満足度★★★★
武士の一分
幕末から明治維新にかけてのこういった物語は何度も観ているが、黒田の恋に視点を当てるとこういった美しい物語になるのだな・・と改めて感激!ストーリーが実に良かった。そしてそれに応えてきっちりと演技をした女性陣。男性陣では伊藤アルフの噛みが目立ち、また半次郎の役をこなすにはちと迫力に欠けた武市。斉藤役の吉田が重厚で圧力のある演技をしていて魅せられた。ちなみに後ろの黒に桜の花を描いた簾セットは記憶では他の劇団が使っていたと思う。借りたのだろうか?
ネタバレBOX
まず、殺陣に迫力がなかった。いざという度迫力になりそうなシーンは全て暗転として誤魔化していた。最初に伝えておくが、殺陣シーンは飽きるほど観ているのでこちらのメガネも高いのだ。
惚れたオナゴの為に己の人生を淡々と尽くす黒田。「人としてこの世に生まれた喜びは惚れたオナゴが出来たこと。」とのセリフは熱く胸を打つ。そして黒田を家族のように受け入れる朋江と八重の絶妙な演技にさめざめと泣かされた。思えば黒田と朋江、八重の3人の場面が泣き所だった。終盤に訪れる朋江の見えない目から流れる涙はなんと美しいことか・・。
黒田が朋江と交わした「約束」は守られることはなかったが、こういった悲しい最後はやはり創作の醍醐味とも思う。正統派の時代劇だった。白井(かなや)と斉藤のコンビの演技も素晴らしく改めて感じることは主役級の配役にはそれなりの力量のあるキャストが必要なのだと思う。
流石に佐藤と流野の演技は秀逸だったが、佐藤の体系と顔つきから西郷どんはやはり佐藤かと・・。笑
満足度★★★
「マッチ売りの少女たち」を観た。
元々、別役実の作品は不条理で結末がはっきりしない戯曲が多い。別役には本当に申し訳ないが、ワタクシはこういった良く解らない戯曲が好きではない。まあ、ワタクシごときが好きではない!と断言したところで世の中はうんともすんとも、勿論、別役サイドにはまったく影響はないのだから、「本当に申し訳ないが」などといった前置きは必要ないのだが・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は幼い娘を亡くした老夫婦の夜のお茶会に次々と現れる少女たち。自分達は老夫婦の実の娘であると言い張る。そして過去にマッチを擦る間、スカートの中を男達に見せていたともいう。夫の方は負う過去でもあるような暗部を見せる。このあたりは戦後の昭和の時代を風刺したような描写だ。
そこに無責任で風見鶏のような役所の職員や噂好きで誇張気味の近所の主婦、高い契約を取ろうとやっきになってる生命保険のセールスレディが突然現れる。これらの侵入者に破壊されていく平穏な家庭を通し、市民社会に潜む暴力性を浮かび上がらせる作品だ。
いつしか、人の良い妻は亡くなった娘の影を少女らに追い求めるも、少女らは「逃げろー!」と叫ぶとゲームのように撤退してしまう。笑
観終わってもなんだかしっくりこない。終盤をきちんと迎えずに閉じてしまったような舞台だ。だからか・・、観た後はどっと疲れた。
満足度★★★
「ヤルタ会談」を観た。
日本語バージョンのほうが良かったかも。日程の都合で英語版を観たけれど、ルーズベルト、チャーチルのキャストはどうも貫禄がなくて滑稽さがいま一つだった。台本は同じはずなのに・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
三カ国間の会談なのだが、まるで井戸端会議のようなさま。どいつもこいつも自国を優位にごり押しするさまや体面はにこやかでも腹の中は黒いさまを冗談めかして会談しながら、うちはインドを貰うとか、既に植民地の派閥商談のよう。おおいにブラックな内容で新聞の風刺アニメのようでもある。笑
満足度★★★★★
「さようなら」を観た
「海よりももっと・・」
あまりにも美しいアンドロイドだった。上演時間約20分だが、その中には意味深なセリフが詰められており観終わった後は感慨深い。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
最近、アンドロイド演劇はよく観ているが人間とアンドロイドの境がないロボットが多い。人間がアンドロイドになって発するセリフはあまりにも巧妙すぎて、アンドロイドだと思えないのが実情なのだが、今回のアンドロイドは実際に声を出していない。録音とぎこちない動きは精巧なマネキンを観てるようだった。
一人の女・ドイツ人と彼女のパパが残してくれたアンドロイドとの会話劇だったが、日本人は寂しさのない国を求め、ドイツ人は幸せのある国を求めるという精神の違いや、またドイツ人の女が余命いくばくもない儚さを知って語られる救いのセリフの数々が絶妙だった。
