伝奇浪漫「芳一(ほういち)」 公演情報 伝奇浪漫「芳一(ほういち)」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★

    芳一、良かったです!
    舞台美術や照明が洗練されていて美しかったです。人の思念を軸に何層にも重なる時間や空間を舞台の奥行を使ってみせるあたりも流石という感じ。
    野村貴浩さん、秋本一樹さん、土山壮也さん、とても素晴らしかったです。
    め組は本当に素晴らしい役者さんの多い劇団で拝見するのが楽しみです。

    ネタバレBOX

    勧行院の心に巣食った鬼が消えるシーンのあまりに早い変わり身には一瞬戸惑いましたが、清水祐美子さんの力技というか、観ている人を惹きつける力の凄さに気がつけば納得していました。
    共感できる人物像ではないのですが、人として感じ入るところのある役どころで、ここについては脚本の力というよりは、清水さんという役者さんに負うところが大きいのだとおもいます。
    すてきな女優さんです。
    岩倉具視も最も魅力的な一人で、今の時代に合った人物として描かれているあたり、大変好感がもてました。こういう人物の喰えない戦いっぷりが未来を明るく照らしてくれるのだろうなぁなんてことを考えながら観ていたのですが、もっとも共感できた役でもありました。
  • 満足度★★★★

    総合力の高さが評価できる舞台
    入る早々舞台美術に目を奪われた。吉祥寺シアターは、天井タッパも高く出演者の人数や作品内容との兼ね合いでキチンと計算しないと隙ができる。それを美的にも空間的にも内容的にも見事にマッチさせて更にセンスを感じさせる空間処理、絵柄、大道具のレイアウト等に感心したのである。照明、音響、演出も良い。

    ネタバレBOX

     
     古語の用い方なども、かなり練習を積んでいるのが見え、流石に幼児の頃から修練を積む古典芸能の役者には敵わないものの、良い印象を持った。中心になる崇徳院役の新宮 乙矢、土御門家傍系で陰陽師の倉橋役、藤原 習作、芳一役、秋本 一樹そして不具の体にコンプレックスを持ち乍ら、健気に生きる和宮を演じた辻谷 奈緒の演技は殊に気に入った。
     物語は、平安末期に起きた保元の乱(1156年)に敗れ、讃岐に島流しにされた崇徳院の写経が、都に受け入れられなかったことにより、院が朝廷を呪い憤死したこと、彼が大魔縁となって皇室を転覆させようと呪ったことに端を発する。然し、崇徳院は天皇になった段階でも不遇であった。というのも、父、鳥羽天皇の第一皇子とされながら、実は曾祖父、白河法皇と璋子の密通の結果の子とされ、父からは疎まれ続けたからである。史実として正しいか否かは兎も角、本作では、この説がベースになっている。
     また、平安時代末期は、北面の武士が登場した時期でもあり、保元・平治の乱以降伸長した平家の短い栄華の後、頼朝によって1192年には鎌倉幕府が成立、以降1868年迄、武士の世が続く先駆けとなった時期でもある。
    さて、時代は下って孝明天皇の慶應2年(1866年)、黒船来航以来、天下は上を下への大騒ぎ。朝廷とて時代の流れと無縁ではなかった。実権の無い公家は、尊王攘夷を掲げる薩長と組む方が得策と判断する者、公武合体などを通して幕府とこれまで通りの付き合いをしながら貴族の言い分を聞いて貰おうとする者に二分されていた。公武合体に際し、人身御供とされたのが、孝明天皇の妹、和宮である。彼女は、生まれつき片足が不自由でびっこな上、片方の手首から先が欠損したハンデキャップであった。血の濃い親族結婚を繰り返して来た皇室には、結構、ハンデキャップを持った皇族が多かった証でもあろう。だが、幕府は安政の大獄を実行した井伊直弼らが中心となって和宮降嫁による幕府の権威失墜回復、朝幕の関係改善アピール、そして尊王攘夷派に対するエクスキューズを同時に目指したのであった。
    然し、和宮自身は、乗り気でなかった。何故なら和宮はハンデキャップ、朝廷にあればこそ、天皇の権威を慮る慣習によって侮られずにすむものの、幕府へ下れば其の保証はないこと、また、一度も遭ったことは無いながら幼児の時から定められた書道の家としての婚約者、有栖川の宮の書を手本として、書に親しみ、其の文字に宿る人柄に恋してきたからである。この女心の純情がいじらしい。
    さはさりながら、歴史の無常は、総ての人物を押し流してゆく。天皇家に対し「皇をとって民となし、民を皇となさん」と呪った崇徳院の蘇りは、一途な愛故の和宮の命懸けの祈念であった。彼女は、自らの叶わぬ恋を崇徳院の歌(瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ)に託したのだった。霊魂を蘇らせる力のある場所、一条戻り橋上で。
    蘇った崇徳院の魂は、歴史に関与し始める。和宮の命を守り、乱世の到来を防ぐべく立ちあがった二人、陰陽師、倉橋と崇徳院・源平の兵どもの荒ぶる魂を安んずべく七百年の時を越えて旅する芳一が、崇徳院の荒ぶる魂と対峙する。
  • 満足度★★★★

