ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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路地裏海賊譚 カコノユクエ

路地裏海賊譚 カコノユクエ

アトリエ・センターフォワード

シアターX(東京都)

2017/02/01 (水) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★

アメリカに蹂躙された中南米を彷彿とさせる。憲法違反と論理的思考ができる者なら誰でも考える、集団的自衛権を中核とする安保法制によって日本及び日本人が、アメリカの指揮下で他国人を殺し、殺されるのみならず、テロ対象国としても狙われる可能性が高くなる一方の昨今、描き方によっては人々に自分の頭で考えることの重要性を訴える作品にもなり得たであろうが。

ネタバレBOX

 9.11と聞いて何を思い出すだろうか? 殆どの人は、アメリカのあの事件だろう。然し、同じ9月11日アメリカが裏で糸を操りチリでピノチェト率いる軍がクーデターを起こし、南米初の民主的選挙によって選ばれた社会主義政権が倒された。1973年のことである。その後、今作で描かれたような恐怖政治体制が敷かれ多くの無辜の民が拉致、投獄、監禁、拷問、レイプなどの果てに惨殺され、多くの遺体が未発見のまま現在に至っている。遺体が見つからない原因に、米軍援助の軍機などに載せられた人々が高空から突き落とされて死んだ、という経緯があることも忘れてはならない。
 然るに今作では、その裏で糸を操る者の姿が一切描かれていない。内容的には、アメリカに蹂躙された中南米諸国の実情があることがハッキリ類推できるにも関わらずである。物語なら物語で良いのだが、陰謀論ではなく実際に行われてきた事実であるのだから、キチンと書き込んで欲しかった。何度も科白に登場する現実はもっと複雑で云々というのも、作家の逃げにしか聞こえない。
 無論、人間は弱いし脆い。然しながら、表現する者の正道が弱者の側に立つことである以上そして今作もまたそのような傾向を持つ作品である以上、分かっていることは分かっていることとして観客に提示しても良かったのではないか? と考える。
 所々、気の利いた科白もあるし、必要な舞台道具が天井から下がってくる演出も面白い。演技については、前日、熱海殺人事件を演じたアズタハルサを観たばかりで、こちらの演技が役を生きていたのに比べてしまったので余り高い評価はできない。
【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

稲村梓プロデュース

サンモールスタジオ(東京都)

2017/01/31 (火) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

チームGを拝見..文句なしの星5つ!

ネタバレBOX


 いい女である。誰? って主演の稲村 梓だ! チームGを拝見したが、主要な四役者が皆上手い、存在感がある、役を生きている。唯一人、今回のシナリオでおそらく脚本家の余りキャラクター作りをキチンとしなかった大山 金太郎の役作りの難しさが災いしたように感じられた他は。今回のシナリオバージョンは自分が初めて経験したものであった。多くは、大山は三流の犯罪者という形を前面に出しているシナリオを用いていると思うのだが。今作のシナリオでは、他の3人はキャラが立つシナリオであるのに対し、大山のそれは、重石になるように仕組まれており、その役を生きる為には、存在から滲み出すもので観客を納得させなければならないような難しさを要求される。その意味では、4人のキャラの内、最も難しい役だっただろうと考える。無論、それぞれの役に難しさがあり、他の三役はキャラを立て易いと自分が感じたまでのことで、何れの役者の演技も素晴らしいものであった。
 更に、演じた全員が、原作者つかの、はにかみや在日としての苦労、苦悩そして意地をも理解していることから来る作品読解の正確な掴み、社会的弱者の側に立とうとする姿勢、その真の意味での高潔が、弱者も持つダンディズムを貴人のそれへと変容させており、“芸術とは売春の趣味である”と述べたBaudelaireではないが、伝兵衛が警視総監に言った最後の科白の中にある「経歴に加えて下さい、趣味、売春と」に交感するイメージを喚起させるのだ。見事な舞台である。
誤解

誤解

アルシェ提携公演

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2017/01/23 (月) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

