第63回東京都高等学校演劇コンクール中央発表会 公演情報 第63回東京都高等学校演劇コンクール中央発表会」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★★

    CHANGE(創価高校)
    創価高校演劇部脚本というのだから、すんごい!
    コメディ色の強いちょっぴり考えさせられる舞台でした。


    以下はネタばれBOXにて。。(これでコンクールの観劇は全て終了!ノルマを果たす!笑)

    ネタバレBOX

    女子高校生のみゆきは友人関係で悩み、進路で迷い、母の再婚話に嫌悪感を抱く。そんなストレスを抱え気を失ってしまったみゆきが目覚めると、そこは「ソト」といわれる別の世界だった。たぶんこの世界は意識の世界で、黄泉の国と現実の世界の狭間なのだろうと思う。ここでみゆきは不思議な体験をする。

    そこでは施設から逃げてきた戦争孤児ら6人で家族のように暮らしていた。彼らはみゆきに戦争の話や空襲で孤児になった経緯を聞かせ、役人によって身寄りのない子供たちが施設に入れられたことなどを話す。しかし、彼らは施設で苛められて逃げて来てやっとここに落ち着いたという。

    彼らと仲良くなったみゆきは彼らを通して思いやりや労わりの心を学んでいく。そうして「今までの私は自分のことしか考えてなかった。でもそんなの違う。」と気が付くのだった。すると6人は「みゆきには待ってる人がいるから出口から出て帰るように。」と説得する。

    こうしてみゆきは気が付くと、病院のベッドで横になり傍にはみゆきの母、学校の先生、ゆう(みゆきの親友)、学級委員長がみゆきを見守っていたのだった。ここでみゆきは今までの言動を後悔しそれぞれに謝罪をする。ちょっぴり大人になったみゆきだった。という筋。
    物語は気恥ずかしいほどに青臭いが、これが青春なのだと改めて感じる。この手の内容は案外多いが、素晴らしいと感じたのはキャストのキャラ立てが確立されていたのと、コメディ色が強い分、楽しかった。そしてそれらを感性と若さで引っ張った舞台だった。6人の孤児の存在感たるもの素晴らしい限りだ。特にダー(熱田幸雄)の運動能力は素晴らしいのでした。猿なみ!笑



  • 満足度★★★★★

    見よ、飛行機の高く飛べるを(都立井草)
    原始、女性ハ実二太陽デアッタ。今、女性ハ月デアル。病人ノヨウナ蒼白イ顔ノ月デアル__平塚らいてう


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    時は1911年(明治44年)。今よりもっと女性の地位が低い時代。女子師範学校の寄宿舎が舞台となる。光島延ぶは優等生。先生にも生徒にも人気があり,閉ざされた学校生活を充足していた。だが,下級生の杉坂初江と親しくなり,未知の世界に目を向けるようになる。

    初江は学校でただ一人新聞を読み,小説が禁じられていることに疑問を持つ人であった。初江の影響で延ぶは自然主義文学に触れ、「青踏」の女たちを知り、女性の地位確立のために、あの空高く飛ぶ飛行機のように羽ばたきたいと願い、生徒たちに読ませる回覧雑誌「バードウイメン」を出そうと計画する。折しも、日露戦争後の富国強兵政策や、大逆事件のあおりから学校はますます生徒に強圧的となり、良妻賢母教育への傾きを露に仕出した。

    友人の退学処分もからみ,延ぶと初江は仲間を慕ってストライキを企てるが、今まで彼女らと共に親身に教えてくれていた安達先生がこれに反対する。「この世は力で動いてるんだということをあなた達に言わなかったのを後悔しています。ストライキをすると参加した生徒は退学になり、憲兵に捕まるかもしれません。」

    一方でその言葉に驚いた生徒たちは次々とストライキの決意が鈍くなり、最終的に初江が慕う延ぶと二人だけのストライキとなってしまう。しかし初江は「うちね、あんたさえおってくれたら何も恐いものはないんだわ。」と話すも、延ぶ自身も新庄先生への想いが今後の雑誌「バードウイメン」の編集の決意を鈍らせる。

