めればもう少し長い)でめいいっぱい心を揺さぶられる観劇ができたことに感謝。
マナナン・マクリルの羅針盤 再演 2015

マナナン・マクリルの羅針盤 再演 2015

劇団ショウダウン

船場サザンシアター(大阪府)

2015/02/07 (土) ~ 2015/02/15 (日)公演終了

満足度★★★★

母親の寝物語のような
2014年9月池袋演劇祭大賞の本作。
林遊眠ちゃんの演技は何度か舞台で拝見しているのに彼女の本拠であるショウダウンさんはなかなか観られておらず、今回ようやく観劇が叶った。
林遊眠一人芝居シリーズということで、一人芝居を前提として作られたものにしてはしっかりと入り込める物語、場面もよく変わるが、それを知らせるストーリーテラーを置いたことでタイトルにしたように“母親が子どもに聞かせる寝物語”のような雰囲気をもつ作品になっていると感じた。母が子にする読み聞かせ、それは物語を伝える愛情のこもった手段。劇中、ストーリーテラーの正体をわれわれ観客は知らされることになる、だからこそ持った感覚なのかもしれないが、あながち間違いでは無いだろう。
林遊眠ちゃんのパワフルさには感嘆しかない。おつかれさまでした。
子ども・青年・女性・粗野な海賊・女神、ものすごくいろんな顔が、たしかにあなたの顔に載っていました。
リアルガラスの仮面でしたね…!

衣装と舞台美術も素敵でした。
腹筋も素敵でした。
すごいなあ。

うっかり婚活スターウォーズ

うっかり婚活スターウォーズ

かのうとおっさん

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2015/01/30 (金) ~ 2015/02/02 (月)公演終了

満足度★★★

楽しいけれど…
開場してからの客入れ時に流れるBGM、冒頭に流れる嘉納さんのナレーションからして笑いを誘われ、全編通して楽しく拝見。

うん、楽しい、のだけれど…。なんだかふんわりぼんやりしていて勿体ないところが多かった印象です。物語上、そういうふんわりぼんやりな役を作り上げたのかもしれませんし、かのうとおっさんならでは、でもあるかもしれませんが、せっかく時間をかけて作り上げているのですからぴりっとした場面もぜひ。
夏に東京で拝見した作品ではもっと良い印象をもっただけにちょっと残念でした。

D・ミリガンの客

D・ミリガンの客

OIL AGE OSAKA

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

演劇のちからを感じる作品
2006年に東京で一度上演された作品の再演だが、初演は未見。
初日に観劇した際は謎ばかりで登場人物たちと一緒に考えるような感覚に陥り、内容を知ってから観れば実にうまく仕掛けられた脚本であることに唸らされると同時に出演する役者さんたちの力量をあらためて思い知らされる。
要するに傑作である。
やや説明しすぎの感があるし、無駄に思えるシーンもあるが、かといって無駄は全て省くなんてのもナンセンスだ。
一度だけ観ても大変楽しめるし、二度観てもとても楽しめる。そういう意味でもおすすめできるし、おすすめしたい作品。
もうあと楽日の2ステージのみになってしまったが、ぜひ。

以下ネタバレにて少々。

ネタバレBOX

このお話には「役が名前を口に出すが舞台にはあらわれない登場人物」が何人かいる。
そして、生身で演じる演劇だからこそ得られる、「舞台にあらわれない登場人物」たちの実感がある。
小説でも、映像でも、ここまで濃い感覚を得られないだろうと思うのだ。
彼らの口にのぼる人物たち、その人物たちに対し役が感じていること、それらを生で見聞きするからこその実感。
演劇の魅力をまた一つ発見した気分である。
黄金のコメディフェスティバル2014

黄金のコメディフェスティバル2014

黄金のコメディフェスティバル

シアター風姿花伝(東京都)

2014/09/18 (木) ~ 2014/09/29 (月)公演終了

コメディとは何か
「コメディ」とはなんなのか、全6作品を観てそのことを考えずにはいられなかった。
自分の中では最初、アガリスクエンターテイメントさんがとてもコメディらしいものを作り上げていたなと思ったわけだが、ではほかの5作品はコメディではないのかと問われれば、けしてそうではないのである。
観劇歴は浅いし、フィクションをあまり好んでこなかったのもあって、そのあたりのことはまだまだこれから模索していきたい。


コメフェスをずっと楽しみにしていて、期間中入り浸って、スタッフのみなさまによくしていただき役者のみなさまにもよくしていただき。とてもとても楽しかったです。ありがとうございました!
表彰式で叫びすぎました笑。受賞したかたたちのコメントにいちいち感動しました、賞を受けることのよろこびを感じることができたのも良かったです。

