満足度★★★★
岡本健一さん、圧巻
奇しくも、北海道の大学生が、イスラム国戦闘に参加する寸前に、公安に事情聴取を受けたというニュースを耳にした日にこの芝居を観ました。
いよいよ、日本人にも、中東問題が卑近な出来事になったと衝撃を受けたばかりだっただけに、より心に食い込む芝居として印象深く観劇しました。
役者さんあってこそ、成功した舞台だと感じます。
中でも、岡本健一さんの、「狂演」とも呼べそうな熱演ぶりには、臨場感があり過ぎて、胸が押しつぶされそうでした。
ただ、最終場面の描き方が、急にリアルさが薄れ、演劇的な雰囲気になったのには、若干違和感を感じました。(「レミゼラブル」のラストシーンを彷彿としました)どなたかも指摘されていたように、いきなり、双子の子供達にアウエイ感を感じてしまって…。
中東版のギリシャ悲劇的なストーリー展開。
麻実れいさんの立ち姿が美しく決まって、元宝塚男役トップの面目躍如といった見た目の感動もありました。
満足度★★★★★
圧倒的な舞台
壮絶な運命に直面する家族を通じて人間の尊厳を問う作品で、脚本・演出・役者のいずれも素晴らしく、3時間を超える上演時間を意識させない強い求心力がありました。
男女の双子の母親が晩年に突然喋らなくなってそのまま死んでしまい、遺言に従って父親およびその存在を知らされていなかった兄を探すエピソードと、母親の過去のエピソードが展開し、衝撃的な事実が明らかになる物語でした。
理由・原因を遡及して行くやりとりが2度あり、その終わりのなさに空しさを感じました。最後に明らかになる事実は途中で何となく分かってしまいますが、その事実自体よりもその事実に対する反応が丁寧に描かれていて、強く心を打ちました。
一番最後の絵面が宗教画のようで美しかったです。
土で覆われた勾配のついた床しかない空間で、2つの場所・2つの時代が交錯しながら、時には同時並行で物語が展開するものの、照明で巧みにエリアをフレーミングして分かり易く描かれていました。
物語としてはとても重い内容ながらも、謎が少しづつ明らかになって行くミステリー仕立ての構成や、1人で10代から60代まで演じたり、複数の役を演じたり、場面転換に工夫があったりと、あざとくならない程度に趣向を凝らした演出があって、演劇として楽しかったです。特に効果音に複数の意味が掛けてあり、同じ音が異なる場面で違う意味合いを帯びさせていたのが印象的でした。
BGMとして使われていた音楽が悲劇を無闇に盛り上げる大袈裟なものではなく、明るさや希望が感じられるピアノ曲だったのも良かったです。
7人の役者だけでスケールの大きな世界を表現していて素晴らしかったです。特に岡本健一さんは多くの役をそれぞれ説得力のあるキャラクターとして演じていて良かったです。
満足度★★★
力作
母を訪ねて現代中東編というか。
平地舞台に周囲は漆黒、人と椅子しかない舞台なのに、その余白部分を埋めるような波乱のような真実、激動?劇的?で緊張感ある展開に次第に重苦しくなったりした。言葉がうまく見つからないまま肩凝ったw
10代から終盤の麻実さんがギリシャ悲劇然、どの舞台よりも控えめなしゅうさん、全員良かったです。
海外のニュース映像を見ているかのような、あまり慣れ親しんだ題材ではないし、悲惨な事例があるにはあるが、凄惨な描写がある訳ではない。だけど、強烈な余韻ある舞台だった。体調を万全にして見た方が良いと思う。
休憩込み約3時間15分
満足度★★★
死者は自ら遺書を読むことはできない
今秋の最も期待される役者人、演出の舞台でしたが、正直この舞台を日本でやるのは難しいと思いました。主人公ナワルの死後、遺言代理人から、双子の姉弟に、遺言として2通の手紙を自分たちの父と兄に届けるようにとの指示の元、中東の母の生地に赴き、結果的に、母の衝撃の半生と、自分たちの出生の秘密を知ることになる。最後のクライマックスで、その父兄に宛てた2通の手紙が読まれるのだが、舞台上では、死者であるナワルが現前として、その遺言を滔々と読むのである。この演出は、死者が葬式の場で立ち上がり、遺言を自ら読むような光景で正直気持ちが悪かった。映画と同様、死者は飽く迄過去の回想の中でのみ存在し、手紙の場面ではナワルは音声のみという演出にできなかったのだろうか?これでは、生者である双子の姉弟が真実を知って、母の心を知り、母の死と子供達の再生という演劇的カタルシスが台無しだったと思う。
満足度★★★★★
美しくて残酷なセリフとどんでん返しの連続
何もかもが凄まじい…。ストレート・プレイにこれほどまでに心揺さぶられ、涙が止まらなくなったのは本当に久しぶり。脚本も演技も演出も高密度です。観客も体力万全で!上演時間は約3時間15分(途中休憩15分を含む)。