海のない島
劇団B♭
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
約30年ぶりの再演、しかし その内容はどんなに時を経ても色褪せることはないだろう。現代と昭和20年を往還し、改めて戦争の悲惨さと平和の有難さを訴えた公演。その観せ方はコミカルとシリアスが混じり、飽きずに考えさせるといった印象だ。時に 舞台となった沖縄戦、その地元踊りと地唄を披露し観せ聞かせ楽しませる。
何度も繰り返される「青く青く静かに光る海を見ながら」、その台詞こそがタイトル「海のない島」と対になっているよう。物語は、或る1日のTVのニュース番組から始まる。いつの間にか時間と場所を飛び越え 戦時中の徳之島へ、登場するのは ひめゆり学徒隊と特攻隊員、その悲しいまでの話が紡がれていく。公演は、物語の中だけではなく、この思いを忘れることなく 我々観客が語り継ぐことを訴えている。
(上演時間1時間55分 休憩なし)
広い世界のほとりに
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
近代劇以降、どこの国にも「家庭劇(家族劇)」の伝統はある。ことにイギリスには、テレンス・ラティガンを始め、よく上演されるこのジャンルの劇がいくつもあり、その幾つかは我が国でも翻訳上演されてきた。今月も俳優座で上演された「夜の来訪者」(プリーストリー)もミステリ劇だが、家庭を舞台にしている。この作品は今世紀になって発表され、しかも初演はドイツと言うから、前世紀とは事情は違うあろうがやはりお国なまりは抜けない。紛れもないイギリスらしい芝居である。
物語は格別事々しいことはなく、工業都市のマンチェスター近郊の三世代が身を寄せて住む家族の変転である。冒頭、末の孫世代ののむすめが交通事故で死んだところから始まるが、このような事件は以後起きず、祖父にはがんが見つかり、父母は過ぎ去った青春に果たせない焦燥感を持ち、青春期の孫ははじめて女友達と、旅行を試みて親と対立し、それを包むように父の左官工の職場の一コマが描かれ、交通事故を起こした加害者は陳謝に訪れ、男たちは祖父、父、孫それぞれに不器用に会話をし、女たちはお互いにどこかにわだかまりを持ちながらともに暮らす。それは今までにも見た家庭劇の再現でもあるようだし、先世紀の家庭劇にはなかった情景でもある。
日本で東京が遠いようにイギリスでもロンドンは遠いところに暮らす人々は多い。しかし僅かながらでも時代の風景は動く。
今は現代だけの人と事件の情景から出来ている舞台も翻訳劇でたくさん見ることが出来るが、この辺がイギリスの市民社会の平準的な風景なのだろう。日本で言えば、横山拓也の作品と言ったところだ。
今回は俳優座の真鍋卓嗣の演出で、翻訳はこのところ小洒落た作品をこなす若手の広田敦郎。台本作りも上手く、テンポも良い演出で二幕ほぼ三時間(休憩10分)の長丁場である。翻訳劇には慣れた昴のベテランから新人まで舞台面にソツはないが、台詞の音量が揃っていない。一部の俳優の台詞は劇場(あうるすぽっと)の中段までも届いていない。現代語で早くなると母音の芯がしっかり出来ていないから訳がわからない。俳優座は劇場があったから、ここで俳優座の俳優は訓練される。昴では大山の小劇場で台詞が通ったからと安心したのが裏目に出て、俳優座劇場クラスのあうるすぽっとでは、10段目の周囲の客はついていけずお休みの方も少なくない。人間関係が結構複雑な展開だから、ここはもっと気遣いが必要だろう。
開いてから日はたっていないが、招待客も多く実態は半分の入り。折角大きめの劇場を抑えたのに残念な入りだった。
都合
こわっぱちゃん家
アトリエファンファーレ東池袋(東京都)
2024/09/12 (木) ~ 2024/09/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/09/14 (土) 13:30
夫の不貞に基づく一組の夫婦の離婚調停を軸に別の夫婦や判事夫妻なども描きつつ進める物語。
推理小説でお馴染みの「その手法」に演劇ならではの「あの手法」も加えて観客を欺くのが巧み。その一方、やはり演劇ならではの手法でヒントも与えるとは恐れ入る。(笑)
全体像を知ってからもう一度観るとより面白いのではないかな?
