満足度★
観ることが育てること
なんつー青年団特有のキャッチフレーズを見ると「ごもっとも!」なんつって観劇者もそれなりに寛大に幼子をあやすみたいな心持になるわけだけれど・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
はっきり申し上げて前半の芝居も講義のようでまったく合いませんでした。
ってか、面白くない。
演出家は少しでも観客を楽しませようとする努力はしたのだろうか?
確かに観劇料金は破格の500円だが、観客は時間を割いて交通費をかけてわざわざ観に行くわけだから、もうちょっと工夫しないとダメだよね。
その後の落語にも勉強不足を感じた。観ていて落語の口頭もなっていないし、とりわけ一人が複数を演じるのだから、声の高低と幅を変えなかったなら、どーにもならないと思う。
そしてまだまだ公演を打つには未熟すぎる。と感じた次第。
青年団自体が大きくなりすぎて末端まで目が届かなくなっているのだろうか?渡辺さんは今年の春に青年団に入ったようだが、確か、今年はかなりの人数が青年団入りしたはず。
だからその多数の中の一人なら、相当な手腕と期待したのだが、残念なことに芝居という娯楽にまったく共感できなかった。
青年団自体の質が下がったのだろうか?
満足度★★
太宰治の短編小説「駆け込み訴え」
イエスを裏切ったイスカリオテのユダを描いたものだ。舞台は序盤、吾妻の一人芝居に徹する。後半は丸房のリーディング。太宰の小説を読んでない観客は少々退屈かもしれない。それでも、なんとな~くだがクリスチャンの観客が多いような気もするのだ。ちなみに煙草が苦手なワタクシはこういった観客スタッフ諸共フリー喫煙ゾーンの芝居は観たくない。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
冒頭の「申し上げます。申し上げます。」から始まって、イエスのことを密告する商人ユダの話が展開される。憎悪の訴えを始めたにもかかわらず、次第に「どんなに彼を愛しているか」という告白話にすり替わりイエスの愛に気づき、そしてイエスの足に香油をかけたマリアに嫉妬しているかについての話になる。
しだいに、気がつかなかった本当の自分の本性に怖れおののき、どんどん自分を見失っていくのだ。しかし、「しようとしていることを、今すぐ、しなさい」とユダに敢えて自分を裏切らせたイエス。
この場面は聖書や数多くの舞台で演じられている「イエスは自分が十字架に架かりたかった。」のシーンだが、ユダはイエスを愛していた。愛したがゆえにイエスを売ったと言われている。
この場面をユダの告白として描写させていたから、芝居の主役はユダなのだが、正直申し上げて評価は観客の好みに割れると思う。大劇場や劇団四季でもこれらのシーンは公演されたがそれは登場人物の多さとスケールの大きさ、そして演劇らしい演劇をアピールしていた。
今回は演劇というより、集いのような感覚で、好きな人には堪らない密度だろうけれど、やはりワタクシ的にはちょっともの足りなかった感はある。後半のリーディングはもうちょっと工夫が欲しかったところだが、吾妻が窓を開けて下の者に聖書らしき言葉を叫ぶ場面は、絶好調に楽しかった。まるでキリストが説法でもしてるようではないか。笑
満足度★★★★★
本当の贈り主
昭和の下町の風景の描写がレトロ感満載で
上手い。セットはタバコ屋とその向かいのアパートの一室のみなのにまるで町全体の臭いやら雑多な息遣いが想像できるのは演出の技なのかと・・。そうして多すぎる人の流れがこういった下町の風景を見事に賑やかにしておりクラシカルな雰囲気を醸し出していた。当日パンフには写真、役名、役柄まで書かれてあり多い登場人物にも迷うことなく完璧に把握できた。勿論、物語は好みの芝居で本当に素晴らしかった。泣いた!泣けた。泣かされた。
ネタバレBOX
刑務所時代の仲間4人はとある下町の煙草屋の向かいにあるアパートを借りて探偵事務所を開設することにした。ここで彼らは一儲けしようという魂胆だったが、そうは問屋が卸さない!がこの世の掟ってもんだ。
4人はひょんな事から殺人事件に巻き込まれ一儲けどころか掠めた15万円も施設にプレゼントされるピアノの代金に消えてしまう。
4人が犯した罪も織り交ぜながらこの事務所と近隣の人間関係も巧みに描写し、また、バルドーの小悪魔的な色香も織り交ぜながら昭和30年代の情景を絶妙に演出していた。個人のプライバシーなんて言葉もなく、煙草屋の黒電話が近隣の住民の呼び出し電話と利用されていた環境や、その黒電話にかかってきた一本の電話が元で麻薬患者が殺されたりとサスペンスなスパイスもしっかり加味されていた。
そしてその煙草屋の娘・みっちゃんと精神薄弱児のモタとの不思議な友情が芽生える辺りから物語りは大きくうねり出す。みっちゃんが過去に味わった絶望や、モタのハーモニカの音色はワタクシの感受性を刺激してちくちくと心に響き泣くに充分の展開だった。
秘密を知ったモタを殺そうとしたヤクザに銃を仕掛ける学者のシーンではあまりの筋書きの完璧さに絶句し、モタとみっちゃんが精神薄弱児の施設にピアノを贈呈する場面とその後の展開では、感動のあまり泣きじゃくってしまったが、しかし、ワタクシの涙はこれらのストーリーにだけでなく、こうした舞台を作り上げた人達に感動したのかもしれない。
舞台は笑いあり、涙ありの温かな物語りで往年の「寅さん」を彷彿させるような出来ばえだった。本は勿論、良く出来た素敵なお話だった。帰り際「いい物語だ・・。」と口々に話す観客が目立っていたのも、これを裏付ける。
こうして温かな気持ちになって帰路につく幸せはクリスマスの為の装飾が映える夜に似つかわしい。
だから、舞台が好きだ。
満足度★★★★
今までのX-QUESTの公演で最強かも
殆どがコメディ。しかも超面白い!七人の息子達のバカさ加減の表現が絶妙な舞台だった。カッコいい!というよりカッコ悪い七人の息子達。脚・演出のトクナガヒデカツは流石に笑いのネタが斬新だった。また THEATRE1010ミニシアターの公演だった為に小劇場特有の臨場感が満天な舞台。お勧め!
