ワンダフル・ワールド
劇団フライングステージ
駅前劇場(東京都)
2012/07/04 (水) ~ 2012/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
上手い
セクシャルマイノリティーと被災者の置かれた位置を重ねつつ、実際には父を登場させずに父的なものとの葛藤を描く所など実に上手い。また個々の役者の役作りがとても丁寧で好感を持った。
演出面では、机と椅子が倒れているシーンと通常使う状態との差だけで、被災地の根こそぎ状態を象徴していて、さりげないが渋い演出である。科白の中にもさりげないが、実に深く被害の実態、心の傷の深さをあらわしているものがあって、感心した。
ひとつだけ、自分の得ている情報とは異なる科白があった。内容的には、被災地での放射能の影響について、心配する人達の言っていることがデマだと決めつけていた。
然しながらIAEA、WHO、ICRPの言っていることが嘘ですね。
骨唄
トム・プロジェクト
あうるすぽっと(東京都)
2012/06/28 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
蜃気楼
初見の劇場としては、現代的過ぎた気がする。舞台装置は見事なものであった。然し、その入れ物たる劇場は、言って見ればエミュが象徴していたウエスタンであった。これが、浅草の木馬亭のような小屋や江戸時代風の作りが今も残る地歌舞伎の小屋での公演ならば、遥かに効果が上がったと思う。
演出、演技共に、こなれたものであったが、世界に対する戦きのような要素をもっと出して欲しかった。ことに、栞は、引き裂かれた存在としてもっとおどおどした作りであって良いように思う。ちょうど、「ガラスの動物園」のローラのような。それとも、そういう類型化を演出家が嫌ったのであれば、世阿弥の”初心忘るべからず”という恐ろしいテーゼに向き合う形で。
のぞき見公演#3 「恥知られたら恥ずかしい」
ガレキの太鼓
都内某所【のぞき見型】(東京都)
2012/06/28 (木) ~ 2012/07/03 (火)公演終了
満足度★★★★
あり得る
バイオレンスラブ編を見たのだが、男女の大人間のDVだと思っていたら、小気味よくスカされた。だが、この国にあっては、実際あっても不思議ではなかろう、と思わせる内容で、家庭内で起こり得る悲惨な現実を描くことでこの国の病巣を炙り出している、と見ることのできるような社会性を持った作りであり、役者たちの演技レベルも中々のものであった。
『(諸事情により)よろず相談始めました。人間科学隙間研究所』~お陰さまで全日程終了致しました。次回作も御期待下さい。
劇団夢現舎
新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)
2012/06/29 (金) ~ 2012/07/16 (月)公演終了
満足度★★★
現代音楽
ノリとしては現代音楽のそれだ。つまり、不協和音が快感足りうるか、というレベルである。今回、実験では無いことが実験という触れ込みであったが、小プロットをインプロビゼーションという手法で演じるという形式を取ったことになっている。然しながら、インプロビゼーションがインプロビゼーションとして成立するための条件があるだろう。それは、演者のテンションが高止まりしていることである。このレベルで合格点を差し上げられるのは、教授役の俳優さんだけではないか。そもそも、普通のテアトルに対する戦いとして実験をするというのであれば、その問題意識は、常にハイレベルでなければなるまい。現代音楽の巨匠であった、メシアンにしろシェーンベルグにしろ、そうであることは当たり前であった。また、インプロビゼーションの音楽としてジャズは外せないが、コルトレーンにしろ山下洋輔にしろ優れた演奏家たちのテンションの高さは周知の事実である。研ぎ澄まされた表現を望む。
12人のそりゃ恐ろしい日本人 2012
劇団チャリT企画
座・高円寺1(東京都)
2012/06/28 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★
茶番