  1回目の観劇。

ネタバレBOX


 今作、初演は不評だったようである。恐らく当時のフランス人には理解を超える作品だったのだろう。だが、カミユは気付いた。東欧で起きた事件を契機にこの物語を紡いだのだから。ピエノワールの面目躍如といった所だ。
カミユの書いた哲学的な書物で有名なのは1冊、「シーシュポスの神話」だが、無論、通常の意味での救いはない。今作も同様である。通常の意味での救いなど何処にもないのだ。然し、現代社会に於いて難民化した人々を襲うのは再難民化、再々難民化という負の連鎖の危機であり、実際に四度目以上の難民化を経験した人々すら存在している。そのような状況にあって尚生き続けるのであれば、この事件を起こしたマルタと母のような人々が再び現れない保障は無い。また彼女たちが味わったような深い絶望と失念に研ぎ澄まされた生き残り哲学が生まれないとの保証もないのだ。
パレスチナ人の苦境を作り出したシオニストとシオニズムを支持する欧米のグロテスクなイデオロギーには、公正、公明、公平もない。そのことが、難民を追い詰め、絶望が彼らの背中を押して取り返しのつかない所まで追いやるのだ。現在、世界の多くの場所で、今作で描かれた事件の背景にあるもの・ことが現実化している。その問題の深刻さを理解できない日本で、今作を今上演することには大きい意味があろう。
誤解

誤解

アルシェ提携公演

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2017/01/23 (月) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

 昨夜に続き2度目の観劇である。

ネタバレBOX

兎に角、目が離せない。照明、音響の効果も良い。無論、カミユの原作も良いのだが、僅か丸1日の出来事を描いてこれだけの問題を提起してくる作品はザラにはあるまい。発表当時より、今の時代の方が今作の意味する所が解り易いのではないか? というのも、カミユはアルジェリア育ちの白人であるから、フランスに戻ればピエノワールとして差別され、アルジェに戻れば支配階層として忌み嫌われる。アイデンティティティー確立に苦労せざるを得ぬ立場だ。
日本で言えば、在日の人々、アイヌの血を引くマイノリティーや沖縄のウチナンチュー、シマンチューなどのマイノリティーのデペイズマンを想像してみる時、我らにもその辛さ、苦しみの厳しさに近いもの・ことが想像できると言えるかも知れない。更には公害、原発人災の被害者も似た立場に置かれていると言えよう。
マルタの科白にあるように、公正を欠く条件下に置かれた人間が(予め決定された)マイナス要素から自立するのは容易なことではない。それは、マリアが夫の死を型どおり嘆くこととは次元の異なる苦しみである。のちにサルトル・カミユ論争で決定的となる人間存在の根底に関する二人の認識の差は、今作に端的に表れていると見ることができよう。その分、各俳優の演技論にも本質的な差異を如何様に劇化するか? という問いとして現れてくるであろう。恐らく正解はない。在るのは唯闇夜で目が効かず触覚や嗅覚聴覚や味覚など視覚以外の感覚を総動員して正しい方向を模索しようとする原存在の不定と何ら支えも無く宇宙に漂うエパーブとしての存在、それを屹立させようと足掻く精神の葛藤である。
唐十郎×シェイクスピア

唐十郎×シェイクスピア

MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン

明治大学駿河台キャンパス・グローバルホール(東京都)

2017/01/29 (日) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

 今作は、演劇人、詩人、文学者としての唐 十郎展の関連企画として2016年10月に1度だけ上演されたものに若干作品を加えての上演で、形式は朗読。

ネタバレBOX

上演作品は、順に「焼き鳥屋のハムレット」「リチャード三世」「口説き屋ロミオ」「蜂のタイテーニア」。テキストは岩波書店発行の「劇的痙攣」所収の「シェイクスピア幻想」だ。
 単に朗読というより、リチャード三世では、脊椎カリエスを患ったような彼の歪な体型の形態模写や、ギター、ハーモニカ、モンゴルの楽器であろうか、金属片を口に挟んで音を出す楽器、その他水音を表現する擬音発生器などが活躍する。後半、練習時間が無かったのか、一人だけ噛む役者が居たものの全体として非常にレベルの高い作りであった。殊に西村 俊彦、山田 志穂(劇団民藝)の役を生きるような表現が素晴らしい。
 また、演じられた四作で、起承転結の形式を踏む構成と発想も良い。このような公演がまたあるならば是非出掛けて行きたい公演である。
 
