満足度★★★★★
た、た、楽しい!
めちゃんこ楽しいったりゃありゃしない!特に友香を演じた藤田みかのキャラクターの立ち上がりが絶妙!このクラスの素晴らしいところは、全てのキャストが記憶に残るほど、キャラ立っていたところだ。物語の構成、演出、演技力、全てに於いて秀逸だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は、高校を卒業して10年ぶりにかつての教室で夜の同窓会を開くことになった。しかしこの同窓会には目的があったのだ。実は10年前に自殺したと見られていた夏美が本当は殺された。という真相を暴くために、開かれた同窓会だったのだ。
真犯人を探すために仕組まれた罠で釣られるのはいったい誰か?また10年後の今を生きる彼女らの見栄の張り合いや深層心理をコメディ的に描写させた展開はあまりにも巧みな見事さだった。
笑いとサスペンスを絶妙に交錯し、また彼女らの10年後、高校生の時代を上手く噛みあわせてもいた。賑やかな女子高の描写は可笑しくも可愛らしく、一方で集団で一人をイジメる集団心理も描写しながら小悪魔的で残酷な女子高校生を存分に引き出していたと思う。
また全てのキャストらの演技力も素晴らしかった。楽屋でもさぞかしニギニギしいのだろうな~、と想像するとやはり女子って素敵だ。今回、特に演出が素晴らしい。
満足度★★
本のネタ取りが古い
昭和のテキストそのものだった。期待していただけにすっごく残念だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ゾンビのゾビンが人間のミルルの脳を欲しがるところから始る物語は友情をテーマにした舞台だったが、全体的に肝心のコメディの描写が古い。ネタそのものが笑えないのだ。
一番ワクワクしたのはライオンキングのテーマが流れてダンボールの動物が2匹登場したシーンだ。
その他はなんだかがちゃがちゃしていてまとまりがなかった。初見の劇団だったがコメディをやりたいのなら、作家はもっと勉強しなくてはいけない。
満足度★★★★
優秀なクラス
ENBUはこれで3度目の観劇だが、ひじょうに優秀なクラスだった。ってことは土屋亮一(シベリア少女鉄道)は生徒にきっちり教え込んでるという証でもあるのだが、まず、全てのキャストらの演技力に目を見張る。そして発声、セリフの間合い、キャラクターの立ち上がり。全てにおいてしっかりと。よく頑張った!と褒めてやりたい。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語はとある高校の演劇部で「桜の園」を演じることになり、その練習の最中に引き起こす恋愛騒動。女子生徒・霜田の勘違い恋愛や女王蜂のような倉田の恋愛価値観などをおもいっきり大げさに描写していたが、むしろその大げささがコメディとして上手く噛み合っていた。
また登場しただけで何やら威圧感のある小平や、立ってるだけで好まれるキャラクターの田中が生徒とは思えない風情を醸し出していたし、終盤は生徒らの恋愛騒動を「桜の園」に無理無理に置き換えて疾走し幕引きにさせたのには、やっぱりそうきたか!とほくそ笑みながら観ていた。
全体的に楽しいひと時だった。土日だけで終わってしまうのはちと惜しい気がした面白い舞台だった。
満足度★★
ここから始る
開発をテーマに、ソレによって過去の思い出に浸る人たちとソレによって新たに出発しようとする人たちの物語だったが、脚本家はもうちょっと観客を楽しませよう、理解してもらおうという心意気がないと観客の支持は難しいかも。エンゲキってやっぱ、観客の導入がないと成り立たない商売だから、主催者側がまず考えるべき事は「どうしたらお客さんに来てもらえるか?」だと思う。この2時間だけで物語の真髄を観客に理解してもらえる舞台を作るということが基本中の基本なのだから・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台は朗読劇にちょっと彩を与えたような対話型。舞台セットは観客席まで敷き詰めた芝のみ。これが分譲地を想像させるに相応しいのだが、個人的には対話型のこういった舞台がもの足りなかったのは正直な感想だ。芝居とは元々が嘘話なのだから、とことん観客に嘘話を吹聴してその世界に引きずり込んで欲しかったのだ。そしてその方法はやはり芝居というプレイで楽しませて欲しかった。
