満足度★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
マキタ企画の【シュナイダー】を観劇。
初見の劇団で、青年団の若手公演であり、チラシのデザインの奇妙さで観劇を決意。
自殺の名所と言われている深い森の側にある喫茶店で展開する物語。
店主の女性は、夫の突然の失踪に戸惑いながらも、店を辛うじて続けている。女性は足に障害を持っていて、その加害者は、償いのつもりで毎日店に通っている。そしてそこでアルバイトする店員は、幼児殺しで出所してきたばかりの曰く付き。更に幼児殺しの被害者の父親と店主の旦那の浮気相手など心に傷を持った人達の物語。
このような荒筋で、青年団の若手公演という事なので、尤も物語らしい物語の展開と思いきや、被害者と加害者の惨めな傷の舐め合うだけの展開のみで終始してしまう話にはウンザリした。そこから新たなる演出家の視点なり着眼点が見えてくれば良いのだが、何もないまま終わってしまい、終わり方も、ただただ曖昧にして、無理やり終えた?という感じになってしまったようだ。
観客の気分を害してしまう、出来の悪い演劇を目撃してしまったようだ。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
イキウメの【獣の柱~図書館的人生(下)】を観劇。
作・演出の前川知大の作風は、SF的な世界観というべきか、現代の僅かな隙間から異次元へと誘ってくれるのが上手い作家だ。ある時はコンビニから異空間へ、ある時は廃墟から大昔へと。そして今作も現代から何十年後の未来へと、妙に現実味のある世界へと観客を連れて行ってくれる。
ある時、天文家の二階堂が小さな隕石を拾う。それを見ると誰もが幸福感を感じ、思考能力を失ってしまう恐ろしい物体である。一年後、世界の人々が密集している様々な街で、突然巨大な柱が現れる。その柱も隕石と同じような効用をもたらすのである。そして人々はその柱に魅了されてしまい、世界崩壊の序曲が鳴り響いて行くのである。
今作は映画【2001年宇宙の旅】のモノリスは何の象徴なんだ?
という疑問符を投げかけるような展開ではなく、巨大な柱に魅了されて、逃れる事の出来ない人達の物語である。柱の存在で崩壊してしまった街、ひたすら柱に熱中する人達、柱を神の存在と崇める人達、柱と共存しようとする人達などである。そして柱の存在を観客独自の解釈によって、自身の身近に起こっている出来事、事件などとリンクしながら舞台を観てしまうという所に、今作の大きな狙いがあるようだ。
そしてその作術にハマった観客のみが、大いに楽しめるようになっている。
そう、だから今作はお勧めなのである。
やはり舞台での池田成志の存在は大きすぎる。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
【木の上の軍隊】を観劇。
劇作家・井上ひさしが亡くなる直前まで執筆しようとした話で、それを蓬莱竜太が引き継いだ戯曲だ。
戦時中、米軍から逃れてガジュマルの木に逃げ込んで、二年間に渡って生活していた新兵(沖縄出身)と上官の話。
二人はガジュマルの木から、米軍の野営地を監視しながら、応援部隊を待っている。しかし底を付く食料、寒さなどが二人を襲っていく。そして新兵が米軍の食料や毛布などを拾ってきて急場を凌ごうとするが、それを許さない上官。だがそれも束の間、背に腹は代えられず、食事、嗜好品などが確実に得られる状況になり、監視という役もお座成りなっていく。
そして終戦を迎えるのだが、それを認めない上官。更に月日が経ち、米軍の占領地がどんどん大きくなっていく。そして二人は住民の呼び掛けにより、やっとガジュマルの木から下りてきて、自身の戦争を終えるのである。
新兵と上官が、戦時中という過酷な状況の中で、互いの関係性、価値観が刻々と変化していく様が丁寧に描かれている。新兵は上官に絶対服従しなければいけないのだが、生きていく過程なかでいとも簡単に崩れてしまう。だが寝食を共にしながらも、互いを理解する事が出来ない?しようとしない?上官と新兵。