また、いつもながら舞台空間の使い方も巧い。メインとなる横広がりの馬蹄形のカウンターを、調停の場の机に使うのはもちろん、複数の場所にいる人物を同時に着席させて照明によって場の違いを表現するとか、さすが。
なお、前週に観た UNITレンカノ「一度」と本作、ともに1°(角度) に言及する部分があろうとはオドロキ。
『ノアちゃんの方舟』
route.©︎
王子小劇場(東京都)
2024/10/03 (木) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/04 (金) 19:30
続いて side U を観た。本筋はそのままで終盤の展開が変わる。こちらの方が好み。80分。
ほぼ同じ展開だが終盤が大きく変わる。印象は大きくは変わらないが、何となくこのバージョンの方が気に入った。メンバーの平安は、メインキャラかと思うと実は象徴的な存在。まひたん改め岡本麻妃呂と小泉日向は警察かなと思う組織のメンバーで、物語をサイドから支える。謎の存在の夜半(井本みくに)と、セーラー服で登場の白雪(小町雪)の存在が気になる。
『ノアちゃんの方舟』
route.©︎
王子小劇場(東京都)
2024/10/03 (木) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/04 (金) 15:00
side I を観た。気になっている劇団の、リアルな要素もあるダークファンタジー。82分。
地下グループアイドルだったノアちゃん(平安咲貴)が卒業する。黒いスーツの4人、卒業したアイドルグループの3人、ノアちゃんを押してた人や様々な人たちの描くファンタジー。最初、リアルっぽい話で始まるので、あれちょっと作風変わったかな、と思ったのだが、やはりいつものダークファンタジー。ただし独特の世界観というより一般的に受け入れられやすい展開になっている。吃音者へのいじめ、とか、リアルな場面はちょっとイタイが、いつものような生き辛さを抱えた人への目線を感じる。終盤、あれ、これ別の芝居で観たぞ、のシーンとかの遊びもいい。終盤の「hero でも villain でもない」ってセリフにビーチボーイズを思い出したが、平安が知ってるわけはないかな(^_^?)。
コラソンのおともらち
コラソンのあんよ企画
APOCシアター(東京都)
2024/10/04 (金) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
ピンポンパン!
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かったです!
本当にピンポンに関わるお話でした。運動部の慣習やもの言いに世代感が現れていて、そうか、今時はそんなこともパワハラとか言われるんだ・・・と、まだシゴキとかあった時代の人間としては時の流れを感じました。現コーチの卓球試合のシーン再現が笑えました。
しかしこのOG会・・・
嗤う伊右衛門 2024
Mido Labo
サンモールスタジオ(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かったです!