終盤で、分譲地を売り出した不動産のリーマンの言葉が妙に滑稽で笑えた。日常で抱えたストレスや過去の妄想に囚われた人々の軸のない想いは一見、狂気だが、見方によってはそれが普通だったりもする。そういう意味では「桜の園」も「分譲地」も大差ないのだが、そこに暮らす人々に問題がある。それなりの摩擦を嫌って片田舎に住むのも都会で暮らすのも、結局薬局、人が居る限り摩擦は避けられない事実だ。
映像がひじょうに観辛かった。また映像と演技のやりとりのテンポに空白が出来てそれが気になった。
満足度★★★
[カガクするココロ」と「北限の猿」の続編
某国立大学の生物学研究室での研究者たちが天才科学者・アレンの脳の受け入れを巡って延々と交わされる先端科学の議論と膨大な無駄話。
基本、続編なので登場人物は殆ど同じ。膨大な無駄話は一般企業の事務所とは真逆の緩さで、延々と続く。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
その合間に自閉症の研究している准教授と霊長類研究者で論議が交わされる。一方で学生3人が教育実習の練習をする。そして無駄話。そのうち、研究室ではアレンの脳について論議が交わされ、無駄話、無駄話、論議、無駄話・・・という内容に成り下がっていく。
まあ、こうしてゆるゆるな雰囲気の中で、「人間の身勝手な研究の為にチンパンジーを実験台にしていいのか?!」なんて研究員は訴え、「貴女は肉を食べないのか?」と咎める准教授の意見も交錯させながら脳について終わりのない論議は続いたのだった。
なぜかこのとき、イルカを想像してしまったワタクシは、こういった結論の出ない論議は目の前に立ちはだかった頑丈な岩のように思えてならなかった。どう突き破ろうとしても貫通できない塊は研究室の周りで逡巡するだけなのかもしれないと・・。
[カガクするココロ」と「北限の猿」を観劇してるのでイマイチ、マンネリ化して斬新さはない。
満足度★★★★
そして誰も居なくなった
信仰戦争に巻き込まれた人々がこの戦乱の時代を生き延びていくためにどんな風に生きたか、どんなことを強いられ、どのような知恵をもたなければ生きられなかったかを、戦争に生きる庶民の姿をとおしてブレヒトの時代精神が持つ希求の貴さを問いながら訴えた物語。なのだけれど、本の筋を知らない方は今回の描写で理解できるかどうか・・?
しかし、長野海の衣装にはぶっ飛んだ。まるでゲームの世界感!笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
まず、それなりのお年頃のはずの母アンナ役の長野だが、どこからどーみたって、それなりのお年頃には見えないキャラクターだ。はれ?!ファイナルファンタジーかいな?なんてキャラ!しかもだよ、長野のパイオツが意外にデカイこともワタクシの二本の触角が反応!笑
でもって三人の子供達が長野よりも年長さんなのにも笑う。つまり序盤からキャストの登場の仕方がパロディなのだ。傭兵係はセーラー服で登場するし、吉野家の制服やらLAWZONの制服、雄鶏の代わりに既に調理済みのケンタッキーチキンが登場するあたり、カーネルおじさんもびっくりなのである。
その上、カップラーメンは出てくるは、ピッザ屋は出てくるはで、コメディ化した滑稽な描写も含まれ、ワタクシの脳はゲーム感覚に。もしかして・・キューティーハニーのように終盤にかけて服が破れるってこともありえるんじゃなかろうか?(^0^)なんつって喜びも束の間、現実はそんな甘い汁も吸わせない!と気付くのであった。
ブレヒトの戯曲をこんな風にしてしまうエンゲキを始めて観ました。
満足度★★★★★
めっさ好みの作品!
