第46回関東高等学校演劇研究大会-さいたま会場- 公演情報 第46回関東高等学校演劇研究大会-さいたま会場-」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-12件 / 12件中
  • 満足度★★★★★

    埼玉県立秩父農工科学高等学校「少年神社」
    「劇団桟敷童子」のような世界観。こう書けば小劇団マニアの方たちには解ると思う。セットは神社とおみくじ箱と鳥居。これだけで土着的な情景を空想できるってもんだ。更に序盤から他校を圧倒的に平伏させるような摩訶不思議な光景が目に焼き付く。照明が特に素晴らしい。観客をあっと言うまにその世界に吸引しねじ伏せるような力のある演出だ。瞬間、「やるな。」と期待に胸膨らませてドキドキしてしまう。音響、大道具、小道具、あの世とこの世の狭間で織り成す不思議色ロマンな演出、構成、キャラクターの立ち上がり、衣装、メイク・・それらはまさに独特なあっちの世界のようで完璧だった。さらに童の歌う歌、踊りはこれに調和し融合し「精一杯生きる」という言霊のようなバイブルを突きつけた舞台だった。あまりにも素晴らしく秀逸な舞台に鳥肌が立ったほど。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    村に祭られた氏神様の周りで遊ぶ黄泉の国の狭間からやってきた子供たち。それは現在大人になった彼らの過去の光景だ。過去の4人と、血のように紅く染まった唇に白い肌を持つソラと、大人になった4人が交錯する物語。

    狭間の子供たちも大人も白い狐のお面を腰にぶら下げている。この小道具が終盤、ライトアップされて黄泉の国の情景を幻想的に塗り替え美しい幕引となる。

    狭間の子供たちはソラを交えて仲良く遊んでいたがソラは突然居なくなってしまう。残された4人はソラが最後に言った言葉「5110日後に逢おう」という言葉を信じて大人にななったものの、なんだか現実を受け入れられない彼らが居た。現実って厳しいな。他人と関わらなければ自分自身が傷つかなくて済む。現実に押しつぶされる前に自分から逃避しよう。なんて考えワタルは神社に居座って大学にも行かない日々が続いた。

    そんな折、土地にまつわる伝説は14年に一回ずつやってくると言われそれが今年、ソラが居なくなってから5110日目だった。チーーーん・・鈴の音が鳴り響く度にあの世から子供たちはやってくる。そうして人形を抱えたお婆もやってくる。人形はソラの身代わりだ。お婆はソラが死んでから、その現実を受け入れがたく人形をソラと思い込んでいたのだった。

    ソラはお婆や大人になった4人を勇気づけ生きるという現実を受け入れられるように・・とやってきたのだ。かつてソラが友の為に血液を提供し死んでいったその血は友の中で生き、流れていた。なのに友は生きていても死んでいるようなさまだ。「せっかく赤い血が流れていても君はいったい誰なんだい?」と白いソラが吐くセリフが静かに響く。
    そして、ソラはお婆に「大丈夫だよ。この子は氏神になってこの村を守っているよ。」と囁くのだった。

    過去の自分と向き合う今の彼らが対峙する描写が絶妙だった。物語にインパクトを与える為に響かせる鈴の音、子共らが遊びに興じる光景、神隠しの伝説、ソラと子供たちのキャラクターは観客を充分に魅了し、終焉後の拍手喝采とざわめきは確実に優勝を予感するものだった。

    生徒らの演技力、堂々とした佇まいは幻想的な世界観の中にひょこりと現れた迷子の子鬼を想像し、なんだかとっても嬉しくなってしまった。素晴らしい舞台をみるとなぜこんなにも幸せなのだろうと、つくづく思う。


    ☆次回の全国大会は8月の福島。福島なら行けるから、泊まりがけで行こうと思う。
  • 満足度★★★

    伊那西高等学校「The Lost Ones」
    占いの館でのサスペンス。占い師を演じた清水彩香里のキャラクターが実に素敵だ。彼女のインパクトのあるキャラは他を圧倒的に引き離し、立ってるだけで絵になる。

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    占いの館の占い師はとにかく当たると評判だった。噂を聞きつけて大勢の迷った人間たちがやってくる。更に街のあちこちで連続爆破事件が起きるがこれも占い師は予言してしまう。結果、マスコミに祭り上げられ大儲けをするのだが、蓋を開けてみれば各地の大爆発は占い師自らの自作自演だったことが、探偵によって明かされる。