毒入りカレー事件をベースに国名こそ出さないものの、アメリカであることが明らかな「対テロ戦争」「誤爆」事件とを絡めて、事実と正義のギャップを笑い飛ばした作品ではあったが、笑い飛ばすことで何が見えてくるというでもない所に自嘲と世界の茶番を見抜きながらどうにもならない憂さ晴らしが見て取れるようであった。実際、和歌山の事件の犯人が誰であるにせよ、事件は、エアコンの効いたビューローで制作されるのである。アフガニスタンを攻撃したアメリカの目的は明らかにBTCパイプラインであり、タリバンがビンラディンを遇したことではない。またイラク攻撃にした所で、イラクは大量破壊兵器を持ち、且つ迅速に西側に多大な損害を与えることができるという大ウソも捏造されていた。9.11も未だにヤラセ疑惑を払拭できないばかりか、イランの「核」開発については矢鱈、とやかく言うのに、イスラエルの核武装については口を閉ざしたままである。情けないのは、こんな茶番に我が国も大きく関わっていることである。その日本の、事実に対する、また、人間の権利に対する哀れな対応も笑われているとみてよかろう。
狐狗狸狐狸九九二錠の1/2
mimimal
新宿眼科画廊(東京都)
2012/06/22 (金) ~ 2012/06/27 (水)公演終了
満足度★★★
主体
シチュエイションとしては、核被害後、ヒトは滅んでいるかもしれないような状態の閉塞状況である。そこで、生きるもの達に起こる展望の持てない不如意と不安を解決するに、出口の無い状況を生きる手立てを、外へ向かって行動し、状況を打破しようとする主体としてではなく、むしろ、状況変革をあきらめた者として、内破しメタモルフォーゼする領域として提示していた。然しながら、それを意図的に主催する主体としての提示ではなかったことに、作者の曖昧な立ち位置が露呈してしまった。更に哲学的、生存論的、分子生物学的、複雑系的追及を望む。
Diamond Ray【ご来場ありがとうございました!】
東京ROSE company
SPACE107(東京都)
2012/06/27 (水) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★
荒削り
シナリオには光る科白が見受けられるが、自分の観た回の序盤は、演技が荒く、間の取り方も、身体の動きも、必然性を欠き、集約点を見失っているように見えた。中盤から後半に掛けては盛り返して来、展開の面白さも加わって、劇的表現と言えるレベルに回復したが、舞台に立ったら真剣勝負で臨んで欲しい。
隅田川の線香花火
遊戯空間
浅草木馬亭(東京都)
2012/06/26 (火) ~ 2012/06/29 (金)公演終了
満足度★★★★★
本質を見る目
緻密でバランスの良いシナリオ、キャスティングの妙、演技の質、それら総てを自然に見せる照明、効果、古典の定法を用いた音入れが、抑制を効かせ効果的に山、谷を盛り込んだ演出と響き合い、重層性を持った物語として、観客に沁み込んでくる。表層的でオーバーな表現を避け、タメを活かした登場人物たちの発するエネルギーの糸、網、帯が舞台上でぶつかり合い、演技を引き締まったものにしている。
無論、筋の運びも見事だ。定石通り、しょっぱなで、最も本質的なことが、総て表現されているが、わざとらしさや衒い、臭みなどは微塵もない。逆に本質を捉えて創っているだけに劇を支配する力学の拮抗感さえ生まれている。
ネタばれは避けたいので詳細は記さないが、タイトルにもなった「隅田川の線香花火」のシーンは、完全な象徴である。而も、物語から象徴への移行が実に自然で、シンボルの意味するものもそれぞれ明快である。
作・演出者の本質を射抜く目が、ここにも生きているといえよう。
教室短編集
劇団「14歳」
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2012/06/19 (火) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
ダイヤ&スペード
ダイヤは「山に登る」をテーマにした作品。シナリオの良さに、ストイックな演技が効果的に組み合わされていて、驚いた。演出の技量も高いのだろう。特に、少女たちのべシャリの無い時の表情には、大人には出せない真剣さがあって好感を持った。
