最新の観てきた!クチコミ一覧

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オーランド

オーランド

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2024/07/05 (金) ~ 2024/07/28 (日)公演終了

実演鑑賞

作家バージニア・ウルフへの関心とも相まって観たかった演目。序盤のステージを観た。オーランド役の宮沢りえが延々と喋る。台詞の言い淀みも噛みも無いのだが幾許か、探り中な感じが流れるような、ゲネプロな空気感がある。形先行・内面後から・・栗山演出のステージ捌きは(当り前だが)先行している。隅々に血が行き渡ると凄いだろうな、と思う所はあった。
本作の梗概をどこかで読んでいて、時空を旅する超越的な主人公を「ペール・ギュント」と重ねていたが自分の中ではそう外れておらず、幾人かの登場人物は人間だが、(貴族階級の世界というのもあるのか)浮世離れした、それぞれが独自進化したような生物に見える。舞台はイギリス、16世紀から、現代まで(作品は20世紀前半の著)。時代を超え、果ては性別も超えるがそれも「無くはないかも」な空気が流れている。性差が人間に及ぼすもの、についての壮大な思考実験の実験室は舞台奥一面の壁(人一人通れる出入口が中央下にあるのみ)、宮廷のような床の伽藍とした空間で、これが目に焼き付いている。スタッフ陣も一流で音楽・国広氏は相変わらず縁の下に徹した深層に働きかけるような音楽(だから毎回あまり覚えていない)。
作者は女から男、ではなく男から女への転身とした。そこに意味を見出す。ある種の不条理だが、「どちらかに(自分の選択によらず)生まれる」事自体、もっと言えば生命そのものが不条理である、その感覚を深掘りした先にある何かは、人が辿り得る最も尊い「変化」なのかも。

群論序説『ALICE IN WONDERLAND-不思議の國のアリス-』

群論序説『ALICE IN WONDERLAND-不思議の國のアリス-』

PSYCHOSIS

ザムザ阿佐谷(東京都)

2024/07/12 (金) ~ 2024/07/17 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

アリスの世界は混沌の美の世界、プロデューサーは己の感性が導くままに耽美の世界を築き上げれば良いのだ。しかし過度な自由は誰にも理解されないものを生み出してしまう。作者の高取英(1952-2018)さんは自由と制約を突き詰め純化する過程でガロアの方程式論に出会ったのだろう。

(代数)方程式の解は自由に動こうとしても「解と係数の関係」という制約から逃れることはできない。多くの場合、これ以外の制約はないのだが方程式によっては自動的にもっと多くの制約が生じてしまう。その事情を抽象化、単純化して見せたのがガロアの理論である。

この舞台はガロア理論そのもの(のはじめの一歩)をアリスの世界で表現する実験である。まずはいくつかの人と状況が提示される。
人1.革命家としてのガロア
人2.革命家としての宮沢賢治と青年将校
人3.アリスと作者のルイス・キャロル、そしてハートの女王
国1.フランス革命
国2.日本の2・26事件
国3.アリスの不思議の国

そしてこれらが時空を超えて混ざり合うことにより、ハートの女王由来の多くの殺戮を生み出してしまう。この悲劇を終わらせるために、もつれた世界を引き離すことはできないのだろうか。

水と油は混じらないように無関係なものはもつれない。アリスたちはこれらの事柄を調べ、革命、殺戮、数学などによるつながりを見出し、それらが解となっている方程式を発見する。そしてガロア理論によるとこの方程式は解く(=解を分離する)ことができ、実際に引きはがすことに成功して世界は平和を取り戻すのであった。(おしまい、チャンチャン)

…などと長々と書いてきたが、もちろん実際の舞台でこんな理屈が延々と述べられるわけはなく、豊かなイメージとねじれた狂気の世界が美しく展開されるだけである。ガロア理論について語られるのは最後の10分かそこらでそれも大声で叫ばれるのでほとんで聞き取れない。そんなわけで上で書いたことは私のWonderlandから見えた歪んだ舞台の様子なのである。全然違ったぞという苦情は受け付けない(笑)

授業

授業

劇団ゆらじしゃく

シアターシャイン(東京都)