ネタバレBOX
母の葬儀の日に集った七人の息子はそれぞれにお互いの素性をよく知らないが、それぞれ母に託された手紙があった。これまたその内容も七人七様でまったく面白い!7人は国家プロジェクトによって生み出されたが失敗作だった、など真実の手紙は一つもない。
これらの7通の手紙の内容だけでも大いに笑えるのだが、7人が母の葬式に集る情景だけでもすんごく笑える。その他、猫を飼うことになった風景や猫に与える餌の貧しい描写はまるでアニメを観てるよう。笑
いあいあ、ワタクシ、トクナガヒデカツのコメディがこんなに面白いとは露知らず。素晴らしい本でした。ただ、お遊びで催した「あるひとないひと」は面白くなかった。
ダンスの場面では市川だけが微妙に他のキャストよりちょっと遅れる。そんなだからアクションなんてとんでもないのだ。もしかしたら骨が折れて絶体絶命のピンチになってしまう可能性だって少なくない!笑
こんなところも決して若くないキャストらの20年という歴史の重みを感じるし、人間らしくて微笑ましい情景だ。全体的にライブ感溢れるステージで繰り広げられたのは、かんなり面白いコメディで、終盤では7人が生まれた理由も脚色され、大家族のハートフルなファンタジー!だった。ここまで楽しませてくれたら、きっと次回も観たいと思う素敵な物語。
満足度★★★★
探偵シリーズ第2弾!!
ハードボイルドといえばルナ・パンクの本多栄一郎だが、今回、本多と白川の最強タッグを引っさげてサウスベイシティを暴れまくるわけだが、意外や意外!今回は白井役の高橋祐斗が一身に笑いを誘っていて楽しかった。コメディ色の強い探偵もの。
ネタバレBOX
登場する風吹、紅、南雲、キリコらのキャラクターは前作と同じなので安心して観られるし、懐かしい。笑
今回も探偵事務所のあるビル、ダコダハウスから物語りは始る。このビルの地下1Fにニューハーフパブ”バナナの気持ちをわかってよ!”があり、ここで風吹はバイトをしているためにニューハーフ達が芝居を彩るわけなのだが、彼女たちの佇まいのなんとも汚いこと。笑
いあいあ、汚いニューハーフをあまり見たこともないだけに新鮮というか、自分に自身が持てるというか、とにかくとんでもないのである。
だから、汚れた卑しき街の汚れたニューハーフらと共になかば、はちゃめちゃな展開なのだが、汚いニューハーフらがヤクザになったり謎のおっさん、ジョージ・オハラになったりするのだから、その世界感はアニメ的だ。笑
でもって筋肉マン顔負けの挌闘家も登場しルールもへったくりもない。
の~んびりと肩の力を抜いて観る連続、笑ハードボイルド“騎士(ナイト)シリーズ”第2弾だ。
次回も観たい。
満足度★★★★★
三姉妹が絡み合う絶妙な心理が観もの
宿屋の舞台セットが素晴らしい。会場に入った途端にセットを観ただけでヤラレタ。相変わらず桑原裕子の演技力に感心する。それぞれのキャストらがきっちりそのキャラクターになりきっていて大満足な舞台だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
母が帰ってくるかも知れないと沢田家のそれぞれの三姉妹はみな複雑な思いだったがやはり嬉しい。母に帰ってきて欲しいと焦がれるのだ。しかし、自分たちを捨てて出て行った母親をそう簡単には許せない気持ちもあり、意地もあり、三姉妹はなるべく他の姉妹にそういった気持ちを悟られないように隠す深層心理が絶妙だった。
こうして両親のいない娘三人は力を合わせて生きてきたものの、その時代の流れの中で、長女の夫の中国転勤の話や、次女の不倫、三女の未熟な恋を織り交ぜながら、描写していた。
突然消えた母との距離を測りながらも、まだ完成されてない家族を三人はどうにか保とうとする危なっかしさの表現も見事だった。この小さな家族を母代わりになって支える長女の責任感や次女の自由奔放さ、三女の大人になりきれない中途半端な反抗心の描写も巧みだ。
更に宿屋に訪れる悲喜こもごもの人間関係をあぶり出し、笑いも加味され楽しい舞台ながら終盤では人間味溢れる感情を露呈し落涙を誘うシーンもありで充分に見応えがあった。
人間というのはとても不器用なものだ。自身を振り返っても、まったくどうしてこんなにだめなんだろうと自分でも解っているのに、そういう自分からなかなか抜け出せない。変わるって難しいことだ。しかし、色んなことに耐えながら、社会の矛盾を諦念を持って受け入れながら、漂い流れるように、みんな大人になっていく。清濁すべて併せ呑んで、大人になっていく。世の中にきちんと出て、つまらぬ日々を永遠に戦っていく。三女の心理を想いながらそんな風に考えていた。
今回の物語の、捨てた子供に乳代わりの目玉を残す「蛇奥様」という架空の民話と家から出て行った母の心情は同等だな・・、とか考えながら、だけどワタクシもがんばって生きていくぞ、と思う。
