マクベス
パルコ・プロデュース
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2015/08/22 (土) ~ 2015/08/23 (日)公演終了
満足度★★★
わからない点もあったけど興味深く観劇
広い病室に隔離された患者、部屋にはベッドや仕切りのない浴室に洗面所、天井部にはテレビモニターが3台設置、上手側に階段。中央には吹き抜け窓、そこから女医と看護士が見守る。病による錯綜した夢なのか、どこまでが彼の現実なのか。次第に劇場型の治療法に思えてきた。
もともとお得意?のマイムは大人から子供、マクベス夫人まで巧みに演じ分けてテンポよく進行。後半からマクベスと患者が一体化して見えて来る。一人語りなのに映像も交え性別を変えて演じる生尻蔵さん、引き締まった体つきと腹式呼吸の凄さにも注目してしまった。これが肉体派俳優ってことか。
変化をつけた話ではあったが、最後まで舞台マクベスだったのは驚き。あまり関係ないが、ETV「おはなしのくに」にでも出演して、演じて欲しい。
メインは患者である男だけど、その彼をフォローする形で2人の役者さんも出演。かなり印象的な出方もあり名前や活動も知りたかったのだが当日パンフもないため知りようがなく、多分パンフには出演者名の記載があるのかもしれないが、紙一枚でいいからキャスト表をどっかに掲示してほしかった。また細かく表情を見るぶんには今回みたいなホールでは、すこし大きすぎた気も。
ネタバレBOX
「マクベス」基本部分の主要な登場人物のみで話が進行。
・スコットランドのマクベスとバンクォー、王の陣営へ戻る途中、3人の魔女に出会い「マクベスがコーダー領主になる、王にもなる、バンクォーは王にならないが、その子孫が王になる」と予言を聞く。
・予言通りにコーダー領主を命じられたマクベスに王位の野望が芽生える。夫の手紙でそれを知ったマクベス夫人は来城したダンカン王を殺害、夫の野望を遂げさせようと決意。
・国王の歓迎祝宴中、罪の重さに怯むマクベスを夫人叱責。妻の言葉に発揮し、就寝中のダンカン王を刺殺するマクベス。
・その罪は王の従者になすりつけ、彼らも殺害、やがて王位につく。
・夫人の様子を見に侍医、戦時状況を報告する侍者も登場する。
・「綺麗は汚い、汚いは綺麗」「血が落ちない」
・敗北を自覚したマクベスに結末を重ね合わせる男。
病室に女医と看護士と抱えられるように男が入室し、男の着衣や薬指の指輪を外させ、爪や口腔内のDNA採取させられる。看護士が男の手荷物の紙袋を持って行こうとするが手元から離さないため、そのまま作業を終わらせ退室する2人。2人の退室後、男が紙袋から出した中身は子供のセーター。家族持ちの男がなんらかの事情で入院することになったと想像できるが、ここまで彼らに会話らしい会話はない。医師たち退室後の室内を彷徨うように見回る男、3台の監視モニターが3人の魔女に見えたのか、現在の置かれた状況にマクベスと重ね合わせる。(と思ったのですがどうなんでしょう!?)
上や真横からのスポットライトの当て方や、鏡越しでの暗殺者との会話演技にゾクゾクするような狂気の顔芸ラッシュ。マクダフ暗殺計画を企てる段階で、マクベスと夫人がベッド上で体位を変えながら会話するが「悪いこと企ててる〜」とわかりやすい。一人で演じてる部分が多いけど、人物変化で車椅子使ったり、林檎が話し相手だったり、赤ん坊の人形がマクダフ?だったり王だったり。
端で見てるとなんか変なことしてると見えても、精神を患っている病人ならそんな行動してても違和感はないと納得。次第に言動がマクベスに取り憑かれ、ついには持参した子供のセーターさえマクダフ妻子殺害再現に用いられる。狂気の沙汰に我に返る男。この行動で男も似たような犯罪を起こしたんではないかなーと、ぼんやりと想像できるが、ここら辺は観客の想像力に委ねたのか、その後も男の背景についての言及はなかった。
侍医(主治医の女医)と侍者(看護士)が別室から観察する中、マクベスや夫人になった男は夜中に起き出し、手を洗う仕草を繰り返し、しまいには自傷してしまう。殺人の闇の部分が増してくると浴槽に自滅し、そこでの息止めシーンは結構長めだったから「だ、大丈夫!?」と余計な心配したくなった。
モニターに映し出された人物は男の見た悪夢な人物だったのか、それとも男そのものだったのか。その行動の数々に、男の担当医もマクベスの侍医も匙を投げてしまう。その言葉が幻聴のように空をさまよっているかのように聞こえる、マクベスと男。
どこで歯車が狂い、理性を失い、罪を起こしたのか。
男とマクベスの奇妙な一致を一人で舞台で演じて見せた蔵之介さんに感服しました。
多少わからない点もありましたが、面白かったです。
エトランゼ
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
初見
東作品は他の舞台ばかり見て、今回初桟敷童子。
東作品見てると大正琴楽曲のような古賀メロディーをついついイメージしてしまう元九州人。
70年代後半に流行したアイドル歌謡曲が陽気に聞こえる小山麓。
山師の人たちも「あーこんなピュアでかわいらしいルックスのおばちゃんに見えないおばちゃんおったわー」と童心に返り見てしまいました。
噂に聞いてた壮大な舞台装置も面白かった。
客席に中高年の男性が多かったことに驚き、劇場の冷房が効き過ぎだったのは難点かな。面白かったです。約110分。
ネタバレBOX
山の神聖さ、不浄を忌み嫌う因習の仇、子の無邪気さ、童女のような老婆、女の挑発、正直でありたいが故の逃げ場ない思いと追い込み方に、喪黒福造の「ドーーーン!」って迫ってきそうな迫力を思い出してしまったが。その土地の田舎で暮らす人々と女の世界観が垣間見え、その図式に自分が疑似体験しておるかのような錯覚を覚えた。