何が素晴らしいかって格闘が素晴らしい!イケメンの鬼たちが神無をめぐって戦うのだが、殴るシーンに効果音をバシッと決め込み、一方で男組みたいなコメディの描写もあり全体的に魅せた!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
北の政所の生まれ変わりである神無と結婚したものが鬼頭となって鬼の世界を統治する、との声にヒビキは頭角を表し自分が鬼頭になるために華鬼を排除し裏に回って画策する。ヒビキ側に付いた鬼たちはそれに従う一方で、華鬼側に付く鬼たちも居た。
しかし先に華鬼と出会っていた神無は既に恋に落ちておりヒビキとの結婚を拒み身投げしてしまう。これを知った華鬼は忌まわしい運命を思い知り嘆きながら神無の元に戻って来る。そうして華鬼は神無に対して永遠の愛を誓うのだった。と、その時、神無は息を吹き返しこの世に戻ってくる。
物語としては単純だがいつの世も純愛をテーマにした物語というのは心打たれるものなのだ。今回は格闘シーンの見事さに魅せられた舞台だった。
満足度★★
キャストの演技力に差がありすぎ
舞台は結構、ぐだぐだ。ワタクシが思うにこうして公演まで漕ぎ着ける為には大きな難関をいくつも潜って、相当なエネルギーを費やしてきたはずだ。そうして観客から公演代を頂き、それ相当な舞台を見せる訳だ。そういう完璧なはず?の舞台に演技力のない役者を投入するのはいかがなものか?と感じた舞台だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
金に翻弄されて死んだ母親の元に生まれたモスと、愛人だった母の元に生まれたアザミが手を組んで金の価値がない世界を作ろうと楽園を目指し偽札を作る。世界は変わるはずはないのに何処までも突っ走って夢を追いながら死んだ男達の物語だった。
素晴らしい!と感じたのは終盤にモス、アザミ、アゲハ(刑事)、ウラナミ(アザミの異母兄弟で刑事)の4人の演技だ。これ以外はなが~い身内ネタ的なコントを何回も物語りに注入した為に、肝心の筋の視点がぶれまくって物語を生かしきれていなかった。
だからストーリーが軽薄に感じられて観ているこちらもコメディなのか、物語性に主軸を置きたいのかがはっきりせず、軽んじて観ていたら、終盤にシリアスなシーンがやってきて驚いた。「な~んだ、ちゃんとした演技が出来るじゃん!」となる訳だ。
つまり、あまりにも沢山の要素を詰め込みすぎて肝心の物語が生きてこないパターンだ。次回からしょもないコントを投入するのにエネルギーを注ぐなら、きちんとした舞台を見せてほしい。元来、舞台とは観た人の人生を変えるほどの力を持っているのだから・・。
満足度★★
流石に田辺クラス。
ダルダル感、満点。ダルダル過ぎてカツゼツは悪いは、演技力はイマイチだはで、ハチャメチャだった。路線はナンセンスコメディなのか、ダルアニメなのか良く解らないけれど、解ったのは田辺は生徒に甘いって事だ。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は、愛探偵❤天乃川学がどーでもいいような事件を請け負ってそれを解いてゆくのだけれど、まったくもってどーでもいいような事件だ。登場するキャラクターは面白いのだけれど、演技力がイマイチな為、学芸会のさま。
まあ、卒業公演なのだから学芸会と似たり寄ったりなのかも知れないが、これじゃあ料金を頂けないレベル。前回観劇した「エビス・プレステ」がひじょうに良かっただけにちと残念な舞台だった。意外に面白かったのがヤマビコと記者のかけあいシーン。
次回のENBUに期待しよう。
満足度★★★★★
滑稽なミステリー
たぶん、きっと、コメディ。そんな印象の強い作品だ。ワタクシ的にはドツボの作品で、キャストらに吐かせるコネタの数々が妙に可笑しい。導入音楽もgood!