唐十郎×シェイクスピア

唐十郎×シェイクスピア

MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン

明治大学駿河台キャンパス・グローバルホール(東京都)

2017/01/29 (日) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★

 今作は、演劇人、詩人、文学者としての唐 十郎展の関連企画として2016年10月に1度だけ上演されたものに若干作品を加えての上演で、形式は朗読

ネタバレBOX

。上演作品は、順に「焼き鳥屋のハムレット」「リチャード三世」「口説き屋ロミオ」「蜂のタイテーニア」。テキストは岩波書店発行の「劇的痙攣」所収の「シェイクスピア幻想」だ。
 単に朗読というより、リチャード三世では、脊椎カリエスを患ったような彼の歪な体型の形態模写や、ギター、ハーモニカ、モンゴルの楽器であろうか、金属片を口に挟んで音を出す楽器、その他水音を表現する擬音発生器などが活躍する。後半、練習時間が無かったのか、一人だけ噛む役者が居たものの全体として非常にレベルの高い作りであった。殊に西村 俊彦、山田 志穂(劇団民藝)の役を生きるような表現が素晴らしい。
 また、演じられた四作で、起承転結の形式を踏む構成と発想も良い。このような公演がまたあるならば是非出掛けて行きたい公演である。
 
『エンジェル・フォール騎士 ANGEL FALL KNIGHT』

『エンジェル・フォール騎士 ANGEL FALL KNIGHT』

無頼組合

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/01/27 (金) ~ 2017/01/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

騎士シリーズ九作目!

ネタバレBOX

風吹・桐山の絶大な力に挑んで後悔しないダンディズムに痺れる。作中にも出てくる中国黒社会を描いた「男たちの挽歌」シリーズは自分も最も好きなヤクザ映画であるが、日本の形式的ヤクザ映画では決して表出されることのない、抗争の冷徹や組織を抜けることの意味、そして下剋上の非情が、矢張り人情に対置されている所が渋いのだ。ナイトシリーズも色々おちゃらけ要素を孕ませてあるものの基本的には硬派系の作品群である。今回で九作目、オハラの真の目論見や、風吹と仲間たちの壮絶な生き様も若干描かれて、作品層に厚みを増した。腐り切った権力者たちの用いる政治的、権力的、打算的な腹黒さも充分練られており、風吹たちが向かってゆく相手の強大さが嫌でも意識されるのだが、だからこそ、彼らのまつろわぬ姿勢が猶更格好良いのである。

ドラゴンカルト

ドラゴンカルト

劇団ショウダウン

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/01/27 (金) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

殺人というゲーム

ネタバレBOX


 現在アメリカの軍事リクルートスタッフは、ゲーマーにも触手を伸ばしていると言う。実戦配備されている無人機による攻撃にゲーマーは優秀な成績を収めるからである。無論、兵器自体の発達、遠隔操作の技術が格段に進歩したこともあって、数千キロメートルも離れた地域から「敵」を殲滅することができるのだ。実際に殺されているのが、女子供や障碍者、老人であるにしてもだ。
 そして現実に国家対国家ではないが、国家は武装集団を相手にするという名目で、マイノリティーや元々圧政に苦しんできた市民たちを相手に軍事行動を起こし虐殺を恣にしている。そんな世界情勢の中、我らの周りもきな臭い臭いが充溢してきた。
 死が、生活から離れ、病院の狭い空間の中に隔離されるようになってかなりの時が経ち、我々は死を身近に感じなくなっていると同時に、他人の死が我々の生活や感性に与えるもの・ことからも隔てられてきた。
 一方、エキセントリックで凶暴な感情は、あてもなく解き放たれているようにも見える。これら有象無象のエネルギーが在る方向を持ち集約させられたとすれば、今作に描かれたような事態も、実際に起こり得るのではあるまいか?
 カルトという意味ではかつてオーム真理教があった訳だし、思考というものの本質的属性はあるオーダーが決まってしまえばそこから先にはたった一つの展開しかないことなのである。それは尖鋭化だ。今作は、そのような不穏な空気を孕んだ現代日本の子供じみた病弊をいみじくも炙りだしているように思える。
メロン農家の罠