好きな男の言葉だけを生きる希望にした女の一途さに、物の怪のような感情が湧いてしまったのは「俗」の部分が勝っていたのか。結末に案外悪い人ではなかったのかも、と思った。こう考えるのはやっぱ甘いのかな。
ウーマン・イン・ブラック
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2015/08/07 (金) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
7年ぶり
なぜか今回も斎藤&上川版と同じ座席位置から観劇。
すでに展開はわかっているのに背後から迫り来る影や音響に灯りの効果に、思わず「ひー」と声にならない声が出そうになるのを必死に抑えながら見ていた。
劇中、あの手招きは日本的な気もしたけど、古今東西心理的怖さは万国共通なのな。
ただ今回も悲鳴音が少しうるさく感じ、和物だったらすすり泣きとか囁き声とかで迫ってきそうだけど、そこらへんは西洋的戯曲感覚の違いなのかな。
今回のスパイダーもかわいい。
周りに怖がりさんの観客がいるともっと効果的かも。怖面白かったです。
ネタバレBOX
イギリスの小さな町にある邸宅。その所有者の女性が亡くなり、残された書類整理を依頼され館に向かう。海の中で小島の様に浮かぶ邸宅、行けるのは干潮のときに渡れるくらい。海で砂浜、のちに底なし砂浜?時代背景で、馬車と列車を活用している雰囲気から、以前NHKで放送していた「シャーロック・ホームズの冒険」を思い出しながら見ていた。
弁護士が若い頃の体験した恐怖談を若い俳優が再現するという出だし。
今回の弁護士と俳優コンビの2人も、劇中劇のような再現の中、服装や仕草、声色の違いでキップスが関わった人たちを演じ分けるという多重構造。徐々に重く息苦しい展開の間合いのようなものが上手いなーと思った。
舞台中央には大きな籠。机になったり列車や馬車、ベッドや祭壇など変化に富んだフレキシブルな使い方。他に目立つようなセットはあまりないのに場面が変化しているのがわかり、見えない場所にセットもあるが、照明で浮かび上がらせる様に恐怖が倍増させられる。
姉と妹の愛憎、妹の子供をめぐる残酷な出来事。それに関わってしまった男。姿を見せない女たちだけど、強烈な印象を残し存在感を見せつける。哀しい女たちの物語でもありました。
外交官〈前売券完売/当日券若干枚あり〉
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2015/07/31 (金) ~ 2015/08/09 (日)公演終了
満足度★★★★
見ました。
戦前官僚達の政の舵取り。長い年月をかけて積み重ねた平穏な日常も、ほんの一瞬で脆くも崩れる。現在進行形の時勢がどこか未来図のように透けて見える。その当時に実在してたような配役の役者さん達も渋い。
英語劇じゃないのに、ヒアリングにも集中した史実とフィクションが巧みに混ぜ合った野木さんの重厚会話劇でした。
簡単に面白かった、とは言いづらい題材だけど面白かったです。
休憩込み約160分。
夢を見る<本日千秋楽前売・当日券完売>
「夢を見る」製作組
SPACE 梟門オープン予定地(東京都)
2015/07/30 (木) ~ 2015/08/02 (日)公演終了
満足度★★★★
最終日観劇
プレオープンになった劇場での一人舞台。
戦時中、南方パラオで慰安婦で過ごした女に出会った現代の女。
非情な現代史を生き、老婆となっても「女」を捨てない生き様に心を抉られ、その端正で迫力ある姿が最後まで目に焼きつく。声高に反戦を訴えるのではなく、日常化した現代の平和を尊ぶ意味を教えてくれたような話だった。今後も継続して上演してほしい。
1人なのに重層で演じきる占部さんに圧倒された90分でした。
「贋作幕末太陽傳」
椿組
花園神社(東京都)
2015/07/10 (金) ~ 2015/07/21 (火)公演終了
満足度★★★
最終日観劇
毎年恒例になった椿組による花園神社での野外公演。今年で30回目。
今回も40人余りの役者が踊って歌って叫んだり、コーヒー豆を煎る香りやアイスモナカが食べたくなったり(開演前だけの販売で残念)、外野の喧騒も余興の一つかと錯覚したり、五感をフル活用した観劇となりました。
冒頭は題材の邦画から始まるけど、それ以降は「贋作」と銘打っている通り、別物。映画愛と男の年輪がクロスする哀切人生記な話だった。
笑わせる要素の場面は少し長く感じややくどい。過去を美化したくなる男と未来の現実を見据える女。鄭さんお得意の差別や障害なども下敷きにあったが、全体的に男の人が書いた作品だなぁとヒシヒシ感じた、なんか今回はいい話で終わらせた感がある。
演出の加減とはいえ、食材を粗末に扱うのも不快だった。周りのお客さんはウケてたので自分の見方の違いなんだろうけど、台詞の中で𠮟咤してくれたらよかったのにな。
薄幸だが気丈な運命な姉役の紀保さんや、おババの水野さんと伊藤さんら怪演だがよかった。その2人の場面はハブとマングースの戦いみたいで楽しめた。
野外で見るトバさんは毎年若返っているような感じがする。
ネタバレBOX
劇中映画で幾つかの作品が登場するが、葬祭の行列シーンはATG?映画の寺山作品みたいな幻想的で混沌とした翻弄場面だった。
監督たち、男の頭の中で完成させたと思われる、未完の大作となったあの映画がどんな話になったのか、怖いもの見たさで見てみたくなったりして。
阿弖流為
松竹
新橋演舞場(東京都)
2015/07/05 (日) ~ 2015/07/27 (月)公演終了
満足度★★★★
チケット代金が高くなったのは辛いが
新感線だったら絶対作ってるな、クマ子グッズw。