「死ぬときには好きな人がいるといいなぁ。その人は死んでいてもいいから、どうしても忘れられない思い出があるといいなぁ。」とアンドロイドは言う。そして海よりももっと遠いところに行けるのだとも。
心に響く素晴らしい舞台だった。
満足度★★★★
キャストの演技力で観客を取り込む
今回もキャストが秀逸だった舞台。毎度のことながらセットに金をかけない分、観客の想像力に委ねる構成だが、それには役者の演技力が問われる。そして物語性も。更に観客も蚕になり観客参加型。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
キャストらの名前をそのまま物語でも起用したネーミングはひじょうに解りやすい。だからすんなりと物語の中に溶け込むことができた。また劇中流れる音楽は主宰の父親が作曲したというから、そう言われてきちんと聞くと実に感慨深い。アジアちっくな音楽だ。
物語は一匹の蚕・タクが神と崇められそれによって民衆が一致団結されるように仕組んだ「作られたシンボル」を軸に愛や夢をテーマにした舞台だったが、蚕の一生を忠実に表現したような物語は繭が出来るまでを興味深く観る事ができた。
なかでもタクが乳母車に乗って登場するシーンはファンタジー溢れアニメちっくで可愛いらしい。中盤でメグが食料を貪り食らうシーンの演技は流石。更に佐東の蚕が茹でられる告白の場面はなんだか幼虫が昆虫となりさらに怪物になってしまうようで仮面ライダーやゴジラに登場する怪物までをも連想してしまった。それもこれも役者の演技力に他ならないが、すべてのキャストがそんな力量だったから観客として安易に想像できたのは嬉しい限りだった。
そして終盤の蚕が一斉に天に向かって吐く繭糸の乱舞はファンタジーそのものでガラス越しに滝のように流れる雨のシーンと重なって幻想的であった。
美しくも儚いおとぎの世界。
満足度★★★★
二人芝居
舞台の構成が上手い。
チェロ奏者・白神と役者・堀が合わせ鏡のように配置され、その情景を映し出す。
堀の仕草や動きに反応するかのように、同じ動きをする白神。その相反するものは真実と嘘なのだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ギィ・フォワシィの戯曲は不条理ものが多い。その中でもこの戯曲は何度となく上演されてきた戯曲だ。
英才教育によっていわば強制的に音楽を習わされてきた少女は、その反抗心から芽生えた楽器チェロへの思いが、少女から女へと成長を遂げるにつれ、その感情は次第に性愛の対象となってゆく。抑圧された心に潜む狂気、その秘められた思いを語りながら、夫殺しや人生の告白をしていく。
やがて自らの命を遮断することになるが、そんな人生の最後の場面でも決してチェロを放すことはなかった。チェロの音色とともにかりそめの人生を生きチェロに恋した女の物語。
一人芝居で演じきる役者のエネルギーは相当なものだと察する。1時間45分の長丁場をとにかく気が抜けないまま疾走するに近い。だから、当然、役者の実力も試される。堀はそういった意味でも実力のある役者だと個人的には思っている。緊張したのか噛みゼリフはあったものの・・。
しかしだ・・、彼女は狂気や悪女めいた女の演技をするには毒がない。毒というのは経験とか環境から発するオーラではなく、持って生まれた妖艶たるオーラだと思う。そういった意味においては、これはもうどうしようもないことなのだが、ギィ・フォワシィの戯曲の場合、役者を戯曲に合わせる必要があるのだとつくづく思う。
満足度★★★
物語はベタ、沢田はブタ
時の流れというものは時として残酷だと思う。沢田研二ことジュリーはかつて一世を風靡した存在だったかもしれないが、今は普通のおっさんだった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ハットを頭に乗せて登場してきた場面はまさに「紅の豚」そのもののシーン。( ̄▽ ̄;)!!ガーン
ぽんぽこりんの腹は今から始る「紅の豚」を彷彿とさせる体系だが、いあ、待て!ここはサザンシアターだから「探偵」なんじゃないか・・?と気を沈め、自分の心を沈静化させたけれど、新たなる疑問が沸々と湧き上がる。
もしかして、あのぽんぽこりんがジュリーなんじゃないかと・・。
じーっとじーーっと、眺めること数分。
やっぱ、ぽんぽこジュリーだーー。
( ´;゜;ё;゜).;'.、.;'.、ゴフッ!!
