14の夕べ / 14 EVENINGS 公演情報 14の夕べ / 14 EVENINGS」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★

    村川拓也鑑賞
    昨年のF/Tで上演された『ツァイトゲーバー』の再演で、障害者と介護者、パブリックとプライヴェート、現実と虚構等、様々な観点で考えさせられる作品でした。

    村川さんが登場し、少し作品の説明をした後、「メンバーが1人足りないので、誰か出演していただけませんか?」と呼び掛け、立候補する人がいて、4つの指示をした後にパフォーマンスが始まりました。

    全身不随で、目の動きでしかコミュニケーションを取れない「藤井さん」(立候補した観客が演じました)と、ヘルパー(実際にヘルパーの仕事をされている方が演じました)の通常をそのまま舞台に上げたかのような体裁でした。
    藤井さんに話し掛けるときだけマイクを用いたり、パイプ椅子を車椅子に見立てる以外は小道具を用いずに振りの演技をしたり、村川さんがステージの角にずっと座っていたりと、フィクションであることを意識させる仕掛けが周到に用意されていて、現実と虚構が入り混じった不思議な緊張感とユーモアが感じられました。

    藤井さん役の方への指示の1つは、60分間の上演中に自由なタイミングで4回、自分の願い事(この方は「自由な時間が欲しい」でした)を言うというもので、実際その言葉を発するのですが、ヘルパーは全く気に留めずに淡々と機械的に作業を進めていて、その残酷さが衝撃的でした。

    展示室の一角にステージと客席を組んでいて、それ以外の使われていない空間の方がはるかに広く、最後にそこをヘルパーが帰っていく足音が延々と響いていたのが印象的でした。

  • 満足度★★★★★

    「ツァイトゲーバー」
    一見シンプルだけど・・・素晴らしい!

    同じ京都のピンク地底人なんかを観たときにも思ったのだけれど、
    東京の若手劇団などに一番欲しいのが、
    こんな、愚鈍なまでに真っ直ぐな作者の視線であったりするのでは
    ないかな、などとも思ったりするのです。

    京都は手作り市なども盛んなせいか、
    劇研などのセットでも、
    シンプルながら東京では想像もつかないような(豪華さという意味ではなく
    精緻で作り込まれたものが何気なくあったりする。

    作品それ自体についても、
    今回の作品のように、
    一見非常にシンプルでどこにでもありそうな概要でありながら、
    詳細に分析してみると
    全くどこにもない作者の視線のようなものがひっそりと反映されていたりする。

    このような、
    地味ながらも
    愚直なまでに真っ直ぐな姿勢の作品が、
    多くの(普段は演劇に足を運ばなさそうな)人の前で
    (あの人たちが観劇好きなら、とっくに劇研などは人であふれかえっていることだろうから
    上演される機会を得るというのは、
    とても素晴らしいことだと思います。

  • 満足度★★

    小林耕平鑑賞
    『タ・イ・ム・マ・シ・ン』と題されたパフォーマンスで、現代美術家の小林耕平さんが山形育弘さん(core of bells)を対話相手にして、会場内に散在させたタイムマシンと称する作品群を解説して回るという内容でした。所々に興味深い点はあったものの、構成感がなくて行き当たりばったりな雰囲気が強く、観客に対しての見せ方もあまり考慮されていないように思われ、パフォーマンスとしては成立していないと思いました。

    会場内にあるオブジェで何かしらの行為をしている映像が流されていて、開演時刻を過ぎて小林さんと山形さんが登場し、先程の映像に文章を重ねた映像を止めながら流し、小林さんの解説に山形さんが疑問や突っ込みのコメントを入れる形で進行しました。
    「属性の貸し借り」といった哲学的な内容を、行きつ戻りつ掘り下げて行き、うっすらと分かりかけそうになったところで話題が飛び、なかなか核心に辿り着かないもどかしさに不思議な魅力がありました。
    パフォーマンス研究者の伊藤亜紗さんが書いた文章にインスパイアされて作品を作り、それを解説しながら自らも思考を深めるという作品全体の枠組みが知的好奇心をそそるものでした。

    退館時間になって尻切れとんぼで終わってしまい、内容的にはかなり消化不良を起こしましたが、じっくりと考える時間が新鮮に感じられました。トーク慣れしていなさそうな小林さんの話に山形さんが鋭くかつユーモラスに反応していたのが楽しかったです。

  • 満足度

    手塚夏子鑑賞
    2時間半以上の間、踊ることも芝居をしたりすることもなく、パフォーマンスというよりはセミナーの形式に近く、『ただの「実験」がメディアになるのか?の実験』というタイトル通りの内容でした。

    会社員の田仲桂さんと、反原発デモを企画している井出実さんによる「実験」を手塚夏子さんの司会で進める形式でした。

    田仲さんが観客に記憶から削除したいことを書かせ柱に貼らせた後に、田仲さんは今日の新聞を取り出し、記事の中の原発関連の言葉を黒く塗り潰し、自身が福島のいわき在住であることを明かしました。
    井出さんは手塚さんの息子さんを王様として観客参加のごっこ遊びの様な展開で、意図が分かりませんでした。自分は司会に徹すると言っていた井出さんが王様に対して誘導尋問的に話を進めていたのがいやらしく感じました。