話は知っているので今回は上の階から見ました。2階から上の左側座席は花道見切れる部分が多いのでもう少し値段考えればいいのに。
ジュータスの流れないいのうえ歌舞伎でした。
多少の改訂はあったけど根底は不変で面白く、国創りとはこういうことー!とわかりやすい。出ずっぱり附け打ちさんの姿勢と音色の良さにも惚れ惚れ。阿弖流為と田村麻呂の花道越し名乗り掛け合いは鳥肌モンだった。いのうえ歌舞伎流の緩急つけた殺陣と蛮甲らのオーソドックス殺陣が如何にも歌舞伎らしい対比、パルコ歌舞伎以来のブレヒト幕や普段の歌舞伎では見ないバミリの多さとか。佐渡馬の屋敷幕だったか蛇の衣紋幕もデザインもいい。リストバンド発光の蝦夷の星空も綺麗。
最後のねぷたの集団、アテルイの時もあんな感じだったから特に気にならなかった。
阿弖流為と鈴鹿の並びは博多人形かっつーくらい美しかった。益々アスリートな身体になってるキレッキレの田村麻呂さん。稀継の場面だけ切り取ったら横山光輝の世界ぽい。スタァ歌舞伎俳優の見せ場が盛りだくさんでで目の保養になりましたw 久しぶりに見た新悟ちゃんもいい役者になってた。
再演またはシネマ歌舞伎化希望です。
ネタバレBOX
自分が観劇した日、帝の正体が明かされるシーンでは笑いが起こっていた。そんな場面でもないと思うんだが、いろんな見方があるんだなーと思った。
青色文庫 -其弐、文月の祈り-
青☆組
ゆうど(東京都)
2015/07/07 (火) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
プログラムA観劇。
初日初回観劇。初めて赴く場所。見つけ易そうで見つけにくい(個人比)都心の中にある閑静な街の一角にあった古民家。軒先と庭には2匹の猫がのんびりとお出迎え。座敷、縁側、奥井戸。汲んできた水で出されたウエルカム麦茶にもホッとする。
猫がくつろぐ借景を横目に、6人の役者が静かに語りかける、なんとも風情ある60分の演目でした。
ネタバレBOX
リーディング順。
「野ばら」(原作/小川未明)
大国の老人兵士と小国の青年兵士。どこからかシューベルトの野ばらのハミングが楽しげに聞かれる。国境に咲く野ばら、隣り合わせから始まった束の間の交流が、いつしか自分たちの知らないところで敵対する間柄となり別離を迎える。老人の見た光景、青年の未来、2人の友情の表れのような野ばらが枯れたことに切なさが極まる。
「十二月八日」(原作/太宰治)
『今日の日記は特別に、丁寧に書いておきましょう。昭和十六年の十二月八日には日本の貧しい家庭の主婦は、どんな一日を送ったか、ちょっと書いておきましょう。〜』ここしかちゃんと覚えていないが、家庭の主婦の視点の言葉から始まる話。
出だしは楽しそうに、愉快に思えても、表題から太平洋戦争の開戦日という運命的な日、平穏な日々から徐々足音を忍ばせながら世の中が変わっていく日常。
少し昔のこととはいえ、なんだか現在の世の中の話でもあるような。
文章の句読点まで一句一句、丁寧に実感こもった読み方で心地よく、また聞き取り易かった。
ス・ワ・ン
3軒茶屋婦人会
本多劇場(東京都)
2015/07/03 (金) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
3本目の話が好みでした
安土桃山期のルソン島、現代日本のある工場、昭和30年代の赤坂のキャバレー、の時代設定からなる3話オムニバス。白鳥の如く優美で多分何処かで居ただろうと思われる女達の話。母と娘、愛憎、復讐心などなど人生の機微を踏んで生きてきた女の大人の愛が見え隠れした舞台だった。
舞台セットは変化しないけど、照明や演奏を変えただけで、一瞬にして別世界。そちらも素敵だった。
3人共お綺麗なんだが、ラストの英介さんが特に美しかった。
あの50'sオールディズみたいな歌も一緒に口ずさみたくなる。
途中休憩なし。約110分。
ネタバレBOX
当日パンフなし。公式サイトよりタイトル判明。
第一話「ルソンの壺」
第二話「広東の林檎」
第三話「炎のスワン・シスターズ」
3話目の火災で煙に巻かれるシーンは、つい先日新幹線内の放火事件があったので、事象の偶然性に少し肝をつぶした。
今回のG2さんの話は好き。
『新・殺人狂時代』
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2015/06/24 (水) ~ 2015/06/28 (日)公演終了
満足度★★★
30周年
暗闇、静寂、光、衝撃。様々な立場の作業員の衝突と怒号。極限状態な中の正論の虚しさ。選択の迷いと激しい議論の展開が起こるのに水音だけはよく響く。現実でも嘘みたいな事が起きようとしているがあれが理性の感覚だったのかも。
これまで見た日澤さんの演出の中ではかなり派手なアングラ演出というような感じで面白かった。これをまた鐘下さんがやると違うんだろうな。
久しぶりに言いたいことを言ってる「老舗」演劇を見たっ!って印象。
あ、流山児事務所30周年記念公演の中の一作で、鐘下作、日澤演出のためか、前説で流山児さんの「イッツ、ショーターイム!」が聞かれなかったのは残念。
鐘下さん、密閉空間の展開がお好きなのねw
ネタバレBOX
暗闇が続き、役者の顔が判別づらく、誰がどこにいるのか最初はよくわからず、また転換時の目くらまし的な光の使い方はもう少し加減して欲しかった。
携帯電話の持ち込みは禁止?とか、内線電話とかはない現場で、放射能の危険物質を含んだかなり繊細な現場なのに、地上で作業しているような作業着姿に多少違和感も。
黒鉄さんの方位磁石
劇団AUN
DDD AOYAMA CROSS THEATER(東京都)
2015/06/24 (水) ~ 2015/06/28 (日)公演終了