2024/07/14 (日) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

根が真面目なので、ついつい理解しなくてはと思ってしまうのが私の厄介なところ。先日「わからないものは刹那で楽しむ」と言う奥義?を知ったはずなのに、今回はまたしても構えてしまいました。
当日パンフがそれは素敵でした!よく読み込みたいと思います←違う!?
丸山千尋さんの回も見たかったのですが、連日の観劇はちょっと辛い今日この頃。またの機会をお待ちします。

昨日、幸せになれなかった僕へ

昨日、幸せになれなかった僕へ

劇団狸寝入

関西学院大学ママ上ホール(兵庫県)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

満足度★★★

うーん😔 時間どおりには始まらないし、四面劇にした理由が… 二面もしくは通常でも良かったのでは…
途中に招かざる客(ゴキブリ)も登場し役者が踏んで転けるんではとの心配で…
歌が大切なファクターである話にも関わらず、あの歌はちょっと…
ファンタジーで内容はそれなりではあったが、二時間超えである話では…
頑張ってくれ 関学❕

The Witch〜魔法使いの日記〜

The Witch〜魔法使いの日記〜

ぱすてるからっと

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2024/07/11 (木) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

陽チームを観劇。
最近よく拝見している真田林佳さんが「アリス」という名前の役ということだけ把握して臨みました。
想像よりずっと重要な役でした。アリスという名前のイメージは偉い人ってあんまりないと思っていたので。個人的には嬉しい誤算でした。
見てないですが月チームの東堂さんとはきっと180度違う、真田さん独自のキャラだったのだと思います。

自分は ぱすてるからっと さん観劇は4本目かな。いつも力を入れられているダンスシーンも見どころですよね。自分の観劇回はダンス撮影可能ではなかったですが、SNSに上がってるのも後から見れるのでありがたいです。

時間が戻る要素が入った話なので、頭を働かせてがんばりました。しかしちょっと難しかったですね。台本で再確認しました。

ネタバレBOX

ジャンヌの「実弾を使う」の意味が分からなかったのですが、それまで使われていたのは「筋弛緩弾」だったのですね。それでアルベルトを拘束するつもりだったけど効かないので、と。

終盤に分かる「ヴァイオレットが魔導士を恨んでいる理由」ですが
・娘「ダリア」が戦争でひとりだけ死んだこと
・その遺体が持ち帰られることもなく見捨てられたと思っていたこと
・夫も両親も戦争で死んだこと
・戦争は魔道士たちが始めたと解釈してること
・自分は人間を魔導士にする実験体の生き残りだったこと

これらは唐突すぎたので伏線がほしかったです。それまで年齢をほのめかすところも無く、「娘」や「夫」という言葉が出てきて、ついていくのが難しかったです。

クライマックスで明らかになる事実、まとめると以下のとおりかと思いますが、ちょっと詰め込みすぎかと。

・ダリアは四肢が腐ってしまう呪いで死んだ
・今は治療法が確立している、それは犠牲になったダリアの功績である
・ダリアはそんな遺体を母に見せたくなかったので遺体を持ち帰られることを望まなかった
・ヴァイオレットはそのことを知らずに娘だけ見捨てられたと思い込んでいた

日記の表紙に1022と書いてあったことでなぜ「真里は千年後の未来から来たのでは」になるのか分かりませんでした。真里がその数字を見て「ここは千年前なのでは」と思うなら分かりますが。

カルタとアリスがカフェで会話するシーン、会計の「ここは私が」綱引きがあって面白かったです。台本にはなかったので、陽チーム独自かなと思いました。
あいあむ、あいわず! I am,I was...?

あいあむ、あいわず! I am,I was...?

ひのでのあくび

小劇場 楽園(東京都)

2024/07/12 (金) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

インターチェンジ

インターチェンジ

劇団ろうそくだんす

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

良かったです。

『LENS』

『LENS』

自由劇場

神戸大学・出光佐三記念六甲台講堂(兵庫県)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

満足度★★★★

千秋楽拝見
男四人で繰り広げられる、ミステリー(犯人探し)テンポもよく、最後はそうきたか〰️と
今回はクーラーも効いていて、作品に集中できた 満席🈵ではないのに詰めて座らされたのは…