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は本家の父の妾であった母が亡くなり、今は残された兄と三姉妹がいる桃上家のお話。
桃上家は喫茶パリジェンヌを経営していたが、資金はどうやら本家の父が出してるらしい。妾の子の4人兄弟は父が死んだら自分達はどうやって生きていったらいいのか・・。と嘆く。本家の父のお陰で家庭教師も、使用人も雇える身分だ。
本家の遺産を気にするあまり、姉妹達は本家の長女・密を殺そうと企む。しかし、この人たちは自分で金を稼ごうという気持ちがからっきしない。つまり、『桜の園』に登場するような人たちだ。笑
この街に伝わる風習を絡め25年前、生後100日の子供を生贄に差し出した母の罪を背負った姉妹達が、本気でもって「ひょうもんだこ」で密を殺そうと密談する場面は滑稽というか、間抜けというか、世間から逸脱した場面だ。
つまり本家の父親に保護されるあまり、どいつもこいつも世間知らずなのだった。まるで籠の中で飼われているような姉妹は「お金がなくなるのが恐い。」という。そうしていよいよ父親が亡くなると密を殺す役目を担った桃上家の長男は密をめでたく殺して使用人の珠緒と二人で逃げるのだが・・、死んだはずの密は震えながら蘇り、その先にある蛸壺の口にはひょうもんだこの身体が黒光りしてニョキリと出ていたのだった。
面白い!とっても愉快なミステリーコメディ。
沢山の要素が詰まった宝石箱のような物語だ。
ここでの重要なキーを握っているのが使用人の玉緒だ。
結局薬局、遺産は誰の手に?
これだから、観劇は止められない!
満足度★★★★★
滑稽な描写も面白い!
エンタメ溢れる音楽劇。ピーチャムはこの路線で突っ走るのだろうか?前作「口笛を吹けば嵐」から作風が固まったような感じがする。だとしたら、このようなノスタルジックでレトロな芝居が好きな私としては嬉しいのだが、相変わらず「蒲田行進曲」を思わせるような世界感だ!惜しむらくはキャストらの歌唱力が音楽に負けて聞こえない部分があったこと。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語の説明は殆ど劇団側で説明としてUPされているので観想のみに。物語は劇中劇。相変わらず舞台セットが素晴らしい。池の底に眠る蛇姫さまを主役に持ってきたような舞台だけに客席の前にはトルコ色の池のセット。衣装も素晴らしい。そして勿論、演技力も。
物語の序盤から歌がはじまり、これがエンゲキの始まりだ。蟻之助率いる劇団がとある村までやってきて蛇神様の住み着く池を題材に舞台を貼る。そこには地域開発を理由に劇団を呼んだプロディーサーら商人が一攫千金を目論んで仕掛けた大芝居だ。
歌舞伎の役者に女はご法度という慣わしのため、池に身投げしようとした女を虹之丞という男役者として舞台に立たせるが、この劇中劇が実に面白い。また蛇姫さまとなって着用していた衣装の黄金の鱗をスタッフがチコチコと縫ったのだろうかと考えただけでもふんわりとしたおかしみが溢れてきて実に楽しいのである。
終盤、照明の加減で蛇姫さまが手前の池に反射して反対に映し出された光景は舞台上の蛇姫と池を鏡にして映りこんだ双子の蛇姫のようで、それはそれは幻想的でもあった。息が詰まるほどのその情景の中、本当にとぷん!と静かに舞い上がって大蛇が出てくるようだった。そうして空から黄金の紙幣がむせ返るように舞い散り照明はいったんこれらの紙ふぶきに吸収され、柔らかい間接光になって頭上にふりそそぐ。
楽しくて素晴らしい舞台だった。大満足だった。
2時間30分が決して長く感じなかったのも心底楽しめたからだ。
満足度★★★★★
絶品!