そういえば・・動きもなんだかカトちゃんみたいになってる。いあいあ、いくら幸せ太りしたからって限度っつーのがあるでしょ。夢破れて山河あり・・、そんな歌を口ずさみながら見てはいけないものを見てしまった後悔めいた気分になった。
しかも足を組む時に綺麗じゃあない。腹がじゃまして足を綺麗に組むことができない。もう片方の足を片方のひざに垂直に乗せてるかっこ悪さ。( ̄▽ ̄;)!!ガーン
本物のジュリーを出せぃ!
そう叫んでしまいそうだった。
やれやれ・・。
満足度★★★★
ミニコントライブ
という通り、どこからコントでどこから繋ぎなのかよく解らないなり。笑)・・つまりは序盤から緩みっぱなしで観客席への誘導もそっちのけで舞台での前説に張り切る。笑)
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
客席は知り合いが多い為か何かにつけて笑い転げる。私語は飛び交い、キャストらがとちったりしようものならすぐさま突っ込まれる。笑)
こういった雰囲気のライブなら酒とつまみ持参で観てもいいじゃん。ぐらいの緩さ。また、観客も突っ込みどころを心得ておりなんだかとっても楽しかった。
チャリティーライブらしさ満点で、欲しくもないようなブツのオークションを5点ほど出品していたが流石に彼らのポスターは300円の春巻きチケットを付けても値が付かない。笑
「自分たちはとりあえず長いこと舞台を踏んでるからこうみえてもCMやドラマに出演してます!」とか言ってかなり前の映像を流して見せてた。面白かったのはTVショッピングの詐欺的映像だった。笑)
舞台は練習不足なのか、ダンスは合ってないわ、とちるわだったけれど、運勢の悪そうな彼らの顔を見ていると不満も言わずにぐっと飲み込んだ。しかし、終盤からの「ピーポー保安官」の愉快でアホらしいコントの素晴らしさ、そして会場の空気をそのまま引っ張ってライオンキングで〆る舞台は、怒涛の面白さで愉快千万だった。
ブログに寄付金をUPするようです。
次回も観たいと思わせる緩くて楽しいライブでした。
満足度★★
上演時間3時間30分
役者には敬意を表する。長編小説の膨大な台詞を全て覚えるのだから。それでも、そのセリフを間違えないようにという負担もあったのか、セリフを言うのが精一杯という感じで表情が硬い。役者によっては悲壮感すら漂っていた。その為、セリフが単調になってしまうのは否めない。芝居というより、朗読劇だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身だ。一方、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された矢先、不治の病を宣告される。それを契機に、三人それぞれの思いや願い、そして、ささやかな記憶の断片が想い起こされてゆく。・・といった物語だが、序盤の殆どは物語の説明に徹する。その説明も丁寧すぎて既に本を読んでるので飽きる。ここまで表現しなくても良かったような気がする。
台本を作るに当たって小説の削ぎ落としから始るのだと考えてるワタクシは、小説を舞台化するというのは小説のまんまを表現するのとは違うように思えるのだ。どの部分にスポットを当てるか、その上で本を削ぎ落とし、台本を作り、舞台上に乗せてみて、また削ぎ落とす・・。つまりそういった繰り返しの作業を徹底することによって初めて舞台作品として仕上がるのだと思うのだ。
