黄昏の笑顔
HotchPotchTheater
小劇場 楽園(東京都)
2008/12/26 (金) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
構成が上手い
「できるだけ人間に近い人造人間」を開発している研究所を舞台にしたSF系の物語。
いきなり「ちゅど~ん!バリバリバリ」な爆発音と「第4ブロックを閉鎖します」な緊急アナウンスから始まる前半はコメディタッチながら、人造人間が自我に目覚めて行くあたりから次第に「人間らしいとは何か」という哲学的な問いかけに変容して、最後は詩的な台詞でしめくくるという構成が上手い。
2人組のスパイが人造人間を奪取して島から脱出するシーンなどむしろ「救出した」ように思えてしまうくらいで…。
また、2体の人造人間が、片や『T2 特別編』でスマイルの練習をするT-800、片や誕生して間もない頃のアラレちゃんの如くそれぞれ「いかにも」人造人間っぽいのが見事。
中野ブロンディーズ
ネルケプランニング
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2008/12/20 (土) ~ 2008/12/25 (木)公演終了
満足度★★★★
AKINA本人に非はないが…
3月上演版とほぼ同様ながら主人公を演ずるAKINAが全出演者中一番小柄というのが今回の大きなネック。演技力・歌唱力・実績とも初演の杉本有美より明らかに優位なのに、序盤のミュージカル風場面では周囲のダンサーに文字通り埋もれてしまうなど、少なくとも初演を観ている身にとってはなにか物足りない、な感じ。
そこがちょっとひっかかったとはいえ、あるキッカケから知り合ってチアリーディング大会に参加することになった「寄せ集め」メンバーが、ピンチを乗り越えて友情さえ育むストーリーに、ラストで見せるチアリーディングも加えて結果的には満足。
日本語がなくなる日
北京蝶々
OFF OFFシアター(東京都)
2008/12/23 (火) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★
まさに笑える「復活の日」
周囲の状況は緊迫しているのに起こる事象はコミカルという、相反するものが同居しつつ不思議なハーモニーを奏でている感じ?
そんな中に「現状の出生率が続けば西暦3000年には日本人は29名になってしまう」とか「ヘブライ語はたった1家族から復活した」なんてトリビアも組み込みつつ迎える「日本語がなくなる(かもしれない)日」、映画『感染列島』の予告を何度も観ており、観劇当日の朝ワイドで出生率低下に関する話題を扱っていたりもしたのでちょっぴりナマナマしく感じつつの楽しく観る。
ただ、事前に「復活の日」がベースという情報が行き渡ってしまっていたのがちょっと残念。「南極?ウイルス?それってもしかして…?」なサプライズがあった方が良かったのではあるまいか?(…って、イマドキそんなに知名度が高くないのか?>「復活の日」)
あれから
キューブ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2008/12/13 (土) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
“晩年の”ケラ作品そのもの
紛れもなく“晩年の”ケラ作品そのもの。以前得意だったナンセンス風味やかみ合わない会話などはなりをひそめたものの、笑いも交えつつ「雨降って地固まる」な、妻同士が高校時代の友人である2組の夫婦とその周辺の人々をしっとりと描いて鮮やか。
また、2組の夫婦に余貴美子・渡辺いっけい、高橋ひとみ・高橋克実を据え、小劇場系のベテランや萩原聖人などに加えて主に映画・ドラマで活躍している柄本佑、金井勇太を起用したキャスティングも的確で◎。
かくて、ケラ作品としては普通な(笑)15分の休憩込み3時間の長丁場もその長さを感じず。
火男の火
TUFF STUFF
シアターアプル(東京都)
2008/12/20 (土) ~ 2008/12/22 (月)公演終了
満足度★★★
ちょっと重め
盗賊団の一員である主人公を描いた物語、骨太でオトコ臭く『七人の侍』の野伏せり達を中心に据えたスピンアウトものを作ったらこんな感じか? が、やはりアウトローが主人公なだけにハッピーエンドというワケには行かず、観終わって残るものはちょっと重め。
そのどちらかは笑わない
電動夏子安置システム
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2008/12/18 (木) ~ 2008/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
単品で十分に通ずる面白さ
今回の三部作の1、2作目である『笑うフレゴリ』、『笑う通訳』を同時上演している劇場の楽屋という設定で繰り広げられる物語、『フレゴリ』は観たが『通訳』はコマがなくて観ていないのがネックになるかと思いきや、そんなことは全くなく、単品で十分に通ずる面白さ。
開演時刻になっても来ない役者がいたり、楽屋内での盗難事件があったり、他の役者に対する嫌がらせがあったり、劇団内恋愛事情があったりしつつ、とうとう殺人まで起きてしまったところで時間が巻き戻り、その後は同じ時間を何度も繰り返すというシカケ。
普通こういうプロットだと、繰り返す同じ時間の中で最初と同じ結果にならないようあれこれ試みて苦労するのは主人公1人だけ(発砲の『ジャスキス・デス』とか)かあるいはもう1人いる(クロカミの『ノモレスワ』とか)くらいだというのに、本作は数人が事態を把握しているのがユニークなところ。
君の心臓の鼓動が聞こえる場所
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2008/11/29 (土) ~ 2008/12/25 (木)公演終了
満足度★★
期待が大きかった分、肩透かし気味
事前に「終盤は大泣きだった」的な情報を目にしていたものの、キャラメルとしてはごくフツーの出来で、泣くとか涙を流すなどとはほど遠く、ホロリの手前が1回あった程度。その意味では期待が大きかった分、肩透かしに終わった感じ?