そういえば・・『風の又三郎』ってスナフキンに似てるよね?更にムーニン谷の光景も思い出してしまうワタクシ。笑
宮沢賢治のキャラクターといい、生徒たちのキャラクターはまんま、岩手の訛りと同化し、その風景も見えるようだった。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
百姓にも教師にも聖人にも成りきれなかった男・宮沢賢治の描写を忠実に再現していたと思う。宮沢賢治の半生と『風の又三郎』とのコラボは絶妙で、生徒=風の又三郎らがすんなりと物語に溶け込んでいた。
質店の息子であった賢治は、農民がこの地域を繰り返し襲った冷害などによる凶作で生活が困窮するたびに家財道具などを売って当座の生活費に当てる姿をたびたび目撃、これが賢治の人間形成に大きく影響したと見られているが、一方で鉱物採集に熱中し、1919年(大正8年)、東京での人造宝石の製造販売事業を計画するも失敗し、父の金を無心した時代もあったのだが、結局、岩手に戻ってくる。
舞台は賢治が農業に貢献し、多大の功績を残したまでを描写。だから賢治の「何者にもなれなかった」部分は削除してあったが、舞台はそれでいいと思う。法華経の教本1000冊を作って欲しいと賢治が父親に頼む部分は親子の情の部分が最大限に生かされていたシーンだ。
ぜったいにぜったいに負けねぇ。
こう言って踏ん張った賢治の壮絶な場面が蘇ったような舞台だった。
満足度★★★★★
愛憎劇
好み!ただただ好みだった。舞台セットも素晴らしい。そして佐藤みゆきの体当たりの演技が光る。これまでに何度も佐藤の演技は観ているが、イマイチ殻から脱していない気がしていた。彼女は小劇団のなかではそれなりに人気があったし、人気があるゆえの守りの体制が佐藤みゆきという女優を縛っているような気がしていたからだ。しかし、今回の演技で佐藤は女優・佐藤みゆきを乗り越えたような輝きだ。心底、素晴らしい!と感じた舞台。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
この舞台の説明に「人間はどこまで堕ちることができるのか?邪悪になることができるのか?世界は肉と脂と汗と悪臭に満ち満ちている。」という行があるが、この説明なら主役は横山(保田泰志)と千春(佐藤みゆき)だ。
スナックに勤める千春はシングルマザーだ。千春目当てに通う客・横山をその気にさせ身体を売る。ここでの横山は見るからにモテナイ男そのものだ。劣る人の代名詞だ。(失礼)
いつものように千春とよろしくやろうとスナックに訪れた横山は千春とホテルに行ったが千春に8万円を盗まれてしまう。
普段おとなしい横山を多少、見下していた千春の行為だったが、それに逆上した横山は先にスナックに戻っていた千春に襲い掛かり殺そうとする。ここでの男女の愛憎の言葉、罵りあいの応酬が壮絶だ。それでも自分は盗んでいないとシラをきる千春の嘘は誰でも見抜いているのだが、一度吐き出した嘘を訂正することは出来ない。それは他人からの目という拘りのプライドだ。
しかし、その嘘を瞬時に見抜いた滑川が千春をシバキ倒して真実を吐かせる。しかし、男女の関係というのは他人が踏み込み関知するものではない。滑川は横山に刺されて血みどろになりながら殺されてしまう。横山の精一杯のプライドからだ。
元夫婦が歌う「ロンリーチャップリン」がしっとりと心に響いた舞台だった。それぞれの人間の業を表現したような舞台。
満足度★★★★★
ハコネコとは蘇りの場所
