じべ。の観てきた!クチコミ一覧

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僕らの声の届かない場所

僕らの声の届かない場所

ろばの葉文庫

The Art Complex Center of Tokyo(東京都)

2010/01/12 (火) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

芸術へのそれぞれ想いがより際立って
08年夏の空想組曲によるオリジナル版と比べて人員的にも時間的にもコンパクト(後で聞いた話によると台本の頁数は増えたそうな)になり、しかも笑える部分が増えたことにより、芸術に対するそれぞれの想いがより際立った感じ?
凝った装置のオリジナルに対してこちらは割とシンプルということも含めてその印象に既視感的なものがあったのは、コロブチカの『証明』とダルカラの『プルーフ』の時と似ていたからなのね…。
でもって、その時にしても今回にしても、内容がより迫って来たように感じられたのは、演出の違いだけではなく1度観ていたからという要素も多分にあるワケなんだが…(笑)
また、オリジナル版の自分のレビューを読むまで省略された部分に気付かなかったのは、改訂の巧さに加えてσ(^-^) の記憶能力の衰えによるものも少なからずあると思われ…(自爆)
あと、劇中では「絵画に対する」想いや才能ではあるものの、内容的には芸術全般に拡大解釈できるワケで、演ずる側も身につまされたりするのかしら?などとも思ったり…(大きなお世話?(笑))
いずれにしても、古典的な作品ではなく、こういった最近の作品を新たに仕立て上げるという企画も面白いので今後のトレンド(の1つ)になったらイイなぁ。

黒いインクの輝き

黒いインクの輝き

ブルドッキングヘッドロック

サンモールスタジオ(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/18 (月)公演終了

満足度★★★★

抜群の安定感
北関東にある売れっ子女流マンガ家の自宅兼仕事場で、打ち合わせを始めようにも肝心のセンセイの行方がわからず、アシスタントたちや編集者(+α)が彼女を待っている一夜(+回想シーン)に垣間見える人間関係…な物語。
全体の印象はジックリ基礎固めをしたシッカリした土台の上にガッシリ建てられた堅牢な建物の如く抜群の安定感あり。
邸内の3つの部屋をうまく組み合わせた装置の中で描かれる時折ドス黒いものが噴出する「女の園」、各人物もそれぞれ個性が際立って存在感があり観応え十分、的な。
また、回想シーンとのクロスのさせ方も巧みで、5年前や10年前の場面ではちょっとした違いだけなのにちゃんとその期間分若返っているのも見事。
さらに、センセイの状況を明示せず、しかし推測させるに十分なヒントを与えて各人の想像に委ねて終わるのも余韻が残って面白い。(賛否あるかもしれんが…)
こりゃあ次回以降にも期待だな。

女魂女力其の壱しじみちゃん

女魂女力其の壱しじみちゃん

カミナリフラッシュバックス

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/10 (日)公演終了

満足度★★★★

メビウスの環かクラインの壷か…
内容説明を読み始めて主演のしじみの紹介かと思いきや終りまで読んだら芝居内容だったことから予期した通り「実録系」で、当日パンフによればそれもかなり事実に近いとのこと。
確かに冒頭の家族揃っての夕食シーンでの昭和どころか明治大正のような(笑)頑固オヤジからもうリアリティあり。なんだかその場の気まずい空気まで伝わってくるようで。
その意味では中盤以降、家族の一員がAV女優になったことを知った家族のオドロキや戸惑いなども「あぁ、そうなんだろうなぁ」であり説得力十分。
なんたって本人の経験談を基にしているばかりではなく、本人役を当人が演じているんだからそれもそのハズ?
セミ・ドキュメンタリー(というよりは「セミ・フィクション」の方が的確か?)として事実の重みがたっぷりのっている、みたいな。
さらに終盤でのしじみによるAV引退の弁はまんま事実であろうし、彼女の進もうとする方向を否定するAV監督の言葉が現実では覆されているという、舞台上の過去と演じられている現在の関係が面白く…どころかそのつながり具合がメビウスの環の表と裏かクラインの壷の外側と内側の如くシームレスにつながっているように感じてゾクゾク。
それに加えて舞台から降りて夜の街(マチネでは当然昼の街なんだが)に去るしじみとそれを追うカメラに「持田茜なんていないんだよ」と台詞がカブるラストの切れ味鋭いことと言ったら! これでトドメを刺された…というよりはダメ押しな感じ。
事前に目に入った情報には「感動」「泣けた」などの文字があったので家族モノに弱い身として泣けるかと思っていたらそうではなかったけれど、言葉では語れないようなフシギな感覚を味わったってところ。