隣人を理解をするとは?という事が今作のテーマで、上官と新兵、内地と外地、米軍と日本と未だに基地問題が解決しない根本はそこではないか?と井上ひさしが墓場から言っているようでもあった。
今作は、演出、俳優陣、美術と申し分ないのだが、戯曲が飛びぬけて良すぎる為に、それを超える事は出来なかったようだ。まぁ、贅沢な不満かもかもしれないが・・・・。
今作も蓬莱竜太の閉じ込められた設定は絶好調で、【まほろば】【夜行ホテル】に続く傑作戯曲である。
舞台で観る藤原竜也は、毎回本当に良いな。
今作はお勧めである。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
水素74パーセントの【半透明のオアシス】を観劇。
今時の演劇界では珍しい不条理演劇を行う劇団だ。
母親に暴力を振るう妹、常に出来の良い模範的な姉、娘の暴力に脅えている母親、その姉妹の友人の4人の登場人物で話は展開していく。家では妹が威張っていて、弱い母親は何時も姉に助けを求めている状態だ。そんな姉も妹を何とかしようと試みるのだが上手くいかない。そんな時に妹の友人が、定職のない妹に仕事を紹介すると言い始めた辺りから、徐々に各人物との関係性が変わり始めていくという話。
特に興味深いのは、最初に決められたキャラクター達の関係性が一瞬にして、強い者と弱い者、支配する者と支配される者に変わったり、戻ったりしていく点だ。そしてそんな不条理な関係性の中でも、人はそこに安住の地を求めてしまう生き物だと言っているようでもある。
今作は、不条理感が少なかったようなのでやや残念。でも酒の肴にするにはピッタリの内容であった。
兵頭公美という女優を何度か見た事があるが、今作では抜群の存在感だ。
満足度★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
立体再生ロロネッツの【おやすみタンロンズ】を観劇。
初見の劇団である。
行動派の民子はある日、歌のグループを立ち上げる夢を見てしまう。そんな夢を正夢にしようと、仲間を巻き込んでタンロンズというグループを作ってしまう。そして歌を作り、売り込んでいくうちに、知らず知らずに歌がヒットしてしまい、テレビ出演まだ果してしまうのだが、それも一曲のみで終わってしまい、グループは解散してしまう。でも民子はひとりで歌手活動を続けるが、それも上手くいかず、最後にもう一度フルメンバーと再チャレンジする。
そしてレコーディングの当日に民子以外のメンバーは、飛行機墜落事故に合い全員死亡。そしてひとり残された民子は・・・・?
この簡単なあらすじから分かるように、誰もが感動巨編を期待するのは先ず間違いないだろう。だが感動巨編も物語と構成力を少しでも間違えると唯の陳腐な話になってしまうのである。今作は目新しい物語ではないのだが、明らかに観客を涙の渦に落しこめる展開の要素がたっぷりあったのに、そこまで行きつけなかったようだ。ただ演劇というのは不思議な芸術で、間違った構成、演出力も主演俳優の力量で覆すという事が出来るのである。今作はまさしくそれの見本ともいえるだろう。構成的におかしい?というシーンでも、民子を演じたヒロインの女優の芝居で観客を見事に落していく。それは歌のシーンであり、メンバーを失った悲しみのシーンであったりと、様々な重要な場面では必ずと言って良いほど観客の期待に答えてくれるのである。
作品の出来不出来は別として、このような俳優さんに出会える瞬間こそが小劇場の醍醐味である。
満足度★★★★★
ネタばれ
ネタばれ読んでも問題なし
ネタバレBOX
劇団・犬と串 【左の頬】を観劇。
早稲田演劇研究会に所属していた劇団で、前作の公演からフリーの劇団として活躍している。今作で既に4本目の観劇だが、新作は毎回観てしまうというお気に入りの劇団のひとつだ。
