嗚呼いま、だから愛。
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2016/04/22 (金) ~ 2016/05/03 (火)公演終了
フォーカード
劇団青年座
紀伊國屋ホール(東京都)
2016/04/15 (金) ~ 2016/04/24 (日)公演終了
鈴木聡脚本、宮田慶子演出の新作。元役者の男女4人が約20年振りに結集。平成の時事ネタ、演劇人の自虐ネタを大量投下する、古き良き昭和風コン・ゲーム。大笑いして懐かしむ中に、常に苦味が残る。約2時間の娯楽芝居。 どんでん返しはふんだん。映画「スティング」を知る観客はどれ程いるだろう。海外古典ネタに笑った。喫茶店の具象美術に老若男女の出演者が揃う。紀伊國屋ホールで“ザ・新劇”の姿を目にし、演劇集団の今についても考えた。
浮標(ぶい)
葛河思潮社
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2016/08/04 (木) ~ 2016/08/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
『浮標』は1940年に書かれた三好十郎さん(1958年没)の戯曲です。上演時間が4時間(休憩2回込み)という大作を、5年間に3度も上演。
主人公である画家の五郎は病床の美緒に、万葉の歌をよく読み聞かせます。戯曲が書かれた約75年前と、2016年の現在、そして約1300年前が同時に重なって存在する重層性は、演劇ならではの特別な体験です。時空を超えるアトラクションと言ってもいいと思います。
今回は若い俳優の健康的な肉体と、彼らが持つ長い未来の時間が、戦争と死というほぼ正反対のものと、見事に対比されていました。命、つまり生きるということを、全方位から描く傑作です。
木の上の軍隊
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2016/11/10 (木) ~ 2016/11/27 (日)公演終了
約1時間50分。戦争中に大木の上で暮らした兵士たちの2年間を描く三人芝居(+ヴィオラ生演奏の有働皆美)。前半は上官(山西惇)と新兵(松下洸平)のテンポよい会話に笑わされ、終盤は涙がしぼり出された。上官は本土(日本)、新兵は沖縄を象徴していると言っていい。劇作家の蓬莱竜太さんは絶望を知った上で、それでも生きる人間の現実を描いてくださっていると思う。やはりすごい戯曲。心情や状況の変化を克明に表す照明が素晴らしい。再演で追加された沖縄の歌(普天間かおり)があまりに効果的。そして劇場中に響く、あの音に戦慄する。沖縄出身の普天間かおりさん、そのご親戚、そして沖縄タイムズの記者さんも「沖縄の気持ちそのもの」「あまりにタイムリー」と。いや、初演のもっと昔からタイムリーなのかも。
劇中のセリフに「ぐちゃぐちゃ」という言葉があります。観客も「ぐちゃぐちゃ」になるような体験ができると思います。
クレシダ
シーエイティプロデュース
シアタートラム(東京都)
2016/09/04 (日) ~ 2016/09/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
約2時間半、休憩15分込み。面白かった…!英国演劇史を踏まえた、演劇ならではの色とりどりの手法に唸る。82歳の平幹二朗さんの技、優しさに触れ、円熟の型から心を受け取って、畏れと感謝の念がわく。一人の俳優の人生…人間の営みの尊さ、儚さを噛みしめる。シェイクスピア劇の引用が楽しい。元気で陽気なアンサンブルも巧み。浅利陽介さんと橋本淳さんの場面がセクシー。
かもめ
東京芸術劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2016/10/29 (土) ~ 2016/11/13 (日)公演終了
約3時間休憩込み。2016年の熊林弘高版『かもめ』は演出のアイデアの宝庫。人々の関係を感情ではなく身体表現で見せる方向のよう。観客に話しかけたり、やたら転んだり倒れたり、工夫と実験が山盛りの贅沢アンサンブル。(ネタバレ)をかもめに見立てるのが面白い。場面によっては登場人物の数を増やし、原作にはない印象を加えたり。俳優の平等な存在感がいい。ただ、試みの題材は他の戯曲でもよかったんじゃないかな~とも思った。全く退屈しなかったが心揺さぶる系とは違う感触。少し斜めにせり出した真っ黒なステージは能舞台っぽさも。額縁を際立たせ「演劇」であることも鮮明。たっぷりドレープの幕が美しい。照明がどの場面も素晴らしい。
