安人の観てきた!クチコミ一覧

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『絵のない絵本』

『絵のない絵本』

富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ

富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)

2013/12/12 (木) ~ 2013/12/15 (日)公演終了

満足度★★★

高級すぎるパフォーマンス
 アンデルセンの「絵のない絵本」を下敷きとしたダンスパフォーマンス。
 予備知識がなく、こうしたダンス中心の舞台も初体験。
 女性9人が砂地を動きまわる。
 もぎりでマスクを渡され、砂が舞うかもしれませんと言われたのかなあ。
 マスクいるかもしれませんと、言ったのかなあ。
 実際は、客席が上のほうだったのでマスクを使うまでのことはなかったが。

 そんなこの舞台に直接関係ないエピソードしか書くことができない。
 そもそも、ダンスを見ながら1時間半踊るもの大変だろうなあと、素朴な感想しか思いつかない。
 途中、居眠りも出てきたり。
 でも、若い女性たちが一生懸命踊っているのだから、居眠りなんて失礼と思ったり。
 子供たちも何人か見かける。
 子供たちの感想はどうだったのだろう。予備知識がないという条件では同じと考えてしまう。
 人の感想を気にしてもしょうがない。そこらが、貧困さをさらけ出している。
 意味もないことを書いてしまっている。

 舞台を観てどうだったと聞かれたら、「うーん、なんだかわからなかった」というのが正直な感想。
 「じゃー、おもしろかった?」との問に、「退屈だったかなあ」と答えてしまう。
 言葉がないぶん、思考停止状態になっている。
 ダンスだけで表現する試みについていけないだけの話しかもしれない。
 なんか、筋とか意味を考えてしまっている。それがないと不安。なんでこんなに動きまわっているだけなのかと考えている。
 あと、動きが真面目すぎたと言うことはないか。

 主宰者が観客に対するお願いとして行ったパフォーマンスが抜群におもしろかった。
 あんな感じがあれば、私自身もっと食いついたのでないか。わざとらしいことを徹底してやればおもしろくなる。
 時々、コミカルな動きもいれたパフォーマンスでわかりやすいものにしたら、意図と異なってくるか。
 素人にとっは、わかりやすさを求めている。それがないと、伝わってこない。
 私には高級すぎるパフォーマンスだった。

 

ゴリラと最終バス

ゴリラと最終バス

ぬいぐるみハンター

駅前劇場(東京都)

2013/01/07 (月) ~ 2013/01/14 (月)公演終了

満足度★★★★

かっかかっかと大笑い
狭いステージを17人の俳優が、ドタバタ走り回る。その名のとおり、ドタバタ劇。スピード感あって掛け値なしで笑える。訳の分からないところもご愛敬。家族愛あり、いじめあり、友情、会社員の悲哀といったごちゃ混ぜの人生劇場。ストーリー展開も、ご近所迷惑から、田舎道に迷い、日本脱出、いや世界へと羽ばたくどころか、大気圏に転勤なんていう話になるから、気宇壮大というか馬鹿げているというか。登場人物はまともでないところもあるが、でも最終的にはごく常識的なところにおさまる。最後は、みんなで朝の儀式(観てのお楽しみ)をするのだから。新春にふさわしいドラマ仕立てを考えたのか。新たな気持ちで朝日に向かって、良い年でありますようにと俳優全員で観客に対して祈ってくれたということか。そう、劇団及び出演者にとって、ますますの発展とご活躍の程を心よりお祈り申し上げます。(かっかかっかと大笑い)

Rのお出かけ

Rのお出かけ

鳥山フキ個人企画

新宿眼科画廊(東京都)

2012/11/30 (金) ~ 2012/12/03 (月)公演終了

満足度★★

皆唐突
 起承転結のある芝居でない。物語もない。ただ、登場人物たちのモノローグを並べいたのか。観ていて私には居心地の悪さを感じたし、物足りなさを感じるばかりだった。そして、突然、唐突に芝居が終わった。えっ、拍手をしていいのかと戸惑った。だから、30人ばかりの観客からもぱらぱらの拍手になってしまった。バナナをほおばってただひたすら食うだけの場面があった。すごく間が悪かった。あれって必要だったのだろうか。飴玉の奪い合い、せんべいを分けたり、殺しの計画をしゃっべったり、皆唐突。唐突さをシャープに描写してほしかった。コント仕立てにすると、俺にもなるほどと納得することもできたかもしれない。でも、このゆるさ加減がいいと感じる人もいるんだ。安心して観ていられる舞台を今後に期待。