    延ぶは「杉坂さん、急ぎ過ぎじゃあないかしら。卒業してから地盤を固めてゆっくりやったらいかが?」とアドバイスする。
    しかし、初江は一人で雑誌の編集にとりかかる。強さと高潔を貫くために・・。

    衣装、セット、演技、その時代の言葉どれをとっても素晴らしい!に尽きる。
    生徒達に新しい風の自然主義が吹いた時、少しずつ革命は起きる。新しい時代は私たちが創る。少女が夢と希望で胸ふくらませる熱い時代があった時のお話。菅沼先生役の浅見佑花があまりにも見事な演技でのけ反った!どのキャストもプロに近い演技力で圧倒された芝居でした。

  • 満足度★★★

    夏の庭~風に吹かれて・・かすかに揺れて・・~(都立第四商業)
    小学生3人のうちの一人、山下のおじさんが死んだことによって、彼らは死について興味を持つようになる。河辺は複雑な家庭の事情によってかつて自殺も考えたが「死んじゃったら、おまえらに死の世界はこうだって教えられないだろ?だからやめた。」といいながらも、彼らは一人の老人に目をつける。

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    死ぬということに興味を持った3人は近所の年老いたおじいさんに目を付ける。死ぬ瞬間の様子を観たいのだ。彼らはおじいさんの死が訪れるその日を待ち焦がれて毎日、おじいさんの家の玄関を見張る。しかし、中々死にそうにないおじいさんに早く死んでもらいたいと願う一方で、彼らは徐々におじいさんに対して情を抱くようになる。

    彼らは口では「早くじいさんの死ぬところを観たい。」といいながらも、見張りの時間を持て余し、おじいさんの家の前に放ってあったゴミを出してやったり、庭の草むしりをしたりと甲斐甲斐しく働きだす。その様子をにやにやしながら覗くおじいさん。いつの間にか立場は逆転し、何かと手伝う3人。笑

    そうこうしているうちに今度はおじいさんの庭に花の種を蒔こう。という話になってくる。そんな経緯を重ねながら彼らはおじいさんと仲良くなって縁側で西瓜を御馳走になる。彼らはおじいさんの昔話を聞かされるうちに、「年をとると思い出が多くなるから楽しい。」と考えるようになる。

    いつものように学校が終わっておじいさんの家に来た3人はおじいさんが縁側で眠っているのに気がつく。「おじいさん、こんなところで寝ちゃだめだよ。」と動かすと、おじいさんは死んでいたのだった。

    3人は「自分が将来、何になるのかも解らない。何をしたいのかも解らない。そういったことをもっともっとおじいさんに聞いて欲しかった。」と嘆く。
    「だけど、それは結局自分の問題なんだ。おじいさん、本当にめいいっぱい生きたんだね。僕も頑張るから。」
    こうしてコスモスが揺らぐ庭で夏の思い出をかみしめ、ちょっぴり大人になった彼らは、生と死について学習できたのだった。


    おじいさんはろくなものを食べてないんじゃないか?といいながら玄関先に焼き魚を置くシーンは笑えた。まるで猫に魚をあげるような風景。笑
    おじいさんと3人の奇妙だけれど深い友情が嬉しくもあり切なくもあり物悲しい。心温まる舞台でした。
  • 満足度★★★

    道化師は踊らない(翔洋学園渋谷)
    殺人容疑をかけられた親友のために一芝居うった屈折した友情を描いた作品。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    殺されたホームレスを刺した血の付いたナイフが千尋の鞄から出てきたことから、殺人容疑者になってしまった千尋を庇おうと親友の小春は弁護士・七瀬の元を訪れる。「千尋はホームレスが殺された時刻には『メイドでにゃんにゃん』でバイトをしていたから無実です。」と証言する。