いま、ここにある武器
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2016/08/13 (土) ~ 2016/08/28 (日)公演終了
プレビュー初日は2時間半、休憩15分込。めちゃくちゃ面白かった!千葉哲也さんと中嶋しゅうさんの兄弟バカ話に爆笑し、新技術の話題からは戦慄。クールな白い空間での、逃げ場なしの俳優バトル。
特筆すべきは那須佐代子さんの美しさ!衣装を少し変えて登場する度に恍惚のため息。こんなに綺麗なのに、…(笑)。斉藤直樹さんの不気味な可笑しさはどう受け取るべきかわからないスリル、そして恐怖。役として生きつつ常に観客にも意識を向ける。こういう演技が観たい。
国、企業、個人、軍事ビジネス…。誰もが巻き込まれ、見ないふりをしていること。衣装、照明、音響、選曲は尖がりつつ調和。俳優もスタッフワークもプロ。
BEAN!!!!!~踊る童話2~
CHAiroiPLIN
神楽坂セッションハウス(東京都)
2016/04/30 (土) ~ 2016/05/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
有名な童話『ジャックと豆の木』を基にした、約1時間のとんでもなく楽しい創作ダンス。有名な童謡や駄洒落を工夫したセリフが、複数の意味を持ちながら物語をドライブさせていく様にぞくぞく。はっとさせられる見せ場が連続し、息もつかせないほど。アニメーションや多彩な小道具使いも巧み。ちょっと怖くて、現代社会への鋭い風刺もある。
火傷するほど独り
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2016/05/07 (土) ~ 2016/05/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
最近、『頼むから静かに死んでくれ』と『炎 アンサンディ』が日本で好評を博したレバノン生まれの劇作家ワジディ・ムアワッドさん。ご自身が作、演出、出演し、ロベール・ルパージュにオマージュを捧げる一人芝居。
少女と悪魔と風車小屋
SPAC・静岡県舞台芸術センター
舞台芸術公園 野外劇場「有度」(静岡県)
2016/05/07 (土) ~ 2016/05/08 (日)公演終了
高き彼物
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2016/11/03 (木) ~ 2016/11/19 (土)公演終了
満足度★★★★★
マキノノゾミ作、古舘寛治演出。約2時間55分休憩込み。傑作戯曲がまた新しい演出を得て蘇る。素晴らしかった!能舞台を思わせる抽象舞台(宮沢章夫)の中央にある畳の部屋に、70年代の日本の暮らしを凝縮。人生に七転八倒する市井の人々の姿を、今ここで生きる自然な演技でストイックに見せる。大真面目に演じるからこそ滑稽で笑える、私の大好きなタイプのセリフ劇。とはいえ演劇の虚構性も堂々と示し、核を保ちつつ遊びも取り入れるのが巧み。SPAC俳優のキャスティングが見事にフィット。オーディション合格の若い俳優も良かった。
ロベール・ルパージュ「887」(日本初演)
東京芸術劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2016/06/23 (木) ~ 2016/06/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
詩を暗唱する仕事を引き受けたものの、全然覚えられない…というピンチに陥ったルパージュさんは、「脳」「記憶」にフォーカスを当てて、幼少期の思い出を語りながら、ケベック州の歴史を辿っていきます。映像、装置などのスタッフワークと演技のコンビネーションが凄いです。高い技術をサラリと使って、嫌みにならないのも素敵。
紛争地域から生まれた演劇シリーズ8
公益社団法人 国際演劇協会 日本センター
東京芸術劇場アトリエウエスト(東京都)
2016/12/14 (水) ~ 2016/12/18 (日)公演終了
イランの戯曲『白いウサギ、赤いウサギ』は「観客の前で初めて台本を開いて読み始める」と指定された戯曲。「2011年の初演から5年間のうちに20カ国語以上で1000回を超える上演、世界的ヒット作」。そりゃそうだわ!何も知らず観るべし!
その場にいる(と想定される)複数の人間それぞれが双方向に、多彩の演劇体験ができる仕掛けでした。頭と体の活性化!