顔の半分がただれた女のチラシと伊右衛門ときたら、やはり「四谷怪談」を思い浮かべるし、概ねそういうお話ではありましたが登場人物の設定などは違っていたかと。
最初はなんとも胡散臭いと思って見ていたいわば脇役の登場人物が、だんだん可愛らしく?見えてくるのが自分としても不思議でしたが、演出の妙でしょうか。
地の文そのままらしい語りとセリフで紡がれ、最小限の舞台美術と、照明、効果音で作られた世界に没入してしまいました。しかし、それにしても・・・
(ネタバレ追記しました)
嗤う伊右衛門 2024
Mido Labo
サンモールスタジオ(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
絵画では注目させるべき人物像だけを鑑賞者に一点集中させるテクニック、そんなテクニックがあるという情報をたまたま仕入れたばかりでしたが・・・生きた人物・人生が鮮明に浮かび上がり、人物そのものを存分に堪能できる演劇テクニックがあるとすれば、まさに本公演がそれではなかったかと
言うはやすく行うは難し、これほど類いまれなスキルを持った劇団さんを自分は他に知らない
閃光、雨、蠢く人の姿・・・何故にそんな態度を・・・どうしてそんなひどい事を・・・何度鳥肌が立ったか分からない
それは人の心に蛇を見たせいか、鬼を見たせいか、底知れぬ哀しみか、それとも悦びだったのか
一筋縄ではいかない人の業がとにかくエグい、エグすぎる
お岩さんの幸福観とは何だったのか、まずはお岩さんから順繰りに登場人物達の生き様に思いを巡らせていきたい
そうでもしないと もの凄い舞台を目の当たりにしてなかなか興奮が収まりません
橋の下のショコラティエ
ぱすてるからっと
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2024/09/19 (木) ~ 2024/09/23 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
持田千妃来さんと真田林佳さんが出演のケーキチームを観劇。
金曜ソワレと日曜マチネの2回。
ぱすてるからっとさんの観劇は演目で5本目。2.5次元ならぬ「2.8次元」、いつも楽しいです。
前々回「悪役令嬢イミテーション」、前回「The Witch」と三作つづけて観劇したことになります。振り返ると3つとも魔法が出てくるんですね。
7月の「The Witch」では命のやり取りが激しいストーリーでしたが、今回はコメディ寄りで、そういう心配はありませんでした。戦いのシーンでも、ある意味安心して見ていられました。
去年の「水上のゴンドリエーラ」の続編とのこと。それは観劇していないので知らなかったのですが、劇中でなんとなくどんな話だったか分かってきました。その匙加減というか配慮がありがたかったです。
コラソンのおともらち
コラソンのあんよ企画
APOCシアター(東京都)
2024/10/04 (金) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
人間にとって他者との間に生まれる様々な心の“壁”
それを主題にした三話のオムニバス作品
タイトルの感じの猫絡みは
あまし無かったが
なかなかの人間関係を垣間見せていた
約二時間弱の作品
海のない島
劇団B♭
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
THE STUBBORNS
THE ROB CARLTON
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
京都を拠点に活動する団体で、僕は初見。ただ、噂は耳にしていて、一度観てみたいと長く思っていた団体さんでした。ボタンのかけ違いや勘違いで笑いが起こる、王道タイプのシチュエーションコメディ。理屈っぽい台詞の掛け合いはコメディ愛好者に好かれそうな作風で、これから東京でも注目を集めそう。僕は好きです。
海のない島
劇団B♭
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高!でした。旗揚げ公演ということもあり新人さんばかりの劇団かな…と思ったら、どの俳優さんも他の舞台で観ている人ばかりでした^^ その意味では新鮮さより懐かしさを感じました^^ さて、内容ですが、最初に書きましたように「最高!」です。沖縄の地上戦を舞台にした演劇はどれもぐっとくるものがありますが、生身の人間が演じるからこそ生死の重さが感じられるからなんでしょうね。たぶん… すばらしい時間をありがとうございました。
僕たち映画部のはなし
劇団黙猿
イカロスの森(兵庫県)
2024/10/04 (金) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★
リアル青春コメディ
廃部寸前の映画部男子三人に降りかかる難問 最後に青春を謳歌できるのか…
中々楽しめたが、中盤のテンポにメリハリがなく、週末のサラリーマンには…
次回も楽しみにしています ダンス💃は必要❓
海のない島
劇団B♭
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/04 (金) 19:00
戦争の記憶を忘れてはいけないと思わせる素晴らしい舞台でした!又、戦争を起こしてはいけないと伝えてくれる舞台でもありました。
ピンポンパン!