インターチェンジ

インターチェンジ

劇団ろうそくだんす

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

人生や家族について考えさせられる舞台でした。
登場人物達や内容に共感できる部分、出来ない部分があり、モヤモヤしながら観ました。
個性的な登場人物ばかりで、主人公の婚約者は強烈に嫌なタイプでしたが、こういう人は確かにいるし、発する台詞がリアルに感じました。
切なさや悲しさも残りましたが、前向きなラストが良かったです。面白かったです。

流れんな

流れんな

iaku

ザ・スズナリ(東京都)

2024/07/11 (木) ~ 2024/07/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/07/15 (月) 14:00

座席1階

人気劇作家の横山拓也がiaku設立2年目の2013年、初の大型巡演に挑戦した作品という。彼は東京進出に当たって「スズナリはステータス、あこがれだった」と語っていて、そのスズナリで行われた今作は再演を重ねて広島弁でリニューアルされた、とパンフレットにあった。

結論から言うと、横山拓也の源流とも言える見事な会話劇。「見ないと損する」レベルだ。主役を演じた異儀田夏葉がちょっと今ひとつだった感じもするが、この戯曲の価値が下がるわけではない。1時間半、食い入るように舞台を見つめてしまった。恐らく他のお客さんもそうだっただろう。ラストシーンに近い当たりであちこちからはなをすする音が聞こえる。ああ、これが家族を描いた横山作品の真骨頂なのだな、と納得した舞台だ。

舞台は(広島弁なので)広島の小さな飲食店。名産の貝料理で夫婦が続けてきた店だが、冒頭、妻が洋式トイレに座ったまま大いびきをかいている場面から始まる。その横にいる中学の制服姿の長女。母親が脳出血と思われる状況であることに気付かず、部活に行ってしまう。かたわらには一回り年が離れた妹である赤ちゃん。「泣いてるよ」と母に告げて店を出るが、母は大いびきを続けるばかりで反応がない。
このシーンから約30年後の店の状況から物語はスタートする。地元の名産の貝料理を売り込むキャンペーンをする大手企業の社員が閉店状態の店にやってくる。店の主人である父親が倒れ、入院中なのだ。時に母親がわりをしながら父親と店を続けてきた長女。だが、その名産の貝は、貝毒が起きて漁にも出られる状況でない。

この戯曲は、こうした貝毒を巡る公害問題、出生前診断、今認知症診療でも使われるようになった長期記憶の映像化など、複数の社会的課題を巡って展開する。10年以上前に書かれた戯曲だが、今も続いている課題となっていることにまず、驚かされる。今作では、10年前には登場していなかったAIを盛り込んでリニューアルされているが、特に、長期記憶の映像化という話題には、「これが10年前に書かれていたの?」と本当にびっくりした。
また、この洋式トイレが一つのキーワードになっていて、タイトルにもつながっていく。複数の意味での「流れんな」。終わってみて、そうだったのかと舞台を反すうしてしまった。

横山マジックと言っていい流麗な会話劇。今回登場する5人の役柄にそれぞれ秘めた物語があり、きっちりプロットを散りばめた群像劇でもあって、物語が進行するにつれて新たな驚きが次々に出てくる。もう、これはもう舞台から目を離せない。そんな展開だ。
取り上げられているそれぞれのテーマは重く、笑えるせりふも多くはない。しかし、iakuの源流であり真骨頂であるところを十分に楽しむことができる。

広島弁もいいが、当初演じられた関西弁バージョンも見てみたい。また、どこかでやってくれないかな。
今回のスズナリ。見ないと損するかも。

あいあむ、あいわず! I am,I was...?

あいあむ、あいわず! I am,I was...?

ひのでのあくび

小劇場 楽園(東京都)

2024/07/12 (金) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「世にも奇妙な物語」の立体版のような新感覚の舞台でした。旗揚げ公演とは思えない演技力、間の取り方に圧巻です。SFが2コマ上演されたのも、小説のショートショートみたいでエッジが効いています。

いっかいやすみ

いっかいやすみ

ポッキリくれよんズ

シアター711(東京都)

2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白かったです。
登場人物達の置かれている状況や台詞にリアル感があり、考えさせられました。
一生懸命は良いけれど、大事な事を見失う事もあるので、一回休む事も必要だと思いました。
謎が少しずつ解けていくストーリー展開も面白く、役者さん達の演技も良かったです。
良い舞台でした!

