伝説との距離
シャチキス(少年社中×ホチキス)
シアタートラム(東京都)
2010/09/16 (木) ~ 2010/09/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
岩田有民がいい!
少年社中の華やかさとホチキスの物語性が融合して素晴らしい化学変化を起こしている。また多くのメンバーが今までやったことのない役どころを与えられ、違った面を見られるのも今回のうれしいところ。前半、初日ゆえの緊張、新しい役に本人も客席も不慣れ(だって小玉久仁子や森大がすごいシリアスな演技でびっくり)な部分があり、堅い感じでスタートしたが、中盤からどんどん引き込まれラストシーンではさすがと思った。
いい役者がいっぱいいるが、今回はおいしいところを全部岩田有民に持って行かれたという感じ。圧倒的に岩田有民がいい。うまい役者はたくさんあるが味のある役者は少ない。岩田有民は数少ない味のある役者。好演だった。
現代能楽集 チェーホフ
燐光群
あうるすぽっと(東京都)
2010/09/13 (月) ~ 2010/09/20 (月)公演終了
満足度★★★★
とても幻想的なチェーホフ劇
かもめ、ワーニャ伯父さん、桜の園、三人姉妹というチェーホフの四大戯曲を、それぞれ違ったテイストで坂手流に加工し、さらにそれを現代能にするという試み。二時間半の上演時間だが、長いとは感じない。途中になんとしゃれたダンスシーンまであり、たっぷり楽しめた。
オムニバスのようにそれぞれが独立した作品でもあり、全体として幽玄な世界を醸し出している。中山マリが相変わらずうまい。あの細い体からどうしてあんないい声が出てくるのだろう。
よわいもんいじめ
コマツ企画
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2010/09/10 (金) ~ 2010/09/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
星のホールを使い切った。
いつものコマツ企画とひと味違い、しっかりとしたストーリーのある物語。哀しい男と哀しい女たちの人間喜劇。
昭和の有名な事件を題材にしながら、描いているのは小松ワールド。さまざまなひねりを入れながら、人間の面白さと愚かさ、哀しさを描いている。
役者では川島潤哉の上手さは当然として、クラブのママを演じた柿丸美智恵が抜群に魅力的だった。自殺女を演じた近藤美月は近藤美月にしか出来ない演技を確立している。あの存在感は恐ろしいほどだ。
小松美睦瑠が星のホールの広い舞台を見事に使い切った。
ZOKKYののぞき部屋演劇祭2010
ZOKKY
王子小劇場(東京都)
2010/09/10 (金) ~ 2010/09/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
第二シリーズもさらに面白く!
今回は第二シリーズ、劇団スクール水着の「NOT BACK 堀 PLAY」と、失禁蝶々の「日本にトイレが無くなる日」、エロムモリブデンの「不躾なQカップ」と、当日券でKIKKYを観た。
今回は第一シリーズを見た後なので落ち着いて観られるかと思ったが大違い。この第二シリーズ、第一シリーズよりさらに刺激的だ。
今回、この4作品のうち、2作品は壁がない。壁のないのぞき部屋公演なのだ。この壁がないという公演、刺激的というより怖いくらいだ。壁で隔たっているということがなんという安心感があったのかと、今更ながら驚く。
ともかく心臓の悪い人にはお奨め出来ない公演だ。もちろん、それだけ面白かったということ。
野良猫パンク
乱雑天国
エビス駅前バー(東京都)
2010/09/10 (金) ~ 2010/09/13 (月)公演終了
満足度★★★★
松下ワールド全開!
松下幸史ワールド全開。野良猫パンクという名前もチラシのデザインも硬派な感じだが、むしろ優しさに包まれた芝居。ちょっと変わったキャラクターがたくさん出てくるが、いずれも魅力的で、とても愛らしい。それぞれの演技がどこか松下幸史的で、それも観ていて面白かった。
その中で優美を演じた山口奈緒子が素敵だった。台詞も達者でしかもかわいく、独特の哀しさも備えている。猫おばさんとようやく会えたシーンは名場面。ラストシーンも素敵だった。
大人の授業
smokers
テアトルBONBON(東京都)
2010/09/09 (木) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
大人も楽しめる学園もの。
最近サスペンスもので評価を集めている広瀬格の本格コメディ。学園物だが、大人の学園物。どこかノスタルジックで甘酸っぱい香りがする。
登場する役者が皆芸達者で安心して観ることが出来た。途中、話が深刻になり心が傷んだが、ラストで素敵にまとめあげた。さすが再演、細部までよく練られている。
ZOKKYののぞき部屋演劇祭2010
ZOKKY
王子小劇場(東京都)
2010/09/10 (金) ~ 2010/09/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
なんて素敵な演劇祭!