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/02 (水) 19:00
座席1階A列6番
初日の夜公演も観ました🤩
1回目の公演を観て【観る練習】は出来ていたので、夜公演は役者さんの細かい動きや表情を観て、「あーっ‼️そう言う事なのかー🤔」って感心しながら楽しませて頂きました。
1回より2回も3回も観た方がより深く楽しめる、とっても素敵なお芝居です。
灯に佇む
加藤健一事務所
紀伊國屋ホール(東京都)
2024/10/03 (木) ~ 2024/10/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/04 (金) 14:00
座席1階
いつもの加藤健一事務所とは少し趣の異なる会話劇。喜劇ではないから笑わせるところも少ない。加藤ご本人が「これをやりたくて温めていた」という戯曲という。
舞台は宮城県の小さな診療所。医師である父(加藤健一)は息子に院長を譲って今は土曜日だけの診療をしている。患者1人に30分も1時間もかけて話すという診療で「そんなことをやっていたら、クリニックはつぶれてしまう」と息子にしかられている。ある時、古くからの患者で家族ぐるみの付き合いになっている男性が、何だか上の空で訪れる。胃がんの告知を受けたばかりだという。この男性の妻もがんを患い、抗がん剤の副作用に苦しんで亡くなった。男性はそのことも胸中にあり、抗がん剤と放射線による積極的な治療を望む男性の息子と本音では意見が合わず、昔からのかかりつけに相談に来たのだ。
多くの患者をこなさないと経営的に安定しない地方の診療所。だが、病気を診るだけでなく患者の人生までも受け止めて診療に臨む姿勢で地域で信頼されている診療所も多い。加藤健一演じる医師はこのような医師であり、テキパキと診療して休診の午後は野球を楽しむというスタイルの息子の医師とは世代間の相違もある。こうしたテーマだけで亡く、この台本はがん治療の在り方までに切り込んでいく。
がんについては保険診療によるゲノム医療も始まっていて、治療の選択肢は少し広がってはいる。ただ、手術や化学療法などの標準治療を行ってもうまくいかないケースは多い。もう、次の手段がないという場合は急性期病院は退院を求め、緩和ケアを勧めるのが定石だ。どんな治療を選ぶのは患者や家族の判断であるから、徹底的にがんと戦うのか、戦うのをやめて痛みを取るだけの治療に切り替えるのか、それこそこの舞台のように患者と家族の意見が食い違うなどしてとても難しい。どんな治療を選択するのか、そこでは誰の意見を大切にしなければならないのか。この舞台が一つの答えを出している。
今作では加藤健一は群像劇の一人であり、前には出てこない。長く続いてきて本人も年を重ねてきた今、このような戯曲を加藤健一事務所はもっともっと取り上げていってくれたら、と思う。
Letter2024
FREE(S)
ウッディシアター中目黒(東京都)
2024/09/25 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了
広い世界のほとりに
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ローレンス・オリヴィエ賞ベスト・ニュー・プレイ賞受賞作。
或る事故をきっかけに家族の結びつきを失った三世代家族の再生物語、そんな謳い文句である。物語は、日常のありふれた光景や会話を描き紡いでいるだけだが、次々と情景や状況が変わる。登場人物は、舞台上の違う場所(部屋)や時間をあっさり乗り越え 心地良く展開していく。公演の面白いところは、会話がちぐはぐで一貫性があるのか、場面を繋ぐ構成も断続的で統一性があるのか。その不完全とも思えるところが、物語の崩れかかった関係に重なるようだ。
物語は、2004年の晩秋もしくは初冬から翌年の初夏迄の約9か月間か。英国マンチェスター郊外のストックポードで暮らすホームズ家の三世代。夫々の夫婦の関係や子供との関わりを断片的に描き、場所は違えど同じ時を過ごしていることを語っている。物語は休憩をはさみ前半と後半、その空白の時間(休憩)に或る事故が起き、数か月間の時が経っているよう。休憩の前後で状況が変化、端的には衣裳に表れている。
日常の生活…ストックポートに行ったことはないが、多くの場面に酒とスポーツ(サッカー?)が登場する。それを会話の潤滑材として 世代間の意識や行動の違いを描く。例えば祖父母の場合、祖母が外出する際 祖父が俺の飯はどうするんだ。外出などするなと怒り出す。父母の場合は、当然のように母も働きに出ている。その息子たちは…その考え方や行動が冒頭のシーン。それにしても汚い言葉が所々に発せられて…。
(上演時間2時間50分 途中休憩10分)