ハコネコはハコ砂のような場所だ。心が折れてしまった患者を癒して元に戻してあげる。そんな風に優しく丁寧に紡いでゆく物語だ。だから導入音楽も極力少ない。キャストらの丁寧な演技力がこの物語を一層、密度の高い舞台に仕上げたと思う。心を題材にした物語としては完璧に近いと思う。後半は泣いた。泣いて泣いて泣けた。素晴らしい舞台だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
主人公・尾川敏雄は自分なりに頑張って温かな家庭を築き上げたはずだった。敏雄は妻も子供も愛していたが、あるきっかけでそれらが少しずつ崩壊していってしまう。
原因は敏雄の頑固で不器用な性格から、家族に対して素直な言葉を吐けない、向き合えないと言う少々メンドクサイ事柄なのだが、敏雄のような中年以降の男性には、こういったメンドクサイ男が多いのではないかと察する。笑
彼は妻を疑い子供の嘘を許せず、家族を避け、友人も避けてどんどん孤独になっていってしまうも、それでもなお、受け入れる事が出来なかった。それと同時に敏雄の家族が居なくなってしまう。
彼は家族に見捨てられたのだと勘違いをして自殺を試みるのだが、そこで夢を見る。その夢がハコネコなのだが、ここで彼の辿って来た記憶の洗い直しをされる。家族が敏雄を想う思いとは反対に敏雄だけがどんどん歪んだ方向に向かっていくさまや、思い込みの激しさ故に簡単に心が折れてしまった様子を客観的に見つめなおし、彼は家族に対して今するべき事を実感するのだった。
劇中、「頑張れ!」と父親に励まされて「頑張れ!」という言葉が受験生の長男・雄樹には重荷で負担だという意味の会話が登場するが、ワタクシは「頑張る」という言葉は好きだ。自分が幸せになる為ならば、頑張ることを惜しまないし、他人にも「頑張れ!」なんつって励ます。たぶん「頑張れ!」と応援されて負担に感じるのは回数なのだ。今、日本は世界から「頑張れ日本!」と励まされているが、そういった意味でも頑張れ!は好きな言葉だ。
キャストらの演技力は秀逸で物語りにしっとりと馴染んでいた。素敵な物語だと思う。
満足度★★★★★
漂う哀愁
ゲキバカバージョンを観た。素晴らしいと思う。なんだろ、この感じ。舞台を観終わった後のなんとも物悲しいこの感覚。今までのゲキバカに抱いていたイメージがガラリと変わった瞬間だった。舞台はリング上が監獄。この上で身体能力を駆使したダンスやコミカルなシーンも繰り広げられるが、その一つ一つが計算されたように一枚の絵となり、美しいロマン絵画を観ているようだ。更に、ホストクラブのショーのような展開も魅せる。お~い、誰か、千円札と割り箸持ってこ~い!下ネタもgood!
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
監獄では死刑囚の山崎が恐怖にかられながら死刑宣告を待つ絶体絶命の身だ。その山崎に何かと親切にする看守。二人はかつての同級生だ。
山崎はダイヤモンドを狙う窃盗団だったが、仲間を裏切り殺し、ダイヤだけを持って逃亡していたところを捕まって投獄された過去を持つ。
そんな山崎を本当はいい奴なんだと信じて死刑廃止の署名をする看守。一方で囚人となって死期を待つ身の、発狂しそうなほどにギリギリの精神で、己の死を待つ山崎。独房の中で苦悩し葛藤しながら、いつか、自分の犯した罪も忘れたくなるのだった。
そんな折、かつての窃盗団の仲間達が山崎の元にやってくる。彼らは山崎が夢見る家族や監獄からの脱出劇を芝居がかって見せるのだが、この5人のバランスが実に素敵だ。まさに監獄というリング上で魅せるエンタメだ。