【無事終演!】LOOKING FOR A RAINBOW【公演写真多数UP!】

【無事終演!】LOOKING FOR A RAINBOW【公演写真多数UP!】

劇団宇宙キャンパス

吉祥寺シアター(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/10 (日)公演終了

満足度★★★★

結成十周年の総括と決意表明
「定番どころかテッパンな学園青春もの」で、「弱小グループが次第に仲間を増やしながらコトに当たろうとするストーリー」を通して、「芝居に対する想いを語る」、とσ(^-^) の好み、あるいは弱点(笑)を3つも盛り込んだツクリとあっちゃあタマラン。
しかもそこで語られる芝居への想いは結成十周年の総括と今後への決意表明でもあるというのが巧い。
また、中盤でヤンキーっぽい女子が、それまで小バカにしていた芝居の面白さに気付き、演技できるコを素直に「スゴい」と認めるところなんか王道なのだけれど、芝居を絡めているのがイイ。
さらに、公演中止の決定が下された後の3年生2人のオトナの対応が、その心中も伝わって来てホロリとさせるんだよなぁ。

夢見る乙女じゃいられない

夢見る乙女じゃいられない

たすいち

王子小劇場(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

アイデアが良く構成が鮮やか
過去3度連載を打ち切られた女流マンガ家が、出版社の事情から「ストーリーキング」に輝いた女性を原作者に迎えて4度目の連載に背水の陣で取り組むことになり、滑り出しは好調だったが…という物語。

まずはマンガ界内も芝居で演じ、しかも同人誌版(←コレがメチャ可笑しい)までアリというアイデアで見せ、中盤はそのマンガ界に現実界の人物が取り込まれてみんなで助けに行くという展開で引き込み、しかしすべては引っ込み思案のマンガ家の夢想という大どんでん返しを経てハッピーエンドに導く構造が鮮やかで、
・ヤンスタの『マンガ大戦』かっっ!!!
・昨年春に流行った「夢あるいは精神世界の中系」かっっ!!!
・『ラ・マンチャの男』かっっ!!!
などとツッコミながら観るのもまた楽しからずや。(笑)

で、各論的には以下の部分に感心。
・オープニングタイトルの前にマンガ家が連載している作品内容を思いっきりベタな芝居で演じて「マンガ界内も演じて見せる」ことを示す(そういえば装置の一部はマンガのコマにも見える)
・原作者とマンガ家が主人公のキャラについて相談している時に、その主人公が後方に現れて各キャラを演じる
・終盤の殺陣で肝心の部分を番傘で隠し、傘を下ろすと…な見せ方をする
・本編のクライマックスで主人公が目覚める(あるいは自覚する)シーンにマンガ界内のクライマックスも重ねて見せる
・タイトルにも付いている「夢」というコトバの二種類の意味を併せて使う

ということで、前回公演から1ヶ月余という短期間での公演も個人的には気に入る。

光る河

光る河

てがみ座

「劇」小劇場(東京都)

2010/01/06 (水) ~ 2010/01/11 (月)公演終了

満足度★★★

新ジャンルへの挑戦には好感
台風による土砂降りの雨の中、放送局の経理課勤務の夫が帰宅すると暗い家の中で呆然としていた妻が「人を轢き殺した」と言い、一方、河川敷ではホームレスの老人と発達障害の少女がブルーシートハウスに戻らず…という状況から始まる物語。
前回が4Bの鉛筆を使ってフリーハンドで「描いた」のに対して今回はロットリングと定規で「製図した」ような印象。
それはそれで構わないのだが、第1場のショッキングな妻の告白に続く第2場で登場するTVクルーがコミカルすぎてその落差の大さから「ここ、笑うトコ?」と戸惑ってしまうし、さらにそのクルーの取材に一介の経理マンが同行するのは強引で無理があるのが残念…ということで出鼻をくじかれた感じ?
また、群像劇でありながら「少女を殺した犯人は誰か?」という部分に気を取られてしまい(←σ(^-^) だけかもしれんが)、犯人逮捕の後で主題が提示される頃には観疲れてしまっている(全体で125分あるし)というのも惜しい。
どうせならTVクルーをところどころでコメディリリーフ的に使うとかして息抜きをしておけばイイのに…。
前回は4日程度で書けたのが今回は2ヶ月もかかったというハナシを終演後に伺って「さもありなん」な感もアリ。が、新ジャンルへの挑戦ということには好感。
一方、基本的には同じながら様々な場として見せることのできる装置は前回に引き続き見事。
開演前に見た時は「なるほど川べりのハナシなのね」と思ったが、冒頭から予想外の使い方をするし、手前にあるパーツがサンダーバードの秘密基地みたい(喩えが古いねどーも)だし……それにしても蝶番とローラーを使うのが好きねぇ。(笑)