序盤でいぶきが母に電話するのが素振りだというのは見え見えで、それゆえ実は母が亡くなったのを隠しているのかと思いきや、おじいちゃんの姿が見えるということでもう1つの展開が浮かび、結局そうではなかったものの当たらずとも遠からずと、容易に読めたのもネックか?
AchiTION!WS
シネマ系スパイスコメディAchiTION!
しもきた空間リバティ(東京都)
2008/12/19 (金) ~ 2008/12/21 (日)公演終了
満足度★★★
スタイルが斬新
07年2月上演作品に続くオムニバスで、どっかんどっかん笑わせるタイプではないが、「クスクス」「ニヤニヤ」「プッ」などと笑わせられてしまうユルめのコメディ。プロローグとエピローグに挟まれた短編たち全体で1つの大きな流れを作るというスタイルが斬新。
中では「世にも奇妙な物語」を想起させる不条理系シニカルコメディの「青池光芳大会」が特に気に入る。
しかし土曜のマチネとソワレが同一パターン(よって金曜と日曜がもう一方のパターン)というのはいかがなものか?
Speak of the Devil DJANGOⅢ
劇団S.W.A.T!
「劇」小劇場(東京都)
2008/12/17 (水) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
完結編にふさわしく満足
基本的にはコメディタッチ(どころか時として大笑い系?)ながら終盤では悪魔であるジャンゴが契約者を救うことになるという基本路線を踏襲しつつ新キャラも登場させ、さらに天使と悪魔の関係やジャンゴ配下の小悪魔たちの過去も語るのはいかにも完結編。
より強力な敵の出現によりライバル…いやむしろカタキ役と力を合わせるという展開はシリーズ3作目(あるいは完結編)としてオーソドックスではあれ、王道でもあるワケでこれも完結編にふさわしくて満足。
また、そこに至る前、いわばシリーズのゲスト主役的ポジションである次女が「ワタシはどうなってもいいから姉と妹を助けて!」と願った時にジャンゴが嬉しそうに「契約変更、受け入れた」(ともに大意にて言い回しは違うかも)と言うところはお約束とはいえ、イイんだなぁ。(ホロリ…)
チョコと可笑しな宇宙人
YANKEE STADIUM 20XX
アイピット目白(東京都)
2008/12/16 (火) ~ 2008/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★★
至福の時間
一人寂しく暮らし、笑顔を失うどころか家からも出ずにいた少女チョコが宇宙人とのふれあいによって笑顔を取り戻し、外出もできるようになる…というベタな(失礼!言い方を変えればコドモからオトナまで楽しめる)ストーリーながら、ある「縛り」を課しての上演で、そのアイデアが素晴らしい。
ホムペの公演概要に「宇宙人は日本語の台詞は一切無し」とあり、多くても2~3人かと思いきやこれが7人もいて前半で日本語を使うのはチョコとストーリーテラーとなる縫いぐるみだけ、後半で何人か日本語を使う人物は増えるがその出演場面は短いという…。
が、前半はチョコと宇宙人が次第に打ち解けてゆく様子をダンスやパフォーマンスを中心に見せ、後半ではチョコの外出とか1人である理由を描き、さらに「訪問者」も登場してドラマ性を高めるという二段構えの構成の巧みさもあって体感時間は2時間程度なのがまたスゴいところ。
笑いすぎての涙と感動の涙という2種類の涙も流させてもらい、至福の時間を過ごす。
空間ゼリーの『夏の夜の夢』
劇団たいしゅう小説家
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2008/12/13 (土) ~ 2008/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
紛れもなき夏夢の世界
舞台を日本の廓にした和風翻案バージョン。出だしは若干面食らったものの、次第に紛れもなき夏夢の世界に移行。約100分というコンパクトサイズにうまくまとめてこれもまた楽しい。
原典と異なり一組は悲恋に終わるのか?な終盤も遊郭を舞台にしているだけに十分あり得るってことで騙される(笑)んだな。お見事!
