『Symphony#09・罪と罰、マジで大迷惑!』
劇団再生
Asagaya / Loft A(東京都)
2008/08/09 (土) ~ 2008/08/10 (日)公演終了
満足度★★★★
多分に前衛的で斬新
ドストエフスキーのアレをベースとしているのは共通ながら、野田秀樹の『贋作・罪と罰』が原典のアレンジないしバリエーションであるのに対して、こちらはリミックス…どころかサンプリングの素材に使った、的な再構築具合。(…なんて知った風に書いているけれど、実は原典は未読(爆))
多分に前衛的で斬新だし、「罪と罰」を執筆中のドストエフスキーからこの舞台の作家(を演ずる人物)まで登場するというメタフィクション的な構造は好み。
また、終盤でドストエフスキーが登場人物たちに「作者に対して叛乱せよ」と煽るあたりは倉多江美の「一万十秒物語」中の一編「物語をコントロールできなくなった漫画家の悲劇」を連想。
嵐になるまで待って
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2008/08/06 (水) ~ 2008/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
キャスト一新で新鮮
初演をTV放映、再演(97年)・再々演(02年)をナマで観てつごう4度目でストーリーはかなり覚えているものの、一部を除いてキャスト一新なので新鮮な感覚。…でありながら、終盤でユーリが声を取り戻すシーンは前回同様ホロリ。
また、観ながら歴代の配役を思い出したり思い出せなかったりするのも楽しからずや。「そうそう、あの人だった」とか「あれぇ、誰が演じていたんだっけ?」とか差があったりもして。
配役と言えば渡邊安理が主役をはるようになったかと思うとキャラメルを観続けている身として感慨深いものアリ。抜けるメンバーもいるし残っているメンバーも(当然のことながら)年齢を重ねていく一方でちゃんと後進を育成しているのはエラい。
しあわせの支度
演劇ユニットand so on
ウッディシアター中目黒(東京都)
2008/08/07 (木) ~ 2008/08/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
「家族って何?」
とある地方で旅館を経営している大人数家族系のコメディで、前半の「二十歳の儀式」に関する謎と「ウチの常識はヨソの非常識」的なネタによる笑いのパートと後半の特殊(特異?)な状況を通じて「家族って何?」と問いかけるパートの切り返しが実に鮮やか。
また当日パンフにあり、劇中でもしばしば登場する「家族の憲法」が笑いのネタでありベタな家族もの的な予測までさせて、事実それに近いのだが、後半で「ある事実」が明かされると、その憲法もあながちムチャなものではないというか、それなりの正当な(?)理由があるのも上手い。
さらに、会話のテンポもイイし、ちりばめられたマンガ・アニメ系トリビアも楽しく、どうやら作・演出の佐藤秀一とは波長が合う模様。
しかし終盤、四女の言動で泣かせた後に暗転が配してあって安心かつ油断していたら、3年後を描いたエピローグ、最後の一言で泣かせて幕なんて減点モノの反則!(笑)
阿片と拳銃
劇団M.O.P.
紀伊國屋ホール(東京都)
2008/08/06 (水) ~ 2008/08/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
円熟味のあるオトナのドラマ
第一幕(70分)は、1979年、浜松の老人ホームで幕を開け、ホームにいる1人の人物の過去である1939年の上海に遡り、さらにそこで登場した2人の人物のその後も語る1959年・京都の場を経て再び1979年に戻るという構成で、まずは概略説明と言おうか下地作りと言おうか、な感じ。
この1939年上海で、三上市朗、小市慢太郎、キムラ緑子、木下政治が揃っている場面を観ると「あと3回なのか…」とシミジミ。
10分の休憩を挟んでの第二幕(70分:カーテンコール含む)は、始まって間もなく「ある事実」が明かされることによって40年の歳月のギャップが一気に埋まり、その隠された部分を見せて行くのでダイナミック。
中でも終盤のキムラ緑子と小市慢太郎の会話シーンは40年の間にたまった互いの想いががっぷり四つに組み合う力相撲のよう(演技、物語としての内容とも)で白眉。涙を拭っているお客さんも少なからずいて、σ(^-^) もホロリ。
また、泣かせつつも笑いも含ませているのが上手い。
さらにその後、エピローグ的にすべての始まりであった「1931年 東京」のシーンを、セピア色の照明に弁士付きで見せるのもイイし、その弁士の締めくくりの言葉が何とも粋。
結成24周年、第43回公演というだけに円熟味があり、しっとりとしたオトナのドラマを堪能。
アノセイシュンノウタ
クレイジーパワーロマンチスト
シアターサンモール(東京都)