 RED&WHIITE

RED&WHIITE

8DORI

タイニイアリス(東京都)

2009/12/29 (火) ~ 2010/01/01 (金)公演終了

満足度★★★★

満足満足ゥ
大晦日恒例の「国民行事的番組」の本番中に大物演歌歌手が姿をくらまし、中盤の特別コーナーはなんとか別の演出で切り抜けたものの、大トリとしての彼の出番が刻々と迫って…という基本的にはコメディ。
そんな中に、元ネタを知っていればより笑えるエピソードばかりでなく、アイドル集団出身のデュオや売れないインディーズバンドの事情から最近の某番組への皮肉・批判も盛り込み、最後にはちょっとした感動要素も加えて見事。
脚本と演出が ATTENTION PLEASE! の山縣有斗なので、なるほどそんな取り合わせは『マイハマ・バイス』(09年6月)系だな、などとも思ったり。
前説アナウンスが通りいっぺんのものでなく程よくユーモラスだったりもして、そのセンスで期待値がさらに上昇…というのも『マイハマ・バイス』の時と同様。
また、劇中で中心となる会議室の手前と上手側にホール内の廊下を設置し、下手手前(カタチの上では会議室の片隅)にある半畳ほどのスペースで劇中のホールの舞台ソデを見せるという装置プランも◎。
終盤で明かされる失踪の理由はσ(^-^) の弱点である(笑)親子ネタ絡みだし、そのちょっと前の「事情がよく見えていないんだけど、あなた、今、いい笑顔してる…それをみんなに届けてあげて」なんてメイクさんの台詞も良かったし、満足満足ゥ。

くらやみに降る雪

くらやみに降る雪

and Me

SPACE EDGE(東京都)

2009/12/25 (金) ~ 2009/12/31 (木)公演終了

満足度★★★★

リピートしちゃったし…
高校バレーボール部OG会の二次会、大半がカラオケに流れる中、一部のメンバーは高校の体育館に付設された用具室に集まるが、そこは彼女たちにとっては忘れることができない出来事があった場所で…という物語。
事前情報で「過去の出来事によって心に “くらやみ” を抱える」人物たちが「それを乗り越えて歩き出すスタートライン」の話で「and Me的ファンタジー」であり「未来に続く覚悟と希望のお話」だということを知っていたが、確かに今までの4作品とはテイストが異なる。
中心となるパートの16年前を見せるプロローグは、出だしこそ従来に近くて笑えるものの、重い怪我あるいはそれ以上のダメージを与える事故があったことを暗示して、それが以降のストーリーに影を落とす。それによって、かつてなくシリアスな雰囲気が漂って、緊張感がある感じ。(今まではダレていた、というコトではない…念のため)
だからこそ、それを乗り越えて歩き出す(←その表現がちょっと弱い気もするが)結末は優しく、タイトル通りに雪が降るラストシーンは美しい。
が、終盤での「言いたいことを言ったのでいなくならない」香織ともういなくなってしまっている文緒の対比が切ないのはよく伝わるのものの、そこに持って行くための香織と志穂のギクシャクが唐突に感じられないこともない…。
あと、前説アナウンスが本編の内容に合わせて放課後の学校放送(1回目と開演直前でパターンを変えている)な上にアナウンスがない時でもかすかに放課後の校庭のノイズを流している(開演を告げるのはそのS.E.からのチャイムだし)のがナイスアイデア。
なお、高校バレー部時代の出来事が心のしこりになっているのは1ヶ月ほど前に読んだ瀬尾まいこの「図書館の神様」と共通だし、「高校と雪」ということでは「ヘヴィーな『飯綱おろし』」のようでもあり…。
また、2度目には内容を知っているので終盤で見かけが円香のままでも文緒になっている部分に気付いたりもする。