ただ、イージアスに当たる人物(パンフを買わなかったので役名不明)が廓を焼かれてしまうのはちょっと気の毒か?もっと悪者(強欲とか無理強いするとか)であったならともかく、そうは見えなかったのでなおさら。
プリンで乾杯
劇団競泳水着
王子小劇場(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/16 (火)公演終了
満足度★★★★
コメディリリーフ的なシーンの配分が絶妙
ルームシェアをしている男女4人を中心とした恋愛模様、他人の恋愛事情を盗み見しているような、あるいは自分が相談を受けているような感覚で引き込まれるルーム内の主な流れと、コメディリリーフ的なバーのシーンとの配分が絶妙。
このバーのシーンで、年齢を重ねたマスターが口にすれば説得力のありそうな含蓄ある言葉を「あの」マスターがしたり顔で語るところが何とも可笑しい。
また、家族愛が弱点である身にとって終盤で兄が妹への愛情をサラリと口にし、元カレ(でいいのか?)に感謝するシーンがツボ。
あと、中央から上手方向にかけてのルーム、下手のバー、手前側の屋外と3つの場を同居させている装置を使っての映画並みに細かい場割りが心地よく、上演時間が短く感じられる。
それにしても各シーンが「寸止め」というか、普通ならもう少し語るところを敢えて切って想像の余地の残すのは巧いなぁ。ま、考えようによっては「生殺し」のようでもあるんだが…(笑)
龍宮物語~東京.ver
劇団BOOGIE★WOOGIE
d-倉庫(東京都)
2008/12/12 (金) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
初演とはまた別の味わい
07年4月の初演を観ていたので、入場するなりしわくちゃにした古紙に埋まった舞台が目に入って感歎。作品テーマを端的に示すと同時に、その古紙がいろんなものに見えるので複数の場所を表現できるワケ。
また、初演といえば結末がその時のダイナミックでいささかハードなものから静かに訴えかけるようなスタイルに変更されており、ちょうど X-QUEST の『エロドラマ』再演時(03年)のハードバージョン、ソフトバージョンのような感覚。
初演での照明による龍の表現や嵐の中の飛行シーンが見られなかったのは残念ではあれ、若干の切なさも伴う穏やかな幕切れはまた別の味わいがあり、これはこれでテーマを強く打ち出しているような気がする。
幽幻夢想
カプセル兵団
笹塚ファクトリー(東京都)
2008/12/13 (土) ~ 2008/12/17 (水)公演終了
満足度★★★★
ナイスアイデアの続編
前日に観た『臥龍頂上伝』の数年後の物語。当日パンフで主宰が語っているように劇団初の続編もので、しかし前作を観ていなくても楽しめるよう独立した作品となっているのがミソ。前作の主人公がワキと言うかトリプル主役の一角にとどまっているのもナイスアイデア。
お得意の手法とヒーローものやアニメ、ゲームのネタをたっぷり盛り込んでの歴史劇、好きなテーマの1つでもある「憎しみの連鎖を断ち切る(キリのない報復をやめる)」系なので大いに楽しむ。
臥龍頂上伝
カプセル兵団
笹塚ファクトリー(東京都)
2008/12/12 (金) ~ 2008/12/16 (火)公演終了
満足度★★★★
「正義とは何か」を問う
ワイヤーアクション風や『マトリックス』で使われた視覚効果をアイデアと体力を駆使して生のステージで見せるのはいつもながら見事で、もう1つの見ものでもあるネタ関連(笑)は新ネタも含めて序盤に満載。後半がシリアスなだけにこれは賢明?