満足度★★★★
どんでん返しのどんでん返し
ワタクシの観た回は、なにわの穴吹がアドリブで他のキャストをいぢり倒してた。笑)特に大友恵理が標的になってて、実に面白かった。当日パンフに役名が欲しかったところ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
説明どおりに集められた彼らは犯人・諸岡の記憶をひも解かなければならない。もし諸岡の記憶が戻れば報酬は一人一億円という存外見たこともない金額に彼らはビビりながらも一攫千金を夢見て協力することになったのだった。
しかし諸岡の記憶はとうに戻っており、300億円に目が眩んだ内閣調査室側の人間が諸岡と組んで山分けをしようという魂胆だった。これを知らされた彼らは驚愕し、更に銃で脅され何が何だか解らないうちに諸岡側が仲間割れをして2人が射殺されてしまう。
集められた彼ら一般市民は、まるで大きな化猫を前にした鼠のように縮こまってしまうのだが、犯人は一人の人質を取って他は全員逃がすという。「しかし人質は善良な人間がいい」という犯人に一般市民は自分がいかに悪い奴かをアピールするのだが、ここで一人の検事がついつい過去の悪行を暴露してしまう。建設業者との贈賄で新井晴彦に罪をきせて闇に葬ってしまったことを・・。だから自分は善良な人間じゃないと・・。
そんな中、実はその新井の娘だと名乗りを挙げた女性が父親の名誉回復の為に検事の悪巧みを暴くよう探偵事務所に依頼していたのだという。それを受けて芹沢探偵事務所(諸岡)は検事を吐かせる為だけに今回の大芝居を打った!という仕組みだった。
物語としては観客が想像もつかないようにこねくり回したのだと思う。笑)
しかし、ここまでしなくても良かったかな?とも思う。シチュエーションコメディなら単純でも面白かったならそれで良いのだけれど、今回は物語としては笑う箇所は少なかったように感じた。
これで見納めなんだね。
今までありがとう。
満足度★★★★
岩井秀人物語
こう書いても過言ではないと思う。たぶんコメディ。ハイバイの「て」を観劇した方は更に楽しさ倍増かと・・。
とにかく可笑しくて笑った、笑った。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
岩井が芝居とはなんぞやと、カルチャーセンターから、大学時代、卒業後からハイバイを立ち上げて上演するまでをコミカルに、しかしリアルに綴った物語だった。
中盤にオリザ人形が登場した時には、あんまり似てるので場内でも笑いが・・。
このオリザ人形を志賀が操って、なんだか自慢そうに操って、現実では決して操れない人を操っているところも可笑しかった。人形が登場するとみんな童心に返っちゃうのだから、人間というやつは年齢に関係なく幼稚なのでした。笑
そうして終盤ではハイバイの「て」の一部を上演したのだから、過去に「て」を観劇したワタクシは懐かしさのあまり嬉しくて嬉しくて想いもヒトシオだった。
全体的に楽しい舞台。
満足度★★★
今までのジーモとちょっと違う
個人的には山田華子役のBOSSYにやられまくり!ものすっごいキャラクターです。アニメ的。しかもどちらかというと「おぼっちゃまん君」に登場するようなキャラ!いやはや、恐れ入りました。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ずっと食べ続けてるじさま。何かの獣が憑依したかのような動きの華子。沙悟浄と八戒。まさに、なにが何だかよく解らない村民352人の「正直村」で“ウソバスターズ”の一員として働く事になった真島の部屋に、これまた何が何だかよく解らない近隣の住人が平気で出入りしている。
こりゃあもう、嘘のない正直さうんぬんよりプライバシーの侵害じゃね?と仰け反りながら見ていると、物語の序盤は正直村の説明に終始していた。中盤では村長とドクターKYが企んで村民たちを丸ごと「嘘発見器」の実験モニターとしてモルモット化しているのではないかと村民数人が疑い、終盤では正直村自体が存在しないフィクションの世界だったと締めくくっていた。
つまり、村民だと思っていた彼らは、パソコンを打ちながら実験室でシュミレーションゲームをやり続けていたということで、これはコミュニティサイトの発展系だという説明だった。
終盤になってようやく、今まで動いていた彼らは想像の中で動いていたに過ぎないと理解したが、架空の村で他人と交わりながら騒いでいた彼らは機械的にただただパソコンを見つめているだけなのだ。その光景はぐにゃりと歪んだ未来が簡単に想像できて、末恐ろしい気もしたが、彼らが過去に抱えた欝な感情は未だに癒されず流れを変えて違った方向に向かってしまったようだった。ひきこもり。
