鬼界ヶ森 公演情報 鬼界ヶ森」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    千秋楽
    『新明治任侠伝』から3作観てますが、今迄とは、やや趣が違う感がしましたが、美しい舞台でした。

    ネタバレBOX

    空に浮かぶような帯状の和紙に、墨で描かれていたのが、雲のようでもあり、霧が迫ってくるようでもあり、とても情緒があり素敵でした。大きな行灯のようなのが(言葉で上手く表現出来ず、すみません)2本、シンプルな美術だが、壁面の色の陰影や深みも、とても雰囲気があり、良かったです。

    今作は、かなりファンタジー性とエンタメ性が、強く出ていて、華やかな衣装や、迫力を増した殺陣も魅力でしたが、いつもの大感動とまでは、至らなかった、、、が、情緒ある世界観は素敵でした。

    鬼の正体は、淀君の生き霊や、この時代の流れに押し潰された女達の想いでした。淀君達に操られる人々や怨念が、森の奥や地中から、沸き上がるような様は、幻想的で美しくもあった。


    三太夫(渡辺城太郎さん)と武蔵(藤原習作さん)は、風情があり、とても素晴らしかったです。

    道雪(秋本一樹さん)は、発声法を変えられたのだろうか?声の響きが、まろやかで深みが増していて、とても良かったです。
  • 満足度★★★

    大団円、ですね。
    いつ観てもこちらの劇団の役者さんたちの動きの美しさには目を見張りますが、今回も本当に美しかったです。
    淀君の生霊としての情念が鎮められることなく大団円を迎えたことには違和感を拭えませんでしたが、役者の方々の美しい演技には心の底から感動いたしました。
    311から1年、どういう視点で何をどう語ろうとしているかのを見せていただきたいと思い、今回の舞台は観させていただきました。
    社会や人の心の有り様の変化が著しい中での、虚構の世界の在り方というか、虚構の世界に生きる人々の心の有り様がどのような形で作品に描き出されているのだろう、と。
    そんな視点からは、もう少し美しい絵空事としてではなく、いろいろな意味で切り込んでくれるともっと楽しめたと思います。
    十二分に素敵な役者さんたちの演技に酔いしれたのですけれど。
    次の本公演に期待したいと思います。

  • 満足度★★★★★

    黒沢映画のテイストもあり
    時代劇ファンの私としてはとても楽しみに出かけた。
    あの“毎日が死に近い”緊張感が好きだ。
    印象に残る美しい衣装と立ち姿、効果的な音楽と映像美のような照明、
    そして忘れ難いいくつもの台詞。
    フライヤーのイメージ通りの美しさ。
    黒沢映画のテイストも感じさせる素晴らしい舞台だった。

    ネタバレBOX

    吉祥寺シアターの奥行きある舞台の、さらに奥にある巨大な扉が開くと
    そこには階段があり、異界への“きざはし”となっている。
    細長い行燈のような照明が二本、天井から吊り下げられていて
    少し薄暗い舞台が時代劇らしい雰囲気に包まれている。

    鬼退治のため森へ入って行く一行の面々が魅力的だ。
    虚空役の新宮乙矢さん、過酷な運命の果てに
    虚無的な人生を送る孤独感が漂っていた。
    立ち回りの際に足元が揺るがないところが素晴らしい。
    武蔵役の藤原習作さん、落ちぶれた城主だが
    かつての家臣を引き連れて歩き、人を惹きつけ包み込む温かさを持つ男が魅力的だった。
    出家した道雪役の秋本一樹さん、潔く内省的な人柄がにじんでいて
    武蔵と共に、虚空の心と人生を変える言葉に説得力があった。

    そして鬼の正体、淀殿の生霊を演じた高橋沙織さん、
    登場した時から圧倒的な存在感。
    家康の豊臣家に対する仕打ちを恨むあまり生霊となって
    関ヶ原の戦いで死んだ者達を呼び寄せ、さらに仲間を募る為に
    男たちをさらって心を操り、支配下に置いていたのだった・・・。
    一時は時代を動かし、その後時代に置き去りにされた女の口惜しさが
    きれいな立ち姿と緋色の袴で槍を構える全身から立ち上るようだ。

    ダイナミックな日本映画を観るようなこの舞台は
    何と言っても台詞の素晴らしさだろう。
    淀殿の生霊が虚空の剣に刺し貫かれるとき
    「わらわは、母上のようにはならぬ」と叫ぶ、あの悲壮な声が忘れられない。
    「人の心は操れぬ」という虚空の言葉も。
    凝縮された無駄のない台詞が全体を引き締めていてあっという間の2時間弱だった。

    ちょっと残念に感じたのは、村の女性たちの台詞が少しすべって聴こえたこと。
    時代劇の台詞は返事一つでも現代劇とは違う。
    着物を着たホームドラマならそれでもよいが、
    ここまで丁寧に作り込んだ舞台となると男性陣の台詞の重みとの差が目立つ。
    元々武家の女たちなのだから、もっと落ち着いて喋っても良かったような気がする。

    階段の最上段に細川ガラシャの鬼を横たえた時と、淀殿を横たえた時の
    照明とスモークの演出がとても幻想的で、
    かつ自然に成仏した感じが伝わって感動的。
    般若の面をつけてしゃべる時のスピーカーから聴こえる声や、
    音楽の音量が程良く個人的にとても快適だった。

    ラストが浪人二人の後ろ姿に見送る僧という、まるで黒沢映画のような
    ちょっとユーモラスで明るい幕切れと言うのもよかったなあ。
  • 満足度★★★★★

    いい言葉聞けました。
    お芝居に行ってひとことふたこと心に残るいい言葉が聞ければそれでいいといつも思っていますが、今回はいくつか聞けて結構な収穫でした。

    とてもスケールの大きさを感じさせる舞台で、見終わった時には三時間ほどのボリュームを感じたのですが実際は一時間四十五分ととてもコンパクトによくまとまった話でした。

    良かったです、なにかと。

    ネタバレBOX

    ただ土に還るだけよ、という達観した言葉、すごくぐっときました。
  • 満足度★★★★

    泣かせる科白
     先ず、劇場が面白い。吉祥寺の駅から歩いて4~5分の距離だが、舞台のタッパが高く、当然のことながら、客席は、どこから見ても見やすい。演出家と劇場の法的な詰めは面倒だろうが、自由に空間を使えるなら、空間的には、非常に面白い作りになっている。ある意味、江戸時代の歌舞伎小屋の風情があるのだ。
     こういう劇場で、時代劇というのが、良い。殺陣も中々こなれており、アクション面でも飽きさせない。更に、隋所に非常に本質的な科白が鏤められており、泣かせる。惜しむらくは、混迷の時代に翻弄される人々の無念と、現代を生きる我々の感じている不条理が、イマイチ連関を欠くことである。この劇団は、時代劇を演ずることが多いようだが、今後、現代とのリンクを、演目とどうビビッドに絡めて行けるかが、成功の鍵になろう。深入りせずに、エンターテインメントとして楽しむだけなら、充分に楽しめる。

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