オーランド
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2024/07/05 (金) ~ 2024/07/28 (日)公演終了
実演鑑賞
作家バージニア・ウルフへの関心とも相まって観たかった演目。序盤のステージを観た。オーランド役の宮沢りえが延々と喋る。台詞の言い淀みも噛みも無いのだが幾許か、探り中な感じが流れるような、ゲネプロな空気感がある。形先行・内面後から・・栗山演出のステージ捌きは(当り前だが)先行している。隅々に血が行き渡ると凄いだろうな、と思う所はあった。
本作の梗概をどこかで読んでいて、時空を旅する超越的な主人公を「ペール・ギュント」と重ねていたが自分の中ではそう外れておらず、幾人かの登場人物は人間だが、(貴族階級の世界というのもあるのか)浮世離れした、それぞれが独自進化したような生物に見える。舞台はイギリス、16世紀から、現代まで(作品は20世紀前半の著)。時代を超え、果ては性別も超えるがそれも「無くはないかも」な空気が流れている。性差が人間に及ぼすもの、についての壮大な思考実験の実験室は舞台奥一面の壁(人一人通れる出入口が中央下にあるのみ)、宮廷のような床の伽藍とした空間で、これが目に焼き付いている。スタッフ陣も一流で音楽・国広氏は相変わらず縁の下に徹した深層に働きかけるような音楽(だから毎回あまり覚えていない)。
作者は女から男、ではなく男から女への転身とした。そこに意味を見出す。ある種の不条理だが、「どちらかに(自分の選択によらず)生まれる」事自体、もっと言えば生命そのものが不条理である、その感覚を深掘りした先にある何かは、人が辿り得る最も尊い「変化」なのかも。
群論序説『ALICE IN WONDERLAND-不思議の國のアリス-』
PSYCHOSIS
ザムザ阿佐谷(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/17 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
アリスの世界は混沌の美の世界、プロデューサーは己の感性が導くままに耽美の世界を築き上げれば良いのだ。しかし過度な自由は誰にも理解されないものを生み出してしまう。作者の高取英(1952-2018)さんは自由と制約を突き詰め純化する過程でガロアの方程式論に出会ったのだろう。
(代数)方程式の解は自由に動こうとしても「解と係数の関係」という制約から逃れることはできない。多くの場合、これ以外の制約はないのだが方程式によっては自動的にもっと多くの制約が生じてしまう。その事情を抽象化、単純化して見せたのがガロアの理論である。
この舞台はガロア理論そのもの(のはじめの一歩)をアリスの世界で表現する実験である。まずはいくつかの人と状況が提示される。
人1.革命家としてのガロア
人2.革命家としての宮沢賢治と青年将校
人3.アリスと作者のルイス・キャロル、そしてハートの女王
国1.フランス革命
国2.日本の2・26事件
国3.アリスの不思議の国
そしてこれらが時空を超えて混ざり合うことにより、ハートの女王由来の多くの殺戮を生み出してしまう。この悲劇を終わらせるために、もつれた世界を引き離すことはできないのだろうか。
水と油は混じらないように無関係なものはもつれない。アリスたちはこれらの事柄を調べ、革命、殺戮、数学などによるつながりを見出し、それらが解となっている方程式を発見する。そしてガロア理論によるとこの方程式は解く(=解を分離する)ことができ、実際に引きはがすことに成功して世界は平和を取り戻すのであった。(おしまい、チャンチャン)
…などと長々と書いてきたが、もちろん実際の舞台でこんな理屈が延々と述べられるわけはなく、豊かなイメージとねじれた狂気の世界が美しく展開されるだけである。ガロア理論について語られるのは最後の10分かそこらでそれも大声で叫ばれるのでほとんで聞き取れない。そんなわけで上で書いたことは私のWonderlandから見えた歪んだ舞台の様子なのである。全然違ったぞという苦情は受け付けない(笑)
授業
劇団ゆらじしゃく
シアターシャイン(東京都)
2024/07/14 (日) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
根が真面目なので、ついつい理解しなくてはと思ってしまうのが私の厄介なところ。先日「わからないものは刹那で楽しむ」と言う奥義?を知ったはずなのに、今回はまたしても構えてしまいました。
当日パンフがそれは素敵でした!よく読み込みたいと思います←違う!?
