実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/21 (金) 19:00
大正・昭和の歌人であり劇作家であり小説家だった吉井勇(1886-1960 )は、大女優・松井須磨子が唄い大流行させた「ゴンドラの歌」の作詞家としても知られている。「いのち短し恋せよ乙女~」という歌詞で有名なのは知っていた。
しかし吉井勇が「句楽もの」と呼ばれる作品群があり、「俳諧亭句楽」という落語家と、その仲間たちの騒動を描いたもので、九本の戯曲のほかに「句楽の日記」「句楽の手紙」などの日記体小説もある。それらを通じて描かれているのは芸人たちのもの悲しく、そして微笑ましい生きざまが描かれた句楽ものを連作していた事は知らず、吉井勇の新たな、良い意味で意外な一面を覗けた気がして良かった。
吉井勇作の俳諧亭句楽を主人公にした群像劇の句楽シリーズから九本の戯曲と複数の小説から面白い、不思議な、下らない、物悲しくも笑える話を選んでバランスよく組み合わせて一本の話にまとめられていて、時に笑えて、時に悲哀に満ちながらも、全体としてはあまりに馬鹿馬鹿しいが、それをあまりに真剣になり、何やら魂を作る機会だの、魂の病院だのと句楽は最終的に狂ったかに見えるが、意外と、もしかしたら実現不可能では無いんじゃないかと思わせてくる、妙な説得力があり、圧倒されているうちに終わっていた。
もはや、今の時代、不穏で先行きが見えない社会の中で、魂の病院だの、魂を作る機会だの魂の墓場だのといった一見馬鹿馬鹿しいまでの話であっても、その話にほっこりさせられ、気持ちも晴れ晴れとするんだったら、それが本当に実現可能かどうかはおいといて、その発想は良いことだと感じた。
句楽と仲間たちの基本取り留めもなく、しょうもない話が浅草喜劇のドタバタで話の筋があってないようなハチャメチャ喜劇や、エノケン映画の笑い、落語に出てくる人情的だが、涙に訴え過ぎない長屋連中の笑いといったような笑いが組み合わさったような感じで、登場人物たちもとても個性的で、癖が強くて、日々の嫌なことや、ストレスがたちどころに消えて大いに笑えて、解消できて良かった。