野外劇『パレード』

野外劇『パレード』

公益財団法人武蔵野文化事業団 吉祥寺シアター

境南ふれあい広場公園(東京都)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

以前は「しあわせ学級崩壊」というカンパニーの主宰として作・演出を担っていた小西力矢さんによる公演。コンセプトは「広場×不条理演劇」。会場はJR武蔵境駅から徒歩1分の公園。僕が観劇目的でこの駅を降りたのは初かも。

ネタバレBOX

会場は外周に沿って白いベンチが一周しており、観客らしき人たちはそのベンチに座っていました。公園中央にはカラーコーンで仕切られたアクティングスペースが。小西さんが「もっと舞台に近づいて大丈夫です」とアナウンスすると、観客は中央に集まります。小雨が降ったり止んだりの天気のなか、17時に開演。コンセプト通り「広場×不条理演劇」で、台詞の意味は分かるが、設定はやや不条理。無料の野外劇で、通りすがりのファミリーなどが観ることを想定すると、不条理演劇のバランス加減が肝。不思議で不条理のお話を上手にまとめて観客に伝えていたと思う。演劇が街に溶け合うとき、演劇が良い意味で「場所に依存する」ことの価値を考えます。小さなお子さんが騒いだりすることなく真剣な眼差しで上演を見つめている姿が印象的でした。
『口車ダブルス』

『口車ダブルス』

劇団フルタ丸

小劇場B1(東京都)

2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

劇団俳小の『ゴールデン・エイジ』が急遽公演中止。折角なのでこちらに伺った。

脚本が抜群。頭一つ図抜けている。一人ひとりの人間の魅力を余す所なく書き連ねている。ちょっと単調な展開もあったが、「悪そうな奴とは大体契約」の笑いで帳消し。

二つの可動式の高座、二つの釈台、各々に張り扇(おうぎ)と扇子。釈台に叩き付ける張り扇がリズムとなり客席を煽る。シーンによって演者が二人一組で高座を色々な角度に移動していき、その都度舞台デザインのフォルムが変わる。

二人の講談師(真帆さんと篠原友紀さん)が語り始めるのは生命保険会社「第三生命」の人間模様。突如、外部から営業部長として送り込まれた二人。徹底してデータと数字で理詰めの管理をする真帆さん。一見ド素人ながら人の好さでフォローする篠原友紀さん。二人は部長でありつつ、講談の中で様々な役に化けていく。

成績No.1で叩き上げの大勝かおりさんは自分が部長に選ばれなかったことに少々不満顔。
にしやま由きひろ氏は多趣味で、変わった石を拾う楽しみを覚えた。
優秀なキザ野郎、松尾英太郎氏の決め台詞「夢を見てしまえよ!」は最高。
幼稚舎からの慶應ボーイのキタラタカシ氏は刺激に飢えている。
色恋営業で契約を取りまくる神咲妃奈(ひな)さん。
新卒の涼田麗乃さんの教育係に大野朱美さんが命じられる。大野朱美さんは落語家を目指していた時期があり、今でもそれを引きずっている。

セールスマンの営業心理学テクニックが炸裂する。
ラポール(信頼関係)形成、ミラーリング(相手に合わせる)、ペーシング(自身を調節する)、などなど。

神咲妃奈さんは板野友美のアヒル口に多部未華子の目力みたいな美人。こういう女に男はことごとく騙される。それはDNAに刻印された本能で、そう創った造物主が悪い。ホストに騙されて立ちん坊をしている女達も同様。自分の意思を超えたところで惹き付けられてしまうのだからお手上げだ。

大勝かおりさんはナンノっぽい。
にしやま由きひろ氏は渡辺いっけい似。
作・演出を兼ねるフルタジュン氏はタカアンドトシのタカとFUJIWARAの原西を足したような味。

あやめ十八番を観ている時の感覚に近い。
講談師の篠原友紀さんが他の人の熱演を真剣に見ていて、うんうん頷いたり笑いを必死にこらえたりする様がこの劇団の強みだろう。嘘偽りなく演者が本当に面白いと思って演っている。理想的空間。才能が溢れ返っている。