また、冒頭から「正義とは何か」を問うており「武力による正義は正義ではない」なんて台詞が序盤で出てくるのもイイ…とか言って、最終的な決着は武力によるものなんだが。(笑)
初演の時は「“倒すべき相手”が次々と変わってしまい、全体としては軸がズレ続ける」と感じた展開も、考えようによっては R:MIX の「魔のシリーズ」と同様、勧善懲悪ではなくそれぞれの立場に一理あるという歴史ものらしさがあると言えよう。
蒼の残光
ACファクトリー
シアターサンモール(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★
スペースオペラ系
松本零士の描く女主人公を想起させる首領率いる4人組の女性宇宙海賊団を狂言回しにし、振ると「ヴーン」と音がする「光る剣」や「樽にドームをかぶせたようなロボット」も登場するスペースオペラ系。
アクションが1つのウリでもあるここ、今回は劇団名に冠したアルファベットのうち、C(コメディ)の要素も多分に取り入れ、映画のアレを舞台で表現するのが無理なことを逆手にとったロボットのチープ感や「高望み歌劇団」シーンなどで大いに笑わせる。(もちろん終盤ではアクション炸裂)
ただ、本筋とコメディ部分の落差が大きく木に竹を接いだような違和感があるのは残念。
軋み
ブラジル
新宿シアタートップス(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
座長まつり?(笑)
緊迫しているのにコミカルという二律背反的な要素が同居している出だしから基本的にユーモラス時にブラックで主人公の良心の呵責が見え隠れする中盤を経て「正しい結末」に導くという構成が巧みな上に、他劇団の主宰3人を含んだキャスト(座長まつり?(笑))も個性豊かで見せる見せる。もう時間の経つのがアッと言う間。
各論的には新しいアシスタントや宅配便配達人が「プロ」に見えてしまうことの見せ方が愉快で、しかも普通は「見えてしまう」のは殺した相手なのに、こうするところがまた上手い。主人公はある程度取り乱しつつも「死んだ人間がいるハズがない」と判断する理性は残っているということか?
しかし考えてみると保身のためにあれこれお膳立てをしてヘーキな顔をしている編集担当が一番コワいかも。
八つ墓村
劇団ヘロヘロQカムパニー
前進座劇場(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
見事な舞台化
紛れも無き横溝正史の世界、あのおどろおどろしくも妖しいムードもしっかり含んだ見事な舞台化。舞台でどう表現するんだろう?と思っていた鍾乳洞を筆頭に様々な場所を表現することを可能ならしめた装置と、テンポ良くまとめ、かつ落武者たちも効果的に使った脚本・演出の功績。
また、殺人の後に辰弥が落武者の幻を目にするとか、ラスト前の金田一の去り方やラストシーンの美しさもお見事。
ただ、金田一のにこやかなキャラクターはイイとしても、殺人が起きた直後の現場でも笑みを絶やさないというのはいかがなものか。クライマックスで真犯人と対峙した時のようにキリリとすべきではないのか?
飴をあげる
こゆび侍
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/12/09 (火) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★
「考えるのではなく感じる」べき?
チラシ記載の3編(短編2本+中編1本)に超短編「幕間」を加えたオムニバス、前半の2編と「幕間」は漱石の「夢十夜」にも通ずるフシギさがあり、ノベライズして「こんな夢を見た。」で始めれば「新・夢十夜」になるんじゃね?みたいな。
小学生の時に読んで以来「夢十夜」がアタマの片隅にずっとある身として、この雰囲気って好きだなぁ。
休憩はないものの主宰先導によるストレッチタイムを挟んでの後半「うつせみ」は、セミの世界のハナシとは言え専制君主の定めた規範に反発してのクーデターで幕を開けるために「何かの暗喩?」に始まり「いろいろ解釈ができそうだな」などと考えてしまう。
がしかし、この観方は間違いで、やはり「考えるのではなく感じる」ままに観れば良かったのかも…?
今日も、ふつう。
アロッタファジャイナ
新宿シアターモリエール(東京都)
2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
同時多発的悲劇
いくつかの断片的な場面で登場人物を紹介して、そのつながりを早めに明らかにしつつ1つの謎を提示する序盤でツカミはオッケー。
以降、序盤で示された謎が徐々に明らかにされて行き、行き着くところはロミジュリばりの悲劇。ちょっとした嫉妬や出来心(?)から起こった事件が10年の歳月を経て迎える哀しく切ない結末、的な。
また、中心となる澄川兄妹だけでなくその周辺の人物たち3組にも悲劇が訪れ、「同時多発的悲劇」の様相。
しかもこれらの悲劇が「ふつう(=日常)」と隣り合わせていて、ホンのちょっと歯車がズレただけで起こり得る「ふつうじゃない」状況なのが巧みなところ。
あと、それまで好人物でどちらかと言えば被害者側だと思っていた登場人物が実は…という終盤の展開にロベール・トマの『罠』も連想。