狂人よ、何処へ ~俳諧亭句楽ノ生ト死~ 公演情報 狂人よ、何処へ ~俳諧亭句楽ノ生ト死~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-11件 / 11件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/03/21 (金) 19:00

    大正・昭和の歌人であり劇作家であり小説家だった吉井勇(1886-1960 )は、大女優・松井須磨子が唄い大流行させた「ゴンドラの歌」の作詞家としても知られている。「いのち短し恋せよ乙女~」という歌詞で有名なのは知っていた。
     しかし吉井勇が「句楽もの」と呼ばれる作品群があり、「俳諧亭句楽」という落語家と、その仲間たちの騒動を描いたもので、九本の戯曲のほかに「句楽の日記」「句楽の手紙」などの日記体小説もある。それらを通じて描かれているのは芸人たちのもの悲しく、そして微笑ましい生きざまが描かれた句楽ものを連作していた事は知らず、吉井勇の新たな、良い意味で意外な一面を覗けた気がして良かった。
     
     吉井勇作の俳諧亭句楽を主人公にした群像劇の句楽シリーズから九本の戯曲と複数の小説から面白い、不思議な、下らない、物悲しくも笑える話を選んでバランスよく組み合わせて一本の話にまとめられていて、時に笑えて、時に悲哀に満ちながらも、全体としてはあまりに馬鹿馬鹿しいが、それをあまりに真剣になり、何やら魂を作る機会だの、魂の病院だのと句楽は最終的に狂ったかに見えるが、意外と、もしかしたら実現不可能では無いんじゃないかと思わせてくる、妙な説得力があり、圧倒されているうちに終わっていた。
     もはや、今の時代、不穏で先行きが見えない社会の中で、魂の病院だの、魂を作る機会だの魂の墓場だのといった一見馬鹿馬鹿しいまでの話であっても、その話にほっこりさせられ、気持ちも晴れ晴れとするんだったら、それが本当に実現可能かどうかはおいといて、その発想は良いことだと感じた。

     句楽と仲間たちの基本取り留めもなく、しょうもない話が浅草喜劇のドタバタで話の筋があってないようなハチャメチャ喜劇や、エノケン映画の笑い、落語に出てくる人情的だが、涙に訴え過ぎない長屋連中の笑いといったような笑いが組み合わさったような感じで、登場人物たちもとても個性的で、癖が強くて、日々の嫌なことや、ストレスがたちどころに消えて大いに笑えて、解消できて良かった。

  • 実演鑑賞

    劇中でソプラノ・サックスを吹いていた徳田さんはバークリーに留学もしていたとか。
    他の俳優たちに全然ひけをとってなかったけど、演技とか学んだのかな?
    演奏家とかダンサーなんかが演技のレッスンとか受けていなくても、見事な演技してしまうことが、ままあります。
    どうなんでしょう?
    機会があれば、ぜひともうかがいたいなあ。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    大正から昭和にかけての時代設定なのでしょうか。芸人たちの群像劇、とても丁寧な作品作りで、分かりやすく、実に見事でした。ただ個人的には説明的で繰り返されるセリフ(だからこそ分かりやすいのですが)が少し冗長に感じましたが。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    吉井勇の歌碑を、何度も目にしたことがあるので、歌人という認識しかありませんでしたが、今回、このような再構築された芸人のお話を観劇し、今まで知らなかった、新たな吉井勇を発見できました。