スペードでは、女子同士の憧れ・疑似恋愛をタイトルの「りぼん」やボタンなどの授受で象徴し、女子校ならではの微妙な心理の綾を描いていたが、こちらは、ダイヤほどの完成度は感じなかった。然し、ストーリーの運びなどに関してはちゃんと落とし所も拵えてあり、一定の成功を収めているといえよう。
果てしの花園 【ROSE】 【JASMINE】
室生春カンパニー 劇団 風の森
荻窪小劇場(東京都)
2012/06/21 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★
若書き
とはいえ、もう少し完成度の高いものを期待していた。特に、導入部とメインプロットの繋がりが弱い。もう少し論理的に運ぶべきだろう。それに英語の発音が悪い。歌、踊り共に、修練を積むべきであろう。現在では、素人でさえ、ブレイクダンスなどの踊りを街中で結構上手に踊る。プロを目指すのであれば、身体性をキチンと考慮し体も絞るべきである。振付も冗漫に感じた。
演技に関しては、若い俳優たちの間の取り方にタメが無いのが気になった。それが無いため、表現が表面で上滑りしてしまう。
総じて技術レベル、思考レベル、身体性に対する哲学的考察レベル、論理徹底性のレベルなどに大きな問題を抱えているように思った。好感を「もったのは一所懸命であったことである。ますますの精進を望む。
ミュージカル 湖の白鳥
劇団あおきりみかん
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2012/06/22 (金) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
遊び心となんちゃって精神
固くなりがちな頭を柔らかくほぐすようなギャグが、隋所で、炸裂する。夢を追い小演劇に関わる者の本音と現実対スターダムにのし上がった者の相克に男女の相克が交差する。本音と表向きが「夢うつつの波間」に対立し、それは男女間のジェンダーの差を際立たせる。このような情況の中、白鳥号は海に見まごう湖の中心部へ航行している。
歌う気になるとも思えぬシチュエイション設定は、所謂ミュージカルへのパロディーともとれる。そのようなつくりであるのは、流石に中京地区演劇の女王ならではの才覚ばかりでない。このような芸当をやってのけられるのは、無論、この劇団のたゆまぬ努力とチャレンジ精神の賜物だ。実際、歌も上手いし、ダンスも上手い。そればかりか、ミュージカルと敢えてタイトリングしている以上、各出演者が、新たな芸を仕込んでいる。座長がベースギターを弾いたり、演劇部の先輩を演じている女優がバイオリンを弾いたり、箱をパーカッションとして叩くリズム、タンバリンのリズムの正確さも中々のものと各々役者陣が新たな事に挑み、舞台に掛けられる所まで修練を積んでいるのだ。その一方、作・演出そして女優迄こなす座長も自らを振り返るということをしているようにも思った。楽しい舞台であると同時に、日本で小劇場の演劇に関わる人間個々人にとっては身に積まされる内容を多く含んだ舞台である。無論、舞台関係者のみならず、そうでない方にも楽しめる舞台になっている。
水無月の云々
中津留章仁Lovers
タイニイアリス(東京都)
2012/06/21 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
素晴らしいという以外になし
初見の舞台であった。劇場はタイニイアリス。良い劇場だが、ホントに小さい。そして、最近、改善されたものの、長時間の公演はお尻が痛くなる、という小劇場特有の事情もある。2時間半の上演とアナウンスで聞いて、珍しいな、と思う。この劇場は随分通っているが、休憩を5分挟むとは言え、2時間半の公演に出会うのは、自分がこの劇場に通って初だ。但し、舞台上のセットを見ると、これも、凄い。世界的な演出家である、李 潤澤氏が引き連れて来た“コリペ”の“屋根裏の床を掻き毟る男達”の舞台セットの素晴らしさに拮抗する物を感じたのは自分だけではあるまい。