彼らには大志というものがなく、無気力と憂鬱こそが若さという病なのだ、とでもいうようなこころもとない目で、すべてがあらかじめ終了したこの国をただ、漂うようにして生きているのだ。
しかしこれらに気が付いた数人は嘘のある世界に戻ろうとするが「嘘をつかれて傷つきたくなかったらここに居ろ。」という村長の言葉は自分自身の傷の深みを露呈する。
だから、この物語をシチュエーションコメディ!とするなら滑ったギャグの連発には笑えない。しかし不条理劇とするならば新しいジーモを感じた。
満足度★★★★
静かなる燃焼
め組は時代劇しか観たことがなかったから、ある意味斬新。ワタクシは個人的に野村という役者が好きだ。だから必ずと言っていいほど、終演後にお声をかけるのだが、なんだか髪型が似合わねー。笑)・・ちょんまげの野村しか観てないからなのかも知れないけれど・・。ちょっとお話をしながらも、込み上げてくる笑を必死で隠してました。苦笑!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
内容は殆ど説明にあるので感想のみ。
本来なら戦争はない方がいい。しかし自国の経済を優位にしようとするならお互いの主張が拗れ摩擦が起こるのは当然で、これからも戦争は無くならないとも思う。
誰もがこれこそが正義と考え、前に進むしかなかった時代の日本兵が戦犯死刑囚となってから死刑執行されるまでの期間を綴った物語。
東南アジア某刑務所の中で未来のない6人は目の前にある死に対しての真の恐怖に怯えて自殺未遂を起こす者、自分の正義を訴える者、恐怖に抗いながら己の意思の力を見せつける者・・・とその流れ込む雰囲気を表現していたが、ここでは1名以外は皆、冷静なのだ。実際の戦犯死刑囚もあんな風に冷静だったのだろうか?死ぬという恐怖に対して・・。
人が納得できない死を目前にしたとき、体内のあらゆる血管が拡張され破裂しそうな心臓から押し出された血液が体毛の一本一本を揺るがせながら全身を駆け巡るほど絶叫してもいいのではないか、人間の声とは思えない絶叫ー動物的な咆哮があってもいいのではないかと・・。
命とはそれほどなのだ。
しかし、ここに登場する元日本兵達は人生最後の一時を過ごしながら、あくまでも冷静に理論的に話す。まるで戦時中の教育や環境が彼らの感情をむしり取ってしまったように。けれど、実際の戦犯死刑囚たちは死の恐怖に耐えかねて放尿や放屁、脱糞や嘔吐くらいしたのではないかとも想像する。日本兵も人間なのだ。
ここではこういった壮絶な描写があまりなく、喘ぎ声と嗚咽も無かったので、すこぅし不思議だったが、それは鉄仮面のような日本兵を表現するには必要な演出だったのだろうか?
重監視下にある戦犯死刑囚達を臨時教誨師が励まし勇気づけながら、家族に手紙を書かせるシーンで感動し、また、手紙を送付する為に尽力した教誨師の努力にも感動した。
顧みなかった家族や愛する人に「手紙」を書くことで自分の想いを告げ、同時に自分の中にあった後悔を消化させていった戦犯死刑囚らの胸の内を思うと悲しく切なかったが、「世界で一番美しい手紙」の内容はやはりこの物語のメインで泣かせどころだ。
「愛している」その一言で人は生きていけるのだ。
「貴女の上に降る雨はいつも俺です」という殺し文句は海を越えて妻の元に届き、戦友の命の友情は子から孫へ伝え、悠久の時を経て、また雨に戻る。
祖国の為に戦った人を国は守ってくれない。という言葉もずしん!と心に響いた舞台だった。
満足度★★★★
6家族の短編集
どうやらここに登場する家族らはご近所らしい。それぞれの家族が抱える悩みを面白おかしく、時にはほのぼのと表現した舞台だったが、蕎麦屋の和田家意外は、それぞれの家族同士が関わることなく物語りは進ませているので一つのストーリーではなかったようだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
訳の解らない2つの宗教を軽はずみに承諾したおかげさんで、騒ぎになる野々宮家。
妻の尻軽な態度に対外的には理解したような態度をとる大人な夫が実はいつまでも根に持ってちくちくと嫌味をいう粘着質な江藤家。
おばあちゃんの看護に疲れた家族の情景を描く佐伯家。ここでの姉妹の吐くセリフや関係がリアル感があって楽しかった。
夫が癌だということを夫に告知できないまま、それでも何とか病名を告げずに夫を手術させた和田家。
ぐうたらな妻に既に愛情は感じていない夫が自分の誕生日に妻から貰ったプレゼントに感動し、結婚は忍耐だ!と叫ぶ服部家。
長男が実はゲイで、同じくゲイの妻をメトル滝沢家が本当の家族になるまでを綴った物語。
6家族の物語はオムニバスといえるほど、繋がってない。どちらかというと短編集の分野かと思う。しかし、大げさなまでの展開はベタ過ぎるほどベタだけれど、考えていたより楽しかった。6つの物語に必ずオチを入れて締めくくる演出も効果絶大だと思う。