    一方、さやかは自分の母親・まゆみを占い師に殺された事件で占い師を憎み恨みを晴らそうとしていた矢先、はからずもそのチャンスは巡ってくる。さやかは激情にかられ占い師を刺したが、その直後、この占い師こそがさやかの実の母親だったことが解る。失意のうちにもいくつかの謎は解明されていくうち、さやかが幼いころ、占い師はさやかを轟家に預けたのだと知ることになるが、占い師は息をひきとってしまうのだった。

    この作品は生徒・顧問の創作だが、ホームレスの人たちと占い師の関係性がいまいち解らない。むしろ轟家と占い師の関係性に重点をおいて立ち上げた方がもっとサスペンス色が色濃くなったような気がした。更に探偵が動いてるのに警官が動かないというのもちょっと不思議な気がしたのだが・・。
  • 満足度★★★

    専修大学松戸高等学校「みんなでロミオとジュリエット」
    富岡高校と聖キャピュレット高校の演劇部の情景を描写した物語。演劇ではよく使われる舞台セットの上下での演出が面白い。


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    聖キャピュレット高校の演劇部は「ロミオとジュリエット」を演じることになったが、これを偵察する富岡高校の演劇部の男子部員・恭平はは敵の聖キャピュレット高校演劇部のあかねに恋してしまう。

    この時点で既に現代版ロミジュリなのだが・・笑

    やがて二人は予定通りに愛を告白して、これまた予定通りに付き合うことになる。しかし、これを知った二つの演劇部はいがみ争い、これまた予定通りに乱闘となってしまうのだが(もうまさにロミジュリ!)、しかしいつの間にか彼らを仕切る通行人(先輩)が登場し、「仲良くやれよ」みたいな一言で、一同は頭を垂れ平伏し改心し、そしてみんなでロミジュリを演じることになる。笑

    殆どコメディ。

    作者は「浅田太郎(顧問)と專松の愉快なひとたち」とある。
    たしかに愉快だ。高校生って笑いのセリフがコミカルでアニメ的だから、大人のコメディよりはセリフは斬新だ。だから高校演劇は面白い。

  • 満足度★★★★★

    新潟県立新潟南高等学校「夏への扉」
    作者の谷藤太が主催する劇団「enji」といえば小劇団マニアの方はご存じのはず。実に「enji」らしい戯曲でした。


    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    1966年、初夏。
    ビートルズの来日に熱狂した夏。若き父と母がいた夏。
    そして大好きだった叔父さんがいた、あの夏。

    そして冬、母も亡くなって現在に失望した少女はあの夏の陽射しのような明日を探して、喫茶店にあるいくつもの過去の扉を開けて回り、幸せだったあの頃に思いをはせながら傷心していた。

    そこへ不思議な香・オプナースを持って売りに来た女から、それを買った少女は香を吸い込んで目を覚ますとその夏の中にいた。彼女の名前は「明日香」。

    その時、明日香は安らぎの中で眠り続けていた。彼女の一番幸せだった時間に戻り、過去から帰ってこないつもりだったが、これを現実の世界の明日香の恋人が連れ戻すストーリー。

    「私、あの頃の方がいろんなもの掴んでいられた。手はずっと小さかったけど、小さい手の中に大事なものがたくさんあった気がする。だけど今はこぼれちゃう。手はずっと大きくなったのにこぼれちゃうの。ザーーーっと。」


    相変わらずの谷藤太独特の言葉の表現の巧みさ。この戯曲は聴覚でも刺激され心地よい美しいメロディーとなって耳の周りをくるくる、くるくる回りながらすとん!と入り込むのだ。これをまたキャストらが見事にその情景を演じ、高校生ながら登場人物の年齢に似せた見せ方はむしろ職人技だった。ワタクシは完璧に騙されその世界観に浸り、しばし、ゆるりと過去の美しい風景を眺めていたのでした。

    素晴らしい舞台でした。
  • 満足度★★★

    栃木県立佐野松陽高等学校「ぺっとしょっぷ。」
    動物嫌いの高校生と動物達が織り成すハートフルストーリー。龍太のキャラクターが凄く笑えた。コミカルな表情はまるでアニメを見てるかのよう。笑