満足度★★★
初日観劇
初めて行く劇場は青山劇場の裏側にありました。
ステージ凸型形状、客席約200余の凹型設置。
客席上手と中央通路が花道仕様で頻繁に使われ、遅れて来る場合は座席誘導に注意。役者さんのセリフがよく響くから耳がキーンとなるかもw
デザイン家具調椅子のような座席だったがD席?から前方3列は底段差のため、観客によっては視界が遮られる席があるかも。以降は階段状席。
上演時間及び座席表示なし。上演時間だけでも告知して欲しい。
休憩10分込み約3時間。
前作の「有馬の〜」が良かったので、それなりに期待はしていたんだが、今回は全てを理解するのに時間がかかる。
今後、皆さんの感想読んで補完したいと思います。
ネタバレBOX
昭和元年生まれの主人公の幼少時からの話が入れ子になってるが、主軸は現在の老人の姿をした男の走馬灯のような回顧録…と言っていいものかどうか。
戦争によって貴重な青春の一時期を奪われるのは不憫。今年は戦後70年だが少し時代がずれてるだけの過去の話、とも言えなくもない雰囲気な21世紀に見る戦争の悲惨さについて触れる舞台だった。
姿は老人でも戦前の少年期、戦争に突入した青年期と幾重もの時代を繰り返す場面の多い事。自らの疾患のため、兵隊になれず?機関車の運転士=黒鉄さんになるため戦時下に挑み続けるショウイチ。そのショウイチを昭一が入り組んで演じているもんだから、さっき出てた人は今いつの時代の誰?と、ゆとり脳気味の自分の頭ではすぐには理解できず、役柄の整理ができずらい場面も多々あったけど、激動の時代を生き抜き、老いた先に見えたものは、自分が誰なのかわからないまま過去の出来事も失っていく記憶と思い出を持った一人の男の切ない話と感じた。
ただ、オリンピック見に来たトーマス夫妻の件とか必要?戦時中でもみんながみんな、もんぺ姿じゃないのな。昭一のお父さんの日露戦争ももっと掘り下げて欲しかった気もしたし、現代の電車運転士のフォローはないまま?とか。時代が交差するので、舞台の目線をどこに合わせていいいのか混乱したり。2幕の盛り上げ方、娘たちが昭一の日記を読みながら各時代の人物が集まったあそこで終わらせてもよかったんじゃないか、とか。
吉田鋼太郎さんの喜怒哀楽が凝縮された舞台。
も、ほんといつ休んどるんですか⁉︎ってくらい出続けてました。
ア・フュー・グッドメン
天王洲 銀河劇場
天王洲 銀河劇場(東京都)
2015/06/19 (金) ~ 2015/06/28 (日)公演終了
満足度★★★
もう少し小さい劇場で観たかった。
映画未見。
キューバで起こった米兵絡みの殺害事件に対する裁判物。発言の一言を聞き逃すまいと、舞台上も客席も緊張感が続く。暗闇、フェンスの金網とスズカツ演出が活きてたなーと思ったが、小規模の劇場の方がもっと集中して舞台の世界に入り込めそうな気がした。
トモロヲさんとエイジさんとアベジョーさん、貫禄勝ちの演技でした。
東海道四谷怪談
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2015/06/10 (水) ~ 2015/06/28 (日)公演終了
満足度★★★
話の筋は知ってるが
「つけうち」が聞こえない歌舞伎風翻訳時代劇のような見せ方だった。
役者さんの性差は違和感なし。奈落の使い方?見せ方が面白かった。
秋山お岩さんが哀しくて恐い、最後のシーンはかつて一斉を風靡した Jホラーぽい演出ぽいなーと思ってしまったが、日々変化をつける森さんの演出なので、そこらへんはまた手を入れるんだろうな。
色悪内野さんの殺陣カッコよく、夢場面と雪場面は美しかった。
簡略化された人物や中途半端な扱いに感じる場面もあったけど、楽しめた。
アドルフに告ぐ
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2015/06/03 (水) ~ 2015/06/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
アフタートークの日
手塚治虫原作の舞台作。冒頭の音楽の挿入や光の挿し方など、あら、こまつ座?と勘違いしそうだったが、観終わった直後は原作読後以上の重い引きずられ方をしてカテコのスタオベも出来ず。終演後の和気藹々のATでようやくクールダウン出来た。
凄い舞台だったなー、としか言葉が出ない。
役者さん全員よかったが、特に高橋洋さんや成河さんの凄さを再認識。
休憩込みで約3時間+アフタートーク約30分。
ネタバレBOX
出演者5人によるアフタートーク。発言に一部省略やまとめ記述あり。敬称略。
終演後、5分程度の休憩。ステージ上に椅子5脚準備した時点でアフタートーク司会の松下さん登場。トークショー用の台本をしっかり読み上げながら「こんにちは~。本日は「アドルフに告ぐ」お越しいただいて(だったかな?)ありがとうございます。本日の司会進行、MCのアドルフカミル役、松下洸平です。それではみなさん、お入りくださいい」「噛まずに言えた!(笑)」と自画自賛。
そしてラストシーンの衣装のまま、マイク持って全員自由に登場。
下手から松下さん、高橋さん、成河さん、朝海さん、彩吹さん。
「僕~、ソンちゃん、洋さん~あれ?」と、座席案内するも席順を間違えて誘導する松下さん。「違うよ~、こっちじゃないの~?」とみんなから突っ込まれつつ和やかに着席。
松下 / 普通(ATに)司会進行の人がいるけど、今日は僕(が司会進行)ですから。このメンバーだから誰も話を止める人がいないので、大人としての秩序を守りつつ節操を保てるよう盛り上がろうと。皆さん気をつけてくださいね。ありがとうー。
高橋 / いいじゃん止めなくて
成河 / 盛り上がっていこう!