ZOKKYのぞき部屋演劇祭2010の第一陣、「15 Minutes Maid」「極めて美しいお尻」「ワイルドオタッキー」を観た。面白い、面白すぎる。
たった5分で何が出来ると舐めていたが、5分だからこその世界がそこにあった。通常の演劇公演に比べてキワモノではないかと思ったが、観終った感想としては、こちらの方が本物ではないかとさえ思った。
現在の演劇が失った見世物小屋のわくわく感、ちょっといけないものを観るという背徳感、そして視覚的にえも言われぬ刺激がある。まだ3本観ただけだが虜になったと言っていい。
エゴ・サーチ
虚構の劇団
紀伊國屋ホール(東京都)
2010/09/10 (金) ~ 2010/09/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
油に乗ってきた虚構の劇団!
鴻上尚史お得意の一見サスペンスドラマのように展開する素敵なファンタジー。 例によって会場は笑いに包まれながら、同時に大きく感動するというさすがの作り。初日から安心して公演を観ることが出来る。今回ヒロインの小野川晶がまるでコメディエンヌのように、ここまでやるのかというくらい笑わせてくれる。それでもしっかりとヒロインなのだから凄い。小野川晶フアンには見逃せない公演だ。
今回、いつものメンバーがそれぞれ少しずついつもと違う役どころを演じている。それぞれの新しい面ば見れてそれも楽しみ。ともかく面白かった。
虚構の劇団の役者陣がどんどん上手くなっていき、どんどん魅力的になっているところがとてもうれしい。
グッバイゴレンジャー
劇団てあとろ50’
早稲田大学学生会館(東京都)
2010/09/09 (木) ~ 2010/09/11 (土)公演終了
満足度★★★
新たなる旅立ちのドラマ!
今年入った新人による公演。今年はつぶ揃い、へたくそで使い物にならない人間は一人もいない。水準が高い。
森の新人公演も良かったらしい、そちらは観にいけなくて残念。
忘却曲線
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2010/09/06 (月) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
芸術の香り高い上質な芝居。
まるで職人が手掛けたような手作りで、ていねいに作られた作品。細部にまで神経が行き届き、誰もが感情移入する。
井上みなみが今までやったことのない役を初チャレンジ。こんな役まで見事にこなすのだとまたまた感心。井上みなみフアンには見逃せない作品だ。
清水那保一人芝居 ~曇天少年/共震少女~
ネリム
スタジオアキラ(東京都)
2010/09/04 (土) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
天才演劇美少女降臨!
七色の声と変幻自在な表情、途中からはもう神がかった演技だった。失礼な言い方だが彼女より美人な女優はいくらでもいるし、かわいい女優はいっぱいいるだろう。しかし、その確かな演技力で誰よりも舞台上で輝いている。
彼女が書いた物語も、その演技力に支えられ、奥行きのあるものになった。再演を熱烈に希望する。
東京アメリカ
範宙遊泳
STスポット(神奈川県)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
満足度★★★★★
挑戦と勇気と批評性に拍手!
まず驚いた。今までの範宙遊泳の作品と全然違うからだ。しかも今回の作品はいろいろな意味で大変難しい作品。それをしっかりと演劇作品に仕上げた。見事だ。一歩間違えば学芸会や、ただの内輪受け芝居になりがちな物語を、絶妙なバランス感覚で、質の高い作品に作り上げている。
いろいろな事を仕掛け、冒険心に満ち満ちた作品。そして批評性にとんだ作品。作家の的確な批評眼におそれいる。
衛星放送に殺意を、
ハイバネカナタ
劇場MOMO(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
満足度★★★
三瓶大介が熱演
服部紘二、國重直也、三瓶大介、鈴木麻美、私の好きな役者がたくさん出ている。物語はラジオ局、テレビ局を舞台に、検閲という権力と戦う男達の物語、伏線としてチエ・トモミの姉妹の物語、アオシマの父と子の物語などが絡んでくる。
圧倒的な言葉の量と熱さに驚く。いつもはクールな役の多い三瓶大介がマイクを持つと別人になるという設定で暴れまくる。
劇スピードの速さのせいか、これだけの役者陣なのに滑舌が悪かったり、噛んだりするところが多かった。それだけが残念。
とろける魚
東京のくも
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
満足度★★★★
随所にきらめきあり
開演前から激しいビートとちかちかする照明で、まるでライブハウスのようだ。その延長線上で始まった舞台は、あちこちシーンが飛びながらも、ちょっと危なっかしい若者の生態を見事に描写している。象徴的な舞台装置が刺激をそそる。ステージをうまく立体的に使いながら、わざと雑然とした雰囲気を作り出している。
全てに魅力と才能を感じるのだが、1時間という時間が短すぎた。魅力的な登場人物、気になるエピソードが放り出されたまま突然終ってしまったという感じ。そのもやもや感が狙いと言われればされまでだが。
役者は全員水準が高い。自然な演技が出来ている。何人かは学生の水準を超えてこちらの胸に響いてきた。
渡り鳥の信号待ち
世田谷シルク
サンモールスタジオ(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
満足度★★★★
しなやかな体の動きが舞台美術と融合
世田谷シルクは独特の踊りとマイムの中間のような音楽に乗った独特の演技がある。それが今回一段と洗練されていた。
従来は劇中の雰囲気を変えるためのアクセントとして、ダンスシーンに似た使い方だったが今回はそのシーン自体がしっかりとストーリーを支えるものだった。ここが観ていて非常に素敵だ。また舞台美術がしゃれていて全体的にセンスの良さを感じた。
物語はネタばれになるので、ここでは書かないが、佐々木なふみが牛乳を渡すシーンがジーンときた。
ヴィジョン
ミームの心臓
神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)
2010/09/01 (水) ~ 2010/09/06 (月)公演終了
満足度★★★★
若い才能のきらめき!