    「メイドでにゃんにゃん」はアキバのメイドカフェで猫耳に猫シッポを付けたメイドが猫をかぶって猫なで声で猫舌の男を猫ばばするところらしい。笑

    それを受けた弁護士・七瀬は早速法廷の証言を小春に依頼する。そして裁判当日、小春は七瀬に語った証言を覆し、千尋に不利な証言を発言する。動転した七瀬は千尋の為に別の真実を探すことになるが、その矢先、女子のブル間を盗んだ男子・銀太と千尋が同じ学校の生徒だと気がつく。かねてから千尋は当日の殺人事件の同時刻は自分のロッカーに入っていた誰のか解らないブルマを気持ち悪がって焼却していたから、自分は学校にいた。と証言していたのだった。千尋の話と銀太の話の伏線が繋がり、七瀬は先の小春の法廷での証言が偽証だったことを追求する。

    すると小春は「自分の好きな人が千尋と付き合うようになって千尋が邪魔だった。千尋なんか刑務所で踊り狂えばいいんだ。そう、ピエロのように・・。私の心を殺したんだから・・。」と証言する。こうして千尋は無罪になり無事に釈放されたが、後日、本当の真実は大きく違っていた事を七瀬は知ることになる。それはホームレスを殺したのは千尋と銀太と小春の3人だったのだ。そんな折、千尋だけが捕まってしまい、3人で殺したのに千尋だけ捕まってしまったのは不公平だと思った銀太と小春は七瀬を騙し法廷で一芝居うったという。

    しかし、真実を聞いた七瀬は「私はあの3人に感謝しなければいけないわ。だって殺されたホームレスは私の両親を殺した男だったんだから。日本の法律って甘いわよね。人を殺しても刑務所を出られるんだから・・。」

    脚本は素晴らしいと思う。どうやらかつて顧問だった教師作のようだ。しかし、一部の生徒の演じ方が固い。まあ、高校生だから仕方ないのかも。一方で銀太役の宮城繁の演技は舞台慣れしてるような秀逸な演技に脱帽した。彼の心臓は鉄で出来てるらしい。笑





  • 満足度★★★★★

    THE WINDS OF GOD(日本大学第一)
    今井雅之の脚本で有名だからもう、ご存じの内容。今井自身が自衛隊あがりだったことも加味して話題になった作品。彼らの舞台はかなり前に観たがその時もセットは木の机と椅子のみだった。今回も同様。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    売れないお笑い芸人の誠と金太は、ある日交通事故に遭う。気がついたときには第二次世界大戦終戦間際の神風特攻隊基地へとタイムスリップしており、しかも彼らは神風特攻隊員として前世の姿になっていた。

    彼らは戸惑い、そして突然、突きつけられた現実を否定しながら、時空の渦に巻き込まれ1945年8月という時を彷徨っていく。 戦争という大儀の前、任務遂行のため命を差し出すことを余儀なくされた若者達。 その中で突然に突きつけられる「死」という現実。

    ある者は任務に忠実に、ある者は神に祈り、ある者は心の奥に疑問を抱きつつ、それでも愛する人を守るために戦いの空に飛び立っていく。

    二人にもついに零戦に乗る日がやってきた。その前に誠と金太はお笑いを一席打つ。今度はミスもなく完璧なお笑いができる。そんな思いを胸に彼らは「おかあさーーん!」と叫びながら遥か上空で散るのである。


    今回の演技のためにキャストらは習志野駐屯地へ行き上下関係の厳しさ、敬礼の仕方、日頃の訓練などを学んだらしい。その後、土浦にある特攻記念館に行き、特攻隊本人が書いた遺書、学んでいた教科書、血書などを見学したとのこと。

    この姿勢にひじょうに感動し、演技も素晴らしかった。金太役の榎本晃太の涙の演技を観たとき、会場ではあちこちにすすり泣きの音が聞こえ感無量でした。舞台は脚本家の筋に忠実に再演し55分で上手くまとめたと思う。衣装も素晴らしかった!

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