2008/08/06 (水) ~ 2008/08/10 (日)公演終了
満足度★
ただ舞台上で起こる出来事を眺めるだけの140分
12年前の撮影中の事故と現在をカットバックでつなぎ…的なチラシの惹句で好きなタイプの作品だろうと期待したのが裏目に出たか、「言わんとするところはわからないでもないが」とさえも書けない状態。あちこちピンと来ないところだらけで、ただ舞台上で起こる出来事を眺めるだけの140分(!)というのはキツかった。
Father Christmas, Don’t Cry ~2008 下北Ver.~
しゅうくりー夢
駅前劇場(東京都)
2008/07/31 (木) ~ 2008/08/04 (月)公演終了
満足度★★★★★
盆と正月が一緒に来たような
12月のある日、クリスマスが嫌いだという主人公の前に「あなたは神に選ばれたのでどんな願いでも1つかなえる」という天使が現れ…というファンタジー系。
タイトルとチラシの情報から弱点であり大好きでもある親子ものなのは予想通りだったが、さらにやはり大好きなタイムスリップ系でもあり、文字通り「盆と正月が一緒に来たような」状態にドップリとハマる。
しかも使用曲のほとんどが流れ始めた途端にわかるし、それどころか台詞にちりばめられた当時の流行語も全部わかって、懐かしいことといったら…。
また、曲に関しては単に時代背景を表すために使うだけではなく、歌詞の内容がその使用シーンにリンクまでしているというワザに感服。
なんせんす
あんぽんたん組合
赤坂RED/THEATER(東京都)
2008/07/23 (水) ~ 2008/08/03 (日)公演終了
満足度★★★
両刃の剣アリ
終盤の学生運動出身の活動家に対する「暴力によって何かを変えることができたのか?」という問いかけは単に活動家だけを対象とするのではなく、一般論として観客にも問いかけていて上手いが、随所に樫田正剛らしい笑いも少なからずあり、高まった緊張感をフッと抜く良さがある一方、焦点がボケて全体が中途半端に感じられてしまう欠点も同時にあり「両刃の剣」かも。
また、舞台が70年なのに75年に開発されたベレッタM80シリーズを使うという考証ミス(凡ミス?)はいただけない。
旧歌
熱帯倶楽部
新宿シアターモリエール(東京都)
2008/07/30 (水) ~ 2008/08/03 (日)公演終了
満足度★★★★
祭りの前後の昂揚と寂寥感を取り入れて
「関東のとある漁師町」(当日パンフまま)での夏祭りの夕方から夜にかけて船大工工場の土間で繰り広げられる人間模様。祭りを前にして昂揚した雰囲気から祭りの後の寂寥感までが物語の進行にうまく取り入れられていて、また、いかにも「関東近郊の田舎の家族・親戚とその周辺の人たち」という感じの会話がリアルで引き込まれる。
僕らの声の届かない場所
空想組曲
王子小劇場(東京都)
2008/07/31 (木) ~ 2008/08/04 (月)公演終了
満足度★★★★
終盤が美しい
あるアトリエを舞台に、画にこめられているストーリーも時折挟まれながら進行し、それまでに紡がれてきた現実と画の中の物語がそれぞれ「しあわせな」結末を迎える終盤が美しく、ブラックライトを使った演出も効果的で、キャンバスを模した舞台(前回に引き続き傾いている(笑))の周りにずれた額縁もあり、画の中の人物たちが舞台後方の額縁とキャンバスの隙間から画布をめくって登場することにも感心。
2度目(4日、F列6番)には細部にも注目する余裕があり、名村と夜虫の「シンクロ」や名村と茜の「魂の共鳴」がより深く印象付き、心に沁み入るよう。(笑)
また、オーナー・朽葉の飄々とした口調が独特で、1回目は若干の胡散臭さ(爆)を感じたものの、2度目はむしろ「この人って本当に宇宙人で、ハンニバルが象に乗って来るのも見たというのも嘘ではないのかもなぁ」などと説得力を感じる。(ホントか?(笑))
舞台「フラガール」
TBS
赤坂ACTシアター(東京都)
2008/07/18 (金) ~ 2008/08/06 (水)公演終了
満足度★★★
映画よりも単調になったうらみアリ
ダブルフィーチャーの片瀬那奈(まどか)と福田沙紀(紀美子)に焦点を絞った分、人間ドラマの部分がシンプル…どころか単調になったうらみアリ。一方、全体の構成を変えて映画のようにダンス場面ではなく「あの場面」をラストに持ってきたのは大いに納得。
屋上パラダイス
アンクルジャム
中野スタジオあくとれ(東京都)
2008/07/25 (金) ~ 2008/07/28 (月)公演終了
満足度★★★★
心地好い
6階建てマンションの屋上に無許可で住んでいる父娘と、そこで自殺しようとした男や6階住人などが織り成すドラマ。若干突飛な設定ではあれ、人と人のつながりができる現場を観るような感覚をユーモアでくるんで心地好い。金を盗んでおきながらもその金を入れた財布を置き忘れる泥棒が、芝居の雰囲気を象徴しているかも?