主宰は大学1年生だそうだ。既存の劇団に入らず、最初から自分で劇団を立ち上げたところが凄い。そして驚いたのは主役を演じた女優がなんと16歳だとのこと。
主宰が大学1年だから、主演も大学1年かと思いきや、高校2年生だそうだ。後生畏るべし。
荒い部分もあったが、この年であれだけのことが出来るということに将来性を感じる。
オドル
劇団appleApple
The Art Complex Center of Tokyo(東京都)
2010/08/25 (水) ~ 2010/08/29 (日)公演終了
満足度★★★★
光と影の演劇!
光と影の使い方がすごくうまい。私たちは光に照らされた役者を観ると同時に、壁に映る影も観る。とても幻想的だ。
まるで刑事ドラマのように物語は展開するのだが、その奥に秘められているものは象徴的で奥が深い。随所に想像力を刺激する素敵な演出あり。
ダンサーを演じた恩田和恵の不思議な魅力にも惹きつけられた。
FUKAIPRODUCE羽衣LIVE vol.3
FUKAIPRODUCE羽衣
MANDA-LA2(吉祥寺)(東京都)
2010/08/26 (木) ~ 2010/08/27 (金)公演終了
満足度★★★★★
かけつけてよかった。
1本ソワレの芝居を池袋で見て、急いで吉祥寺まで駆け付けた。すでに半分強終っていたが、駆けつけてよかった。
羽衣の歌には熱い魂がある。聞いているすべての人を幸せにする力がある客席の観客の顔をひとりひとり、見てみた。なんて幸せな顔をしているんだと思った。
羽衣の芝居も素敵だが、ライブも見逃せない。もっともっとステージ数を増やしてもらいたい。
good night pillow
演劇研究会はちの巣座
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/08/27 (金) ~ 2010/08/29 (日)公演終了
満足度★★
演劇に対する熱い思いが伝わってくる。
いい意味でも悪い意味でも学生らしい芝居。演技力やスタッフ力では東京の劇団に一歩及ばないものの、感性や発想力では負けていない。特に舞台上にいろいろなものをぶちまけ、体中汚しながら、それでも芝居が好き、芝居をやっていることが楽しいという気持ちが伝わってくる。そこがいい。
芝居の内容は象徴的で少し難しい。しかし、描かれているものは斬新であり、美しい。こうやって東京と地方の劇団が交流することによって、すぐに地方の水準が上がってくるだろう。次回彼らが東京にやってくるときが楽しみだ。
ログログ
キリンバズウカ
シアタートラム(東京都)
2010/08/26 (木) ~ 2010/08/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
お勧めします。
これでもかと言うほど素敵な役者が揃っている。その役者が魂のこもった演技をしている。そして本が素敵、演出が素晴らしい。何拍子揃っているのかわからないほどの良作。初日から完成度が高い。
関係者に聞いた話だが、チケットが飛ぶように売れているとのこと。すでに日曜日は札止め、土曜日も残席わずか、もし、観ようと思ったらすでに今日になった金曜日の昼夜しかないらしい。お勧めはいとうせいこうがアフタートークでくる金曜日マチネらしい。
役者はみな魅力的だが、なかでも中川智明がまたまた素敵な演技を見せてくれる。彼の演技を見ているだけで幸せな気分になる。それくらいの演技だ。