ネタバレBOX

肺がんを宣告されたにしやま由きひろ氏は昔プロでバンドをやっていた。路傍の石を拾った時の気持ちを思い出す。あれは辞めたバンドを客として観に行った帰り道にふと拾ったんだっけ。神咲妃奈さんに石拾いを勧める。いつの日にか子供と今日拾った石を見せ合うことが楽しみになっていった彼女。大野朱美さんはセールストークの繋ぎは落語の枕と変わらないことに気付く。森田芳光のデビュー作、『の・ようなもの』を感じさせるエピソード。何でも出来る有能な上司・大勝かおりさんに抱えたアンビバレントな感情。滔々と流れ落ちる言葉の水滴が川となり全てが澄み渡っていく。涼田麗乃さんは亡くした父親の遺した生命保険に暮らしを守られた。新興宗教団体に捕まるも中から契約を取りまくる荒業のエピローグ。

散々なことをやっておきながら、マルチ商法の過去や色恋営業をバラされることに怯える姿にちょっと違和感。どうだって言い包められる筈。 

更に先を目指すならば必要なのは爆発するエモーションだろう。観客に「ああこの為に全てのエピソードが紡がれてきたのか」と感嘆の溜息をつかせたい。ショーン・ペン監督の『クロッシング・ガード』。娘を車に撥ねられて殺された男は加害者の出所をずっと待つ。そして到頭復讐の時が来た。いよいよぶち殺そうと逃げる加害者を追う。気が付くとそこは娘の眠る墓石の前。立ち尽くしてしまう。
NAIKON_AID2024夏

NAIKON_AID2024夏

ナイスコンプレックス

溝ノ口劇場(神奈川県)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

物語の引き込み方といい
脚本といい
とても良かった
パイプ椅子に座した朗読劇
ではあるが
いろいろと動きを入れていて
舞台表現としても
上手に作れてたなぁと
感心しきりな約2時間弱の話

カズオ

カズオ

世田谷シルク

アトリエ春風舎(東京都)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 舞台美術は極めてシンプル。ホリゾントに衝立を設け場面によってその中央部分を開閉することができる。閉まっている時は、袖を形成することになる仕掛けだ。出捌けは袖両側とセンターの3か所。板中央に横長のテーブル。奥に椅子2脚、手前にベンチ。尺125分。こなれた演技だ。華4つ☆(追記8.2 )

ネタバレBOX

 2人の役者が十二役を演じるのは脚本自体がそのように組み立てられた作品だからであり、役者の技量、早変りの際の手際など役者のテクニックを観客に見せるタイプの芝居がコンセプトだと感じたが、であれば主要な要素であるタップダンスシーンでは、キチンとタップを刻んで欲しかった。タップの基礎を何度スローモーに繰り返してもタップダンスの切れの良いリズミカルな高揚を観客は味わうことが出来ない。利賀村の演劇フェスにも参加しているらしいから実力派なのだろう。それはこなれた演技からも充分分かるが、であれば猶更キチンとタップダンスを見せて欲しかった。率直な感想である。
 物語は銀行支店長を勤める父が偶々駅でカズオという男を拾い家へ連れてきた。カズオは息子の家庭教師となりいつしかその母と男と女の関係を持つようになった。母はカズオに入れ挙げて様々なブランド品を貢ぐようになり父が家庭の資産管理をもして居た為、母は貢物を買う金をサラ金から借りていた。その額総額300万円。この件に気付いた息子は狂言詐欺を思いつき、自分は誘拐されたことにして身代金を要求するが、上手く行かなかった。そこでモデルガンを買い込み、友人と父の務める銀行を襲う。無論強盗する為である。然し12歳のガキ2人の稚拙な犯行、忽ち取り押さえられてしまった。父は銀行を止めタップダンサーになった。その顛末が描かれたのが今作という訳である。
授業

授業

劇団ゆらじしゃく

シアターシャイン(東京都)

2024/07/14 (日) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 イヨネスコの「授業」は世界中で未だに再演され続けている不条理劇の傑作。今回ゆらじしゃくの演出を担ったのは劇団主宰者でもある高野さん。イヨネスコの脚本に内在しているフロイトの深層心理解析的視座からより、現在の我々の生活により密着した視座からの演出が為されている。(追記後送)

カズオ

カズオ

世田谷シルク

アトリエ春風舎(東京都)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/07/14 (日) 18:30