・10回目の舞台公演が終了したが
松下 / 10回公演終わりましたが、いかがですか?なんか早いですね。あと4回でこの劇場終わりかと思うと、寂しいってみんな話してたんですよね。
成河 / まだ10回ですか。いや、もう明日で終わりでしょ!残り数えないほうがいいな。
彩吹 / ノンストップの舞台の中で、私は1人穏やかに過ごさせてもらっているので。みなさん、体力的にも精神的にも大変そうだなぁと。(心中)お察します(笑)
朝海 / 1日1回が10年分くらいに感じる。長く感じる。物語自体も(上演時間は)3時間の間に何年もかかってて、その重みがズッシリ。だから10回やったって感じがしないですね。
*ここで、静かにしている松下さんに向かって朝海さん「大丈夫?元気?」と声かけると
松下 / 僕は結構元気ですよ!ついこの前、幕が開いたばっかりの気分でなんだかあっという間。10回なんてあっという間であと4回で終わるし、寂しいなーと(みんなと)話してる。みんな同じ方向むいてやってて(今回の座組は)家族みたいな良いカンパニー。もうすぐKAAT千秋楽とは寂しいなぁ。
高橋 / もうすぐ千秋楽か~って、段々寂しい気持ちが芽生えてきているところ(笑)
・ステージの立ち位置
*今回の舞台は数段差ある八百屋舞台。彩吹エヴァは二段目くらいしか下りてない発言に触れ
彩吹 / (役柄上)下界(ステージ)に降りられない、カテコ(カーテンコール)も降りられない。
朝海 / 私は下ばっか(にいる)。二段目しか上がってない。
成河 / 栗山さんの計算だね。
・コンタクトレンズ
成河 /ちょっといいですか?これずっと気になってたんだけど(と、足元の何かを拾う) これ、僕のコンタクトレンズ(と、つまみあげて周囲に見せびらかす行動に客席から驚きの声あがるw) 僕と朝海さんはよくコンタクトレンズを落とす族なんですけど、1回で4枚くらい使う。今まで落とすことはあっても、1回(1日?)で4枚使うのは初めて。今まで2Weekを使ってたけど、朝海さんに勧められて今はワンデーアキュビュー?1日のやつ。あれ使ってます。
朝海 / もったいないからね!
*松下さんが話そうとしてる中、落ちてたコンタクトをワザと目に入れようとし、朝海さんに「バイキン!」と止められ、次に口に入れる真似をし、ぺっと吐き出す成河さん。ちょっぴり怒られるも隣り合わせの朝海さんとちょこちょことじゃれ合ってた。
松下 / そうそう、ゲネか初日かどっちかの時、序盤の幼少時、わたがし食べるシーンで向き合った時に、すでにソンちゃんの目からコンタクトレンズが剥がれ落ちてて、見たらもう二枚落ちてて瞼の下にくっついてるし。(落ちるの)はやっ!と思いましたw ビックリしたもん。
成河 / ドライアイってのもあるけどライトが眩しいとダメなんですよ。見ちゃうとね。エリザとのシーンとか割と外れる。なので、涙が出てるように見えてもその正体は大体コンタクトレンズですw
高橋 / 俺もコンタクトレンズつけてるから、泣いてるわけじゃないのにコンタクトレンズのせいで涙が出る時とかある。この前、涙出て泣いてるように見えたかもしれないけど。あれ、コンタクトのせいだからね。
・ステージ上の動きで
*劇中、照明を落とし暗くする場面も多く、そうなると舞台上の役者さんからは暗すぎて階段踏み外しそうで怖くなると。そのため壇上の仕切りのように白いラインが必要になると説明したが、美術と栗山さんが最初大反対したが「いやいや、なきゃ無理!」と話し合い、目立たない範囲でバミったらしい。
高橋 / 階段が見えなくてドキドキ。俺、段差が見えないんだよね。今日なんかおっとっとって落ちそうになって腕振り回しちゃった →と両手を鳥のようにばたつかせ、それを座ってやってみせる。その姿がまたかわいい。
成河 / あれ良かったですよ。栗山さんや美術さんは床に印を付けるの嫌がってたけど。
高橋 / 印なかったら出来ない!