シャンタンスープ

シャンタンスープ

バンタムクラスステージ

シアター風姿花伝(東京都)

2014/09/18 (木) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★★★

恐怖にすくむコメディ
起承転結の「転」が素晴らしかった。鈴木聡賞と優秀俳優賞を受賞した土屋兼久さんの独擅場、観ている者が緊張する音が聞こえそうな時間だった。
ネタ場面以外でも笑いがこみ上げる場面があり、コメフェス参加作品として悪くなかったと思う。が、初観劇時は上演中ほぼほぼ緊張してしまう羽目に陥った。芸人の世界の怖さを追体験する舞台であり、間違った受け取り方ではないと思うが、コメディ演劇フェスとして笑いに来た観客にとってはびっくりするものであったに違いない。
とはいえバンタムクラスステージのファンとしては全く問題ない(笑)。バンタムらしさに溢れた「シャンタンスープ」、新機軸の作品として楽しませていただいた。

I LOVE LIFE

I LOVE LIFE

空飛ぶ猫☆魂

小劇場B1(東京都)

2014/10/11 (土) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

重さから軽さへの昇華
空飛ぶ猫☆魂さん、初観劇。
正直に申し上げると、1~3話を観ながら重さにやられそうになった。しかし4話は一変、会話の応酬が楽しい。登場人物が背負うさだめの重さ、登場人物が感じているつらさはあるはずなのに楽しいと感じるのは、せめて楽しく生きたいと願っている役を吹原幸太さんが軽快にこなしているからか。
1~3話、6人の物語が4話で集約され昇華される流れは快感。4話はとても楽しいのだが、それまでの流れの重さが結構くるのでトータルで☆を4点とさせていただく。
初回は上記の通り1~3話の重さにやられてしまったが、二回目の観劇ではそこまでの重さは感じなかった。重い中にもちょっとずつ挟まれている笑いどころでくすりと笑えるし、本当はもっと笑ってよかったのだろうと思う。
東京公演はすでに終了したがまだ札幌公演がある。是非。

ネタバレBOX

兄と弟、記者と取材対象、社長と従業員(同時に師弟)、という2人×3組の物語を見せていって、4組めの2人──常時監視される公務員とその側近兼監視人──が先の3組をちょっとだけ救う、まとめてみればそんなお話。

日替わりゲストが毎回異なり、やること(セリフ)も毎回異なるので楽しめた。その日替わりゲストが出てくるのも4話であり、ある意味4話のための1~3話。4話の楽しさで1~3話の重さが覆い隠されてしまうのだが、1~3話のテンポなど良くできたらもっと楽しい作品になると思う。札幌公演での変化に期待。
6C×BCS ~夏のショートストーリーズ~

6C×BCS ~夏のショートストーリーズ~

シアターKASSAIプロデュース

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/08/20 (水) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★

短篇集の尽きない魅力
ただ「短編」というくくりだけの物語たちを集めて上演する。珠玉の公演でした。
あまりにもそれぞれの物語たちのカラーが違うのです。しかしそれゆえに楽しむことができました。
普段は作・演出を一人でやっている6番シードとバンタムクラスステージ、その作と演出を分けた作品など、お互いの劇団のファンにしてみれば非常に新鮮に客観的に見つめることができる機会にもなり、1回では本当に物足りないものになっていました。
ちなみに、「観たい」に書いていた各回2回は観たいという目標は、無事にクリアできました^^
遠征者ゆえに中身を観てから追加ということはできず、2回しか観られなかったコースは残念でした。

各回後のイベントもあったわけですが、特にスイカ割りと流しそうめんは次にいつお目にかかれるかわからないイベントでした。
貴重な経験をさせてもらいました。ありがとうございました。

一つだけ文句をつけるとするなら、舞台美術でしょうか。
バンタムクラスステージは素舞台が多く、6番シードは舞台美術が凝っている。今回、その中間というよりは、むしろほぼ素舞台に近いものでした。今までに観てきた舞台で舞台美術が全く意味をなしていないもの、たしかにありました。ありましたが、やはりそれだとなんとなく消化不良感が残るものです。
これで満足度が下がるわけではありませんが、必要無いなら舞台美術を排除するだとか、もうすこし舞台美術を考慮した演出をするだとか、勇気を持って欲しかったという思いもあります。