しかしこれらの美しい友情は、どれもこれも山崎の妄想だ。自分が仲間を裏切ったことも、殺してしまったことも山崎の心に現実として圧し掛かる。山崎は思う。「ああ、またあの街に生まれても上手くいかないかもしれないけれど、今度こそ一生懸命生きるんだ。」
そして、山崎は死んでしまったが、それを知らない看守は「死刑廃止」の通知を持って山崎の独房にやってきたのだった。
まるで映画を観ているようだった。ザワザワとざわつく感情が今一歩のところで山崎の命を奪う。
上手い!あまりにも構成が上手すぎる。
更に、キャストらによるエンタメ性と演技力が抜群だった。オカマとしての石黒のなんとチャーミングなことよ。そしてビートルズの選曲も素敵だ。
ワタクシは感動のあまり嬉しくなった。
満足度★★★
バリコメディ
世の中には「摂りつく」とか「飲み込まれる」とか「のり移られる」とか「憑かれる」とかいうけれど、この物語もいわば、そういった種類の物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
OL岬智美は東京で孤独と戦いながら必死に頑張っていた。そんな時、異国の孫悟空たちは牛魔王との決闘の最中、次元の穴に落ちてしまい、時空を飛び越え人間の体の中に入ってしまう。魂魄となった悟空が憑依したのが智美の体だった。
そして八戒悟浄、牛魔王らはそれぞれの人間に憑依してしまう。
憑依された人間が自分の意思とは反対に操られ、とんでもない行動や暴言を吐くさまが、まさにコメディ。そのうち、彼らは一心同体となってどちらかの魂が滅びるってんだから、これまた大変なことに。笑
役者に吐かせるセリフも楽しいのだが、すこーし、雑だったように思う。それからキャストらがアガッテいたようでセリフは噛むは、動きはぎこちないはで、充分に実力を発揮していない舞台だった。
終盤、岬が吐く「誰かの事を想っていたら、ちゃんと伝えないと意味がない。」の言葉は思わず頷いてしまった。
たぶん、誰もが解っているんだろうけれど・・。
悟空一向は元の世界に無事帰れてめでたしめでたし。終盤、キャストらのいぢりがあるがこれが結構なダメージのようで。笑
杉山弘子のダメージぶりが見もの。
満足度★★★★★
失笑の類のおかしみ
「阿呆船」とはありとあらゆる種類・階層の偏執狂、愚者、白痴、うすのろ、道化といった阿呆の群がともに一隻の船に乗り合わせて、阿呆国ナラゴニア(ここでは地獄)めざして出航するという内容である。多種多様の阿呆どもの姿を謝肉祭の行列のごとく配列して、魅せる描写は滑稽で皮肉な諷刺絵のごとくだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
芝居が始る前の舞台には地獄絵やカトリック教会の退廃・腐敗の図を映し見せていた。キリストの七つの大罪をそのまま地で行くあらゆる欲などが諷刺されており、その描写は「狂人教育」と似ていた。
衣装、音響、照明ともに夜のサーカスをイメージさせる滑稽でユーモラスなアンダーグランドはそのまま、観客まるごと「阿呆船」に乗っかってるような体感で、どっちが阿呆なのか解らないくらいだ。笑
キリストの最後の晩餐を思わせる見せ場、十字架を背負ったキリストの描写は、やはり、この劇そのものが罪と罰を意識した芝居なのだと思う。操っていると思っていても操られている現実や、眠り男と対比するもう一人の男の存在が面白かった。
「阿呆船」のラスト、「人動説」の見果てぬ夢を見て、その時代へ旅立とうとするエンディングの場面はパラダイスな魔法の国の遊園地のようで好きだ。
満足度★★★★★
毎回驚くセットの凄さ
レイ・ラヴェリータ湖のほとりに建てられた小さなロッジでの物語だが、とにかくセットが素晴らしい!!