・演出の栗山さんについて
松下 / 演出の栗山さんと今回が初めての人っていますか?→高橋さんと彩吹さんが手を挙げる
彩吹 / ずっとやりたいと思ってた方。最初、怖いかなって。(会ったら)全然違いましたけど。なんだかすごく細かい指導を受けるのかなぁ、って思っていたら、ヒトラーさんとエヴァのシーンはどちらかというと象徴的だったので、あまり細かく指導されなくて。思ったより厳しくなかったですw 1幕は、こう足をガーと開いたりとか、首をグッとしたりとか「そうくるか~」って感じでした(笑)
高橋 / 難しい役ですね、と栗山さんに言ったら「ヒトラーってすごく大変だよね、ピカソみたいだよね」って言われたから、俺は台本に『ピカソ』ってメモして、次の日、ピカソの画集を買いに行ったんだけど、あれ絵しか載ってないから意味がなくて(一同爆笑)全然分からなくて。次の日、また栗山さんにそっと聞きに行ったら今度は「岡本太郎だよね」って言われたから俺、台本に『岡本太郎』ってメモして、えっ~?どうすればいいんだ~?と(考えてたら)、そしたら次は「三島由紀夫みたいだよね」って。それで『三島』と書いた。
彩吹 / メモしてましたねw
高橋 / 最後には「三島由紀夫の自決だよ」と。(一同爆笑) 偉大な人の名前ばかりで困った。「チャップリンだね」とも言われたので、演技にはチャップリンの要素もいれた。
成河 / 洋さんのヒトラーには4人のイメージが入ってるんだw
朝海 / 私は今回で2回目ですが初めての感覚。前作(演出舞台)の『おもいでぽろぽろ』で、今回のアドルフとは雰囲気がまったく違う作品だった。初めて本番と同じように照明を入れた時に、こんな風になるんだ!って驚いたのと同時に、栗山さんは稽古の時から照明や人の動きが全部頭に入ってたんだなあと。休憩中はお菓子パリパリ食べて。
松下 / お菓子食べながら特保のお茶飲んでるんですよね。
朝海 / そう。何に気をつけてるのかわからないw。その姿見て、トトロみたいだな~と思ってます。
成河 / 僕は栗山さんとは今回で3回目で、前回も(脚本の)木内さんと組んで長編をギュッとまとめた作品でこういう冒険心がいる木内さんと組んでて。本人は嫌がるけど、ちょっとカリスマ性あるんですよね。稽古の時、ダメだしタイムになるとみんな栗山さんの周りに一斉に集まるんです、自然と。
高橋 / 声が小さいんだよw。
成河 / えぇ~w!?なんか、みんなで同じ方向むいて作ってる感じが良いなと。俳優の力、観客の力、演劇の可能性を信じてる方。
松下 / 僕は『スリル・ミー』という作品で栗山さんと4年やらせてもらってますけど、今回のアドルフでも『スリル・ミー』っぽいなと思うところが幾つかあって。セットの動き方や照明の使い方が似てて。栗山さんワールドが炸裂してるなあって思いますね。
・謎の棒
*ここで成河さんが舞台セットの意味ありげな棒が気になってたらしく
成河 / そういえば!この棒って光るの?誰かから聞いたんですけど、この棒光るらしいんですが、そうなのですか?→と客席に問いかけ、「光るよ!」とその棒と奥の棒を指差す観客達。
高橋 / っていうか、この棒ってなんであるの?なんなの?
成河 他 / なに?照明に反射して光るの?なんで光るの?2本ある?どこに?あ、あっち?どういう意味なの?何のための棒なんですかね~。僕たちわかんない! 私たち見えないので、二度と確認できないですね。
高橋 / ビデオ見ないと分からないね、(棒の存在は)ピカソだと思う。
*棒が光ることに一斉にざわつく出演者w なぜ光るのか不明だが、舞台上のキャストからは見えないらしい。また、成河さんは稽古場で、最後の憲兵を追い詰めるシーンで「(斎藤)直樹さんと2人で棒を思いっきり倒した」そう。
・好きな台詞
松下 / (客席に向かって)舞台2回以上見ている方~? →自分の座席は1階後方席だったが、かなりのお客さんが挙手されてた。
松下 / わー、ありがとうございます。(内容が内容だけに、この舞台見るの)大変でしょう。みなさん(出演者に向かって)劇中の好きな台詞とかってありますか。
彩吹 /『ええ』→この答えに一同「え??」
彩吹 / エヴァって、限られた台詞の中で『ええ』とか短いけど、ヒトラーに対して肯定する台詞が多いんです。『ええ』って二文字だけで全部受け止めるのってすごいなあって。その『ええ!』が、好きだったり工夫したりする。
*ここでゲップする成河さん。松下さんに怒られる。そして椅子にあぐらをかく。自由人。笑ってやり過ごす周囲。
高橋 /『甘い!』好きだよ。 カウフマン少年がわたあめ食べて『甘い!』って言うの、よくあんな高い声でるよね。
成河 / 『甘い!』ね!序盤の、カウフマンがわたがし食べて言う台詞。栗山さんがこだわってた。僕、基本放ったらかしだったんですけど、この台詞はこだわりがあって『甘い!』だけはすっごく指導を受けて何度もやり直した!あの時代って「甘さ」に飢えてるから、そういうのを一言で表現しないといけないって、ほんとに甘く感じるようにとかなりこだわっていたので。毎日やりました、甘い物や人との絆が少ない時代の中での感動を凝縮w。
高橋 / 俺は谷田(本多大佐)の『聞け!芳男!』が好き。すっごい好きw あれ聞くと(吉田)鋼太郎さん思い出す wって言うと、たまにトーン変わっちゃうんですけどw →洋さんの「谷田」「鋼太郎さん」の名前がサラッと出てちょっとうるっときた。
朝海 / 三重子さんの『自由ですか?』って台詞も、あの「自由」に飢えてる時代だからこそ活かさないといけない台詞だなあって思う。
松下 / 僕は『チークで良いの!』が好き。
朝海 / 逆ギレみたいになってるけどねw。
高橋 / こういうのって言われると意識して演技が変わっちゃわない?
朝海 / そういえば前にも好きって言われたの。今まで忘れてた、聞いたら意識しちゃう。
成河 / 僕もママのセリフが好き~。
*一斉に由季江ママ注目されて、照れて耳を塞ぐ朝海さん。それを見て成河が一言「かわいい♡」
成河 / あの爆弾がヒューヒューバーンって落ちてきて、ママが一人で受けるところ。あそこ最初は台本になくて稽古で追加されたシーンなんだよね。最初は峠さんが店の方を見に行ってすぐ戻って来ちゃう場面だったんだけど、その間に何か欲しいねって追加になった。あれは原作にあるんですか?