演出家はこの作品には愛情を注いで作ったに違いない。そうでなければ3時間30分の公演にチャレンジしようとは思わないはずだ。しかし観客のことを考え、役者のことも考えるなら、観やすい環境と演じやすい環境を整備するのは当たり前のことだと思う。
次回はこなれて練りあがった端的な作品を観てみたい。
満足度★★★★
寄生虫にかかったヤツラ
物語は金になるバイトをした事をきっかけにその沼に引きずられてしまう不条理劇。序盤はコメディ。後半はシリアス。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ブツは何かを解らず運ぶことになった安藤と犬島。しかしブツは死体だった。ヤクザな世界に計らずも関わってしまった二人の逃れられない運命を描いた作品だった。
前半に奏でるセリフの絶妙さで観客を笑わせる。流石は関西芸人だ。しかし後半からは舞台の序盤に撒いた伏線が次々と繋がって、安藤の15年間の獄中生活やら犬島の彼女らの小競り合いも含め物語は思わぬ方向に流れていく。
舞台は、過去に父親を殺された娘の復讐で終盤を終えるはずだったが、その娘・永山を安藤が殺してしまう。そうして眼の前で起こった殺人に嬉々と喜ぶ狂人じみた犬島の今カノのヨーコ。彼女の存在もウザイと感じた安藤は彼女も撃ち殺してしまう。
2つの死体を乗せた軽トラックは15年前と同じように死体を処分する為にうろつく道すがら、意を決したように安藤はもう一つの死体を増やすのだった。
ブラックコメディというより、終盤の終わり方ではミステリー性が強い。全体的に面白い。しかし中盤に少し中だるみもあってその部分は必要なかったように思う。間島と鎮西のコンビの壊れ具合も絶妙だった。軽トラックの使い方も上手い。
犬島が黒に侵食されてどんどん普通の日常から遠ざかっていく不条理は他者が介入できないグロテスクさも見事に表現していたと思う。どうにも出来ない流れが本人の知らぬ間に発生し、その渦がやがて激流に流されていくように、人の人生とはちょっとしたきっかけでそうなるのかも知れない。
面白い舞台だった。本編の後の300秒コントのキモイ女子高生バージョンはまあ、余興の範疇。笑
満足度★★★★
ファンタジーだと思う。笑
上空30000フィートに浮かぶ飛行艇を舞台に、空賊という仕事が流行らなくなり、仕事の成果があがらず、次の人生をどうしようかと考えながら、旅を終えて帰る途中の男達の物語だと思う。そうして・・たぶんファンタジーコメディ。笑)....
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台セットが素晴らしい!自宅にも作って欲しいほどのセットだ。これを構想しながら作る物語はさぞ楽しかったに違いない。案の定、役者らがとっても楽しそうだ。でもって、「天空の城・ラピュタ」のパクリのような細々としたガラクタ。
そのセットの前で実際に鈴木が料理を作るのだがこれがまた包丁捌きがお見事なのだ。そんな空賊たちが繰り広げる世界感もまたラピュタなのだが、ジブリが魅せる世界感よりもアニメ的な「とくお風ラピュタ」はやはり出演者の醸し出すキャラクターに他ならないと思う。
舞台セットは大きな飛行艇のキッチン部分だが、全体的な構図は当日パンフに載っており、容易に想像出来る。この想像だけでも実にファンタジーで楽しくなっちまうのだが、そんな空賊らの艇にこれまた空賊が乗り込んできて、まんまラピュタなのだが、敵はたった一人という寂しさ!笑
ジブリ好きには実際のアニメの絵図らと物語を思い出しながら、そのセリフのかみ合わない可笑しみも相まって楽しかったのだった。これはもはやとくお組がどうのこうのではなくジブリの凄さを感じた舞台だった。面白い!