1984年に永井愛が書いた2人芝居。ついついクスっと笑ってしまう見事な舞台。120分。
 二兎社(永井愛・大石静)で初演され、いろいろな団体が上演してた作品を世田谷シルク・堀川炎と山の手事情社・越谷真美が演じる。2人の銀行の支店長の家族に起こった物語を、12人の登場人物を2人で早着替えをしながら演じる、という点が話題になることが多いが、登場人物が2人での会話や独白で物語が展開されるという戯曲の構造も見事だと思う。演じる2人の力量は確かなもので、人物の描き分けもしっかりして、大笑いというよりクスっと笑える芝居だった。

せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

桐朋学園芸術短期大学

調布市せんがわ劇場(東京都)

2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了

実演鑑賞

「葉桜」「命を弄ぶ女ふたり」は、どちらも岸田國士作品。なお後者は「命を弄ぶ男ふたり」が原題だったような。それを女性バージョン、しかも現代的に改変している。ただし内容は同じだった。両作品に共通しているのは女性の2人芝居、その会話をどう描くか。

岸田國士作品は、映画 小津安二郎作品のように日常のありふれた光景を滋味ある会話で紡ぐ、といった印象だ。刺激的な出来事などは起こらず、淡々とした日常の味わい深さ それをどう観せ感じさせるかが見所だろう。

ネタバレBOX

〇「葉桜」(作:岸田國士)
舞台美術は中央にソファ、その後ろの丸窓に障子 そして桜が見える。上手は足踏みミシン、下手に鏡台(鏡なし)。和風の落ち着いた雰囲気を漂わす。母は和装、娘は洋装、その外見は世代や考え方の違いを象徴しているよう。

お見合いを終え 縁談を進めるか否か、決断を迫る母と迫られる年頃(19歳)の娘の揺れ動く心を描く。母と娘、世代が異なれば「結婚観」も異なる2人の女がお見合いで出会った男の印象と、自分たちの将来について葉桜の季節に逡巡する物語。

気になったのは、現代版(戯曲は大正14年作)に改変したのか否か。雰囲気は当時のように思えるが、速いテンポの会話は時代感覚としては違う、そう違和感を覚えるのだが…。そして母・娘という関係から、その口調は違うが やはり同年代による親子の演技は難しいようだ。

〇「命を弄ぶ女ふたり」(作:岸田國士)
舞台美術は、中央にベンチが置かれているだけ。
ある日の夕暮れ時に、自殺しようとする女2人が線路近くのベンチで奇遇にも出くわしてしまう。それぞれ死のうとする理由を正当化し、先に自殺することを譲らない。その面白可笑しい遣り取りをするうちに、死ぬことから生きることへ気持が変わってくる。もっと言えば、生への執着が芽生える。ラスト、夕闇に輝く星々(照明効果)はキレイで印象的だ。

原作通り、外見=顔面に「眼鏡」と「包帯」した男ならぬ女2人。線路に見立てて客席通路を駆け上がり、脇を回って舞台上へ倒れ込む。交互に何度か自殺を試みるから、その躍動感は半端ではない。そしてスマホを取り出しlineを見せることから現代版へ改変したと思われる。早いテンポと最新機器という時代感覚も合っている。

気になるのは、「眼鏡」と「包帯」がそれぞれの身の上話をするが、その切実さが伝わらない。そもそも自殺しようとする理由がはっきりしない。他公演で知っていたから自分なりに解釈しただけ。次のようなことが感じられれば良かった。
●「眼鏡」は恋人が亡くなった喪失感を話し出すが、その先は聞かなくても分かる。「包帯」は事故で二目とは見られない顔になったが、恋人から「悲しくはない」と。それぞれが相手の話を聞いても自殺するほどの事ではないと言い合い、相手を怒らせてしまう。それが納得出来ること。
● 結局、2人は自殺しない。勿論死ぬのが恐いこと。2人の悲恋は命を懸けるほどの価値がないと悟った、そんなことが感じられること。
●全体的に表層の面白さが目立ち、その奥に潜む<死と生>の奇妙な可笑しみが滲み出ていないのが惜しい。
次回公演も楽しみにしております。
せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

桐朋学園芸術短期大学

調布市せんがわ劇場(東京都)

2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了

実演鑑賞

有名な戯曲2編「父と暮せば」(井上ひさし)・「2020」(上田岳弘)、と言っても後者は観たことがない。前者は現実をリアルに描いた反戦劇、後者は抽象的というか観念的な創造劇。その違いを続けて観ることで、演劇の幅広さ奥深さを改めて感じさせる。上演演目の選択は勿論、その並べ方(上演順)も上手い。