この感覚は裏切られなかった。舞台は、実に他愛ない引っ越しシーンから始まる。と言っても、普通の引っ越しとは若干違う所が味噌だ。段々、この家族が、とても良い雰囲気なのによそと違うことが明らかにされてゆく。
人斬り海峡
タイガー
OFF OFFシアター(東京都)
2012/06/20 (水) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★
肩の凝らない笑い
ギャグの質はイマイチという気がしないでもないが、とにかく、肩の凝らない馬鹿馬鹿しさには笑える。上手い点は2点。最後の最後まで、「例のブツ」が何なのかを明かさない点と、土壇場のドンデンだ。
落ちる紫陽花
張ち切れパンダ
サンモールスタジオ(東京都)
2012/06/13 (水) ~ 2012/06/18 (月)公演終了
満足度★★★★
実力あり
飲食物も本物を使うなど、演劇的にはちょっと珍しい、本物・リアリティーに対する拘りが見られることからも分かるように、シナリオ構成、演技、演出についてもかなりリアルな作りだ。また、女性作家の作・演出ということもあるのだろうが、小物や花のあしらいにもセンスの良さを感じさせる。このことが近頃は珍しい一歩引いた女性像に、リアルな空気を纏わせている。メインプロットでは、男女関係に在りがちな浮気と嫉妬を中心に展開し無理が無い。またこのメインプロットにサブプロットを上手に配置して飽きさせない所など見事である。在り得べき男女の機微を描いて堅実な作品に仕上がっている。
TRUTH
劇団fool
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2012/06/16 (土) ~ 2012/06/17 (日)公演終了
満足度★★★
TRUTH
安直なギャグの多用が目立ち、主張したいことの浅さが露見してしまった。実際、この国の歴史上、最も下らない時代を生きているであろう我々にとってtruthという言葉が単にポジティブな方向性をしか示さないのであれば、それを態々幕末に設定する必要はあるまい。実際、描きたいものの一番の眼目が裏切りだとすれば、不信をもっと突っ込んだ形で描くべきだろう。或いは、喜劇に仕立てるつもりなら、ギャグにもっとセンスを持たせるべきである。洒落のレベルに到達していない。
so complex semi-normal
拘束ピエロ
プロト・シアター(東京都)
2012/06/16 (土) ~ 2012/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鏡
完全な裸舞台。床はコンクリート剥き出し、位置確認用の文様が描いてあるだけでシンプルそのものだ。観客は舞台空間を挟むようにシンンメトリカルに位置する。無論、これにはメッセージが込められていよう。プロトシアターという劇場名からもそれは推して知れる。
これだけで劇場が出来するということだ。つまり劇団は、劇場とは、役者と観客が存在し、其処で身体表現が行われる場と規定しているのである。役者の表現と観客の想像力との真っ向勝負だ。余分な物は無い。
さて、現代を一言で言い表すとしたら”不信の時代”だろう。大分前に、本のタイトルにもなった表現ではあるが。実際、再稼働の決まった大飯原発と言い、原子力村やこの国の政府といい、多くの企業といい、全幅の信頼を置かれるような存在がこの国に今あるか? と問われたら多くの人が、口ごもってしまうだろう。そもそも、そんな問い自体がナンセンスだと失笑を買うのがおちか。
いずれにせよ、この様な状況が、日常の隅々にまで蔓延している場所で、対自存在である我々が、自己認識するというのは、大変なことに違いない。今回、拘束ピエロは、「So complex semi-normal」でこの問題に果敢にチャレンジした。用いられるのは、出演者らの実体験をも含む思い出と真っ直ぐ向き合うことによる、或いは、関わりのあった人々との関係を問い直すことによる、~ごっこという形態のidentifyである。様々なごっこが表現される。虐待、性、虐め、生・死。これらに対置されるのは傷と痛みである。この構造は終始一貫している。彼らがこれらを提示したことには、無論、深い意味がある。虐待について言えば、虐待する者とされる者が居るわけであるが、そのどちらもが他者を必要としている。役者たちはそのことを知っていて、互いを互いの鏡として提示しているのである。因みにこの作品の構造が、これら様々な鏡像を提起し、同時に割れた鏡面によって傷つく自らの存在を辛うじて認識しているとすれば、これらのフラグメンツは不信社会の正に鏡。