丸山千尋さんの回も見たかったのですが、連日の観劇はちょっと辛い今日この頃。またの機会をお待ちします。
昨日、幸せになれなかった僕へ
劇団狸寝入
関西学院大学ママ上ホール(兵庫県)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
満足度★★★
うーん😔 時間どおりには始まらないし、四面劇にした理由が… 二面もしくは通常でも良かったのでは…
途中に招かざる客(ゴキブリ)も登場し役者が踏んで転けるんではとの心配で…
歌が大切なファクターである話にも関わらず、あの歌はちょっと…
ファンタジーで内容はそれなりではあったが、二時間超えである話では…
頑張ってくれ 関学❕
The Witch〜魔法使いの日記〜
ぱすてるからっと
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2024/07/11 (木) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
陽チームを観劇。
最近よく拝見している真田林佳さんが「アリス」という名前の役ということだけ把握して臨みました。
想像よりずっと重要な役でした。アリスという名前のイメージは偉い人ってあんまりないと思っていたので。個人的には嬉しい誤算でした。
見てないですが月チームの東堂さんとはきっと180度違う、真田さん独自のキャラだったのだと思います。
自分は ぱすてるからっと さん観劇は4本目かな。いつも力を入れられているダンスシーンも見どころですよね。自分の観劇回はダンス撮影可能ではなかったですが、SNSに上がってるのも後から見れるのでありがたいです。
時間が戻る要素が入った話なので、頭を働かせてがんばりました。しかしちょっと難しかったですね。台本で再確認しました。
あいあむ、あいわず! I am,I was...?
ひのでのあくび
小劇場 楽園(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
インターチェンジ
劇団ろうそくだんす
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
『LENS』
自由劇場
神戸大学・出光佐三記念六甲台講堂(兵庫県)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★
千秋楽拝見
男四人で繰り広げられる、ミステリー(犯人探し)テンポもよく、最後はそうきたか〰️と
今回はクーラーも効いていて、作品に集中できた 満席🈵ではないのに詰めて座らされたのは…
インターチェンジ
劇団ろうそくだんす
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
人生や家族について考えさせられる舞台でした。
登場人物達や内容に共感できる部分、出来ない部分があり、モヤモヤしながら観ました。
個性的な登場人物ばかりで、主人公の婚約者は強烈に嫌なタイプでしたが、こういう人は確かにいるし、発する台詞がリアルに感じました。
切なさや悲しさも残りましたが、前向きなラストが良かったです。面白かったです。
流れんな
iaku
ザ・スズナリ(東京都)
2024/07/11 (木) ~ 2024/07/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/07/15 (月) 14:00
座席1階
人気劇作家の横山拓也がiaku設立2年目の2013年、初の大型巡演に挑戦した作品という。彼は東京進出に当たって「スズナリはステータス、あこがれだった」と語っていて、そのスズナリで行われた今作は再演を重ねて広島弁でリニューアルされた、とパンフレットにあった。
結論から言うと、横山拓也の源流とも言える見事な会話劇。「見ないと損する」レベルだ。主役を演じた異儀田夏葉がちょっと今ひとつだった感じもするが、この戯曲の価値が下がるわけではない。1時間半、食い入るように舞台を見つめてしまった。恐らく他のお客さんもそうだっただろう。ラストシーンに近い当たりであちこちからはなをすする音が聞こえる。ああ、これが家族を描いた横山作品の真骨頂なのだな、と納得した舞台だ。
舞台は(広島弁なので)広島の小さな飲食店。名産の貝料理で夫婦が続けてきた店だが、冒頭、妻が洋式トイレに座ったまま大いびきをかいている場面から始まる。その横にいる中学の制服姿の長女。母親が脳出血と思われる状況であることに気付かず、部活に行ってしまう。かたわらには一回り年が離れた妹である赤ちゃん。「泣いてるよ」と母に告げて店を出るが、母は大いびきを続けるばかりで反応がない。