    休憩時間を挟んで、再び田仲さんの実験で、祈りについて考えるというもので、会場にある大きな木製の箱を観客を交えて叩いて祈ることを実践しました。
    田仲さんが反原発デモへの違和感を述べたところで井出さんの番になり、デモの終わりに行っている、輪になって太鼓を叩くパフォーマンスを実演しました。それに拒否感を持つ人は行動で示して欲しいとのコメントが手塚さんからありました。
    最後は手塚さんがステンレスのボウルを打ち鳴らしながら無の境地に辿り着こうとする実験でした。

    手塚さん自身は枠の外から実験の反応を観察するという作品の形式自体には興味を持ちましたが、内容的には「実験」にすらなっていなくて退屈でした。センシティヴな思想的・政治的テーマの扱い方がナイーブ過ぎるように感じました。福島在住の方のメディアを通していない意見が聞けたのが良かったです。

  • 満足度★★

    No Collective鑑賞
    『Concertos No.4』と題された、照明を消した美術館の展示室でのパフォーマンスで、1時間程度の間で特に大きなイベントも起こらない、アナーキーな作品でした。

    エントランスで手に蓄光テープを貼られて、開演すると真っ暗になると蓄光テープがぼんやりと光り、ニュースのアナウンスを加工したような音が鳴り響く中、多数のパフォーマー達が音が出たり光ったりするオモチャを観客の服に付けて回り、ノイズや光が無秩序に沸き上がる焦点のない時間と空間が続きました。
    クライマックスもないままにパフォーマーの誘導によってロビーに戻り、ロビーでも加工された音声が流れていました。

    音と光の現象としては楽しめたものの、あまりにも取っ掛かりが無いため、コンセプト的な部分では面白さが伝わって来ませんでした。
    暗闇の中で誰が出演者で誰が観客かが分からない状況におけるコミュニケーションの形成をテーマにしているのかもと思いましたが、出演者達だけで盛り上がっているように見えました(観客も交ざっていたのかもしれませんが)。
    そのようなテーマではなかったとしても、もう少し受け取り方のヒントとなる仕掛けや構成を感じさせて欲しかったです。

  • 満足度★★★★★

    てっきり
    福永信氏が朗読をするのかとばっかり思っていたので、
    観客席から松本花菜さんがこっそり出てきておもむろに朗読を始めたときは
    かなりびっくりしました。

    生で観るのはまったく初めてだったのですが、
    ことばの訛り的なものはないものの、
    どことなく大阪っぽさを感じたり。

    その伸び伸びとした雰囲気が福永信氏の作品ともぴったり合っているようで、
    ・・この作家さん、なかなか粋だな・・
    と思ってたら、最後に出演者全員の挨拶の時に出てきて、
    ・・なかなか人の良さそうな方でした(笑

  • 満足度★★★

    東京デスロック鑑賞
    ここ数年間、東京での公演をしてこなかった東京デスロックの久々の東京、しかもある意味東京の中心である皇居のすぐ近くでの公演で、『Rehabilitation』と題された作品は、パフォーマンスを通じて東京について考えさせる刺激的なものでした。

    近代美術館の展示室内に方向性を持たせずに雑然と置かれた椅子に観客が座り、冒頭に『君が代』が流れた後、3方の壁に心理カウンセリングのアンケートような質問50個が次々に映された後、「Where did you come from?」と表示され、男女2人ずつの役者が順番に観客の間を縫って歩きながら自分の出身地について語るシークエンスが続きました。
    映像で観客に部屋の中央に集まるように指示されて、すし詰め状態の中を役者達が無理矢理通りながら東京の電車の混雑の酷さを語っていたのがユーモラスでした。
    次に出身地別に部屋の周囲に移動するように指示があり、移動し終わったところで演出の多田さんがマイクを持って登場してゆるい感じの挨拶があり、後半は4人の役者による出身地ネタのフリートーク形式で進み、君が代の変奏曲が流れる中、1人が他の3人に盆踊りを教える流れになって音頭が流れ、さらに途中からそこに「再稼働反対」と訴える脱原発デモの声が重なり、『東京音頭』に曲が変わり「Shall we dance?」「stand up?」と字幕で煽っても立って踊る人がいなかった(たぶんそれも織り込み済みだったと思います)流れは、大多数側に乗っかっておこうとする今の東京の人の姿を象徴しているようで印象的でした。
    最後はまた50のアンケートが映し出され役者達がそれぞれ「はい」、「いいえ」と答えて行き、東京に住むことについて考えさせられました。

    美術館での無料イベントで普段とは異なる客層も多い中、90分以上あるエッジーな作品を上演した姿勢が素晴らしく、客席大移動や8面映像投影といった、美術館の広い空間を活かした表現が良かったです。

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