メッテルニヒ飛行場

メッテルニヒ飛行場

トリのマーク(通称)

ザ・スズナリ(東京都)

2009/12/26 (土) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★

おサカナになったワ・タ・シ
「かつてアパートであったところ(=スズナリ?)」の未来の様子を見せるシリーズ(ってワケではないのか?)、今回は飛行場。ってか、かつてその事務所だった場所である報告書の提出を待っている男と彼をめぐる女性たち…みたいな。
どこかのどかで、しかし微妙にシュールな状況が、終盤で思い切りシュールに変化するのがここらしい…かな?
でもって、待って待って待ちわびて…な展開に漱石の「夢十夜」を連想し、また、女性たちが変身(?)して登場したのには「おサカナになったワ・タ・シ」(by 高沢順子・三東ルシア)を思い出す。
…って、それは単にコトバの上でのハナシで、見た目についてはむしろボッシュ(あるいはボッス、ボス)だったかの絵に描かれた魚の頭に脚が付いたヤツのリアルタイプか?などと今書きながら思ったり…。

スポーツ演劇「すこやか息子」

スポーツ演劇「すこやか息子」

柿喰う客

王子小劇場(東京都)

2009/12/25 (金) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

家族の絆をシッカリ描き込んで好感
エアロビクス風NHK子供向け教育番組(あるいはその逆)的に非常にわかり易く親族・姻族関係を説明する中に家族の絆をシッカリ描き込んで好感。
嫁に行った姉のことを「家族と縁を切ったのですか?」と問う息子に「あちらの家族と縁を結んだのです」と、亡くなった祖母についての「家族ではなくなったのですか?」という問いには「家族の活動に参加できなくなりましたが家族です」と回答するなど見事。
また、看取ることができたり、事後に知らされたりと様々な家族との死別も描かれており、ちょっぴりホロリとしたりも。
で、「休憩」の宣言が出た時(2回くらい?)以外はほぼ身体を動かしていて、その振り付けもキチンと揃っていながら、終盤の側屈だけは身体の柔らかさ・硬さの違いが如実に出てバラバラなのが可笑しい…(完成されたものは崩れるだけなので長持ちさせるために敢えて1本だけサカサマにした日光東照宮陽明門の「逆さ柱」も連想)

ヒットパレード・スペシャル

ヒットパレード・スペシャル

tea for two

劇場MOMO(東京都)

2009/12/22 (火) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

Aプログラム
台詞はすべて心の声で、相手には聞こえないどころか表情や動作がまったく違う受け取られ方になって笑わせる「タッチ」はともかく、2編目以降は「優位性の逆転」が隠しテーマ?などと思ったのは深読みか?
「重き荷を負いて」は終盤で思わぬ展開が2段構えで待っており、「天体観測」では結局兄の方が上手…と言うか妹が釈迦の掌の上の悟空のようにも思えてくる。
「桜坂」は隠しテーマ(なのか?)もさることながら、当日パンフの「言い訳」(笑)に大いに納得。あのザラつきはそういうことからなのか…みたいな?

ヒットパレード・スペシャル

ヒットパレード・スペシャル

tea for two

劇場MOMO(東京都)

2009/12/22 (火) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

Bプログラム
クライマックスでドサクサ紛れに判明する “相談したいこと” の内容でドッと笑わせる「待つわ」、出オチ的なものも含み全編笑いの「TAIN-TRAIN」に続く「大阪で生まれた女」も営業会議(?)の様子で笑わせるのでBプログラムはコメディ編か?と思っていたら、面白うてやがて哀しき…という展開で、しかし力強く立ち直るというのはイイ。
さらに構成が独特にして抜群な「サイレント・イヴ」で締めくくる構成は前菜やスープなどが出されてメインディッシュに至るコース料理の如し。

ヒットパレード・スペシャル

ヒットパレード・スペシャル

tea for two

劇場MOMO(東京都)

2009/12/22 (火) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

Cプログラム
出勤前のサラリーマンを描いた一人芝居「サムライ」、だらしない男とひたすら尽くす女性の「守ってあげたい」という(部分的に)身につまされたりもする(爆)「ダメ男見本市」的な前半、夫婦ではない男女芸人コンビの解散ステージ後、女性の切ない想いがしみる「横恋慕」、クリスマスイブの “小さな奇蹟” に心温まる「すてきなホリディ」という後半の対比が鮮やか。
また、「すてきな…」は回想場面への切り替えとその見せ方も巧い。(とか言って最初はちょっと戸惑ったのだが…(笑))