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    動物嫌いの龍太は金の為にペットショップのバイトを始めるも、元来の動物嫌いの魂はペットショップに居る犬たちとも折り合わない。それどころか溝は深まるばかりだ。

    しかし龍太はショップで働いているうちに動物の声が聞こえるようになり、すると人間たちの都合で捨てられた動物たちの気持ちも解るようになったのだった。そして人間たちの身勝手さも思い知るようになった龍太はペットショップの店長の勧めで犬を飼うことになるのだった。

    殆どコメディ。コミカルなセリフも絶妙で犬や猫のキャラクターの立ち上がりは秀逸だった。特にシャムネコを思わせる優雅で上品な角田猫には引き込まれた。少人数ながらきっちり魅せたと思う。
  • 満足度★★★

    埼玉県立浦和北高等学校「さよなら小宮くん」
    小宮君の親友・マナブは父親が経営する中華料理屋で小宮君のお別れ会の為に場所を提供し、男女8人が集った。ここで織り成す人間模様。


    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    ここに集った目的は小宮君の送別も兼ねて親友の好きな相手にコクる手助けをしようと考えた、まるで「男女8人夏物語」みたいな恋愛物だ。わりにドタバタカラーの強いコメディだった。

    自分の恋の相手にコクる場面では自分の気持ちとうらはらに意中の相手にはこれまた別の意中が居たりして、まったく上手くいかない。それは右を向いた先には自分の片思いの人が立ち、そのまた右には自分の片思いの人の片思いの相手が立って、まあるく円を描いた連鎖のように繋がっているのだ。

    そうしてそれぞれの心の内は何かに傷ついたり悩んだり失恋したり学校に行けなくなったりしている。そんな彼らを友達が勇気付けるという友情を主軸にした物語。

    全体的に楽しく観られた。また終盤にほろり・・とさせる場面の構成はやはり素敵だ。

  • 満足度★★★★

    新潟県立塩沢商工高等学校「麦に水を」
    小さく、何もない部屋。麦と女はその部屋にいる。そこに新たに一人の男が入れられた。閉じ込められた牢のなかで2人の人間の行動、深層心理を描いた不条理劇。少人数での演劇はキャストらの演技力が試されるが、しっかりした演技力で充分に濃厚な舞台だった。

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    部屋に入れられた男・ナインはなにが何だか理由が解らず戸惑う。先に部屋に入っていた女・セブンは司令官の指示通り動き従うが、新参者のナインはその指示に抵抗し反抗する。

    聖書を読むように強制させられ、これを断ったナインだったが、代わりにセブンがナインの身代わりにずっと聖書を読み続けなくてはならない、と知ると、やがて籠の中に閉じ込められた鼠のように抗うことをしなくなるナイン。

    一日一回の水を与えられ、意味のないことを何でやらせるんだ!?といちいち意見しながらも徐々にナインの中にある異質なものが矯正させられ、人間らしさを失われていくさまは末恐ろしい脅迫を垣間見るようだが、セブンがナインを窘める「白い羊の中に一匹だけいる黒い羊は省かれる」という言葉は圧倒的に静かな迫力があった。

    セブンは人間が人間でなくなっていくとき、喜怒哀楽が必要で、無感動の後に来るのは死ぬことだけ。と麦に貴重な水を与えて育てるが、この麦こそがセブンの心を支えたゆういつの希望だったのだ。

    終盤、セブンは殺される運命だが、残されたナインはセブンの育てていた麦に水を与えてセブンと同じように育てる。ナインもやがてセブンと同じ運命を背負っているのを知っているのだ。

    素晴らしい舞台だった。ちっさな箱の中で蠢く人間模様。
  • 満足度★★★

    群馬県立伊勢崎清明高等学校「くまむしくらぶ」
    「くまむし」という虫をワタクシは知らなかったが、説明によると、0度~120度の温度に強く放射能にも強いめっぽう大層な虫らしいが、意外にも体長1mmのちっさい虫だ。しかしこの虫は誰にも振り返ってもらえない、誰の仲間でもない隅っこでうずくまる弱い虫でもある。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    引きこもりの啓太は「くまむし」のように、誰にも振り返ってもらえない、誰の仲間でもない隅っこでうずくまる弱い少年だった。