朝海 / 空爆シーンで由季江が『私は、死なない。三人の家族で生き抜く。死んでたまるもんですか』って原作にはないセリフ。稽古の序盤ではなかった。あれは木内さんの創作。台本上は何もなかったが稽古中に入れた。栗山さんと一緒に相談して追加になった。凄いよね~。
成河 / 僕、それを稽古中に聞いてすごく泣けちゃいました。木内さんのオリジナルなんですね。
・最後に一言
松下 / あれ、もう時間ないんですって。(終了)時間のキューが出てしまいましたので、御客様にコメントをひとこと。→全員、一斉に袖を覗く。
彩吹 / 今日は本当にありがとうございます。原作は手塚治虫さんの漫画ですが、原作は70年前の話、みなさんにメッセージを伝えるためだと~(思っている)。息遣いを感じに、あと4回見に来てください。
朝海 / 命を削ってやっているので生存確認をしに見に来てください。ありがとうございました。
高橋 / 今日はアフタートークがあるからこんなに和やかになってるけど、普段だったら終わって重い気分になって帰ってもらってると思います。たまにはこんなカタイ舞台を見て、重い気分になってください。(「またお誘いあわせの上、お越しください~」とか、言っていたような気がする。)
松下 / 僕自身も演っている中で『知ること』が大切だなぁと思ったので、色々なことを『知りたい』と思うきっかけになって欲しいです。…あれ、今日の二階席なんか若くない!?
→みんなで2階席を見上げ、客席と手を振り合う。
松下 / ぼく、28歳なんですけど。僕より若い世代にこうやって観に来て考えてほしい、色々。いや、年上のひとも、ですけど。若い世代のかたにも、上の人にも見に来てほしい。知ることが大切。何かを知って何かが変わることがあるかと。手塚さんの作品を通して知って(知ることができて)僕も嬉しい。
成河 / 今日はありがとう。台本作りも苦労して。木内さん栗山さんが時間かけて作り上げた(脚)本。最初はどういう風に(仕上がるか)なるか、幕が上がるまでみんなの反応を見るしかなかった。栗山さんは『劇場は思考する場所』だと言っていて、客席からもそう感じる。こんなに役者からも客席からも『思考している』とヒシヒシ感じる舞台はないです。僕の世代や、もっと下の世代って知らなくてよいことは調べない。自分の知らないこととの付き合い方が下手なんですよね。僕はお客さんも演出も信じてる。知りたいから舞台も観る。興味のあることにはのめり込むけど、知らないことは知らないままで終わる。調べようと思えば、調べられる環境の中にいるにも関わらず。とにかく、考えてほしい、知ろうとする事、考える事、理解をする事、共有することが大事。自分にも言い聞かせてるんですけど『考えさせられる』って言い方するとすごく安っぽく聞こえるけれど、みんなで考えてまとまって作り上げていく感じがすごく良いな、と感じさせてもらっています。あと4回ありますので、是非また来てください。今日はありがとう。→書き方がまとまってないが、だいたいこんな感じの発言。
ハケる際、両手を鳥のようにばたつかせながら、段差をピョンと降りながら一人ずつ笑顔で退場。
以上、書きおこし終了。
不倫探偵 ~最期の過ち~
大人計画
本多劇場(東京都)
2015/05/29 (金) ~ 2015/06/28 (日)公演終了
満足度★★★
役者さんは良かったんだけど
日本総合悲劇協会の冠はついているが、過去作の内容とはまた違う松尾ちゃん一人舞台拡大版のような天久成分多めな舞台。
おフザケと暴走を加減しながら、狂っても正気を失わない作品姿勢は松尾さんが描く世界にも通じてたのかな。細かい事を上げていけばキリがないが沢山動く松尾さんを堪能出来てそこは満足。
グダグダとダラけるような場面でもキチッと見せるのは劇団の実力もあるんだろうけど。大人計画の俳優をはじめ、ゲストの片桐はいりさんや二階堂さんのキレの良さ。特に松尾さんとはいりさんの全場面は滋味深くて良かった。
役者も映像も面白素晴らしかったが、2時間超えるのは盛り込み過ぎのような気がした。
演劇という独特な世界が幅広い世代に受け入れられる劇団があるのは喜ばしい事なんだが、個人的には日本総合悲劇協会=ニッソーヒに求めてたのは今回のような舞台ではなかった。
ネタバレBOX
10人殺傷した死刑囚の息子で元刑事、現在は探偵稼業の罪十郎。
彼の元に夫の浮気調査を依頼しに来た人妻。ちょっとおバカで、探偵と不倫な一夜を過ごすのだが、冒頭から2人のやりとりがバカバカしくも面白い。そこへ探偵が刑事時代にコンビを組んでいた同僚の女刑事が現れ、隣室の殺人事件を知らせるがその被害者が実は探偵と一夜を共にした人妻の夫だった。
そこから事件現場に指で拳銃もどきを作るキャンディというホテトル嬢や、警察犬の人狼男、正体を見せない探偵の元妻、人妻の夫をはめた作家たちが入り組んで話が展開。この人物達に絡むキーワードが不倫で変態で近親相姦、麻薬、奇病や殺人、とてんこ盛り。
探偵と妻の関係、拳銃にこだわるキャンディの出生、探偵との恋愛感情が見え隠れした女刑事のやりとりは生身の人間の行動を描いてて良かった。探偵と不倫をしたいがための結婚オチに乙女心を見たし、それにアダルトな対応をする探偵にもキューンとなったw
また探偵の白い服装に対して、女刑事の赤い頭髪や赤いジャケット姿はメリハリ効いて良かったし、それぞれに合ってた。
小ネタももちろん面白かったんだけど、全体的に何処か物足りなさもあり、見ていて収拾がつかないドタバタした約2時間15分だった。
『ひとよ』★【横浜公演】6月6日・7日KAAT大スタジオ!★
KAKUTA
ザ・スズナリ(東京都)
2015/05/21 (木) ~ 2015/05/27 (水)公演終了
満足度★★★★★
母帰る