満足度★★★
願望の結末
ナルコレプシーとは睡眠障害の事だがここでのタイトル「卒業」は高校教師・稲手祐(いなでたすく)が経験する卒業式とナルコレプシーを卒業するをかけたのかも。小島がおいしい役をやっていて羨ましかった。笑)・・
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
祐は学生の頃生徒会長をしていたが、卒業する時に彼の第二ボタンを欲しがる同級生や下級生達。祐は憧れの的でもあり人気者だった。そんな彼は自分が傷つくのを恐れ、ボタンをあげる相手を選ぶのを躊躇ってしまう。
誰からも愛されたいという根本的な欲望から、また、元来の優柔不断さも加味して、選ぶ行為を止めて全ての周りの人たちを平等に扱うことを思いつく。しかし、人間という生きものは平等に扱われるほどプライドが傷つくことはない。
祐が高校在学中に経験した事柄や、現在の教師の立場で女生徒に慕われる経過をナルコレプシーに急激に襲われ眠ってしまうとそれらは鮮やかに思い出される。その原因は何なのかをぶっ飛んでるドクターが彼流の原因追及をぶちかます。笑
結局薬局、人は何かを選ぶとその代わり何かを失うのだが、祐は何かを失うことが恐くて、ここぞというときに選べなかったが為に、全てを失ってしまった。という物語。
所々にユーモア溢れるセリフが異常な可笑しみがあった。終盤、女生徒の宇津木にどんでん返しを喰らう瞬間はブラックだが、実にリアルだ。選ばれる者と選ぶ者。それはふとした瞬間に逆転する。
満足度★★★★★
時代劇の王道
といっても過言ではない素晴らしさ。衣装、演技力、演出とすべてに於いて、きっちりと。旗揚げ興行だったのであまり期待していなかったので掘り出し物を見つけた気分だった。
表の顔は飲み屋、その裏の顔を持つ「深川安楽亭」の描写がお見事だった。
たぶん、こなれてラクにはいい舞台になるはず。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
抜け荷の拠点、深川安楽亭に屯する無頼者たちが、恋人の身請金を盗み出した奉公人に示す命がけの善意の物語だが、それなりのお年頃の役者を起用するというのは物語に実にぴったりとハマルものだ。
表は商売人、裏は罪人の顔を持つ無頼ものたちの凄みといい、怪しげな罪人臭さが漂う状況の中、兵たちの一種独特な香りを放つ舞台はスリル満点でどこから観ても怪しそうな輩だった。勝兵衛が八丁堀に凄む場面ではその声色が変わっていくさまはゾクゾクしたほど。
紅一点のおみつも華を沿え、場面によって悪女っぽくなったかと思いきや生娘のように見える場面もあり、全体的にバランスよく調和していたと思う。終盤ではホロリ・・と涙する展開もあって大満足な舞台だった。これほどきっちりと魅せる舞台なら次回の公演も楽しみな劇団だ。お勧め!
満足度★★★★★
「黒の夜」を観た
KAKUTAの朗読劇はだたの朗読劇ではないので好きだ。演劇+朗読といった嗜好だ。ただ朗読者が噛んだ場面が所々にありちょっと惜しかった。どれもホラー満載で演出がお見事!サダコかと思った!笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
セットの白黒のコントラストが美しい。妖しくも恐ろしい深い闇の漆黒さ加減の演出が絶妙だった。売春婦の客選びによって一歩間違えば死と隣り合わせだという綱渡りの人生。そしてかつての売春婦があの世から蘇って忠告するさまはなんとも言えないコミカルさもあって好みの作品だった。
また、鏡に映る自分の未来を信じてしまったがために、自分の運命を鏡に委ねてしまった女の絶望。それを引き継ぐことになる娘の未来への末路も予想できて面白かった。
血や遺伝だと信じ翻弄されながら殺人を犯し、死体を井戸の底に沈めてしまう息子。そして、その死体がいつのまにか無くなっている。母が息子の為に処分していたとも知らず、母を殺した後の井戸の底に見た物は?この物語の井戸から覗く貞子のようなものに仰け反る。
小説をどんな風に演出するか、どの部分をそぎ落とすかで舞台の出来は微妙に変わってしまうのだが、構造や演出、脚本力は流石だ。こうなったら「桃色の夜」も観たいと思う。
満足度★★★
ベタなコメディ
全体的に笑わせるはずのコメディ部分が弱い。それは身体表現で魅せる昭和のテキストだからだ。セリフで笑わせる盛り込みも必要だったように思う。キャストらの動きはコメディっぽく大げさで自然な感じは見受けられない。こういった芝居が好きか嫌いかは大きく割れるかも。初心者向きの舞台かもしれない。安心して観られたことは確かだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
主人公・高崎は、内気なひきこもり男だったが、マンガ原作者としては成功していた。しかし恋愛経験はゼロ。そんな高崎は、アパートの階下に住む里中きみえに一目ぼれをしてしまう。一方できみえは、数カ月前に交通事故にあい、運転をしていた親友を失い足が不自由になってしまっていた。彼女もまた気持ちが落ち込み、ひきこもり生活を送っていた。
そんな二人の部屋に、様々な人間が訪れ、そのドタバタに巻き込まれながら、いつしか二人は仲良くなっていた。という筋。
ここで高崎の初恋を成就させるのは未来からやってきた高崎の子孫だったのだ。観客を笑わせようとしてジャパネット高田のパクリ・ジャパネット博多がベタすぎるネタを披露していたが、観客はシーーン・・とシラケムード。あまり面白くないんだよねー、コレが!