オサムシ

オサムシ

バジリコFバジオ

駅前劇場(東京都)

2009/12/25 (金) ~ 2009/12/29 (火)公演終了

満足度★★★

裏手塚治虫史
同じく手塚治虫を題材としたLast Brandの『明日のアトム』(08年1月)とはアプローチが全く異なり手塚だけでなく他のマンガ家も3人くらいフィーチャーされるし、内容としては「八割くらいはデタラメ」(←当日パンフより)な「裏手塚治虫史」だし、と対照的なのである意味で対になっており、両方観ると手塚治虫像がより立体的に浮かび上がる、みたいな?
手塚マンガのキャラを「欽ちゃんの仮装大賞か!(笑)」な扮装や人形で登場させたり、同時期(ったって幅が広いが)のマンガやマンガ家のネタが満載だったりもして、おそらく大半がワカった身としてかなりウケる。

椅子

椅子

ZORA

イワト劇場(東京都)

2009/12/25 (金) ~ 2009/12/26 (土)公演終了

満足度★★★★

舞台を軍艦島に設定
廃墟のような部屋(加藤ちかによる美術がステキ)で暮らしているらしき老夫婦の会話(←いかにもイヨネスコ(笑))が続き、やがてその部屋には次々と客が訪れ…な物語。
客が増える度に椅子(の代用となるもの)を出しては会話をするが、その「客」は観客には見えず、「もしかすると彼らにしか見えないナニカでは?」と思っていたところに「弁士」(←冒頭から会話には出ていた)が現れて、老夫婦がいる舞台両側の照明が青白いものとなり、普通の照明の中の弁士とその娘が花束を持っている(そういえば弁士は喪服なのだった←花束の後に気付いた)ことでやっと老夫婦の素状が判明するのが舞台表現ならではで面白い。
また、老夫婦と弁士親子が同時に登場しているシーンも、時間的に同時なのかあるいは過去と現在をオーバーラップさせているのか、どちらにもとれるというのも巧い。
さらに終演後に関係者から舞台を軍艦島に設定した翻案であると聞き大いに納得。

音もなく しぐれ降る 晩秋にて 候

音もなく しぐれ降る 晩秋にて 候

プロペラ☆サーカス

d-倉庫(東京都)

2009/12/23 (水) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★

「信長史」を2時間弱に圧縮したのはアッパレ
織田信長を中心とした戦国絵巻、2~3役を演じる役者が複数いたり、秀吉が太閤になってからのシーンが時折差し挟まれたりするので、その頃の歴史についてアバウトにしか知らず登場人物の親族・姻戚関係にも疎い身(爆)としてはついて行くのが大変ではあったが「信長史」を大河ドラマの総集編よろしく(笑)2時間弱に圧縮したのはアッパレ。
また、幼少時のホトトギスにまつわるエピソード(創作と思われるが見事)&前田利家が部下となるシーンという冒頭を再現して終わるのがイイ感じ。

108本のびんといくつものため息

108本のびんといくつものため息

空鼎鬧

劇場HOPE(東京都)

2009/12/23 (水) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★

Cプログラムのみ観劇
A・B・Cそれぞれ異なった3つの短篇を1つの共通のストーリーを合間に挟んで見せる(=全部で10話)という企画、最初にチラシを見た時に単なるトリプルキャストと思いこんでしまい、3バージョンあると知った時にはすでに他のコマがすべてふさがっており…というのが残念。
1編目の「シャンメリー」は不倫もので男の妻まで登場するのにドロドロとかそういった感じがあまりしないのが不思議。
続く2編目の「メッセージ・イン・ザ・ボトル」は「不幸のボトル通信(これと同じ文章を30本のボトルに入れて流さないと…)」や「高校のボトル通信同好会」などという発想が楽しい。
3編目、「香水びん」は切ないオンナゴコロとちりばめられた映画ネタが好みだし、「みか」につけられた「メカちゃん」というニックネームも愉快。
また、大谷なおりに津留崎夏子に似たたたずまいを感じたりもして。
がしかし、それらをつなぐ(←内容的に、ということではなくあくまで構成上)「アバンストーリー」はいくつかツッコミどころが…。
まず、ボウフラを養殖(?)するハナシは単なる振りにとどまり、帰結しないのが半端な印象。
また、演奏後はみんなで飛び降りるとか言っていたのはどうしたの?な感なきにしも非ず。
そもそも先立つだけではないので「アバン」じゃないじゃん!(笑)
…とはいえ、びんの演奏(時節柄曲目はやっぱり「Happy X'mas (War is Over)」だ)がステキだったので「終わり良ければすべて良し」かも…。

