炎 アンサンディ 公演情報 世田谷パブリックシアター「炎 アンサンディ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    岡本健一さん、圧巻
    奇しくも、北海道の大学生が、イスラム国戦闘に参加する寸前に、公安に事情聴取を受けたというニュースを耳にした日にこの芝居を観ました。

    いよいよ、日本人にも、中東問題が卑近な出来事になったと衝撃を受けたばかりだっただけに、より心に食い込む芝居として印象深く観劇しました。

    役者さんあってこそ、成功した舞台だと感じます。

    中でも、岡本健一さんの、「狂演」とも呼べそうな熱演ぶりには、臨場感があり過ぎて、胸が押しつぶされそうでした。

    ただ、最終場面の描き方が、急にリアルさが薄れ、演劇的な雰囲気になったのには、若干違和感を感じました。(「レミゼラブル」のラストシーンを彷彿としました)どなたかも指摘されていたように、いきなり、双子の子供達にアウエイ感を感じてしまって…。

    中東版のギリシャ悲劇的なストーリー展開。

    麻実れいさんの立ち姿が美しく決まって、元宝塚男役トップの面目躍如といった見た目の感動もありました。

    ネタバレBOX

    ほぼ裸舞台で、時や場所が交錯する割には、今どこのシーンなのかということが如実にわかり、演出の手腕を感じました。

    遺書を、双子の子供達に見せることを託された、公証人のエルミルが、何度か繰り返す「確かに、確かに、確かに…」の台詞、この世に、確かなことなんて存在するのか、でも、認めたくなくても、確実に、確かな事実は存在する。そんな作者の思いがこだまするような気がしました。

    自分達への愛情がないと感じていた母親の真実にたどり着いた時に、双子が発する慟哭の科白、「1+1は、1」という種明かしは、気が利いた作者の発想だと思いましたが、それ以上に、双子の娘ジャンヌが、どんな計算でも、必ず最後は1に帰結すると、シモンに向かって、計算式を唱え続ける場面が、むしろ、暗示めいて、観客の気持ちを鷲掴みにする効果テキメンでした。

    岡本健一さんは、6役全てを、見事に体現され、本当に実力俳優さんになられたなあと感無量の思いがしましたが、特に、最後の役、ニハッドの演技には、戦慄が走りました。

    歌いながら、人を殺戮し、その直後に、その死者の表情を激写し、満足げにほくそ笑む…。
    どんな戦場写真を目にするよりも、衝撃的な光景として記憶に残りそうです。

    二幕で登場した、2体の死体もとてもリアルで、至近距離の席で観ていたので、ずっと、目を逸らしたい思いに駆られました。

    頭ではなく、体と目で、いろいろ考えさせられる舞台作品でした。

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    2014/10/08 12:10

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