初演は震災の年。1日で変わってしまったことを受け入れながらいつの間にか4年。あれから自分の中で考え方も多少変化したこともあるが、今回も初演時同様、舞台の世界観にしっかりと入りこめた。
正しく生きていくのはとても難しく割り切れない思いを抱くことも多いが、当たり前の喜怒哀楽があることはなんと素晴らしいことなのか。
スズナリ仕様になった舞台だったが、コンパクトになって見やすかった。良い舞台だった。
ネタバレBOX
こはると大樹、園子、雄二3人が犯罪者の子供として生きて来た歳月を爆発させた瞬間、堂下さんの息子の関係が判明した後の暴れ方、こはるの夫と父に一瞬に変化し言葉では言い表せない感情に身を呈して止めるきょうだいの姿と行動に切ないやら、優しいやら。
根底の話は実はシリアスな話なのに、出てくる人たちがいかにもいそうな人ばかりで「あーやりそう」っていう行動に今回も笑ってしまった。
もつれた糸をじっくりと解きつつ、気がつけば心に響いてるドラマチックな展開に、桑原さんの作風が中島みゆきの描く曲の世界のようと思ったりして。
吉永さんは寅さんかw
海の夫人
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2015/05/13 (水) ~ 2015/05/31 (日)公演終了
満足度★★★
ギクシャクな印象
直近でコクーンの「地獄の〜」を見てたせいか幾つか共通項を見てたような。女が自由を得るまで丁寧に描いてるから、大波小波が押し寄せるように心が揺れる揺れる。
夫人と関わりある見知らぬ男、出演的には少ないが、出てきたら舞台上が陰陽のような色彩に見えたのには目を引いた。男女2組のやり取りは面白かったけど、いざ夫人が出てくると彼女の動向が停滞してくるように見えたり、妻と娘の年齢差はそんなにない設定だと思ったのだが、舞台上の姿だけ見てるとその年齢差がチグハグに感じたりと、なかなか物語に入り込めなかった。そんな夫人が選択した結末は少し意外だった。
入江雅人グレート五人芝居 「デスペラード
入江雅人
赤坂RED/THEATER(東京都)
2015/05/16 (土) ~ 2015/05/20 (水)公演終了
満足度★★★★
面白かった。けれど・・・
入江さんの「舞台」に対する愛が沢山詰まった、懐かしくもあり楽しい舞台だった。出演者全員の役者としての技量も存分に楽しめたのだが、終了後は祭りが終わったあとのような、淋しさのような感情もあり、なかなか複雑になってしまったり。ロビーに居た幾人もの舞台役者さんの姿を見て、同じような経験を味わったのかなと思ったり。でも今回の舞台、関係者は見につまされる場面も多いのでは。
背伸びした感覚のティーンエージャーを見ているような、ちょっと照れてしまう気分に陥ったりして。これまでの1人芝居とは違い、演者も5人と増えたけど入江さんの映画愛(特にゾンビ)と福岡郷土愛は健在。入江版「時をかける少女」といったところかな。
映像も終わり方もカッコよかった。
ネタバレBOX
黒背景の中、パイプ椅子と机があるのみ。後は出演者の5人。劇団デスペラードをめぐる20年にわたるタイムトラベル物語。活動は順調に軌道に乗り始めていたが、規模が増えるうちに次第に資金難となり、劇団の運営も立ち行かなくなり、そのうち解散公演になってしまう。最終公演で訪れた土地が劇団にとって曰く付きの場所で‥。
劇中の「アフタートークって何だよ!」「アイドルとかイケメン主演にして客を呼ぶな!」というセリフにはつい笑ってしまったが、劇団も解散となり楽しい時間に見切りをつけると自覚した場面で、明と典子の夕暮れの2人姿の中に流れてたキリンジの「クレージーサマー」が堪らなかった。
五郎とえつこ、劇団での活躍ぶりも見事だが、日常生活でも感性豊かそうで見てて面白いが、劇団外では無口になる感じ、わかる気がする。
長年、舞台観劇していると応援したい人達も出てくるが観客の思いとは裏腹に志半ばで活動停止等の報を見聞きしたり。それでも自分は見る専門だからまた次を探せばいいだけで。実際の運営も大変だろうが、観客の身分だから頑張って下さいと言うことしかできんが。
劇団デスペラードの上演演目、覚えてるので「ライフセーバー」「俺がロミオであいつがジュリエット」「死霊のはらわたのはらわた」「3(スリー)」どれもくだらないながらも面白そうだったので、いつかしっかり見てみたい。というかやってくださいw
一人から五人に増員したこともあり、やや長めかなと感じた箇所もあったけど面白かったです。
聖地 X
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2015/05/10 (日) ~ 2015/05/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
とりあえずコーラ買って帰る
見ている内に「ぐにゃり」とする感覚が体験出来る舞台というのは、なかなか無い。
想いが宿る少し異世界の話、今回も面白かった。イキウメ初観劇にはもってこいの舞台、イキウメを初めて観る人が羨ましい。
約2時間。
地獄のオルフェウス
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2015/05/07 (木) ~ 2015/05/31 (日)公演終了
満足度★★★
この手の海外戯曲は好みでない。
全体的に重いわ暗いわ狂いがちだわ、色男はお尋ね者になるくらいなのに、なーんであんな若オバちゃん好きになるかなぁ。
そんな愛されないと死んでしまいそうな女の色欲がよく出てる大竹さんはいつも通りスゴく安定し過ぎて却ってつまらない、と言ったら怒られるかな。三浦さんの歌声も美声でした。
休憩込み約3時間。
ネタバレBOX
冒頭の峯村さんや猫背さんのスリリングな語り口や、いつも明るく濃い役柄を見ていたので、今回のような役柄の久ヶ沢さんも印象的でした。