    彼は生真面目だが空気が読めない少年だ。だから変人扱いされて一人だけ取り残されてしまうような孤独な少年でもあった。そんな少年がある日、ツンデレの彼女に恋をする。
    空気の読めない啓太とツンデレの恋のゆくえを描いた物語。

    どうすれば強くなれるだろう・・と悩みながらも死ぬことはしたくない。母親が悲しむから。というセリフは胸にジン!と響いた。
  • 満足度★★★★★

    群馬県立前橋南高等学校「荒野のMarchen」
    セットは何もない。しかしむしろ無の状態が光った舞台だった。序盤の照明が幻想的で美しい。そして、これ以降の照明の使い方が巧みだった。その為、何もない舞台の空間が映えた芝居。

    民間伝承の童話を前橋南風にアレンジしたお芝居だったが、本日のトップと公言しても良い位の公演だった。


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    シュールな描写で会場の爆笑をかっさらう男子組。対極にベタな、いなかっぺ丸出しの女子組が奏でる童話は、「ハーメルンの笛吹き」「あんじゅとずしお」「鉢かぶり姫」などを独特のしゃべりで観客の空想を誘う。この二極を交互に描写する構成は流石だった。

    更に男子の衣装、女子の制服衣装もこれまた対極で、バックが黒の舞台に美しく浮かび上がって演出ともに素晴らしい舞台だった。

    ものすっごく楽しませてもらった舞台。大絶賛!

  • 満足度★★★★

    長野県岡谷南高等学校「マクベス」
    魔女にそそのかされて、その気になったマクベスの悲劇。古着で壁を作ったセットが圧巻。

    ネタバレBOX

    16世紀、古着屋だったマクベスは魔女のささやきを信じて、大不況の中、ダンカンを殺して王になったものの、何万もの殺戮を命じ、侵略と虐殺の王というレッテルを貼られてしまう。

    マクベス自身も人を殺した実感から逃れられず、徐々に精神を病んでいき、その血なまぐさい呪縛に苦しみもがき、ついには折れてしまったまでを描いた物語。

    劇中、ヒトラーとゲッペルスの描写もあり、かつて激しくゲッペルスを研究した身にとっては楽しい場面だった。
    ここでの見せ場はやはりマクベスとマクベス婦人だろう。彼らの油が切れたロボットのような動きは、この上もなく素晴らしかった。

    誰かにアオラレ自分では気が付かないうちに巨大な何者かに仕立て上げられ、気が付いた時点では、既に戻れなくなっている。という悲しい性を持つ人間はいとも簡単に流されてしまうのだという描写も巧みだった。



  • 満足度★★★

    栃木県立宇都宮女子高校演劇部「林檎の唄」
    高橋彩花は臆病で言いたいことの半分も言えない女の子だ。彼女の心の襞を演じた芝居。


    ネタバレBOX

    舞台のセットは積まれた無数の段ボール箱。これは彩花の心の壁だ。彩花がちっさな頃、青い林檎を画用紙一杯に描きたかったのに赤い林檎しか描けなかった。

    その後、彩花は高校生になり、好きな男子ができたが、想いを告白することが出来ない。そんな彩花に赤い林檎が励ましながら彼女の心を成長させ勇気を取り戻してゆく物語。

    林檎らのプチコントが楽しい。彩花を応援する姿勢も独特だ。やがて林檎らの応援の甲斐あって彩花は自分の壁をぶち破り色んなカラーで描けるようになる。
    フレッシュで高校生らしい演技だった。
  • 満足度★★★

    埼玉県立芸術総合高等学校「どうしようもないもの」
    どうしようもない人たちのどうしようもない思いをどうしようもなく扱ったどうしようもないお話。

    ネタバレBOX

    院内で、暇を持て余してる入院患者は院内で遊びまくる。これに注意し抑えようとする看護師の会話劇だが、殆どが短編コント集のようなもの。
    たしかにどうしようもないお話できっと直ぐに忘れるだろう的なコントの数々。まあ、たまにはこんな緩い芝居もいいかも的な。

    終盤はどうしようもない患者を上手く操る成長した看護師のほのぼのとした情景が素敵だった。

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