以下各話ごとの簡単な感想をネタバレBOXにて。

ネタバレBOX

暗殺者の預言と預言者の暗殺
…バンタム作品としてDVDで視聴していた作品。
 6番シード松本さんの演出でもかっこよくクール。
 宇田川さんと土屋さんのユニゾンは見事の一言。

Re:
…物語の根幹たる出だしを受け付けられず珍しくイライラしながら観劇。
 しかし答え合わせは秀逸でひきこまれた。
 イライラを感じはしたが良い話で終わる。

天気と戦う女
…観客・スタッフだけでなく登場人物たちまでもが主人公を応援する作品。
 パワフルな椎名さんなくしては成立しないコメディ。
 音楽の使い方などはバンタム細川さん演出の色だった。6番シードさんファンの感想を知りたい作品。
 全作品の中で一番すきな作品になった。

わたしのラベル
…19世紀パリの作曲家たちがもともとすきなこともあり楽しく拝見した作品。
 宮島さんが令嬢を好演。舌を出すシーンの妖艶さはまさに細川作品。
 山下哲平さんの繊細な演技に見惚れた。

ジャガーノート
…2013年1月の短篇集で観ていた作品。
 ただしダニーの役柄は初演時と異なっており、今公演ではダニーが戻っている。
 笑いに特化しながらも男女の物語となっておりギアの変え方が絶妙な塩梅。
 6番シード松本さんの演出と劇団員4名のみの安定感がかみ合っており11作品中もっとも「鉄板」な感じを受けた。
 なお、作中のセリフは公演期間中に結構変わっていた。笑

ホームセンターズピリオド
…2回めでオープニングアクトの秀逸さに気付かされる。
 緒方ちかさんの冷たい演技からの心がほどけるさまが素晴らしかった。

幽霊アプリ
…主人公の人物・背景が明かされていくにつけ物語に厚みが増す、
 当然だがなかなか普段感じないことを実感させてもらった。

几帳面独白道化師
…2013年1月の短篇集で観ていた作品。
 土屋さんのテイラーは反則でしょう。宇田川さんの「ノート」の傲慢ぶりも最高。

バスケットボールダイアリー
…不和チームのロッカールーム、絶対にうまくいかない女たち。
 同じ方向をむけない登場人物たちが実にパワフルに生きていた。
 空気を変える監督が舞台に現れるたび笑いとイライラが生じる不思議なコメディ。

マリッジディープ・ブルー
…軽快な男たちの会話、だまされない女たち。
 恋愛あるあるが詰まったバンタム細川さんの新作。
 椎名さん、栗生さんがとても新鮮だった。

サザンクロスの咲く丘 ~ギブミーテンエン another story~
…「ギブミーテンエン」、リンとガクの交錯。
 リンの愛、悲哀、憎悪、物語としては描ききられていないだろうが、柚月さんの丁寧な演技により紡ぎ上げられた情感がリンをかたちづくっていた。
盆がえり

盆がえり

演劇集団よろずや

浄土宗應典院 本堂(大阪府)

2014/08/08 (金) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★

「おとなしい演劇」
わたし自身があまり事件のないお話がすきだというのもあり、とてもじんわりと楽しませていただいた。
この物語は、「事件後」なのである。事件の傷を癒やすのは難しい、その一言をふくらませたような物語。ただの家族の話では終わらず、涙を誘う。観ている人だれもが、自らの人生の中になにかしら思い当たるスイッチを持っているような、そんな物語ではあるのだが、優しさに包まれてもいる物語。
もっとこういうお芝居が増えてもいいなと思うけれど、こんなお芝居ばかりでもつまらない^^;
ともかく、楽しませていただきました!^^

さまよひ魂

さまよひ魂

MousePiece-ree

劇団そとばこまちアトリエ 十三 BlackBoxx(大阪府)

2014/08/06 (水) ~ 2014/08/11 (月)公演終了

満足度★★★

騒がしくもしっとり
マウスのお三方、客演の女性お三方。六名うまくバランスのとれたキャスト陣で、観ていてとても楽しかった。
意味のわからないところから始まるわけだが、途中でなんども笑わせていただき、さいごにはなんとなくしっとりして明日からもがんばろう、となる。良い舞台です。


それにしても、力いっぱいはたく大沢めぐみさん、素敵です笑 容赦ない!