メロン農家の罠

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2017/01/12 (木) ~ 2017/01/18 (水)公演終了

満足度★★★

  桃尻という単語を初めて使ったのは、橋本 治ではないか? 桃尻娘はシリーズ化して映画にもなった人気作。東大在学中に”とめてくれるなおっかさん背中の銀杏が泣いている 男東大どこへ行く”というフレーズを編み出し一躍有名になった。タッパは80以上あるだろう。結構ガタイも良い。その彼の趣味は編み物。

ネタバレBOX

日本の古典を優れた現代語に訳しているので、水産高校出身で日本の古典をキチンとやったことのない自分は、彼の訳した古典で日本の古典の多くを学んだ。
 で、この劇団の名前は、橋本 治のセンスの良さを思い出しながら観に行ったのだが、日本の庶民は現在此処まで劣化したか! と思わされた。これでは、妹のみのりが絶望するのも無理はない。何となれば、ここには、近頃流行りの反知性主義が蔓延するニヒリズムと知的な連中がおいしい所を総てかっさらい、自分達の所へはトリクルダウンすら来ないことに対する反発や不信感が在るのであり、それを自分達の支配者にはぶつけられずに、自分達がかつて見下してきた人々にぶつける、いわば白井 聡の「永続敗戦論」が指摘したような問題点が見られるからである。自分流にいえば事大主義とprincipleの欠如が合体した日本人という民族の、極めて感情的・感傷的な特質の危うさを表しているように思う。そして、このような特質こそ、戦争に向かう政治を支え、戦争を支持してゆくのである。
 だが、演劇という形でその特質を観たならば、我々はその特質を合理性によって裁断し、合理性と知性そして倫理の下に再構成する必要があろう。息を吐くように嘘を吐く、安倍のようなアホを支持しない為にも。
ゴーラウンド

ゴーラウンド

法政大学Ⅰ部演劇研究会

法政大学外濠校舎 多目的室2番(東京都)

2017/01/10 (火) ~ 2017/01/13 (金)公演終了

満足度★★★★★

 原作は、ウクライナのアレクセイ・ライツキー。監視社会の中で作品の殆どは公演されずに終わったという。1993年に51歳で亡くなったというが、自分は初めて出会う作家である。

ネタバレBOX


だがこんなに優れた作家を探してくる法政Ⅰ劇、流石である。無論、今回も期待は裏切られなかった。実際、極東のこの辺りでは、息を吐くように嘘を吐くという内容の川柳が投稿されているらしいが、無論、ジャパンハンドラーの言うままに動く、植民地総理、安倍晋三という下司の話である。彼の虚ろな頭の所為で、迫りくる戦争の気配を実に正確且つ敏感に感じ取っている若者達のセンスの鋭さに思わず戦慄を覚えるような作品である。殊に避難民をこともなげに射殺するシーンの迫力は凄い。
 この凄味も、彼が学生時代はかなり上手いミュージッシャンで、プロとして食ってゆくだけの才能は無いと自覚できるだけの腕があった、ちょっとリアリスティックな視点を持つ学生という設定が効いている。
つまり極めてありふれ、まったりした学生の日常や、避難民の子供の食べ物の好き嫌いを巡る小さなそしてどこにでもあるようなふくれっ面、若い恋人同士の淡い恋のさや当て、それらを極めて自然に生き、其処に生まれる何気ない日常が続いて行く中で、宇宙探査の為の機器が撃ち落されたことをきっかけに、多くの庶民が皆を守らねばと戦士になり、或いは自分の為と言いつつ戦争遂行の当事者となり、互いに銃を向け合って戦い合うのみならず、遂には核戦争迄行う。
即ち愚かにも制御不能な状態に陥ってしまう。どんな結末を迎えることになるか? 誰もが明確に知り、その愚かさをも知り抜き乍ら誰も止めることができない。この恐怖と、そうなることを充分想像しており、尚且つ愚かな結末しか齎さないことを明確に認識しながら流されてゆく人々の哀れは殊更である。
ゴーラウンド