また、田中伸一演ずる6階住人のラッパーぶりが愉快。最初に登場した時はその容貌もあってコワ気味なのだけれども。(笑)
しかし終盤、「もしかしてバッドエンド?」と思わせておいてエピローグでそうでないことを明かすのはちょっとズルい。
SMOKEY~スモーキー~
無頼組合
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2008/07/25 (金) ~ 2008/07/28 (月)公演終了
満足度★★★★
満足度高し
完結させたハズのシリーズの4作目を連載中でアイデアにつまった小説家が、血のつながっていない弟が絡んだ事件に巻き込まれ…という物語。
パルプフィクション(←タランティーノの映画ではなく一般名詞:念のため)的犯罪活劇とコミカルな作家パートの融合がうまくいっており、そこに兄弟の絆なんてσ(^-^) の弱点を突くスパイスもきかせているので満足度高し。
さらにバイクシーンの見せ方とか、スリッパのホルスター(笑)なんて小ワザも愉快だし、冒頭で作家が書いている小説の世界と近いことが現実で起こるという構造も上手く、それにその冒頭で見せる小説の内容のベタさ加減(いかにも説明調な台詞なんて明らかに狙ってやっているよね)にはニヤリ。
ただ、マスターの役どころがオイシ過ぎかも? ま、そこは作・演出も兼ねる特権なんでしょうが。(笑)
なお、オープニングに使われた Char の「SMOKY」が、もう30年くらい前の曲であることに気づき愕然。
E.S.P.
回転OZORA
駅前劇場(東京都)
2008/07/25 (金) ~ 2008/07/28 (月)公演終了
満足度★★★
超能力捜査班!
「超能力捜査班」を結成すべく集められたメンバーは前科を持ち、しかも些細な能力の持ち主ばかりで…という物語。終盤の展開のための設定で前半も通そうとすることに若干の無理が生じて説得力に欠けてしまったのは惜しいが、終盤、その能力が発揮されるパートが良いので満足。
ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」
ホリプロ
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2007/07/20 (金) ~ 2007/07/31 (火)公演終了
満足度★★★★★
さすがブロードウェイミュージカル
さすがにブロードウェイミュージカルだけに見せるツボを心得ており、フライング場面を筆頭に、タイガー・リリーとその仲間たちのアクション、犬やワニ、それにティンカーベルの表現など見どころ満載な上に、子供でも飽きないように計算された構成も見事。親子連れにほぼ独占状態なんてもったいない!
タオの月
カプセル兵団
笹塚ファクトリー(東京都)
2008/07/23 (水) ~ 2008/07/27 (日)公演終了
満足度★★★★
映画での場面が想像できる
1年前の『ゼイラム THE LIVE』と同じく雨宮慶太監督作品(未見)の舞台化ながら、今回は『ゼ』の反動かギャグも多く、その意味ではいつものノリに近いか?映画は未見なのにその見事な独自の表現により映画での場面が想像できてしまうのはさすが。
また、途中で出てくる「もたらされた平和によって気が抜けたようになってしまう」なんて台詞は原作にあるものなのだろうが含蓄アリ。
さらに、終盤でヒロインを救うのが祖父の形見の蜜刀だというのも上手い。
あと、時代劇だけに刀鍛治が愉快でオイシイ役なのは劇団☆新感線などと共通だね。
五右衛門ロック
劇団☆新感線
新宿コマ劇場(東京都)
2008/07/06 (日) ~ 2008/07/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
いよッ待ってましたァっっ!!!