しかし、高崎の部屋ときみえの部屋を一つの空間で交錯させるあたりは絶妙だった。こういった描写は違う部屋の情景を一度に見せる場合によく使われる手法だが、キャストらの動きのコミカルさが良かったと思う。
終盤に「生きる」をテーマにしたセリフがあり、ここでホロリ・・と涙ぐむ。しかしその前のコメディとしてはイマイチで会場のシーーン状態がちょっと痛々しい舞台だった。それでもキャストの一生懸命さが伝わってきてそれなりに観られる。
満足度★★★★★
エンジェル
今回も中盤から激しく泣かされた。観客をこれでもか!という具合に落涙させる三重奏にも似た構成の作りこみが上手い。そうして終盤、天使に降り注ぐ羽の乱舞で舞台は終わる。なんと見事な幕引きか。目が流れてしまうんじゃないかというほど泣いて感動した作品だった。こういう舞台を観ると帰路の足取りは軽く至福な気持ちになる。有難う!とこの舞台に関わった全ての人たちに感謝したい。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
精神薄弱で天使のような心を持つ二女の綿子。明日の命も解らない心臓病の三女の繭子。彼女らの為に水商売の世界にとびこんで二人を育てた長女の莉子。この三姉妹を主軸に、「生きる」をテーマにした舞台だったように思う。
「生きる」とは実にシンプルな言葉だ。しかし、命の切り刻みが来る日も来る日も繰り返され、明日の命の保証がない場合、いかに図太い人間でも参ってしまう。人の人生はひと続きにみえるからこそ安定しているのであって、これが初めからこま切れになると、意味を失うと思う。今という時間が筋の通らない空虚なものになり、生きながら骨を抜かれたも同然なのだと・・。
そんな不安な毎日を生きる繭子を、姉二人が健気に守り支えていくのだが、そんな家族に後から後から災難が降りかかる。しかしその災難にもめげず立ち向かう強い心と、他者をも改心させてしまう綿子の愛が観客を泣かせ感動させるのだ。
この物語は、もはや人情劇という枠を弾き飛ばすほどの傑作といっていい。無軌道な生活をしていた都会の若者が日向家の人々と暮らすことで改心していくさまや、女性実業家が社長を解任され日向家に居候になる情景などを説得力をもって描いている。骨格はシンプルでも、その肉付けは意外に難しいのが演劇だ。下手をすると陳腐な話になりかねない。しかし川口は群を抜く人物造形と挿話を積み重ねて、ダイナミックな成長物語に仕立てている。
陳腐すれすれの手垢のついた話を、鮮やかな物語に転換してしまうのは川口の描写力、観察力にほかならないとも思う。だから舞台のスパイスはストーリーではなく技術であることを見事に証明していると言い換えてもいい。
更に道具立ての上手さも絶品だ。病院院長の息子を繭子の恋人役として登場させたり、未だにイジメの恨みを持つボランティアを登場させたりして、日向姉妹を揺さぶらせるプロットのうまさは見逃せない。そしていちばんは無償の愛に何の抵抗もなく捧げる綿子の造形だ。これは、かつてのイジメから人間の愛に恵まれず、その場しのぎの行動を繰り返すしか生きる術を知らなかった千春がここでの生活と綿子の思いやりで見事に立ち直る。
それらを背後から支えるものは愛だ。捩じれて捻くれた登場人物の身体の奥深くまで愛の言葉や行動は沁み渡っていく。愛は、ゆらゆらと立ち上り観客の心にまで伝わってくる。だから目頭がジンと熱くなってくるのだ。
大地に根を張り踏まれても踏まれても花を咲かせるたんぽぽ。タイトルも素敵だ。キャストらもまったく噛まずに素晴らしい演技力だった。お勧め。
満足度★★★
失敗した!
ペンライトを持参すれば良かった!苦笑!