ゴーラウンド

法政大学Ⅰ部演劇研究会

法政大学外濠校舎 多目的室2番(東京都)

2017/01/10 (火) ~ 2017/01/13 (金)公演終了

満足度★★★★★

 原作は、ウクライナのアレクセイ・ライツキー。監視社会の中で作品の殆どは公演されずに終わったという。1993年に51歳で亡くなったというが、自分は初めて出会う作家である。

ネタバレBOX


だがこんなに優れた作家を探してくる法政Ⅰ劇、流石である。無論、今回も期待は裏切られなかった。実際、極東のこの辺りでは、息を吐くように嘘を吐くという内容の川柳が投稿されているらしいが、無論、ジャパンハンドラーの言うままに動く、植民地総理、安倍晋三という下司の話である。彼の虚ろな頭の所為で、迫りくる戦争の気配を実に正確且つ敏感に感じ取っている若者達のセンスの鋭さに思わず戦慄を覚えるような作品である。殊に避難民をこともなげに射殺するシーンの迫力は凄い。
 この凄味も、彼が学生時代はかなり上手いミュージッシャンで、プロとして食ってゆくだけの才能は無いと自覚できるだけの腕があった、ちょっとリアリスティックな視点を持つ学生という設定が効いている。
つまり極めてありふれ、まったりした学生の日常や、避難民の子供の食べ物の好き嫌いを巡る小さなそしてどこにでもあるようなふくれっ面、若い恋人同士の淡い恋のさや当て、それらを極めて自然に生き、其処に生まれる何気ない日常が続いて行く中で、宇宙探査の為の機器が撃ち落されたことをきっかけに、多くの庶民が皆を守らねばと戦士になり、或いは自分の為と言いつつ戦争遂行の当事者となり、互いに銃を向け合って戦い合うのみならず、遂には核戦争迄行う。
即ち愚かにも制御不能な状態に陥ってしまう。どんな結末を迎えることになるか? 誰もが明確に知り、その愚かさをも知り抜き乍ら誰も止めることができない。この恐怖と、そうなることを充分想像しており、尚且つ愚かな結末しか齎さないことを明確に認識しながら流されてゆく人々の哀れは殊更である。
劇王東京Ⅲ

劇王東京Ⅲ

劇王東京実行委員会

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2017/01/06 (金) ~ 2017/01/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

 1月6日のAブロックから始まった劇王東京チャレンジⅢも予選最終組のFブロック3団体の上演となった。Fブロックは、タッタタ探検組合、劇団人間嫌い、ニュートンズの3劇団が出場。準決勝に勝ち進んだのは、観客票で他を大きく引き離しトップをさらった”タッタタ探検組合“だ。

