満足度★★★★★
背筋を伸ばす
大正デモクラシーという言葉に象徴されるような民主主義や自由を求める動きがある一方で、米騒動に対する報道規制など、きな臭くなっていく時代と、そこに生きる人々の思いを描く群像劇。
報道の自由。新聞の使命。そして、受け取る側の責任と権利。報道とは何か、新聞とは何か、という問いかけが何度も繰り返されるけれど、それはある意味、自由や平等という言葉へとつながっていく。
自由も平等も、当たり前にそこにあるものでなく、意識して勝ち取り、あるいは守らなくてはならないものだと。
それを示すように劇中の人々が見せる誠実さや情熱が胸に迫る。
堂海や村嶋らが、抑圧に対して彼ららしい戦い方を見せようとする場面では、思わず目頭が熱くなった。
周囲一面に新聞を張り巡らせた美術。そこにかけられた、劇中でキーとなる言葉の書かれたいくつかの札。物語の最後に、秋川が「大正デモクラシー」という札を、客席に向けて掛け直す。
昨今の状況をも思い起こさせる骨太なテーマ性と観る者の目を惹きつけるエンターテイメント性を兼ね備えた完成度の高い舞台だった。
登場する人々の、それぞれのなすべきことに向き合おうとする真摯さに、今の自分を省みて思わず背筋を伸ばした。
満足度★★★★★
大正ってこんな時代だったのか...?
よく言う、大正ロマンの時間をわかりやすく表現。新聞という世界を通じて、マスコミの世界、体制との兼ね合いなどもリアルに説明するなど。前作のスピーディな作風がちょっと残ってる?はっちゃけぶりも楽しみの一つか?女流記者が『短大の卒業式』みたいな服装だったのですが、履物がブーツだったのがちょっと?というか、あの時代は何を履いていたのかしら?とも思いましたけど。楽しいステージでした。
満足度★★★
今、観ることができて良かった作品
きな臭いニュースが流れる昨今、
時代とのリンクが作品全体に厚みを持たせていた。
本当は純粋に物語として楽しませてもらいたかったが、
実際良いものを見せてもらったと思う。
舞台の転換自体をパフォーマンスにして見せるところが非常に格好良かった。
障子が外れるトラブルがあり、ちょっとドキドキ。
役者の適材適所。再演なのにあてがきみたいだった。
大正時代の衣装が素敵だった。
詩森さんが衣装も担当しているとのことで、多才に驚き。
満足度★★★★★
言葉の力
言葉の力を考え、そして信じようと思う。とみやまあゆみさん演じる紅子が言う「教育を一生の仕事にしようと…」という言葉を、お守りとして心に持ち続けようと思う。出てくる全員が正直でズケズケものを言う。現代人に有りがちな『これを言ったら嫌われるかな…喧嘩になるかなぁ」という考え方は無い。重要なのは、言える強さではなく、批判や口撃に晒されても、それを受け止めることができる強さを持っているということ。そして考えを述べる。大きな声は素晴らしい。力がある。酒巻誉洋さんの声に惚れ惚れする。ただ時折社会では大きな声は凶器となる。力強い声が周囲の人間の思考力を奪う。その声に口をつぐむことが黙認を意味し、大切なものを見失わせる。作家が、俳優が、まっすぐに突き付けてくる。さぁ、どうする?圧倒的な熱量を持つ作品だった。大正という時代のパワーが漲っていた。その突き進む力強さを、変貌し続けるJAZZのBGMが見事に融合し、転換の度に高みへと引き上げる。言葉の力を証明するような作品だが、眼差しや光や音楽といったものが生み出す力や価値も明らかにした。
満足度★★★★★
考えさせられるエンターテイメント作品
無鉄砲な清廉潔白と男前の女性が出ていれば、私はそれだけで楽しめるのですが、今作はそれ以上にズシーンときて、今、再演する意義を考えさえられましたね。
敵役を単純に悪役にしないのにも好感がもてました。
満足度★★★★★
色んな人に見て欲しい!
とてもタイムリーな作品なだけに終始前のめりに。板倉さん、桑原さんが素敵でした!多くの人に見てもらいたい作品だと終演後に感じました。
満足度★★★★★
世の情勢
劇場の外側では世の中がひっくり返るかもしれない法が生まれようとしている中、なんともタイムリーな舞台を見る事に。
信念があれば人の思考はそう簡単に操作は出来ない、と思う。
いつの間にかネットでニュースを読む事が浸透し、そのままネット購読者に変わり、家庭での新聞紙購読は停止してしまった。
言論統制へと矛先が向こうとしている瀬戸際で、きな臭い雰囲気が漂う中、「ジャーナリズム」のみを考えて見てるとしんどくなるのが陽気な場面転換に気が紛れ心弾む。桑原さんのその時代のキャリアウーマン役がよく似合ってた。
一歩外に出ると容易に予想できない現実が待っているが、舞台は面白かった。
満足度★★★★
大正時代の「マスコミ」=新聞
現代は当時の比較でない状況であるが、にせよ、「新聞」というシステムが、国民に広く情報を提供するツールに育って行くと同時に、「国民意識」の醸成にも深く噛んで行くという時代、国家権力介入は必定。 今そこにある「事実」、記者としての使命と、「情勢」とのはざまで右往左往する人々。その中にあって純粋一徹な新聞人魂を痛快に見せる人物も登場し、「新聞とは何か」を問いかける劇であった。
ジャズ&ダンスの転換(大正時代をデフォルメ?)で、新聞社と、記者の知己宅の二場面を往復し、伏流になるドラマも進行する。 最後の最後に、不在者の再登場での強引ともいえるエピソード挿入に、なぜか泣かされた。役の佇まいが的確ではまっていた。他の役にも、はまり具合を気味良く見れた人が多くいた。演技面でのクオリティが印象に残る。
満足度★★★★
ソワレ行きました
「国語の時間」などとは作風が真逆に近いくらい異なるが、本質部分は変わることなく、時代へのアンチテーゼとして確固たるスタンスを見せている。表現を生業とする方々にとって、他人事でない内容だけに、このような作品がもっと世間に認知されて欲しい。