仲の悪いクラスメートの幸というふたりの女性を巡って、イケメン軍団が二人の仲を取り持つという話。その浅はかな話から世界救済?という荒唐無稽な話へと展開していくのだが、戯曲の捻りや展開の面白さで見せていくのではなく、役者の身体の熱量、馬鹿馬鹿しいギャクで観客の笑いと取り、物語の全てを納得させてしまう演出術には毎度の事ながら感服してしまう。あまりにも面白すぎて、考える余地がなく、ひたすら笑いっぱなしなので、展開などはどうでも良くなってしまうのである。ある種、唐十郎のアングラ芝居を観劇している時と同じ感覚に近いかもしれない。唐十郎も物語の狙いなどを置き去りにしていく代わりに、その世界観へ没入させるという交換トレードを観客に迫ってくるのだが、それと同じ様な事を行っているような気がする。ジャンルが違えども、似たような感覚を味わう事が出来る劇団だ。
ヒロインの鈴木アメリは相変わらず抜群だ。これだけの圧倒的存在感を持っている女優は、演劇界ではなかなか見かける事は出来ない。早く野田秀樹に見染められて欲しい。そして男優人の身体の熱量は、つかこうへいの俳優陣を彷彿させる物がある。もしかしらた超えているかもしれない?それから解散した【バナナ学園純情乙女組】の演出家・二階堂瞳子が出演していたのには驚いたが、彼女は俳優は止めたほうがいいね。
今作は今までで一番の傑作だろう。そしてお勧めである。
満足度★★★★
今作で三本目
ネタばれ
ネタバレBOX
玉田企画の【ご飯の時間】を観劇。
玉田企画は青年団所属の劇団だ。
若い夫婦が親の後を継いで、実家暮らしをしている処に、音信不通だった兄が突然帰郷して、そこに居ついてしまう。兄はやりたい放題、几帳面な妻は夫(弟)に愚痴ばかり、その板ばさみになる夫(弟)は困り果ててしまうのだが・・・。
なんとなく想像がつく展開を、そのまま想像がつく展開で当たり前の様に見せていく処に毎回面白さを感じられる劇団だ。白山羊の会、五反田団に似ている感があるのは否めないが、そこまで演出家の視点が明確ではない。
だが日常の出来事のほんの僅かな隙間の中に、家族定義、社会問題などを埋めていっているのが面白い点だ。だが観客は観劇しながら、そんな隙間を無理に見つける事をしなくても楽しめる芝居だ。
次回の三鷹ネクストセレクションに選ばれているのが喜ばしい事だ。
満足度★★★★
あの記憶の記録
ネタばれ
ネタバレBOX
劇団チョコレートケーキ 【あの記憶の記録】を観劇。
最近、演劇界で名を馳せてきている劇団で、今作の出来の良さから始まったようだ。今作は再演。
1970年のイスラエル・テルアビブ市内で平和に過ごしているイツハク家の物語。
イツハクの子供達が通う学校の歴史教師は、ナチスがユダヤ人に行った残虐な行為を後世に残そうと生き残りのユダヤ人を探してインタビューを試みている。特にユダヤ人の中でもカポーと呼ばれていた人達の証言を求めていた。そんな時に生徒の父(イツハク)がカポーという事が分かりインタビューを試みる。そしておぞましい記憶を呼び起こすのを20年以上も躊躇っていたイツハクも遂に独白する決意をする。
カポーとは・・・収容所監視員と言われている。収容者の中から選ばれ、直接収容者を監視する任務を持つ。監視下の収容者に対して絶対的な立場に立っており、残酷に振る舞う者が多かったとされる。個室や食料等の特権が許されていた。(劇団資料参考)
あまりにも遠い歴史的証言の内容であり、映像等での認識しかないので、何処まで作品に関われるか?が観劇の際の不安であったのは正直な処だ。認識不足の観客の為に、歴史的紹介を兼ねて少しづつイツハクの独白にスライドしてく展開の上手さ、そして観客をその場の立会人させてしまう演出術は見事だ。イツハクの独白も歴史の中で見聞きしているユダヤ人とは違うカポーの証言なので、更に興味を持ってしまう。
そしてその証言後に、現場体験をしているイツハクの考えている戦争終結とは?机上で考えている歴史教師の考える戦争終結とは?という結論に持って行くのだが、互いの立場、世代間、宗教間の思考の隔たりに、実はそこに未だ戦争が行われている原因があるのではないか?という事に言及していくのが今作のテーマであり、落とし所であったようだ。特に歴史的、人種的にも異なる日本人が、ナチスの虐殺から未だに続いている戦争について考察している点が今作の見所でもある。
因みに次回作は、連合赤軍の浅間山荘事件を扱うようだ。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタばれを読んでも、あまり影響はないと思うのだが・・・?