ネタバレBOX

〇「父と暮せば」(作:井上ひさし)
板敷の上に畳、中央奥は台所/流し場、上手に襖 傍に卓袱台。屋外には隙間のある板壁が見える。シンプルな造作だが、戦後のあばら家と思えば納得できる。登場人物は父と娘の2人。当日配布されたチラシによれば役者2人は同い年。それを父・娘を演じることの違和感を危惧したが…。設定では亡父だが、亡くなったのが兄で 親心といった面持ちで観ても泣ける。

物語は、戦後3年経った夏の広島が舞台。美津江は「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」と固い決意。原爆で多くの愛する者を失った美津江は、1人だけ生き残った負い目を持っている。最近 勤めている図書館に通ってくる青年に好意を抱くが、恋のトキめきからも身を引こうとする。 そんな娘を思いやるあまり「恋の応援団長」として現れるのが父・竹造。実はもはやこの世の人ではない。共通パンフには「死者と生者、父と娘それぞれの抱える思いが交錯しながら紡がれていく日々」とあり「いまを生きるあなたに届けたい物語」と結んでいる。

父と娘、その年齢差をあまり感じさせない演技力。全編 広島弁、その臨場感も相まってシーンとした場面では、至る所ですすり泣きが聞こえる。第二の故郷が広島であり、聞き慣れた広島弁に違和感は感じられなかった。それだけ方言指導と演技が確かということ。
気になったのは、すべって尻もちを搗き苦笑いする美津江。転んだのが気になったのではなく(⇦良くはない)、真剣に演技しているから真顔、その表情が硬く(特に目が据わっているようで)怖い。転んだ(アクシデント?)後の苦笑いだが、何となく柔和になったように思う。真剣に演じている表情だが、例えば亡くなったとは言え、父が幽霊となって現れる。それだけでも嬉しいと思うのだが…。真剣になればなるほど硬い表情・演技になる難しさ。因みに、美津江役の東春那さんは翌日 ブランケットの貸出をしていたが、その時の笑顔は優しい。

舞台技術は、冒頭の雷鳴や雨音、そして朝・夕を表す照明の諧調が実に効果的だ。特に原爆投下を表す目つぶし照明は 強烈な印象付け。また美津江の衣裳は白ブラウス&もんぺ、父の普段着も時代感覚に合っており、戦後間もない頃の様子を窺い知ることが出来る。

〇「2020」(作:上田岳弘)
舞台美術は横長テーブルを菱形に配置し、その角に額縁枠だけの小物を置いたシンプルなもの。正面奥に映像を映し出す。登場人物は男1人…約60分間の一人芝居でその台詞量は膨大だ。

物語は時代を往還するかのように、その時々の情景や状況を表す。「2020」というタイトルだが、描かれている時代・世界は現在の視点のよう。共通パンフによれば、疫病があっという間に世界を覆い、まさしくコロナによるパンデミックを連想させ、東京オリンピックを起点に はるか昔、人類の誕生からはるか先の世界の終わりまでを語る。まさしく<語る>のだが、それは独白のようでもあり、演者の精神・肉体から発する声のようなもの。それをしっかり伝え届けることが出来るのか否かが、この物語の面白いところ。

物語に関連があるのか、先のパンフによれば「クロマニヨン人」「赤ちゃん工場の工場主」「太陽の錬金術師」そして「最後の人間」などが語られている。また断片的な台詞で世相の象徴的なことを表し、時代を行き来するタイムトラベルまたは宇宙飛行を思わせるような映像、その舞台技術の駆使が印象的だ。照明ライトを浴び、その中に浮かぶキャストのシルエット…腕を天に向かって伸ばす姿が神々しい。全体的に観(魅)せるを意図しているよう。
また、具体的な事件等も映し虚実綯交ぜといった観せ方だ。語り続ける男、その本意をどこまで理解出来たかは解らない。

言えるのは、男が客席通路を駆け上がったり、横長テーブルに上り熱く語る姿。それが熱演といえるかどうか?だた永い人類史に絡めた人間心理と社会世相、それを額縁枠から覗く様は俯瞰的であり客観的に自身を語っている、とは感じられた。
次回公演も楽しみにしております。

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