ネタバレBOX


 Fブロックの結果発表の後、準決勝での上演順が決められた。準決勝第一部は本日14時からA、B、C各ブロックの勝者と全団体の敗者中で観客票の最も多かった団体の作品が上演される。続いて19時半からは準決勝第二部。D、E、F各ブロック勝者と前年度の劇王東京が参加して開催される。決勝は1月15日18時からだ。決勝戦は、準決勝第一部の勝者VS第二部の勝者で行われる。
 さて、今回自分が拝見したFブロックの3団体について以下にレビューを記しておこう。
各レビューは上演順。因みに、各演目は上演時間20分以内、出演者3人迄。次の団体の開演迄の場転は数分以内。仮に上演時間が20分を超えた場合、1分超過する毎に、獲得した点数の10%が減点される。
「局地的な電極人」(タッタタ探検組合)
 2年程前から、体に強い磁力を持つ人間が出現するようになった社会で、偶々通りかかったS極の男とN極の女が引き付けあって公衆の面前でくっついてしまい、互いに離れようともがくが、磁力は極めて強く容易に離れられず苦労している所へ3人目の登場人物(女)が現れ、始めは磁力から自由な人間のように振る舞っていたのだが・・・、というちょっとシュールな悲喜劇。ネタバレは此処まで。何せこれから準決勝でもあるし。無論、笑える。
 而も、Wミーニングだと解釈するなら、極めて鋭いアイロニーをも含んだ作品であるが、それは、勝敗が付いた後で追記する。
「合コンしようよ」(劇団人間嫌い)
 大学に入ったものの、も女(もてない女)と互いに思い込んでいるらしい3人の女。3人のうちの1人の家で、も女卒業の為の特訓が行われるが。特訓教師役も本当はも女であり、生徒役の女も女なのだが、第三者的に構えていた女は、実はしっかり元カレ、今の彼がいた、という話で、新味はなく話としても当たり前過ぎる。が、19歳の女性作家が自分の周りや若い女性の最も大切な問題と向き合って作品を完成させている点で、今後も真っ直ぐ、もの・ことを観る視点を継続して成長して欲しいと思わせた。
「何者か」「feat」(ニュートンズ)
 作家自身「策士策に溺れる」と言っていたが、作品そのものより、創作態度にあざとさを感じた。歌舞くのも良いが、1団体だけ2作品を上演したというのは、矢張りこの企画の約束事を守っていないのではないか? と考えたので評価の対象外とした。
2020

2020

西尾佳織ソロ企画

トーキョーワンダーサイト本郷(東京都)

2016/12/22 (木) ~ 2016/12/24 (土)公演終了

満足度★★★★★

会場は壁が総て白、写真撮影用のスタジオとしても使えそうな長方形の空間で、床は海底にあるものを練り込んだような不思議な感覚の素材で作られ、パステルトーンの薄い茶系。(追記後送)

ネタバレBOX

開演前には、作家が子供時代を過ごしたというマレーシアという言葉が時折混じるおしゃべりが流れ、アルミ製の脚立が置かれた入口近くには、天板の丸い椅子が5脚、其の前方に段ボール箱が置かれ、部屋の奥には2・6テーブルが置かれている。このテーブルの端には矢張り段ボール箱、角にビニール傘が掛けられている。そしてこの2か所だけにスポットが当てられているのだが、これらの間にほぼ正方形のテーブルが置かれ、隅にペットボトルと袋に入ったパンなどが置かれている。
さて、演者が登場するとバターは、バターの木から作られるという話をするのだが、当然嘘だ。だが、これが夢で見た話だとされる。新たな才能の出現を感じる、ちょうど小学生の頃、クアラルンプールに住んでいたという作家の実体験を錘にしつつ、嘘と実際を夢を媒介として構築したり、子供の頃の思い出と悪戯(男子に触発されたりして)を先生に叱られたが、自分も似たような悪戯をしたことが白状できずに倫理的に悩んだり、
ZASHIKI・WARASHI

ZASHIKI・WARASHI

A.R.P

ART THEATER かもめ座(東京都)

2016/12/20 (火) ~ 2016/12/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

 シナリオ、演技、演出何れも良いし、全体のバランスもグー。殊に構成のしっかりしたシナリオに切れのある演出、キャラの立った演技、これらを盛り上げる音響、照明の効果もグー。舞台美術も控えめながら無駄が無い。良い作品なのに入りが良くないとか、取り敢えず追記は後程。今夜も急遽、何かプレゼントがあるそうだ。(追記後送)

八月のシャハラザード

八月のシャハラザード

学習院大学演劇部 少年イサム堂

学習院大学富士見会館401 演劇部アトリエ(東京都)