タマリ

タマリ

劇団K助

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2009/12/22 (火) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

変形バックステージコメディ
年末恒例の「あの人は今?」的特番に出演するかつて人気を博した役者や歌手、芸人たちが集まっている控室(=溜り=タマリ)に銃を持った覆面の男が押し入って…という状況から始まる物語。
しかし覆面の男が実は仕込みというドッキリ企画だったのにアッサリそれがバレてしまい、窮地に陥ったディレクターがドッキリにひっかかった演技をするやらせをもちかけ…といういわば変形バックステージコメディ、そのテが好きな身としてはタマラン。
しかも基本的にはコメディでありながら、かつてCMの「こども船長」(笑)でブレイクして12歳で(!)劇団を立ち上げ作・演出もこなしたものの現在はなかずとばずで辞めることを考えていた俳優を筆頭とした「どん底」な面々が「現状からだったらいくらでも立ち直ることができる」とポジティブになる終盤は感動的だし、存在感が薄く唯一見せ場がなかった「おワン子クラブ」(笑)出身のアイドルにスポットが当たる締め方もイイし、序盤でホワイトボードに書いておいた「盛り上がる要素」が最終的にすべて揃うというのは巧い。

冬のジャンゴフェスタ2009

冬のジャンゴフェスタ2009

劇団S.W.A.T!

「劇」小劇場(東京都)

2009/12/09 (水) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

完結編に相応しい仕上がり(III)
まずはジャンゴよりも先にシンゴが登場するという掟破りな始まり方をし、しかしそれ以降は前2作での「お約束」をキチンと踏襲しながらも「シリーズ最大の敵」「ピンチに陥った主人公に力を貸すかつてのライバル」などの新要素を加えて完結編に相応しい仕上がり。
甘えに起因する疎ましさ(「姉や妹なんていなくなっちゃえばいいのに」)を上回る姉妹愛や、シリーズ共通の「自分はどうなってもいいからあの人を助けて」な場面で泣かせるのもやはり巧い。
また、天使に左手を切り落とされてギターを弾くことができないサダエルに、ヒロインの妹でパンクバンドをやっている花穂が「アタシがアンタの左手になるよ」と連弾(?)するのは愉快。高石ともやとナターシャ・セブンの「5人ばやし」(5人が4つの楽器を使い、自分の右隣の相手の楽器のフレットを押さえて自分の楽器の弦を爪弾く)を思い出したりもして。

パッチギ!

パッチギ!

フジテレビジョン

新国立劇場 中劇場(東京都)

2009/12/04 (金) ~ 2009/12/23 (水)公演終了

満足度★★★★

8,000円の元は十分に取れた
たとえばキョンジャがブラスバンド部ではないなどちょっとした設定の違いはありつつ、原作である映画と同じ羽原大介の脚本(&井筒和幸の総監修)なので、映画が大のお気に入りである身にとっても文句ナシ。
第1幕のクライマックスとなるアンソンの送別会での「リンジンガン」(映画では日本語詞だったようだがこちらは原語)はやはり泣けたし、その前に女優陣による朝鮮舞踊を入れた演出も○。
第2幕では、映画でカットを重ねて見せた通夜・日朝決戦大喧嘩・出産・ラジオ出演と4つの出来事が重なるクライマックスをどうするんだろう?と思っていたら、やはり舞台ならではの表現で見せてくれてこちらも◎。
また、浅見れいなが楊原京子の役どころにつき出番が少なかった代わりに真木よう子の役どころであるちすんの出番が多かったのでトントンってところ?
ほかにキャスト関連では渡辺哲や小市慢太郎、峯村リエなんてあたりがさすがな味を出しているほか、昭和芸能舎メンバーも的確なサポート。
「映画ではどうだったっけ?」な部分もある一方、カット割まで含めて鮮明に覚えているシーンもあり、そんな「記憶の虫干し」もできたし、S席8,000円というのはフトコロへの少なからぬ打撃ではあったものの「やっぱり6,500円のA席で十分だった」なんてことはなく、むしろ元は十分に取れた、的な。

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