そして、この歪んだ世界観を若者に強いる社会こそ日本だという痛ましいメッセージである。
汚れた世界
無頼組合
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2012/06/15 (金) ~ 2012/06/18 (月)公演終了
満足度★★★★
詩的シナリオ
タイトルといい、劇団名といい、ちょっとダーティーな感じの作風なのかと思っていたが、詩的で純度の高いシナリオで、無頼派の純粋性を思わせるものがある。きちっとしたメッセージ性を持ちながら、それを内在的に捉え、我々皆が、日常感じていることの延長に提示して見せることによって押しつけがましさや嫌味がなく、俳優たちの演技するものが、素直に伝わって好感を持った。舞台もシンプルで役者たちの演技力で勝負している点も良い。
目も耳も塞いだまま、生活の為だ、と自らを誤魔化して生きている多くの人々の心のうちのもやもやを舞台化して見せた点でも評価できる。個人的には5点を差し上げたい舞台であったが、他との兼ね合いで敢えて4点にしたが、お勧め。
NOVEL lie’s
super Actors team The funny face of a pirate ship 快賊船
ブディストホール(東京都)
2012/06/06 (水) ~ 2012/06/11 (月)公演終了
満足度★★★
謎解きと間
2時間10分と、かなり長い作品で、登場人物名にそれぞれ、意味を担わせる感じもあり、更に、それらが交錯した人間関係を乱反射させる中で、貴族という社会的遺制が絡まってかなり複雑な内容であるにも関わらず、観客を巻き込む為の工夫が足りないと感じられた。実際には、間の取り方に問題があるように思われる。推理劇なのだから、特に、推理を展開する場面では、役者が一方的に科白を述べるのではなく、ちょっと間をおいて、観客自身が考える暇を与えれば、もっと観客を巻き込むことができたはずである。これができなかったゆえに、演劇的なインパクトが薄弱になった。演出に難があるというべきだろう。それでも無理が生じるのであれば、シナリオをもう少し明快にすべきである。何と言っても、話し言葉だけで、演劇は進行してゆくのだ。瞬時に観客に届く言葉が必要である。
【全日程終了!】鬼畜ビューティー【ありがとうございました!】
ロ字ック
サンモールスタジオ(東京都)
2012/06/06 (水) ~ 2012/06/10 (日)公演終了
満足度★★★
性
思春期の女の子、男の子と社会の中の建前と本音。それらを繋ぐものが、性であったとして、何の不思議があろう。そして、うぶな人格が、性を隠蔽する者とそれに傷つきながらも必死に生きる者の間で歪むとしたら。
こんな設定で展開される舞台だったが、荒い所や場面転換の未熟などの欠点を抱えつつ、きらりと光る科白も混じる。好感を持ったのは、役者たちが一所懸命なことである。内容の陰惨も、必死の役者たちに救われて爽やかさすら感じさせた。
カサ・ノワール
ZIPANGU Stage
萬劇場(東京都)
2012/06/07 (木) ~ 2012/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
素直に見てよかったと思わせる舞台
舞台美術、装置、その使い方にも多くの工夫が凝らされ、笑いをふんだんに盛り込みながら、推理の展開もしっかり見せる。シナリオ、演技、演出。見てよかった、そう素直に思える舞台であった。テンポの良さも極めつきで、推理部分では、観客にも自分で考えさせるだけの間を取りつつ、絶妙の間合いで演技をこなしてゆく。推理物に必須の要素である、思い掛けない展開もバッチリだ。安定感を持ちつつ絶えず惹きつけるバランス感覚の確かさに、この劇団の底力を見たように思う。