    ネタバレBOX

    桂 右團治 さんも、桂 小すみ さんも、先月、浅草演芸ホールで拝見したばかりでしたので、上野ストアハウスへのご出演は、感激しました。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    大正・昭和の歌人、劇作家、小説家である吉井勇の知られざる作品群「句楽もの」は俳諧亭句楽という落語家とその仲間たちの騒動を描いた九本の戯曲と日記体小説。これらの作品は、裕福な境遇にあった吉井勇が社会の底辺で生きる芸人たちに向けたあこがれの眼差しによって描かれている。公演は、吉井勇の心を捉えた芸人たちの姿に想いを馳せながらエピソードを再構築し、失われた下町情緒、生活風景を生き生きと描き出していました。自分はその時代の情緒を知らない年代なので、下町文化が新鮮に感じました。同時に今の時代の人との接し方が、希薄な感じがしてなりませんでした。コミュニケーションについて、どうあるべきか考えさせられる作品でした。良い舞台を鑑賞させていただき、ありがとうございました。

  • 実演鑑賞

    面白かったです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    まぁすごい舞台を観た。
    前売り4,500円のレベルじゃない。
    歌舞伎ばりの早替わり、息をつかせぬ台詞回し。
    絶妙な間。
    8,000円、12,000円払って観る舞台より遥かにすごい舞台だった。
    まさに「芸人」の集団。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    当日パンフによれば、吉井勇の原作で 三代目蝶花樓馬樂をモデルにした人物 =俳諧亭句樂を主人公に、その句樂や句樂の周辺を描いた作品群。公演は、その「句樂もの」の幾つかを遊戯空間(構成・演出・美術 篠本賢一 氏)が再構成し、滑稽洒脱な物語として紡ぐ。その粋な芸人の生き様が生き活きと描かれ、実に抒情や憧憬が豊か。この「句楽もの」戯曲の選択と構成が妙。

    吉井勇という歌人で劇作家のことは知らなかったが、「ゴンドラの唄」は黒澤映画「生きる」で知っており、その作詞家だという。哀愁に満ちた印象を持っていたが、開場前に流れる同曲はポップ調でなんとも楽し気である。原作の「句楽もの」は読んだことも観たこともないが、この再構成(換骨奪胎か)によってどのような姿に生まれ変わったのだろう。自分は、この滋味溢れる内容と小気味良い展開は好きである。

    幾つかの「句楽もの」を繋ぐのが、桂右團治師匠の語り。これによって場面が変わったことが分かり、物語全体が違和感なく構成される。夫々の場面を通して、当時の芸人たちの暮らしや考え方、そして先にも記した生き様が面白可笑しく立ち上がる。同時に 狂人となった主人公が述べる戯言、しかし そこには現代にも当て嵌まる皮肉や批判が込められている。
    また場面変化に対応した舞台美術が見事。同時に「句楽もの」の世界観とでも言うのか、その雰囲気も楽しめた。
    (上演時間2時間40分 途中休憩10分)3.22追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、平台のような裏面を三方向に立て半囲い、天井には裸電球が吊るされているだけ。中央は素舞台。上手の客席寄りに高座、釈台が置かれており、客席中央に座布団。シンプルな造作だが、場面に応じて卓袱台などが置かれ、平台の一部が戸になっており開けると障子になる。勿論 時代に合わせた衣裳や小道具も雰囲気を損なわない。

    出囃子で 桂右團治師匠が高座へ。物語は、河岸近くにある盲目の落語家 小しんの家。そこへ古くからの仲間である焉馬と柳橋が句楽を見舞った帰りにやってくる ところから始まる。盲目となり脚も不自由になった小しんは、精神病を患って 入院している句楽のことが気になってしょうがない。何時しか句楽との楽しかった日々を回想する。実は白装束の句楽が客席側にある座布団に座り聞いている。全体が浮世離れした浮遊感ある雰囲気に包まれている。