2016/12/21 (水) ~ 2016/12/24 (土)公演終了

満足度★★★★

 原作は1994年に初演された劇団ショーマ主催の高橋 いさを作品である。

ネタバレBOX

脚色・演出は、役者としても劇団血風過激団主催者、木島として出演している小澤 美慧。主人公の亮太は、所属する演劇部で溺れた人を演ずる為に海に出るが、大波に巻き込まれて遭えなく落命。三途の川をあわや渡る所であったが、現世に脱走。理由は、彼女であるひとみに一言別れの挨拶すらできなかったことが悔やまれて成仏できなかったからである。辿り着いたのは、葬式後にひとみを癒そうと演劇部の仲間が集まっていた部室。だが、彼の発する言葉も、姿さえ皆に認められることはなかった。だが、諦めきれない亮太にチャンスが巡ってきた。現金輸送車を襲った強盗川本が、仲間に裏切られた挙句腹部に銃弾を受けて死に近づいた為、彼の姿を見、声を聴くことができるようになっていたのである。
 あの世への渡しを担当する夕凪も協力して亮太の最後の望みを叶えるべく作戦が開始されるが、川本の復讐への思いは矢張り断ち切り難い。裏切り者の梶谷の背後には悪知恵の働く女、マキが居る。こんな攻防の中、ひとみが、裏切り者一味に攫われた。人質として取られたのである。果たして、亮太の思いは、川本の復讐心は、そしてひとみの運命は? 更に各々の思いと結末は!? 初日が終わったばかりなのでこの辺りで。あとは観てのお楽しみだが。明暗転の際、場転がスムースでシャープである。役者の演技も中々上手い。自分が殊に気に入ったのは、川本役、梶谷役。他の面々も中々良い。
鏡

早稲田大学劇団木霊

劇団木霊アトリエ(東京都)

2016/12/16 (金) ~ 2016/12/19 (月)公演終了

満足度★★★★

 ファーストシーンでいきなり観客を驚かせ物語に引きずり込む演出、演技はとても良い。

ネタバレBOX

然し、会場でのアンケにも書いたように状況設定にはもう少し工夫が必要だと思われる。
テーマは、完全性とも取れるし女性が理想的なパートナーを選ぶことの難しさとも取れそうだ。無論、他の解釈も成立するだろう。
 完全に関してはプラトンの対話中にある「人間球体論」をイメージしたい。そのような完全を求めて彷徨っている主体を今作は描いたと解釈するのである。
 もう一方は、生まれた時、200万あると言われる原始卵胞で(卵子の素)、その後どんどん減っていくにせよ、可也の卵細胞を女性は持ち、我々ヒトと雖も遺伝子の命ずる所からは容易に逃れることができないという事実である。無論、これは男性にも言える。総ての生き物が遺伝子の乗り物でしかないという考え方すら成り立つのである。
雌雄異体である我々ヒトのうち、産む性である女性にとっては、生まれてくる世代に対する責任もより重大であると自覚されるであろうから、理想のパートナー探しはそれこそ命懸けであってもおかしくない。そんな突き詰めたパートナー探しとも取れるのである。
 出演している女優が次々に、この立場に転じてゆくのは、このような解釈なら、説明がつくし。
 何れにせよ、女優陣の熱演が目立つ舞台であった。
紛争地域から生まれた演劇シリーズ8

紛争地域から生まれた演劇シリーズ8

公益社団法人 国際演劇協会 日本センター

東京芸術劇場アトリエウエスト(東京都)

2016/12/14 (水) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

 年末に上演されるこのシリーズも8回目を迎える。何とも感慨深いではないか。

ネタバレBOX

漸く日本の文化人も何とか世界に目を向けようとする時代にはなったか!? そうは言っても、普段評論が書ける方は兎も角、多くの演劇関係者がイスラムの内実については殆ど何も知るまい。「インシャラー」という科白でフランスのリセーアンが何故笑うのか? この程度の単純なことすら多くの日本人には分からない。更にハラルミートなどの宗教的タブーに関することも多くの日本人には分かるまい。自分は知らぬことを攻撃しているのではない。外部に目を開こうとしない多くの日本人の態度に対して批判しているだけである。既に日本には多くのムスリムが住み、日本人とも接触してきた。にも関わらず、彼らの価値観や人間関係のありようをアメリカ流のバイアスを掛けてしか見ない日本人が多数存在するように思うのだ。無論、そうでない日本人も自分の周りには多いが、日本人全体としてはマイノリティーであろう。
 まあ、ヨーロッパ人は、アメリカの大衆ほど単純ではないからムスリムに対して様々な対応を取るが、それでも“テロとの戦争”を標榜してブッシュがイスラム圏に仕掛けて以来、多くのヨーロッパ諸国でもイスラムフォビアが猛威を奮ってきた。今作の原作者イスマエル・サイディはベルギーで1976年に生まれたモロッコ系の人物である。ジハードは彼の三作目の戯曲である。現在までに205回もの公演が打たれ、観客の延べ人数は7万を超えるが、そのうちの4万人はリセーアンなどの若者である。一方で彼の笑いに富んだ作品は多くの世代に受け入れられているのも事実である。実際、突き付けている問題の深刻さ、鋭さを見事に笑いで緩和しつつ、キチンと問題提起をしている点で彼の優れた才能は高く評価されてしかるべきであるし、自分も原文で読んでみたい作家である。興味のある向きは仏語版を探して読んでみることをお勧めする。自分もこれからちょっと調べて読んでみるつもりである。
X'mas Party!!

