長い墓標の列 公演情報 長い墓標の列」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★

    『マニラ瑞穂記』が楽しみ
     新国立劇場の演劇研修所修了生が多数出演する企画の第一弾で、1期生の古河耕史さんが水を得た魚のような活躍っぷり!
     1957年初演の骨太な群像劇。序盤は初日らしい硬さで少々停滞したけど、休憩後の後半は物語が急展開し、最後まで充実。昨年の「るつぼ」同様、昭和13年(1938年)の話なのに今にフィットし過ぎて、ショック大きい。ぐさぐさ刺ささりまくる。

  • 満足度★★★★★

    ほんと、観てよかった!深く重い、知的な討論。
    観て良かった!
    深く、重い内容。

    戦争をめぐり、軍部と対立し、命を賭けて自分の信念を貫き、戦うのか。
    自分の家族を犠牲にしても。

    それとも、生きるため、家族と生活を守るためには、信念を捨てるか。

    人の弱さを認めるのか、容認するのか。
    「弱いから人間なのだ。」という弟子の言葉。

    「人間の努力は無限大だよ。」という教授の言葉。
    弱きを非難し、無限の力を信じて戦うのか。

    村田雄浩さんは、テレビドラマでは気弱な役ばかりだけれど、
    ここでは信念の人を演じ、教授役がはまっている。

    対峙する、その弟子は、『関数ドミノ』で強烈な印象を残し、
    虚構の劇団公演の後、役柄の幅を広げていった古河耕史さん。

    最後まで繰り広げられる二人の討論、ぶつかり合う主張、
    その演技が見事でした。

    新国立劇場のシリーズ3本まとめて購入の、
    特典10%割引券によるチケット購入でした。

    この機会がなければ自分から観劇に選んでいたかわからない、
    こんな機会がなければ観ていなかったかもしれない。

    ほんと、観てよかった!

  • 満足度★★★★★

    重厚感がありました
    村田雄浩さん主演で、ほかにベテランの方と周りを新国立劇場の演劇研修所の修了生で固められていました。
    時代背景が戦中の思想統制下における大学内の人間模様を描いていました。村田さん演じる山名教授の弟子に裏切られて大学を去った後も、自室にこもり勉強を続け、空襲警報が鳴ろうとも黙々と机に向かい自分の信念のために学問を追い求めた姿と師と決別し大学に残った古河耕史さん演じる城崎助教授の対照的な人間性が印象に残っています。
    あっちふらふら、こっちふらふらで付和雷同の人が多いように感じる現代において、考えさせられた劇でした。

  • 満足度★★★★★

    理念か現実か
    本作の初演は1957年ですが、約55年が経過した現代においても
    舞台の設定を変えるだけで、そのまま今の日本の状況をものの
    見事に説明しているような気がして、正直少しぞっとしました。

    何故なら、本作の最後は、「理想の死」と、最早逃れられない
    「破滅」と、醒め切った「現実の蔓延」で幕切れを迎えるからです。

    それを客席から観ている自分にとっては、現在の日本の未来は
    まったく同じ地点に帰結するのではないかという考えがひしひしと
    するのです。

    ネタバレBOX

    物語のあらすじは「説明」にある通りです。

    この作品で最も重要と思われるところは理想的自由主義的
    社会主義を掲げ、「人間の可能性は無限大だ」を奉じる山名と、
    その弟子である城崎の対立でしょう。

    あくまで、「人間の可能性は無限大で、負ける闘いでも闘い
    続けなければいけない」とする山名に対して、

    城崎は全く違う意見、「万人が先生のような正しさに
    生きているわけではない」、「既に終わってしまった大学でも
    教えを請いに来ている学生はいる。彼らを自分の理念だけで
    見捨てるわけにはいかない」、「そもそも先生の発言はつまらない
    ヒロイズムに過ぎません」を言う。

    観ていて、太宰治の「駆込み訴え」を思い出しました。

    「理念に生き、美しいままでありたい」とする山名に対して、
    人間はそうなれるほど強くはないとする城崎の対立。
    城崎が最後、山名を裏切り、大学に復職するところが
    イエスを裏切った、弱いユダを思い起こさせました。

    もちろん、山名の確固たる姿勢にも瑕疵がないとはいえません。

    「理想に生き、美しいまま生をまっとうする」というのは、自らの
    理想的民主主義的社会主義の立場からみれば、人間本来の
    精神に則った、発展的、進歩的な生き方かもしれませんが、

    この「理想」を「八紘一宇」、もしくは「大東亜共栄圏」の理想に
    置き換えてしまえば、なんのことはない、意見を異にする、
    革新派の立場とそう変わることはないのです。

    現に、憑かれたように研究を重ね、命をも燃焼させている
    山名の姿に、私は気高さというより、妄執のようなものすら
    覚え、そら恐ろしさすら感じました。

    そこにあるのは、城崎がいみじくも言い放った、「ヒロイズム」であり、
    日本民族の未来は我にあり! とする、旧来的な知識人階級の全人
    善導型の指導体系に過ぎないのです。

    その、単純に過ぎない対立が、本作『長い墓標の列』であり、山名と
    城崎―「理想主義」と「現実主義」の終わることのない対決は、現代
    日本の潮流の中にあっても脈々と生き続けていると言える気がするのです。
  • 満足度★★★★★

    いまこそ問われるべき作品
    1957年初演の作品で、舞台設定は第二次大戦前夜~戦中という作品だが、今の社会状況の中でこそ問われるべき作品。

    とにかく、その脚本の豊かさ。

    安易にどの立場が正義だと押し付ける類の作品ではない。

    この作品の中で問われていることは、私(たち)自身が今日問われていることである。

    ネタバレBOX

    作品のラストは、時代に正面から抗った主人公の山名教授ではなく、山名と決別し真逆の立場をとった教え子城崎の台詞で終わる。
    正確な台詞は覚えていないが、主旨としては「時代の流れ、つまり歴史は抗いようのないものであるが、その流れを作っているのが私自身でであるなばら、私はその責任を認め、加担者である負い目を背負いながら生き続けよう」というような内容。
    この作品の主人公は、私には城崎に見えた。そして、それは私(たち)自身だ。

    また、極めて重要なのが、山名の娘の最後の告白。
    時代状況を考えれば当時の女性、しかも娘という立場の言葉は、声なき声、その言葉が強く印象に残った。

    とにかく脚本が素晴らしい。

    演技や演出も素晴らしかった。


    結局、作品の強度を支える一番のものは、作品の時代への問いかけだと思っているのは、私が古い考え方を持っているからだろうか、、、。
  • 満足度★★★★★

    時代に抗うこと
    あらすじは説明にあるとおり。

    村田雄浩さんの熱演が素晴らしかった。大げさかも知れないが、心が震える思いであった。演出、役者とも素晴らしく、より多くの人に観て頂きたい良作。

    時代の流れでは、信念を貫くことはかくも難しいことなのでか。

    ひるがえって、今の学者や評論家、政治家のなんと節操のないこと夥しい。

    そういう自分もえらそうなことはいえないが。

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