満足度★★★★★
素晴らしい舞台を有難う。
舞台は、2000年から。クリントン大統領は442部隊に対して「間違った政策」と謝罪、英雄たちに勲章が贈られる祝賀パーティの席に訪れる英霊達のシーンから。これらの情景は開演前から舞台上で華やかに演出される為、観客はどっぷりとそのパーティーの様子を目の前にして、気持ちも高ぶる。
以下はネタばれBOXにて。
ネタバレBOX
戦死してしまった英霊の一人は、彼が昔愛した女性に似たローラを時間の捻れに巻き込んでしまう。そしてローラは祖母のフラウとして、その時代の成り行きを見る事になるのだった。
時は真珠湾から始まった日米太平洋戦争。アメリカでは、日系人へのバッシングが最高点に達し、日系アメリカ人は、1世2世・日本国籍アメリカ国籍にかかわらず、人里離れた強制収容所に送られてしまう。
しかし、従順で士気に燃える若き2世たちは、その身をヨーロッパ戦線でドイツとの戦いに身を投じることとなる。それに至ったのにはどのような理由があったのか?
そして、彼らは、ドイツ軍との血で血を洗う壮絶な戦いに遭遇する。
彼らは戦場でも忠誠心を誓いながらも、差別を受けて、より過酷な戦場に追いやられ多くの犠牲を強いられたのだった。
やがて戦争は終わったものの、生き残った彼らの部隊442は当初の半分しかいなかったという。「本土アメリカ」で「祖国とは何か」「愛国心とは何か」という、2つの国の狭間で揺れながらも、「アメリカ人」として、戦いに身を捧げた442連隊。
市民権を持ちながらも「敵性民族」として迫害された日系二世の男達は、自らの忠誠心の証明に、そして自分達の家族と子孫の未来の為に戦場に向かう。そして「Go for broke!」の言葉と共に死を恐れない活躍を見せたのだった。
これらの筋を丁寧に演出し、音楽と照明の技も加味され美しい舞台だった。スーが軍曹に犯されて失語症になった光景は涙が出て止まらず、そこを沸点として次から次へと溢れる涙を堰き止める術はなかったが、しかし、その感動の涙は終演後、素晴らしい舞台を観た満足感でじわじわと満たされたのだった。
アメリカ陸軍442連隊。442連隊は、すべて日系アメリカ人のみで構成された、アメリカ軍で最も多くの犠牲を出し、最も多くの勲章を受章した部隊でもある。
キャストらの演技力、ダンス、歌、コミカルさ、演出、照明・・・全てを総合して崇高な舞台を観ました。
満足度★★★★
劇団わらくの路線
たぶん、こういった歪んだ路線で突っ走るのだと思う。観終わった後の何ともいえない小気味悪さというか、爽やかさのまったくない物語はファイナルダンスのシーンで一層深くなる。真実の感情を隠して仮面を被りながら踊る夫婦の距離感も絶妙だった。中盤でのセンターの指導がやや助長に感じたが後半で屈折した歪みへのグロさで盛り返した。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
略して「いきいき人材支援センター」に勤める夫とその妻の関係はギクシャクしていた。夫の決めた「夫婦はこうあるべき」という理想に従っていた妻はある日突然、自らでセンターに入所してしまう。妻が考えていたセンターとは不要な人間を必要な人材として再生して社会復帰させてくれる場所だと思い込んでいたのだった。
ところがこのセンターの入所者は家族やパートナーから不必要と判断されて下取りに出され回収された人達で、入所すると、いきいきプログラムというプログラムに従って行動させられて、人間更生または矯正させられるが、その情景はまるでマインドコントロールされたカルト集団のようなナリなのだ。
しかも家族計画の内容を思考すると見せかけて入所者の7名はエコフレッシュされる運命だ。エコフレッシュとは臓器を提供させられ取れる機能は全て取り剥がされて捨てられるのだ。まるで車の再生のように・・。
この臓器提供に裏で関わっているのが夫と人材派遣センターに勤める百瀬だ。百瀬は「いきいき人材支援センター」のセンター長を抱きかかえており、内通し「今月は○人欲しい。」とのたまう。つまり入所者の未来はないのだ。
妻の入居を知った夫は妻を救済しようとセンターでの実態を妻にぶちまけるが、これを聞いていた、かつての引きこもりだった入所者が他の入所者全員に真実を暴露する。
こうして入所者は自分の運命に向かってひた走りながらダンスを踊り、妻は夫に救済された弱みを抱えて以前よりも更に夫に押し付けられた決まりに従い人形のように踊る。表情のない型どおりの乾いた夫婦のダンスが滑稽でもあり悲しくもあり不条理そのものだ。しかし殆どの人間は生きるために小なり大なり自分を隠して仮面を被りながら生き続けている。
だから、夫婦も私達も仮面を被って踊り続ける他はない。
満足度★★★★★
ものすっごく面白い!
