満足度★★★★
蜃気楼
初見の劇場としては、現代的過ぎた気がする。舞台装置は見事なものであった。然し、その入れ物たる劇場は、言って見ればエミュが象徴していたウエスタンであった。これが、浅草の木馬亭のような小屋や江戸時代風の作りが今も残る地歌舞伎の小屋での公演ならば、遥かに効果が上がったと思う。
演出、演技共に、こなれたものであったが、世界に対する戦きのような要素をもっと出して欲しかった。ことに、栞は、引き裂かれた存在としてもっとおどおどした作りであって良いように思う。ちょうど、「ガラスの動物園」のローラのような。それとも、そういう類型化を演出家が嫌ったのであれば、世阿弥の”初心忘るべからず”という恐ろしいテーゼに向き合う形で。