聞いたら、役者スタッフ等、全員で作るとか。このセットを観るだけで価値があります。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語りはロッジに宿泊した客とロッジの主である男との間で巻き起こる未来形サスペンス劇。
ロッジの主・ワズには秘密があった。それは2300年代の未来からタイムマシンに乗ってやってきた未来人だということ。彼は未来からやってきた為に人間として生きてきた記憶がないのだ。だから彼は人間の美しく輝いた記憶が欲しかった。そして若い客・バームスの思い出話に目を輝かせながら聞き入り、やがて、その若者の記憶が欲しくなってしまう。
そんな折、人間の女の子を養女として迎え実子として育てられていたワズの娘・シャロンはワズの思いを察してリンゴに毒を塗り、それを食べたヒューイは死んでしまう。未来人のワズはヒューイを生き返らせる事が可能だったがバームスに「ヒューイを生き返らせる代わりにあなたの思い出、私に譲ってくれませんか?」と交換条件を突きつける。
バームスはこれを断ればヒューイを見捨てたという記憶が残り、一方で、自分の記憶が無くなる空洞に恐怖し、苦悩した挙句、記憶を差し出す承諾をするが、バームスの友人ヴィットの語るセリフに感動し、思い改めるワズ。
記憶の大切さ、孤独との戦い、つらい過去をあえて受け入れ未来に生きる力強さを描いた物語だった。毎回、感じることだが役者に吐かせるセリフの数々に心を打たれる。
タイムカプセルが流れ着いた状況や、記憶を操作する能力、レイ・ラヴェリータ湖の底にある不思議な魔力など、ファンタジーな要素も強く、まるでハリーポッターのミニ版みたいな劇だった。キャストの演技力、照明、セット、心地よい音響、全てが秀逸なため、美しい舞台だった。
満足度★★★★
ホラーサスペンスのような物語
年に一度の祭が今年も開催される。その名も「泥棒祭り」だ。祭りの夜、この街のカフェのマスターが殺された。その彼の後を継ぐかのように、藤井はカフェの店長になった。そこに集る住民達。そしてこの街には秘密があった。その秘密を隠している住民ら。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
因習というより脈々と受け継がれてゆく魔法の飲み物(麻薬)を淹れるマスターと、それと知りながら自らの快楽の為にソレを受ける中毒住民らの傲慢を描いた物語。
人間とは心の弱い生きものだ。だから辛いとき、悲しいとき、多大なストレスを忘れようとし、忘れるために何かの代替を欲する。弱った心を無きものにした魔法の飲み物はカフェのマスターが代々引き継ぎ、既に中毒になったこの街の人々の為に継承していくのだった。
藤井は父が魔法の飲み物に溺れマスターに殺された過去を知って、自らもマスターを殺してしまうも、その現場を見ていた有馬にゆすられカフェを継ぐことになる。結局、藤井は元マスターと同じ罪を背負って街の住民らに魔法の飲み物を淹れ続けるのだ。更に藤井も殺され、カフェを継いだ山田もそういった運命にある。
街全体がぐにゃりと歪んだ構成だった。日本中から集る薬を隠すための隠れ蓑として開催される「泥棒祭り」の考案も面白い。誰もが求める心のよりどころを主軸に人間の弱さや独特の歪みを表現したような物語だった。エスカレーターの中の5人が妄想してゴーストを登場させる場面や、5人がトリップする場面の展開がお見事!
満足度★★★
松井須磨子の劇中劇かとおもいきや
まったく違う構成になっていた。松井須磨子の亡霊が蘇ったような舞台で、演出家がみた妄想劇ともとれる。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
多情で激情家で気丈の松井須磨子の物語には違いないが、新たな物語として構成されていた。筋は演劇の演出家が引退を表明し舞台を降りようと決心した時に、小林まさこ(松井須磨子の本名)と名乗る女優が突然現われる。彼女は切り口上的に男に「演出家だったら一緒に芝居の稽古をしてよ。」と命令する。
こんな切り口上も松井須磨子らしいのだが、彼女に強引に誘われ演劇の台本を読み、演じているうちに、自らの人生や演劇に対する心もちに気付かされていく。という物語。
シンプルな二人芝居。公演時間は1時間10分ほど。二人芝居には丁度いい時間なのだが、松井須磨子の舞台稽古風景ではなく松井須磨子の生きざまを劇中に注入して欲しかった気がする。それでも演じたキャストらは初々しさも混じって実にいい組み合わせだった。