堀さんの戯曲読解力、適応力、包容力、エンターティナー精神に感動。
身体的にバラエティあふれるひとたちの演劇公演 BUNNA
認定NPO法人ニコちゃんの会
横浜にぎわい座・のげシャーレ(神奈川県)
2016/10/01 (土) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
約1時間50分。 車イスが武器に見えて介護がセクシーで水上勉作「ブンナよ、木からおりてこい」が現実に重なって。何もかもを無視しない奇跡(ほんとうのさいわい)のような演劇。
障害を持つ/持たない人たちによる創作劇と言えば、私にとっては英国の演出家ジェニー・シーレイさん。倉品さんはジェニー作への参加経験あり(約5年前に拝見)。生存競争、共依存をシビアかつコミカルに描く。自分vs他者が精神vs肉体にも映る。観客を巻き込み共生の可能性も示す。ひたすら感涙。
紙屋町さくらホテル
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2016/07/05 (火) ~ 2016/07/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
初日は約3時間半(カテコ&休憩含)。感動しっぱなしでほぼ泣きっぱなし…。1945年春の広島が舞台。戦争、原爆を描くだけでなく実は、井上ひさし戯曲ならではの劇中劇で、俳優、演劇の素晴らしさを教えてくれる。出演者は皆セリフを自分のものにしていて、全力で客席に届けようとしてくれていた。客席もそれに応え、劇場が幸福に満ちているように感じた。生き生きとした晴れやかなアンサンブル、心を通じ合わせる清らかな合唱、“下手な演技”でバカうけの劇中劇、そして宝塚愛♪
本棚から戯曲本を引っ張り出してセリフを再読しまた涙。鵜山仁演出版のこまつ座での上演は10年振り4度目。でも鵜山さんは俳優養成所などで頻繁にこの戯曲を使っているそう。隅から隅まで知り尽くした演出と思う。
芝居とは何かを説き天皇の戦争責任に言及するこの戯曲は、新国立劇場のこけら落としに書き下ろされた。演技についてプロの俳優が舞台上で実技&講義する仕掛け(笑)。若い俳優さん是非!
アルカディア
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2016/04/06 (水) ~ 2016/04/30 (土)公演終了
ミュージカル「グランドホテル」
梅田芸術劇場
赤坂ACTシアター(東京都)
2016/04/09 (土) ~ 2016/04/24 (日)公演終了
2時間5分休憩なし。成河さん目当てでRED版。めちゃ面白くてびっくりした!1928年のベルリンが舞台のノンストップ群像劇。過ぎ行く時間に人生、命を映す。稼動装置と連携するスリリングな振付、心の込もった歌に集中し、うっとりできた。出演者が積極的に息を合わせる、躍動感あるアンサンブルに魅せられる。伊礼彼方さんの本領発揮っぷりが贅沢かつ眼福。別バージョンは全く異なる演出で刺激的らしい。
くれない坂の猫
まじんプロジェクト
ザ・ポケット(東京都)
2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了
満足度★★★★
長田育恵さんの戯曲が素晴らしい。それが伝わる上演でした。新国立劇場演劇研修所の修了生4人が出演。ベテラン俳優も魅力的。前売り4500円の人情喜劇。高くない。驚いた。
部屋に流れる時間の旅
チェルフィッチュ
ロームシアター京都ノースホール(京都府)
2016/03/17 (木) ~ 2016/03/21 (月)公演終了
京都でチェルフィッチュ『部屋に流れる時間の旅』。面白かった。何度か書き直したけど、どうしてもネタバレが心配になっちゃうので、感想はひとこと。震災から5年経った今の私たちを描く。緻密で直球だがダサさ、間抜けさもふんだんで素敵。特に妻の衣装とメイクがツボ。ダンス作品としても楽しんだ。
PORTAL
豊中市立文化芸術センター
ロームシアター京都サウスホール(京都府)
2016/03/12 (土) ~ 2016/03/13 (日)公演終了
kex 松本雄吉×林慎一郎「PORTAL」約1時間45分。多分私、全然意味わかってないけど、面白かったー!地図に空ける無数の穴から様々に想像。突破口、傷口、孤独、ブラックホール、抜け穴、平行世界…。俳優が皆、自立していてセクシー♪