終盤のカルマとクガイの親子関係(「あなたが私を殺せなかったように、私もあなたを殺させるわけにはいかない」的な台詞とか)にホロリとし、最後の立ち回りの前に中心となる4人が白浪五人男よろしく名乗りをあげて見得を切る時はゾクゾク、島の水没という大スペクタクルを比較的簡単な装置でそれらしく見せるアイデアに感心。ムーヴィングライトを細かく揺らすことによる効果も見事。
なお、7月6日もプレビュー公演も30列67番で観劇。
あなたの探し物、無料(ただ)で探します(仮)
u-you.company
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2008/07/24 (木) ~ 2008/07/30 (水)公演終了
満足度★★★
女子の会話を盗み聞きしているようでドキドキ
前半は後半への下地作りのためのエピソードの羅列的な感なきにしも非ずながら、それらを踏まえた終盤は圧巻。登場人物の大半がバーに集まって交わす会話は女子更衣室あるいは「修学旅行の夜」(劇中の台詞より)の会話を盗み聞きしているようでドキドキ。(笑)
まさに惹句にある「男子諸君!女のホンネをのぞき見しませんか!!」の通り。
しかもその場面が「颱風の夜」という設定なので、映画『台風クラブ』(95年、相米慎二監督)のように、颱風のために昂揚しているという雰囲気まで伝わってくるシカケ。
また、12人もいるだけいろんなキャラがたっていて面白い。
中では美少女クラブ31のメンバー演ずるところの女子高生の醒めた言い草が特に印象的。
大統領誕生
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2008/07/23 (水) ~ 2008/07/27 (日)公演終了
満足度★★★★
構造が非常に巧み
基本的にはコメディながら、前半は政治情勢や日米関係などに対する毒や皮肉がたっぷり盛り込まれ、中盤にはミュージカル風シーンもあり、さらに途中でちょっとした謎をかけておいて、その謎をハッキリと解明せずに残して観客に判断を委ねたまま終わるという構造が非常に巧み。
また、ナマで観るのは初めての川﨑麻世がカッコいい。
自らをパロディにしたような役どころを楽しそうに演じている上に歌もダンスも披露するし、キめるところはキめるし、やっぱり「スタア」。オーラを放っていると言っても過言ではあるまい。
以前からよくその舞台を観ていた中島大和、佐藤秀樹ご両人もホームゲームと同じくらい溶け込んでいたと言おうか、それぞれ持ち味を発揮してさすが。
パタリロ西遊記!
Office《RELAX》
六行会ホール(東京都)
2008/07/22 (火) ~ 2008/07/23 (水)公演終了
満足度★★★
パタリロas孫悟空
西遊記の牛魔王関連のくだりを、原作通り羅刹女や玉面公主を登場させる一方、子供を紅孩児だけでなく青孩児、黄孩児との三兄弟にするなど膨らませて、そこに「パタリロ!」のナンセンスさを加味するという意欲作。(笑)
孫悟空(パタリロ)役が小柄で、しかもその行動の「しょーもなさ」がまんまなので「リアル・パタリロ」に見えてしまったりも。
…とか言いつつも、実は「パタリロ!」に関しては一般常識レベルしか知らないので、読み込んでいればもっと楽しめたかもなぁ、という悔いも少々アリ。
が、何故か西遊記に関する知識と仏像関連の知識はあるので、先述の三兄弟とかお釈迦様がちゃんと普賢菩薩、文殊菩薩(フッくん、モッくんだって…(笑))を引き連れているあたりにもウケる。
また、お釈迦様が衣装のみならず、2菩薩がちゃんと光背付きの台座を用意していることに感心。
衣装・メイクはそのお釈迦様のみならず、各キャラとも気合いが入っていて、それゆえオープニングで登場した牛魔王を怖がって小さな子が泣き出すなんて微笑ましいというか懐かしいというかそんな光景まであり。
イルミナ
演劇ユニットSel-fish
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2008/07/16 (水) ~ 2008/07/21 (月)公演終了
満足度★★★
剛速球一本槍
X-QUESTを思わせるSF未来アクションだが、剛速球一本槍の投球の如く終始緊張系なのでちょっと疲れる。程よくコミカルなパートをはさみ、2つの種族の衣装もハッキリと対比させればより面白く、よりわかりやすくなったのではあるまいか?