満足度★★★★★
背筋を伸ばす
大正デモクラシーという言葉に象徴されるような民主主義や自由を求める動きがある一方で、米騒動に対する報道規制など、きな臭くなっていく時代と、そこに生きる人々の思いを描く群像劇。
報道の自由。新聞の使命。そして、受け取る側の責任と権利。報道とは何か、新聞とは何か、という問いかけが何度も繰り返されるけれど、それはある意味、自由や平等という言葉へとつながっていく。
自由も平等も、当たり前にそこにあるものでなく、意識して勝ち取り、あるいは守らなくてはならないものだと。
それを示すように劇中の人々が見せる誠実さや情熱が胸に迫る。
堂海や村嶋らが、抑圧に対して彼ららしい戦い方を見せようとする場面では、思わず目頭が熱くなった。
周囲一面に新聞を張り巡らせた美術。そこにかけられた、劇中でキーとなる言葉の書かれたいくつかの札。物語の最後に、秋川が「大正デモクラシー」という札を、客席に向けて掛け直す。
昨今の状況をも思い起こさせる骨太なテーマ性と観る者の目を惹きつけるエンターテイメント性を兼ね備えた完成度の高い舞台だった。
登場する人々の、それぞれのなすべきことに向き合おうとする真摯さに、今の自分を省みて思わず背筋を伸ばした。