    迫力ありました
    とても迫力があり、重みのある舞台でした。殺陣もキレがあり、着物などの衣装も本格的で、見応えがありました。本格的な時代物という中に、音楽は今風な感じで、かっこいい印象もありました。役者さん達の演技も素晴らしく、特に崇徳院役の新宮さんの迫力は怖い位でした。ストーリーは面白かったし、分かりにくい訳ではありませんが、人物関係が少し混乱したので、個人的な意見ですが、人物相関図などがあると理解し易かったと思います。見応えのある美しい舞台で満足でした。

  • 満足度★★★★★

    堪能!
    め組らしい舞台、いやいや今までの感覚を超えてきたと思う。ここは昔から芝居は当然、着物の着こなしも立ち振る舞いもしっかりとしたものを見せてくれる。男前の新宮さんが美少年だった頃は男性中心の舞台が主だったようたが、最近は女優陣もイキイキとイイ芝居を見せてくれる。皇女和宮の幕府への降嫁の辺りから女優陣あっての華やかさが匂ってくる。和宮の真っ直ぐな想い、母の悲哀、実に迫ってくるものがあった。またラストの連れ舞は素晴らしかった!新宮さん演じる崇徳院の怨念が迸って、周りを飲み込んでしまいそうな迫力!見応え有りでした。また音楽も奥行きと広がりを感じさせる選曲。これも見事だったと思います。

  • 満足度★★★★

    今、掛けるべき芝居に戻ってきてくれたのか、め組
    平安の崇徳院が幕末の世に大政奉還を挫くため祟り神となって現れるという筋。
     
    正直、昨年春から足が遠のいていたところを久しぶりに観たがまあまあまともな作風に戻りつつあって少しほっとした。
    「祟り」を「怨嗟≒鬼」と読み替え「祓い」「赦(ゆる)し」との競合として描きつつ個別の怨嗟の起点に立ち入ることは慎重に避けている。都合「祓う者」というよりは「怨嗟につきあう者」と見える。決して「カウンター」ではない(そこが甘いという向きもあろうがそもそも物語の役割というのはそういう可能性を具現化することでもあるのだからしてよいのだと思う)

    一方、今作は短絡的な政治視点はなくまた節操なく大義を振りかざしたり(すみませんね僕にはどうしてもそう見えてしまうのです)しないため、体感的には納得感が高く大人の鑑賞に堪えると思えた。

    め組お馴染みの「死を賭してでも出向かにゃならん男の任侠を…」というようなのも、気持ちはわかる。替え難きウリだというのもわかる。でも、今それを「板の上」でやるには立ち位置を明確にしなきゃあなりません。中道嘯き煙に巻くじゃあ、これどうしたって立ち行かない。
    こんなに板の上が不自由なのは、世の中の空気と呼応しているからでありまして、ヘタを打つっていうと前にも増して薄っぺらく見えてしまう。

    だから、そこんところが今作は良かった。
    物語は「個別の怨嗟(ヘイト)の起点」には立ち入らない。しかし怨嗟(ヘイト)にはとことんつきあう。そして「怨嗟(ヘイト)にとことんつきあう寡黙な男」にも、お馴染みの「任侠」はちゃんと見えたです。かっこよかったですよ。秋本さん。
    ホンはその厄介な話に思い切って踏み込んでいるし。
    平安では刃を下に太刀を吊っていて、幕末では打刀を腰に差しているところなど各所に配慮も効いていたし。