遥か遠くの田舎に御平古(おへのこ)村またぢからという僻地があった。このフザケタ地名から想像できるように、村にあるお社にはどっか~~んと鎮座する、怪物の・・・・・のようなもの、が在ったのだった。
以下はネタばれBOXにて。。久しぶりに暴れます!笑
ネタバレBOX
カンボジアでカタツムリの養殖をしているというキャッチフレーズのもと、善良でちょっとおばかな民から金を集める詐欺師の山城はまたぢからに国宝級のお宝が隠してあると長者の息子・土屋から話を聞き、そのお宝をせしめて高飛びしちまおうと考えて探しにやってきたのだった。
ところがいざ来てみるとお社には、どでかいおちんちんのような巨根が守り神のように鎮座しているのであった。片田舎にはこういった神々というには程遠い猛々しい男性性器や女性性器のシンボルを奉った社がよくあるが、ワタクシの田舎でも安産のお守りとして巨根地蔵なるものを奉ってあるありがた~いようなありがたくないような巨根が空に向けて聳え立っているのをちっさな頃から眺めて育った。笑
そんな村で山城は一攫千金を夢見たが、山城の意思とはうらはらに、おへのこさまの生まれ変わりと村民に崇め奉られ、どんどんどんどん、ずんずんずんずんと、祭り上げられてしまう。村民の話は放っておくと、これでもか!と膨らみ、しまいには村のダム建設反対の為に山城を県知事や果ては、国会議員に立候補させる。なんつって大げさなる展開になってしまったから当の山城は慌てるばかり。
挙句、火の輪潜りや厳かな儀式と称する人柱にさせられ殺されそうになる寸前の、その儀式はこれまた巨根を頭から被った異様な雰囲気に山城は泣きそうになりながらも踊る。笑
更に山城の被った巨根があまりにも逸脱していてご立派で、ワタクシは卒倒寸前だった。笑
しかし、物語はコメディばかりではなく、村特有の人間関係の難しさやプライバシーの尊重やへったくりもない濃密な窮屈さも表現し、更に家族というお家を守る風習に戸惑う娘の感情も取り入れて、舞台は楽しく面白く、はたまた、考えさせられる物語だった。
お社のセットがリアルで本当に素晴らしいと感じ、また、フィナーレのダンスも素敵だった。キャラクターの立ち上がり、キャストらの演技力、どれも秀逸でひじょうに満足した舞台だった。
終演後、女子トイレで「方言解りました?」なんて質問されたけど、ええ解りましたとも、きっちり、しっかり、すっきりと。だってそう変わらんもん。笑
いやはや、一見の価値ありでしょか?ナニガ?ナニヲ?
満足度★★★★
血のつながり
1972年の晩秋、宮城県石巻市の某産婦人科で誕生した子供から物語りは始るが、確か、赤ちゃんポストと騒がれた病院もあったはず。劇のタイトルの意味は「ああ、なるほど」と思う。日本は血のつながりを未だに重視するがアメリカやヨーロッパは実子でない子を養子にする例が多いことを思うと、日本独特の風土も考えさせられた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
道幸家には子供が出来なかったことから、宮城県石巻市の某産婦人科にて捨てられた子どもを貰い受け育てることになる。こうして夫婦は次々と5人の子供を養子にして育て、やがて大人になった子供たちが本当の家族となるまでの状況を描いたもの。
子供たち5人はそれぞれ血の繋がりはないが、兄弟として育ちながらも、それぞれの胸の奥に潜んだわだかまりがあった。それをお互いに出さないようにしながらも、しかし、重大な事柄で諍いする度に、屈折した「本当の兄弟じゃないから・・。」という本音がついつい出てしまう。
それは人間特有の繊細な感受性によるものなのだが、子供たちは大人になっても、小さい頃の闇の記憶を事あるごとに甦らせてしまう。だから自身の妊娠した時や、育ての親が亡くなったときに精神が不安定となって、きちんと育てられるのか、という不安や本当の親に会いたいという感情が鎌首をもたげてしまう。
それはいったい自分は何者なのか?という血の継承やルーツに拘ってしまうのだが、個人的には、こういった血のつながりのない家族こそが本当の家族なのではないか?とも思う。
血の繋がりがない分、血に甘えるということもないだろうし、血は根底に存在する「肉親」に対する信頼感が強いほど、いったん問題が起きたときはこらえ性がないほど爆発してしまう気がするからだ。
血・・・これからの時代はそういった繋がりから少し離れて人間同士の絆が重要視される時代かとも思う。
相変わらず感動した舞台だった。
満足度★★★★★
「よろしく」という言葉
は一般的に意味がありそうでなかったりするが、ここで頻繁に使われた「よろしく」は時空を超えて重要な位置にあった。物語は2010~2040年にかけて、とある家族がそれぞれの人生を生き、あるいは命をかけて戦った女性の物語だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ルポライター三果はノスタルジーな隠れ家をみつけてここを住居とした。この家にまつわる30年の出来事は、この家のオーナーが重要なキーとして、まるで時空警察のように、時間を操り、過去と未来を行ったりきたりするのだが、その時に使われる小道具が未来を予知した小物たちでこれまた、デジタル感があってワクワクした。