このシーンから約30年後の店の状況から物語はスタートする。地元の名産の貝料理を売り込むキャンペーンをする大手企業の社員が閉店状態の店にやってくる。店の主人である父親が倒れ、入院中なのだ。時に母親がわりをしながら父親と店を続けてきた長女。だが、その名産の貝は、貝毒が起きて漁にも出られる状況でない。
この戯曲は、こうした貝毒を巡る公害問題、出生前診断、今認知症診療でも使われるようになった長期記憶の映像化など、複数の社会的課題を巡って展開する。10年以上前に書かれた戯曲だが、今も続いている課題となっていることにまず、驚かされる。今作では、10年前には登場していなかったAIを盛り込んでリニューアルされているが、特に、長期記憶の映像化という話題には、「これが10年前に書かれていたの?」と本当にびっくりした。
また、この洋式トイレが一つのキーワードになっていて、タイトルにもつながっていく。複数の意味での「流れんな」。終わってみて、そうだったのかと舞台を反すうしてしまった。
横山マジックと言っていい流麗な会話劇。今回登場する5人の役柄にそれぞれ秘めた物語があり、きっちりプロットを散りばめた群像劇でもあって、物語が進行するにつれて新たな驚きが次々に出てくる。もう、これはもう舞台から目を離せない。そんな展開だ。
取り上げられているそれぞれのテーマは重く、笑えるせりふも多くはない。しかし、iakuの源流であり真骨頂であるところを十分に楽しむことができる。
広島弁もいいが、当初演じられた関西弁バージョンも見てみたい。また、どこかでやってくれないかな。
今回のスズナリ。見ないと損するかも。
あいあむ、あいわず! I am,I was...?
ひのでのあくび
小劇場 楽園(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「世にも奇妙な物語」の立体版のような新感覚の舞台でした。旗揚げ公演とは思えない演技力、間の取り方に圧巻です。SFが2コマ上演されたのも、小説のショートショートみたいでエッジが効いています。
いっかいやすみ
ポッキリくれよんズ
シアター711(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かったです。
登場人物達の置かれている状況や台詞にリアル感があり、考えさせられました。
一生懸命は良いけれど、大事な事を見失う事もあるので、一回休む事も必要だと思いました。
謎が少しずつ解けていくストーリー展開も面白く、役者さん達の演技も良かったです。
良い舞台でした!
野外劇『パレード』
公益財団法人武蔵野文化事業団 吉祥寺シアター
境南ふれあい広場公園(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
以前は「しあわせ学級崩壊」というカンパニーの主宰として作・演出を担っていた小西力矢さんによる公演。コンセプトは「広場×不条理演劇」。会場はJR武蔵境駅から徒歩1分の公園。僕が観劇目的でこの駅を降りたのは初かも。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
劇団俳小の『ゴールデン・エイジ』が急遽公演中止。折角なのでこちらに伺った。
脚本が抜群。頭一つ図抜けている。一人ひとりの人間の魅力を余す所なく書き連ねている。ちょっと単調な展開もあったが、「悪そうな奴とは大体契約」の笑いで帳消し。
二つの可動式の高座、二つの釈台、各々に張り扇(おうぎ)と扇子。釈台に叩き付ける張り扇がリズムとなり客席を煽る。シーンによって演者が二人一組で高座を色々な角度に移動していき、その都度舞台デザインのフォルムが変わる。
二人の講談師(真帆さんと篠原友紀さん)が語り始めるのは生命保険会社「第三生命」の人間模様。突如、外部から営業部長として送り込まれた二人。徹底してデータと数字で理詰めの管理をする真帆さん。一見ド素人ながら人の好さでフォローする篠原友紀さん。二人は部長でありつつ、講談の中で様々な役に化けていく。
成績No.1で叩き上げの大勝かおりさんは自分が部長に選ばれなかったことに少々不満顔。
にしやま由きひろ氏は多趣味で、変わった石を拾う楽しみを覚えた。
優秀なキザ野郎、松尾英太郎氏の決め台詞「夢を見てしまえよ!」は最高。
幼稚舎からの慶應ボーイのキタラタカシ氏は刺激に飢えている。
色恋営業で契約を取りまくる神咲妃奈(ひな)さん。
新卒の涼田麗乃さんの教育係に大野朱美さんが命じられる。大野朱美さんは落語家を目指していた時期があり、今でもそれを引きずっている。
セールスマンの営業心理学テクニックが炸裂する。