ネタバレBOX
マームとジブシーの新作 【LAND→SCAPE/海を眺望→街を展望】を観劇。
今作は劇団の集大成と思わせるほど内容の濃い、マームとジプシーの世界観に浸れる作品だ。九州・小倉を舞台に、街を出て行った人達、そこで待っている人達の話で、その人達の孤独と悲しみの一瞬を、時間軸、反復、視点を変えて、必要なまでに何十回となく表現していくので、観客がまるでその当事者になったような気分にさせてくれる。特に今作は20人の俳優が入り乱れて、圧倒的な躍動感、臨場感を感じさせてくれて、映像、音楽も今まで以上に大胆に使いこなし、その場所で小躍りしたくなるようだ。たが描かれている世界は、暗く、重く、切なく、気分が憂欝になってくるので、そのバランスの悪さが何と言えない。
前作【あ、ストレンジャー】でもそうであったが、今作もラストで観客は死の深い闇の世界へと連れて行くのである。
マームとジプシーの表現は果てして演劇なのか?と疑問に思う事があるのだが、そんな事も観劇後には毎回吹っ飛んでしまうほど、作・演出の藤田貴大の世界観は独創的であり、誰にも真似の出来ない表現である。
そう彼は天才なのである。
主演・野島慎太朗の運動量は、今までで一番ではないか?もしかしたら演劇史上最高ではないか?と思わせるくらいに半端ない。そして成田亜佑美は何度見ても素晴らしい俳優だ。
今作は必見。
満足度★★★★★
ネタばれ
完全ネタばれ
ネタバレBOX
【つか版・忠臣蔵 スカイツリー篇】を観劇。
故・つかこうへいの忠臣蔵を基にした横内謙介のオリジナル戯曲である。
今作は故・つかこうへいにオマージュを捧げた舞台である。
近松門左衛門は、自分の書いた筋書き通りに男女を心中させ、それで芝居を作り、世間の評判を取ってしまう酷い劇作家である。
そんな近松の新作は、無名な作家を使って何かを企んでいるのである。それは江戸城で起きた浅野内匠頭と吉良上野介との間に起きた切腹事件を利用して、赤穂浪士を打ち入りさせる筋書きである。近松の筋書きに上手く乗せられた赤穂浪士は、企みとは知らずにせっせと打ち入りの準備に余念がない。そしてそれと同時進行で、芝居の準備も着々と進んで行く。そして遂に近松の狙い通りに赤穂浪士の打ち入りの日が近づいて行くのだが・・・・。
今作はのっけから【熱海殺人事件】のオープニングをそっくりそのまま使い、観客は思わずのけ反ってしまう。そして要所要所に【熱海殺人事件】の台詞やシーンを引用し、音楽まで同じである。更に今回の最大の楽しみである、つかこうへいの常連俳優・山本亨、武田義晴を筆頭に、長セリフと早口の連射攻撃で攻め込んできて、ファンを唸らせてしまうのである。これじゃつかこうへいの真似じゃん?と言われそうだが、実は描く根幹が違うのである。つかこうへいは人を描く際に、人間の優しさと残酷さを暴力的に紙一重の差で描いていて、観客はそこにカタルシスを感じるのだが、横内謙介は物語の綿密さでカタルシスを感じさせてくるのである。それはスーパー歌舞伎シリーズでも感じた事だが、観終わった後の観客の心の振り幅が違うのである。所謂、観劇中は完全に虚構の世界に連れて行ってくれるのである。演劇は観ている最中が一番楽しいのか?観終わった後なのか?と投げかけているようでもある。だから今作はタイトルから分かるように、スカイツリーから徒歩10分のすみだパークスタジオで観劇した後に、闇夜に浮かぶスカイツリーが、突然幻想的に見えてしまうという計算された演出に更に驚くのである。
今作は必見!
満足度★★★
シビアなテーマ?