ネタバレBOX
若いってのは素晴らしいことですわ!とにかくフレッシュ!
どなたかが「イケメン達の舞台っていいわ~。爽やかな風が吹いてる。」
って言ってたけれど、まさにその通り!
何をやっても爽やか~笑
ちなみに第二部の、楽しい楽しいライブ!の後に客席まで来てハンドタッチをしてくれました。こりゃあ、トイレに行っても洗えないわ!(石鹸つけて洗うけど)
満足度★★
下品で低俗
10人の男達、女達復讐という名のゲーム・・というキャッチフレーズだが、とにもかくにも下ネタが多すぎ。むしろこういった下ネタ連発舞台に高評価を付ける観客の感性がワタクシには良く解らない。観れば解る。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
暗闇から発する声。暫く経って照明が点くと血みどろのシャツで佇む10人の男女達。しかし復讐という割には誰が誰を復習したいのかの立ち上がりがなく、ただただキチガイのように吠える彼ら。ソコには理性も何も存在しないかのように進んでいくが、解っているのは彼らは死にに来た。という事だ。
わざわざ観客にパンツ尻を見せる女。露出狂という男はパンツを脱ぐ。女性性器をモロ、叫ぶ男。こいつはソレしかセリフがない。だから一々、他の会話の中に断片的にソレを叫ぶ。
たぶん、女性の観客は好きになれない舞台だ。だから男性観客が面白がってエゲツナイ舞台に魅入るのは勝手だが、ワタクシはそれもひっくるめて好きになれない。
ゆういつ、感心したのは8番と9番のアドリブの応酬だ。この場面だけが面白かった。それだけ。
満足度★★★★
やんちゃなコメディ
「右手にテニスボール」なんてタイトルだから、てっきり、爽やかに晴れ渡るお話かと思いきや、まったく期待を裏切られ、実に可笑しいコメディだった。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
田上くんの奥さんの出産の際、立ち会いをした田上くんは、右手にテニスボールを持って奥さんのお尻の穴をぎゅうぎゅう押していたそうな。この物語はそんな男性に巡り合うまでの話です。
あさみは臨月だったが出産してしまうと、もう元彼に会えないから。って理由で家に「遊びに来ない?」って声をかけたかつての元彼たち。元彼たちは自分だけがあさみに呼ばれたのだと勘違いしていたから、過去の男・3人が集った時には、すごく気まずいムードに。
そんな所にあさみの夫が帰宅してしまう。いよいよ、嫌な空気が流れる中、当のあさみはあっけらかんとしていた。その不穏な空気の中で元彼達はちょっとした自尊心の小競り合いをする。笑
2番目の彼から夫までの遍歴をまったく同じデートコースとして電気店に訪れる。そこで購入する電気釜の大きさで、男に結婚する意志があるかどうかを図るのだ。つまりは電気釜で男を試し、結婚という爆弾を抱えながら査定するのだ。笑
ありえない設定だけれど、人間同士の嫉妬にも似たしっくりこない空気の流れの描写や、あさみ自身の憎めない大らかさみたいな描写が面白い。目次立樹(ゴジゲン)の母役はそれなりに、きちゃならしくてお見事!
満足度★★
どちらかといえば初心者向き
ブラックコメディという触れ込みだったが、これといって笑えるシーンは少ない。これなら小劇場で観るコメディのほうがよほど、良かったな・・。とちょっと後悔する。ものすっごくベタ!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
最終的にイチローは敵刺の支配人の娘、麗美と恋仲になるのだが、そこまでになる設定が実にメンドクサイ。麗美自身が自分の気持ちに素直になれないことから物語りは捻じ曲がって、更に素直になれないを通り越して、捻くれた性格に写ってしまう。
元来、こうしたグズグズ、イヂイヂは嫌いな性質なので、観ていてイライラして、「どこまで捻じ曲がってんのさっ!」と叫びたかった。
好きなら好き。嫌なら嫌!とはっきりせい!みたいな描写のコメディの方が、観ていてすっきりする。こういった相手の気持ちを探りあいする的な物語は観客の性格によって評価が違ってくるのだ。それでも解りやすかったのは事実だが、あまりにもバカ馬鹿しくてコメディってほどでもないしで、久しぶりに眠くなった。