ラポール(信頼関係)形成、ミラーリング(相手に合わせる)、ペーシング(自身を調節する)、などなど。
神咲妃奈さんは板野友美のアヒル口に多部未華子の目力みたいな美人。こういう女に男はことごとく騙される。それはDNAに刻印された本能で、そう創った造物主が悪い。ホストに騙されて立ちん坊をしている女達も同様。自分の意思を超えたところで惹き付けられてしまうのだからお手上げだ。
大勝かおりさんはナンノっぽい。
にしやま由きひろ氏は渡辺いっけい似。
作・演出を兼ねるフルタジュン氏はタカアンドトシのタカとFUJIWARAの原西を足したような味。
あやめ十八番を観ている時の感覚に近い。
講談師の篠原友紀さんが他の人の熱演を真剣に見ていて、うんうん頷いたり笑いを必死にこらえたりする様がこの劇団の強みだろう。嘘偽りなく演者が本当に面白いと思って演っている。理想的空間。才能が溢れ返っている。
NAIKON_AID2024夏
ナイスコンプレックス
溝ノ口劇場(神奈川県)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
物語の引き込み方といい
脚本といい
とても良かった
パイプ椅子に座した朗読劇
ではあるが
いろいろと動きを入れていて
舞台表現としても
上手に作れてたなぁと
感心しきりな約2時間弱の話
カズオ
世田谷シルク
アトリエ春風舎(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台美術は極めてシンプル。ホリゾントに衝立を設け場面によってその中央部分を開閉することができる。閉まっている時は、袖を形成することになる仕掛けだ。出捌けは袖両側とセンターの3か所。板中央に横長のテーブル。奥に椅子2脚、手前にベンチ。尺125分。こなれた演技だ。華4つ☆(追記8.2 )
授業
劇団ゆらじしゃく
シアターシャイン(東京都)
2024/07/14 (日) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
イヨネスコの「授業」は世界中で未だに再演され続けている不条理劇の傑作。今回ゆらじしゃくの演出を担ったのは劇団主宰者でもある高野さん。イヨネスコの脚本に内在しているフロイトの深層心理解析的視座からより、現在の我々の生活により密着した視座からの演出が為されている。(追記後送)
カズオ
世田谷シルク
アトリエ春風舎(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/07/14 (日) 18:30
1984年に永井愛が書いた2人芝居。ついついクスっと笑ってしまう見事な舞台。120分。
二兎社(永井愛・大石静)で初演され、いろいろな団体が上演してた作品を世田谷シルク・堀川炎と山の手事情社・越谷真美が演じる。2人の銀行の支店長の家族に起こった物語を、12人の登場人物を2人で早着替えをしながら演じる、という点が話題になることが多いが、登場人物が2人での会話や独白で物語が展開されるという戯曲の構造も見事だと思う。演じる2人の力量は確かなもので、人物の描き分けもしっかりして、大笑いというよりクスっと笑える芝居だった。
せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演
桐朋学園芸術短期大学
調布市せんがわ劇場(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
「葉桜」「命を弄ぶ女ふたり」は、どちらも岸田國士作品。なお後者は「命を弄ぶ男ふたり」が原題だったような。それを女性バージョン、しかも現代的に改変している。ただし内容は同じだった。両作品に共通しているのは女性の2人芝居、その会話をどう描くか。
岸田國士作品は、映画 小津安二郎作品のように日常のありふれた光景を滋味ある会話で紡ぐ、といった印象だ。刺激的な出来事などは起こらず、淡々とした日常の味わい深さ それをどう観せ感じさせるかが見所だろう。
せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演
桐朋学園芸術短期大学
調布市せんがわ劇場(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
有名な戯曲2編「父と暮せば」(井上ひさし)・「2020」(上田岳弘)、と言っても後者は観たことがない。前者は現実をリアルに描いた反戦劇、後者は抽象的というか観念的な創造劇。その違いを続けて観ることで、演劇の幅広さ奥深さを改めて感じさせる。上演演目の選択は勿論、その並べ方(上演順)も上手い。