ネタばれ
ネタバレBOX
G2プロデュース【デキルカギリ】を観劇。
G2の作品は過去に何本か観たのだが、適度な商業性があって、可もなく不可もなくという作品が多いようだ。程ほどに面白いのだが、あまり刺激は与えてくれない。今作は解散公演という事だが、期待をしないのは勿論である。
詳しい内容に関しては割愛するが、原発問題を一家族の視点から描いた作品。
常に国家の味方と表向きでは唱えていた父親(学者)が、実は裏で原発廃止を長い期間に渡り取り組んでいた。その事を知らない子供達は、父親の国家の飼い犬、日和見主義的な生き方を憎み、家族が断絶してしまうほどだ。だがその父親が認知症にかかってしまい、原発廃止で行っていた秘密の内容が遺言書によって明かされるのである。そしてその内容を知った子供達は、そのとんでもない遺言書の中身の対応に迫られるのである。
平和なホームドラマ調で、笑いと上手い役者使い描いているのだが、テーマに関してはかなりシビアである。原発廃止は一個人のテロしかないという結論に達しているという事だ。国家の側で働いている人間が、その様な行動を起こしてしまうという事は、もう対策を打つ手がないのではないか?とも言える。3.11の直後、トラッシュマスターズが【背水の孤島】で描いた原発廃止問題も同じように個人のテロでしか解決作がないと訴えていたが、今作も全く同じだ。いち国民として正しい行動を起こす為に国家に近づいたけど、実は遠のいてしまっている?という事に気がつかされてしまうという事だろう。以前にも書いたが、映画【チャイナシンドローム】で原発職員がとった行動と全く同じだ。
今作はシビアなテーマを身近な視点で描くという事に関しては上手く出来ていて、観客が身にしみてテーマを身近に感じるだろう。だだ毎度の事ながら、クリエイティブ的な作品ではなく、観客の想像力を掻き立てられないので、観終わった瞬間に忘れてしまいそうなのだが・・・。
演劇をただ楽しみたい!という方にはお勧め。
いつどこで観ても吉本菜穂子は良い役者だ。
満足度★★★★
刺激的か?退屈か?
この劇団が一体何をやりたいか?何を表現したいか?
それを観客が、世間が、評論家が理解するかしないかは別として、独自の道を歩んでいるのが手に取るように分かる芝居だった。
今の演劇界の潮流は口語演劇と言っても過言ではないが、それにそろそろ退屈している観客がいるのは間違いない。その後に続く演劇界の新たなる道しるべが見えてきた様な気がした。
そう、だから今作は刺激的な一本である事は間違いない。
満足度★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
【in her twenties 】を鑑賞。
劇団・競泳水着の別枠のユニットである。
ひとりの女性の20歳~29歳までの人生を、10人の女優が演じ分けて行く。
てっきり入れ替わり、立ち替わり演じると思っていたら、女優が舞台上に並んでいて、瞬時に変わって演じていくという面白い試みである。
夢の挫折、恋人との関係を綴っていくのだが、性別の差か?世代の差か?いまいち乗れずに終わってしまった。その原因は、人生の深さをあまり追求していないからだと思われる。10年間の出来事を軽いタッチで描いた作品です、と言われれば成るほどねぇ?と思うのだが、それでは満足しないのである。やはり心の闇、苦悩の部分を見たいのが本音である。
ただ表現方法が意表をついていただけに、あともう少し?という感じだった。
ちょっと残念な作品。
満足度★★★★
アングラ妙ージカル
ネタばれ
ネタバレBOX
FUKAIPRODUCE羽衣の【サロメVSヨカナーン】を観劇。
オリジナルミュージカルをする劇団である。それも妙ージカルと自ら言いきっている程、変わったミュージカルである。
ミュージカルにありがちな愛と希望の物語、美しい踊り、陶酔するのような歌声、美男美女などの定番な物が全く出てこない?俳優が演じているから出来ない?ミュージカルである。サロメとヨカナーンという名を借りて、男女7人カップルの切なく、悲しい物語である。それを一晩の愛の出来事として交互に描き分けていき、中年オヤジと少女、歌手とヒモ、不倫しているカップル、倦怠期の夫婦などなどだ。その男女の仲睦ましい瞬間を、音痴な歌声、奇妙な振付、足がまともに上がってない踊り、卑猥な愛の言葉などで、執拗なまでに観客に迫ってくる。それも始まって直ぐに打ちのめしてくれる。前作もそうであったが、下手な踊りや音痴な歌声だからこそ、何とも言えない悲しさと切なさが観る者を虜にしてしまう。それはまさしくアングラ的郷愁なのである。それに共感出来る観客はいとも簡単にこの世界に没入出来るのである。
ただ今作に関しては問題点があったのである。
それは後半の構成部分に違和感を感じたのである。明らかにこれで終わりだろう?と思えるミュージカルシーンの後にまた物語が始まってしまうのである。ミュージカルの展開の王道である、歌、踊りの派手なシーンで締めてこそ、最後にブラボー!と行きたくなるのだが、そこに行かないが為に、観客全員が取り残されてしまったのである。全く何を狙っているのかが分からず、観客はキョトン?としてしまったのだ。狙いなのかも全く分からないまま消化不良になってしまったのは残念でならない。