ルポライター三果の実子・アヤは両親の離婚がきっかけとなって母娘が別々に暮らすことを強いられたが、数年後、このアヤが大人になってからの行動がこの舞台の中心を担う。
物語は、シグマと呼ばれるカルト教団にアヤの親友が連れ去られたことがきっかけとなって、親友の為に教団と戦うことを決意した事からアヤは死ぬまで戦士として常に緊迫状態にあった。
真のユートピアを目指すとの虚言を吐く教団は世界を飲み込む為にあこぎな企みも平然としていたが、世界に揺らめく巨大な軍艦に戦いを挑んで結果的に世界を救った勇士アヤと、アヤを支えたアンドロイド・ヨーコの存在が実にいい。
ヨーコの所作、目の瞬き、首の傾げ方、話し方、全てが完璧なアンドロイドでまるで生きた蝋人形のごとく、ワタクシを魅了したのだった。だから、舞台ではじーーーっと、じーーーーっと穴が開くほど精巧なアンドロイドを見つめて、それでも飽き足らず持って帰りたいくらいだった。掃除とか料理とか君に任せるよ、みたいな・・。笑
またアンドロイドが出てきた押入れが時空へのトリップ場所という演出や、悪影響から守るためにシールドを貼る演出は絶妙だった。何よりも絵画の題名を「夜のジオラマ」とするなど、母の記録が子供たち精神の癒しとなる展開の筋書きは素敵だと心から思う。
16年後の未来からやってきた圭吾が姉のアヤと抱き合うシーンにはホロリとさせられ、良く出来た本だと思う。そうして自らウィルスに感染し、命をかけて戦うアヤが勇ましかった。更に晩年の母の描写は照明効果も相まって幻想的でもあった。
今回はどのキャラクターも主役を張ってるような立ち上がりと演技力で、まるで一つの映画を観ているような時空錯誤に陥って真剣に魅入った。素晴らしい舞台だった。お勧め。
満足度★★★★★
フザケタ緩さ
まったきもって好みの作品。実にセンスがいい。「昇っているのか、沈んでいるのかパッと見、判断のつきにくい午前五時」から始まる、真面目なのか、不真面目なのかパッと見、判断のつきにくい男、火山火山(ヒヤマカザン)の退職の日を綴った物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
序盤、長男が上手そうにヨーグルトを食べてるところにやってきた次男のビフィズス菌うんちくが素敵すぎる。笑
何万のビフィズス菌と言われるより、確かに3匹のビフィズス菌が入ってるなんて言われると、なにかしらゾンビのようなアメーバ菌を想像しちゃうから、こんなに悍ましいことはない。
そうして深い霧の中から現れた父の姿は神々しく見えたのだが、やがて、その扉はすぐに壊れ、だらりんとロープが垂れ下がって役者は手動で開閉せざるをえない事になるのだが、その緩さも、そこはかとなくいい。
父・火山火山のライバルであり、恋の敗北者でもあった雪村は、無遅刻無欠勤の火山を最後の土壇場で失脚させたいと考え火山の退職の日に遅刻させることを思いつく。この思いつきは相当こじんまりした策略なのだが、雪村の長男・雪彦も父に従い火山を妨害する。
しかし火山一族の結束は固く、どんな妨害にも揺るがない。揺らぐのは父自身が電車から馬に飛び乗る場面で、先に壊れた扉から垂れ下がったロープにビビってしまう精神の弱さだ。笑
つまり、ロープが邪魔で馬に飛び乗れないと主張したかったようで、火山は本番中にも関わらず他の役者に「ロープが・・・」と本気でビビってるようだった。そんな気の弱さもあいまってか、へっぴり腰で相当な弱腰で馬に跨ったものだから、ずりずりずりり~。。と期待通りに馬からずり落ち、慌てて乗りなおした情景もすごくかっこ悪くて素晴らしかった。笑
どんだけ笑わせてくれるんだよ!と大口開けて笑っていたら、今度は火山を飛ばすシーンでは一家総出で火山を担いでブーーン!!と1メートルくらい飛ばしてた緩さもなんとも素敵だった。
劇中、セクシー仮面は登場するは、オスカルは登場するは、キャッツアイは登場するはで、にぎにぎしく楽しい舞台だった。泣くほど笑ったが、よくよく考えてみると、父の持論に振り回されてる家族もたまったもんじゃあないけれど、普通じゃない家族構成が既にコメディで、ついでにいうならライオン・パーマのキャストらがワタクシはとっても好きだ。
観客もろとも舞台を素で楽しんじゃってるからなのか、「あんまり高く持ち上げるな」とか「大丈夫か?」とか結構ボソボソ言ってる愚痴っぽい語りも、いと可笑し。
満足度★★★★
悩み多き25歳
後半からの2人芝居はそんな感じ。
しかし、あくまでもワタクシの考えだが、存外殆どの人間は年齢に関係なく頑張って生きてるような気がする。くだらない世間を上手く渡ってみせると豪語しながら、学歴社会の重圧に耐えかねるように真面目な子供が壊れてしまう十代。