X'mas Party!!

Prismore

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2016/12/19 (月) ~ 2016/12/20 (火)公演終了

満足度★★★★

 1本20分程の短編を3本芝居として上演した他、ピアノとギターの生演奏、更には女性陣によるダンスと中々盛りだくさんな100分。肩の凝らない内容だ。自分は、芝居が最も面白く感じた。無論、短編だから、オチや発想の奇抜さ、洒脱でピリリと薬味の効いた作品が良いのだが、年末の多忙な時、骨休めの気分が出ても良かろう。

テレビが来るぞ!

テレビが来るぞ!

劇潜サブマリン

千本桜ホール(東京都)

2016/12/15 (木) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★

診療が長引き大幅遅刻
だったので、序の部分を拝見していない。従って評価は破急についてのみ。
何れにせよ、現代日本の為政者の嘘を炙り出すような、そしてそのために被差別者が利用されるようなグロテスクを描いていてグー。(追記後送)

ネタバレBOX

 主人公は、その母が著名な女優、タレントの娘。超のつくほど多忙な母が、そのことをものともせず、手作りの料理で娘を育てることが評判であったが、実はレトルトやチルドをただ温めるだけのことをしていたにすぎず、それでも多忙な中時間を態々割いて娘に「手料理」を作ってやっている、という本音がバレて失脚。マスコミの追求もあって、娘の目の前で自殺を遂げてしまった。
雪女ー密室の行軍ー

雪女ー密室の行軍ー

鬼の居ぬ間に

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2016/12/14 (水) ~ 2016/12/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

緊迫感のある舞台
 舞台は明治35年厳冬、日本軍は露西亜との戦争に向けて寒冷地での戦闘を想定した冬期軍事訓練を計画した。その舞台が八甲田山系である。予定では1月23日青森営舎発、1泊2日で田代新湯迄の20㎞を踏破する計画であった。然しこの年青森の積雪は例年を遥かに凌ぐ記録的なもので、参加した210名のうち199名が亡くなるという大惨事になった。所謂雪中行軍遭難事件である。(追記後送)

ネタバレBOX

 舞台は明治35年厳冬、日本軍は露西亜との戦争に向けて寒冷地での戦闘を想定した冬期軍事訓練を計画した。その舞台が八甲田山系である。予定では1月23日青森営舎発、1泊2日で田代新湯迄の20㎞を踏破する計画であった。然しこの年青森の積雪は例年を遥かに凌ぐ記録的なもので、参加した210名のうち199名が亡くなるという大惨事になった。所謂雪中行軍遭難事件である。
 今作はこの事実を下敷きに、雪女伝説を絡ませ、偶々遭難中に発見した雪小屋に避難した第三小隊7名と道案内の娘、第三小隊隊長の婚約者であった女を登場人物として構成されている。物語としては、生き残った主人公の岩木に、12年後穂積の婚約者であったキエが事の真実を問い質すという形をとっているが、岩木は、生還後、精神に変調をきたし、実家の座敷牢に閉じ込められていた。だが、12年後に脱走、遭難現場の雪小屋に戻って来たのである。その錯乱した記憶の原因を、当時の資料、生き延びる為に食べたとされる鹿肉を手掛かりに炙りだしてゆく。果たして暴かれた真実とは? 

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