ただそれを置いといても、今作はかなりお勧めである。
多分?事故だと思われるのだが、タクシーの運転手役の人が舞台から突然落ちてしまったのだが、その後を洒落たアドリブで難を逃れた上手さと言ったら堪りませんでした。
満足度★★★
観客も苦悩する
劇団・砂地の【Disk】を観劇。
今作はシタラートラムのネクスト・ジェネレーションで選ばれた今後期待される劇団の公演である。
自分が失った恋人の亡霊と対話し続ける男、亡くなった父の顔を思い出せない妹、そしてそのふたりを囲む友人達。
苦悩する人達の物語である。
常に自分のおかれた過去と対峙しながら、今をどのようにして生きて行けば良いか?という事を演出家は、投げかけている芝居ではないのだが、観ている我々は心苦しさを感じてしまう。観る世代によっての捉え方がまちまちだと思われる内容だが、誰もが避けては通れない己の心の襞に触れてくる内容というのは間違いないようだ。物語らしい物語がないのが今作を鑑賞するには難しいと感じるが、己の捉え方次第では幾らでも入り込める芝居でもある。
満足度★★★
ややネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
タカハ劇団の【世界を終えるための、会議】を観劇。
前作の【ブスサーカス】は【ゴド―を待ちながら】を上手く引用していたので、
今作も期待が膨らんでしまう。
現代人が自ら思考する事を止めてしまい、全ての決断を人口知能に頼って生きている社会を描いている。今作は、生身の人間が出てこない、人口知能の中で動いている機械部品のパーツを俳優が演じている。人口知能で動いている機械部品は、人間の悩みや問題を解決する事に喜びを感じて動いている。そんな折、新しいバージョンの登場に機械部品はお役御免になってしまう。それに対抗するが如く立ち向かうのだが、新しいバージョンの罠(ウイルス)にかかってしまい思考が停止してしまう。そして新しいバージョンの新しい所以である物は何か・・・?
人口知能の今後のあり方を問う作品なのだが、巷間で叫ばれている人間らしい人口知能とは何?を人口知能が自ら考え初めているのがユニークな点だ。その顛末であたふたする人口知能の機械部品のパーツを面白く描いているのだが、機械部品のパーツは常に議論しているのが興味深く、この作品のテーマは、決して人口知能は否定するものではなく、まだまだ議論の余地がありそうなので、使用するのはそれからでも良いではないか?と観客に投げかけているようだ。ただ観客に投げかけているのに対して、演出家の提案は無いに等しい終わり方だったのが残念ところだ。
しかし内容もそのように持って行っているので、正しい終わり方かもしれないが・・・・。
満足度★★★★★
ネタばれ
ネタばれを読んでも大して問題ないと思いますが・・・?
ネタバレBOX
マームとジプシーの【あ、ストレンジャー】を観劇。
とんでもない傑作に出逢ってしまった?というのが観劇後の感想である。
何時も通りの激しく動き続ける俳優人、同じ場面を視点を変えて、執拗に描いていく反復の技法、そしてある事が起きてしまった原因を前後何時間の時間軸で描いていく手法は健在だ。
何時もなら前半にある事が起きてから、その原因追究の様な形で、観客に上記の様な方法論で見せて行くのだが、今作は事そのものがラストに起き、それまでは、土曜日・午後二時の何気ない日常をただ反復しながら描いていくだけに終始していく。
そして通常ならこれから何が起こるのだろうか?と観客は期待と不安を感じるのだが、その反復の描き方が昔感じた懐かしい風景の羅列の様に捉えてしまうので、だんだん反復に見えてこない辺りが妙な処だ。そして最後にとんでもない事が起きてしまうので、全てそれが伏線だったのか?とも思ってしまう。それが果たして伏線なのかは観客の考え方次第なのだが、そこをどのように観客自身で捉えるか?でこの芝居の面白さが変わってくる。
観客が今作を観ながら、どれだけ自分自身が能動的になっているか?否か?で、今作の楽しみ方が変わってくるという仕掛けになっている。でも果たしてこの様に演出家が仕掛けているのかは甚だ疑問ではあるが、毎回この様に感じてしまうのが、マームとジプシーの人気と面白さだろう。そしてかなりレベルの高い演劇だ。
今作を観て退屈、理解出来ないという感想を持った人は、現代の若手演劇人がやろうとしている新しい表現を理解するのは永遠に来ないだろう。
今作は必見。
満足度★★★★
ネタばれなし
何時の時代も世代を超えて変わらないのは男女の性の問題だ!と言わんばかりに性というものを、丁寧かつ赤裸々に描いていくこの劇団のテーマは初見ながらあっぱれだ。
このテーマを終始追いかけて行くのかは分からないが、更にもっと踏み込んでいって欲しいと願うのは観客の性の興味に対するスケベ心である。
さぁ、次回作はどう出るか?そして私はこの劇団を見続けるのか?