物静かだった子供がバットを振り回し獣のように親を襲った事件、突然ビルから飛び降りたりと子供の社会に行き場のない奇妙なストレスが蔓延した時代を乗り越え、それにつれ、学校や社会も豹変し始める。派手な校内暴力の時代は徐々に終わりを告げ、代わりに子供たちがより弱い固体をみつけて攻撃する陰湿ないじめの時代が到来し、大人に牙をむく子供は減り、子供同士が魂を殺しあう暗黒のゲームがはじまったりと・・・、そんな時代を乗り越えて大人達は皆、相当頑張っている気がする。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
おおまかに前半がコメディ色強くバカ丸出しで押し出す展開から一転して後半は女子二人だけのシリアスな場面へ突入する。
素敵なサムシングを見つけると言って何処かへ行ってしまったユキを探しに行くみどりだったが、旧友がコンビニ強盗をした現場に居合わせたみどりはひょんな事からブリーダーのヒロシ共々、強盗をはたらいた新太郎を半ば脅迫して、ユキと迷犬を探す旅に3人で出かける。
車に乗った3人は本人達に与り知らないところで凶悪な殺人容疑者として全国指名手配されてしまう行までは、コント色の強い馬鹿馬鹿しいコメディで個人的に好みのコミカルさだった。
しかし、後半は写真家になりたかったみどりとユキのシリアスな会話劇へと変貌してしまう。この変貌は受け手である観客の好みの問題で評価は割れると思うが個人的には「素直な描写だな」という反面、劇場という場所に夢や希望や不条理や絶望というものを押し込めた虚構を覗きに、いわば現実逃避しにきているワタクシとしては彼らのリアルな悩みはここでは聞きたくないな・・という気持ちもある。
途中から写真と小劇団を置き換えて観ていたが、根本的に悩める小劇団団員みたいな展開になってあまりにも痛々しさがリアル過ぎた。表現していることは理屈抜きで解るだけに、観ている観客としては夢も希望もないじゃん!と打ち砕かれてしまうのだ。だから個人的には前半の方が好みかな。
横田純が吐くセリフのテンポが絶妙だった。聞き取りやすい語彙もきっちりと耳に馴染んで入ってきた。素晴らしい役者だと思う。馬?のような水越も人間離れした相川も好まれるキャラクターだと思う。笑
満足度★★
やヴぁい!
まったく面白くなかった。ワタクシの観た回は会場もシーン・・。キャストらもきっとやり辛かったんじゃないかなー。高校生以下の観劇者を無料にした心意気は素晴らしかったのだが・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
広いステージに一人ずつが「お題」を強いられたようにおしゃべりをする。演劇というより、どちらかというとコントみたいなナリだが、しかしあまり面白くない。
クーラー1のコントみたいなおしゃべりが終わると、次はクーラー2、クーラー3・・・といった風に、舞台を進ませる。菅原と森本の絡みが面白かったぐらいで、その他はなんだか眠かった。
ワタクシの隣もその隣も完璧に熟睡していたようだから、たぶん、この感覚はワタクシだけではないように思う。そんな感じであまり好みではなかった作風。前作品が好みだったので、しごく残念だった・
満足度★★★
相変わらず小難しい。
ここの脚本って毎回、知能指数を全開にフル回転しないと取り残されるんだよね~。舞台での表現って自分の表現したいものばかりを押し出すんじゃなくて、もうちょっと観客が欲っしているものを考慮してくれたら、もっと馴染める舞台だったように思う。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
キャストの紹介の仕方が解りやすくていい。
とある作家が「表現する」ということに苦悩し、書けなくなった時に作家の書生を自分の媒体として表現した現実と虚構の世界。
世の作家は誰でも相当苦悩しながら書いてるのだろうか?
ここでの作家も編集者に締め切りを迫られ、見えない大きなものに追われながら、刹那的に書いていたものの自分の文章に納得出来ない。焦る一方で書けなくなった作家はこうして、現実世界を少しずつ侵食してしまう。
自らと現実的な世界を衝動的に乖離してやがて妄想の世界に入り込んでしまった作家は自分の妻の顔さえも思い出せなくなってしまう。
作家が望む虚構の世界では書生がせっせと小説を書き、編集者も締め切りなんてどーでもいいですよ。なんつって作家に都合のいい希望の世界だ。
しかし本当の世界は作家が失踪したくなる世界。そうして説明にあるとおり、作家は常に追いつめられていくさまは、まるで首を緩やかに絞められていく芥川のようでもあった。
劇中、ギャグの連発があったが、ネタが古いのと冴えないのであまり笑えなかった。物語はもうちょっと解りやすい方が良かったかな・・。作家の物語は基本的に好きだが、その表現の仕方は好みではなかったなぁ。。