0号 -2014-

0号 -2014-

ゲキバカ

ABCホール (大阪府)

2014/07/25 (金) ~ 2014/07/28 (月)公演終了

満足度★★★★

うつくしく、力強い舞台
感動系の舞台ではあるだろうが、実に現代的な「強い女」の舞台。
観客は現代人、しかし登場人物の青春は輝かしい昭和にあった、そういうときに実にうまく使える手法で観客を舞台にいざなう。観客を舞台にひきこむのが毎度うまい。
異性への想いだけで強く生きられる人間というのは少ないだろう。けれどもそれを否定しない、おしつけない台詞がとても好きだ。「(そんな生き方自分にはできない、という若者に向かって)そりゃそうよ。それはわたしの生き方なんですから。」若き自分に投げかける台詞「顔をあげて。強く生きるのよ。あなたは、わたしなんだから。」(※台本を購入していませんので、間違っていると思いますごめんなさい) この強さを客席で観て、勇気をもらう。そんなことができるのもまた、演劇の魅力だと思う。

さすがゲキバカ、大人数のダンスシーンはかなりの迫力。ぐるんぐるん回られるわ、タップだわでセクシーな衣装よりダンスそのものに魅了される魅惑的な数分間。殺陣のBGMがタップだった場面は見所の一つ、素晴らしかった。

恋愛が恋愛らしくないとは感じたが、そういう時代だったといえばある程度納得できるのではないかと思う。台詞の一部に違和感ある敬語があったりもしたが、個人的にはご愛嬌、で済ませられる程度だった。

友達

友達

sunday

AI・HALL(兵庫県)

2014/07/11 (金) ~ 2014/07/14 (月)公演終了

満足度★★★

わたしは最後まで気持ち悪く観劇(褒め言葉です)
残念ながら戯曲を未読のまま観劇。安部公房とぱっと言われたってイメージわかないわ、という状態…残念ですみません。
開場してすぐに着席。すでに舞台上には役者さんがいらっしゃいます。ほぼ全員揃ってらして、談笑していらっしゃる。お話が始まっても壁際にいらっしゃるようにお見受けしました。
とはいえどこからが「始まる」なのか。オープニングアクト、素晴らしかったです。たくさんある四角い枠、きれいに動いて動いて、背後の大きい白い壁に「影絵」でのタイトル。もしや、と思った鳥かごの演出、最後まで怖かったです。心理的にとらわれたということだったのでしょうか。指輪は大きくなり、用をなさない金属に。すべては光と影の演出。生演奏は聴く者の心を揺らしました。美しい歌声から不気味な歌声まで。お見事です。主人公が弱っていくさまがあまりに真に迫っていて不気味、最後まで気持ち悪く不気味な気分のままで拝見しました。
役者さん皆さんが実力派なのは拝見していればわかります。戯曲はおそらく難しい部類に入るのでしょう。それでも、生き生きとされていました。それがこの気持ちの悪い演劇の救いだったようにさえ思います。
長らくフライヤーとして眺めていたポスター、とても綺麗とおもっていたけれど、観てしまったあとではとても見る気になりません苦笑。いやはやすごかったです。

うちの犬はサイコロを振るのをやめた

うちの犬はサイコロを振るのをやめた

ポップンマッシュルームチキン野郎

駅前劇場(東京都)

2014/07/04 (金) ~ 2014/07/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

やられた
シリアスなシーンの中にも練り込ませる笑いが絶妙な作風なのは既に認識していたが、今回は特に好みであった。
ラストシーン、主人公が何のためにあんこ餅を食すのかわかっていながらも、実際ステージ上に華やかなシヅ子が颯爽と出現したときに涙が湧いた。あまりこういう涙の出し方を経験したことが無く、貴重な経験をさせていただいたと思う。

もはや素顔がわからない徹底したメイクと衣装による造形は毎度素晴らしい(もちろんそこにきちんとした演技が載るからこその造形)。
客演陣、特に萩野崇さんは登場シーンでさっと空気がかわるほどの存在感、美津乃あわさんは美声・ダンス・芝居すべてため息が出そうにうつくしかった。藤田慶輔さんの骨太さと繊細さがあわさった演技もすばらしく、藤田さん演じる吉田茂の衝撃は一ヶ月経つ今でも忘れられない笑。

自己犠牲モノ、とそう言えばそうなるのだろうが、彼(犬)が自らの望みを全て叶えたのだという見方をすればけして犠牲とは言い切れず、そのバランスもまた良かった。

すごい舞台でした。今までのPMC野郎さんの公演で、ちょっと肌に合わないところがあるなという感じを受けることもあったのに、今回は全く気にならなかった。慣らされたということかもしれませんが。笑
次回も楽しみです。遠征になるので全公演を観られるわけではありませんが、期待と応援をさせていただきます。

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