ニットキャップシアター(京都府)
作品タイトル「男亡者の泣きぬるところ/女亡者の泣きぬるところ」
満足度★★★
男ver.女ver.でテンポ良い二人芝居×2本立。間口が広いエンターテインメント作品のようにも観られるし、苦い人生スケッチにも見える。壁面の木のモザイク柄を「一本の木」に見れば登場人物はウラジーミルとエストラゴンに、「松」に見立てて能舞台に見れば、次郎冠者と太郎冠者にも思え、悲劇的な状況が喜劇的にも変化します(こう書くと、チェーホフ的でもありますね)。深読みしたい仕掛けが満載、想像できる余白があり、シンプルながらよく考えられた作品だと思いました。
満足度★★★
会話劇で、テンポを大事にしているので、かなり俳優さんによる完成度になりそう。どちらも、大変そうだけど楽しそうにもやっているところにまず好感を持てました。とくに女性同士の方は、2人の表情の変化が面白くて、小道具も丁寧で、友達の家に遊びに行ったような気分に。相当練習もしたのかなあと思います。気持ちよく思いきり演じてくださって良かったです。
満足度★★★★
死を意識したはずの男たち(『男亡者の〜』)、女たち(『女亡者の〜』)のジタバタをコミカルに描く二人芝居二本立て。
エレベーターの事故で出会う元同級生、自殺幇助業者との意気投合……と、設定は不自然なのにもかかわらず、いつの間にか彼らの不満や不安に共感してしまったのは、戯曲にも演技にも、飛躍を楽しむ余裕と日々の生活に根ざす誠実な眼差しとが同居しているからだと思います。特に『男亡者』に登場する「幸福の金魚」など、現実界とはレイヤーの異なる「不条理」を仕込む脚本には、リアルとファンタジー、主観と客観を行き来する面白さを感じます。
「死」をモチーフにはしていますが、湿っぽさはなし。『女亡者』の二人の連帯はたくましく、『男亡者』の二人の動揺ぶりは切なくもいじらしく、どちらも生きていく力を感じさせるものでした。『女亡者』の舞台は一人暮らしの部屋で、アクション風の場面もあり、ダイナミックな印象。一方『男亡者』はエレベーターの中ということで、ごくシンプルな舞台で二人の芝居が展開されます。芝居そのものは丁寧で大人の悲哀を存分に感じさせてくれるのですが、それだけに舞台の広さ、間の長さを感じる場面もあり、もう少し思い切った緩急、空間の作り方があってもよかったのかなとも思いました。