その答えが出せる次回作には期待をしよう!
満足度★★
チラシのデザインは熱いねぇ
ネタばれ
ネタバレBOX
劇団・20歳の国の【花園】を観劇。
ラグビーの青春物語。
篠原涼子【恋しさとせつなさと心強さと】を流しながら、狭い劇場に所狭しと15人の選手の激しいラグビーシーンから始まっていく。これは蜷川演劇に負けず劣らずのオ―プニングだなと期待値高しと見ていたのだが・・・・。
そのラグビーシーンの後に、各選手の物語がエピソード事に進んで行く。それは進学、恋愛、精神の悩みと誰もが青春時代に陥る物語を描いていき、最後の試合へと話は進んでいく。そしてそのエピソードが試合のシーンに絡んでいくと思いきや、それを生かさず、オープニングと同じような激しいラグビーシーンをただ描いていくだけで終わってしまう。あまりにも腑に落ちない描き方に疑問の渦が巻いてしまう。エピソードと最後の試合を絡めるのが紋切り方の描き方であり、観客はそこにクライマックスとして期待しているのである。そしてそこに仕向ける様に描いているし、エピソードを丹念に描いているのに何故?と消化不良まま終わってしまった。
全く演出意図が不明の演劇であった。『これが狙いです』何て言ったら喝!だな。狙いも観客に伝わらなければ駄目だしな。俳優さんの熱量が多かっただけに残念。
今作は、大いなる失敗作である。
満足度★★★★★
ネタばれではないが・・・
兎に角、杉山圭一にはブラボーだな!
ネタバレBOX
北区アクトステージ(北区つかこうへい劇団)の【熱海殺人事件・モンテカルロイリュージョン】を観劇。
様々な熱海殺人事件のバージョンがある中、これが一番の傑作を言われている作品であり、俳優・阿部寛さんのモンテとも言われている作品でもある。僕もかなりのバージョンを観たが、やはりモンテカルロイリュージョンが一番の傑作だ。
警視庁・部長刑事・木村伝平衛が、愛人・水野刑事と山形から着任してきたばかりの速水刑事と共に、山口アイ子殺人事件の容疑者・大山金太郎を一流の殺人犯に塗り替えていくというのが原型の物語である。その大山金太郎を一流犯に仕立てて行く物語と並行して、木村伝平衛がバイセクシャルで、オリンピック代表の棒高跳びの選手時代に起こした殺人事件の真相と迫りくる時効時間、その木村伝平衛に殺された兄の復讐を誓って近づいてきた速水刑事、愛人・水野刑事との愛欲の日々、オリンピック選手の補欠だった大山金太郎と山口アイ子の長崎県・五島での恋愛関係が複雑に絡みあって、言葉の連射攻撃、派手な音響、マイクパフォーマンスと踊りで一瞬の隙も許さず進行していく。
物語を詳細に説明していくと膨大になってしまうので割愛するが、大山金太郎を一流犯に仕立てるという物語を背景に、オリンピック選手の光と影、都会と地方の貧困の差、人間の残酷性などが本作のテーマになっている。
物語を綿密な二重構造で展開していくので、演劇初心者は、物語を追っていくだけで精一杯かもしれないが、観て行くうちに誰もがすんなりこの世界に入り込ませてくれる楽しさが熱海シリーズの面白さであり、その中に一旦入ってしまった観客は、誰もが持っている己の愛と残酷性を認識し、実感し、体感しながらも、震えながら涙してしまうのだ。そしてつかこうへい演劇に熱狂して、他作も観てしまう?という処に落とし込まれるのである。
兎に角、口立てで作られた戯曲の完成度は高く、この戯曲は阿部寛さんとの共作?とも思えるほど、誰もが阿部寛さんの幻影が見えてしまうほどの舞台だ。だが、今作の杉山圭一も負けずとおとらず、己自身の木村伝平衛を演じていたのは立派だ。杉山圭一にはブラボーと言いたいくらいだ!
誰もが一度は見なければいけない舞台であり、読まなければいけない戯曲でもある。