    物語は、小しんの家での句楽の病気見舞い(1話「俳諧亭句楽の死」) 船旅の船中(2話「焉馬と句楽」)、伊豆の旅館(3話「句楽と小しん」)、浅草の仲見世(4話「縛られた句楽」)と続き、芸人の滑稽洒脱のような<粋>が描かれる。そして最後は句楽が入院している精神病院での突飛な話<魂を作る機械>(5話「髑髏舞」)へ。この最後の話は、魂の形は定かではないが 瓶のようなものに入って、赤・黒や青といった色が付いている。魂は作るだけではなく、病気にもなるから(魂の)病院も必要だ。魂(材料)は酒に入っているモノで作られている。しかし、どんな酒にも入っている訳ではないから 飲み比べをする必要がある。先に記した話(1~4話)には 全て酒(日本酒・ウィスキー・ワインなど)が出てくる。まさに魂の彷徨であり 酔(粋)狂の人である。

    今では米の値段も高騰し 酒(代)への影響もあろうが、金で解決できる分には まだよい。魂を作る機械の話の中で、魂の欠片があちこちに落ちており足の踏み場もない と言う。そして死人に魂を分けてやりたいと。「句楽もの」が書かれた時期は、たぶん大正期であろう。日清、日露戦争で多くの死傷者を出した。また国外に目を向ければ第一次世界大戦が勃発していたかも知れない。そう考えると、現代のロシア・ウクライナ戦争やイスラエルによるガザ侵攻が重なる。

    最後(精神病院)の舞台美術は、白幕で囲い 句楽の白装束、他に3人の白衣裳の患者、そこは病院であり遊魂の世界のよう。芸人たちの微笑ましくも哀歓ある生き様の中に、現代の世態にも通じる皮肉や批判が…。それを華族であり知識人が綴っているところが面白く、そして遊戯空間が再構成し現代に蘇らせた。見事!
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    久々に遊戯空間の芝居空間をがっつり食らった。テキストの文体が何とも味わいがあって大変好み。言葉の文体は「芝居の文体」にも正しく変換され、昭和初期だろうか噺家・句楽を取り巻く者たちの会話や、再現される逸話が洒脱で泥臭くて、演者の佇まいも昭和の調度、着物、江戸口調とも相俟って只々小気味良い。
    文学としての戯曲の魅力を放つ近代古典に通じるものがある(小山内薫の「息子」とか、真船豊作品、三好十郎の台詞にも)。
    パンフによれば原典は吉井勇の<戯曲>との事。件の落語家を主人公とした一連の作品を篠本氏が構成したものらしい。
    こんな作品があったとは、少なからず新鮮な風に思わずむせた。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    2時間40分という長尺の舞台でした。途中10分ほど休憩ありましたが。で、正直、見る人を選ぶ舞台かなと… 私はギリギリ選ばれた側かなと。脚本というか話の構成が私好みじゃなかったかな…と。まあ、これはよしあしの問題じゃなく好みの問題ですが。ただ役者の演技はすばらしかったので星5つです。基本わたしはクリエイターさんの苦労など知っているのでデフォルトで星5つですが^^ 

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     初日を拝見。流石! 遊戯空間の作品である。華5つ☆。断固、観るべし!!(追記後送)

    ネタバレBOX

    板上は素舞台。両側壁、及びホリゾントに各々の幅に応じた格子構造の枠が設えられているが、場面に応じて障子になったり目立たぬ壁になったり。演出の手際の良さ、照明の的確、生の三味線の見事な演奏、そして狂言回しの役割を担い上手客席側に座した桂 右團治さんの語りが混然一体となって醸し出す臨場感、流石に遊戯空間の作品である。
    物語は大正時代に活躍し実在したモデルを句楽とその噺家仲間の焉馬、小しんという名のキャラクターを用いて書いた吉井 勇の九つの戯曲のうちの「俳諧亭句楽の死」「焉馬と句楽」「縛られた句楽」「句楽と小しん」「髑髏舞」の五編を選び再構成した作品である。篠本 賢一氏の原作読み込みの深さを梃にした換骨奪胎ぶり、演出の手際、役者陣・狂言回し・演奏者ら演じ手の極めて高い質、時代背景を観客が同時進行で想起すれば益々深まる奥行き等々、これほど含蓄に富み、深い作品があろうか?

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