  • 満足度★★★★★

    “人間の業”にフォーカスした物語り
    幕末、そして溯ること700年の時代背景・史実を基にした物語を見事に表現した作品。

    登場人物の“相関・想い・葛藤”がわかり易く描かれており、
    音楽(音響)・照明・演出と相まって惹きつけられた舞台だった。

    ネタバレBOX

    自身の弟からの暗殺命令によって殺されてしまった“崇徳院”の怨念。

    幕府との友好関係を考慮した為の“孝明天皇”の命令により、
    許婚が在りながらも、幕府側に娘を輿入れさせなければならない母の葛藤からくる正常ではない想い。

    それら、“人間の業”にフォーカスした物語り。。。
  • 満足度★★★★★

    すごいっ!感動しました。
    なんというか、全体に凄みがあり、十分に楽しめる娯楽作品であるにもかかわらず普遍的な人間の業を感じさせ、深い感動を呼ぶ舞台でした。それに、色々と美しかったですねぇ。まず美術がすごい。金泥や緑青を使ったかのような深みのある色と大胆な構図が面白く、それだけで十分に素晴らしい劇を予見させる。効果や音楽も素晴らしかった。開演時の前方から聞こえてくる琵琶の音と後方から響く澄んだ鉦の音。うわぁ、凝ってるなあ、とびっくり。そして衣装。平安時代の衣装や公家の装束を作るのは大変だったと思いますが、とても丁寧に作られており、目を惹かれました。清盛の太刀が江戸時代の刀とは違って、湾曲が大きく作りが華麗であったり(細かい~)女性の裾を引く華麗な衣装など、吉祥寺シアターが狭く見えるくらい。でも、何よりも崇徳院と芳一の佇まいの美しさには驚きました。二人ともボロボロの衣装で、でもその立ち姿の美しさはどうだろう。どんなに激しく動いても倒れてもやはり美しい。時代劇の型というのはすごいものですね。崇徳院の悲劇と幕末の動乱期をうまく噛みあわせたストーリーも面白く、陰陽師の存在やその台詞も、こうした職業の人々が歴史に果たした役割を彷彿させる力強さがあり、とても説得力があった。ラスト、芳一にフォーカスしたライトが次第に暗くなっていく時はエンディングの定法とはいえ、消えてしまうのが惜しいほどでした。

    ネタバレBOX

    和宮像は有吉佐和子氏の説に拠ったものでしょうか、色々と不思議な説がある女性ですね。和宮以前にも力が弱ってきた徳川家に、京から不具に近い公家の女性が輿入れしたという記録があり、その女性はどんな人生を送ったのだろうと思ったものでした。大きな歴史の流れと様々な伝説、伝奇を見事に活かした、息をもつかせぬ素晴らしい舞台でした。
  • 満足度★★★★★

    素晴らしかった!
    自分が観た「劇団め組」公演では一番好きかもしれない。脚本、演出、演技、照明・音響効果等、全てにおいて堪能した。舞台の雰囲気を「妖幻」と造語するが、観(魅)せ方が自然体で本当に楽しめた。
    特に、新宮乙矢さん の演技は悲哀・情念・怨念など時代を超えた思いが…迫力があった。

    少し気になったところ…。
    初日のせいか、殺陣シーンが粗いように感じたので丁寧に演じてほしい。
    また、冒頭の事件(乱)は、歴史に詳しければ理解しやすいが…。少し割愛し過ぎたかもしれない。

    些細な難点はあるが、大きな見方(娯楽芝居という観点)をすれば秀作だと思う。

    ネタバレBOX

    梗概は、説明を一部引用…「保元の乱で敗れた崇徳院が讃岐に流刑され、その怨念が700年の時を経て、幕末の京に現れる。長きに渡り、武家政権の実効支配のもと、その権威を封印されてきた朝廷が復権を目論み、勤王の志士達との連携を開始しようとしていた。彼らが目指すは倒幕。
    そのころ、京の一条戻り橋に一人の法師が姿を現した。名は芳一。何処から来て何処へ行くのか知る者はない。芳一は、式神が潜むという一条戻り橋で不穏の気配を嗅ぎ取る。式神を使役出来るのは、安倍晴明の流れをくむ陰陽師土御門家。血の抗争が激しさを増す京で、芳一は、朝廷の野望と、その歴史に隠された怨念の闇に足を踏み入れようとしていた」ということ。

    この舞台の良かったところは、もちろん演劇要素が素晴らしいことであるが、人間の業という、本人の意思をも飲み込むような不思議な力。その如何ともしがたい悲しさのようなものが滲み出ている味わいである。観ている者が思わず納得してしまうような内なる魂...それが怨霊へ変化しようとも、打ち消したくない気持にさせる。朽ちた姿であるが、何故か美しいのである(「徳」の字を諡号することで鎮魂された)。

    さて、舞台セットは中央が宮殿内、場面によっては公家の門前を作る。基本は上手側だけ見たら流水文様のようで、その円形真ん中を刳り貫いた造作である。客席側の上手・下手には波涛文様の高衝立が各一対。そして、先に記した一条戻り橋が下手に架かる。
    このシンプルなセットを照明が見事に映えさせた。基本的な射光もシンプルで、その衣装...例えば束帯や十二単をイメージさせる華やかさ、それが彩りとして照明効果を際立たせた。そして見せ場のスポットなどメリハリが印象に残る。そして、ラストの崇徳院の成仏というか昇華というか、その定法に従った演出は見事で、大きな余韻を残してくれた。
    本当に娯楽芝居の醍醐味を堪能させてもらった。

    次回公演も楽しみにしております。

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