バラバラ姉妹に憐れみを

バラバラ姉妹に憐れみを

水素74%

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/10/31 (水) ~ 2012/11/07 (水)公演終了

満足度★★★

俺は俺だという主張
 本作品は、家族や世間の人間関係なんてはかないものであり、信頼に足るものでないとする残酷な面をこれでもかと描いている。
 親や兄弟姉妹、恋人、友人全てが裏切り、無視、拒絶している断絶の世界。
 観ていて何でこんなにすれ違ってばっかり、合わせようとせず、嫌みと暴力に終始してしまうのだろう。
 不安と同居している男、DVな男、うそつきな女、セックス依存な女、愛情過多な女、血縁主義な女。
 異常というのはこうだと言っている感じ。あまりに異常だからこそ、笑ってしまう。
 
 ちんこを切ってまた新しいちんこが出てくるなんてことを大まじめに言う。
 それで、新しい人間関係を築こうとしている男になったりする。
 セックスが唯一の男女関係を成立すると考えている女。
 血のつながりこそ、家族のあかしとする姉。

 相手を信じない。信じたくない。信じても何も変わらない。
 それよりは始めから相手にしないか、反対のことを言う。それに限る。
 間違って相手すると、自分に負担をかける。
 そうならないため、予防線を張って対応する。
 関係そのものを分断することにきゅうきゅうする。
 それだけで大変なはず。考え過ぎなんだよ。素直に考えればいいのにと助け船出すと、余計なお世話となる。
 ひねくれることに生きがいを感じている人間のぶつかり合い。それがここのテーマ。
 バカだなあと俺なんか思う。
 どうでもいいことに情熱かけるオタクがいる。ここでは、人間関係を引き裂くオタクたちがいっぱいである。
 救われない人たち。そうした人たちをこれでもかと描いた貴重な作品。
 誰がなんと言おうと、こういうのがいるんだぞと主張した作品でもある。
 はたからみると、かわいそう。本人はだめだなあと思いもあるに違いない。
 それでも、人からやいのやいの言われれば反抗する。
 俺は俺だという主張である。

Goodnight

Goodnight

劇団競泳水着

王子小劇場(東京都)

2012/06/22 (金) ~ 2012/07/02 (月)公演終了

満足度★★★★

おしゃれで意外性を追求
 イタリアンレストランで繰り広げられる送別会と称して集まる人たちのエピソードが折りなす、若者たちの挫折と、今後の展望をコメディタッチで描く。

ネタバレBOX

 レストランで水道が出ない、ガスが付かない。
 そんなあり得ない設定がおもしろい。
 けんか別れした兄弟、元カレ・元カノ、酔うと遠慮知らずに何でも言ってしまう女友だち、場違いで気弱な女子銀行員、落語家志望の元予備校講師、コンビニ好きのシェフ、バンドをあきらめきれない送別される元店員、片思いのアルバイト店員、有名店に引き抜かれてゆく女子シェフ。
 役者それぞれが良い味出している。
 街の水道破裂によって、料理がつくれない送別会が流れ解散となる。
 レストランから一人去り、二人去ってゆく。
 その余韻がなんともいえない。
 それぞれのエピソードがていねいに描いたため、平板になったきらいある。
くちづけ 【閉幕しました/配役発表】

くちづけ 【閉幕しました/配役発表】

オーストラ・マコンドー

中野スタジオあくとれ(東京都)

2012/04/11 (水) ~ 2012/04/18 (水)公演終了

満足度★★★★

7人のこびとが出てくるひねくれ童話
 小さなステージに大きな7人ものこびとと称する男どもが、体育会系ののりで脚折り曲げたままの姿勢で1時間半あちこち動き回る。
 能面つけて無表情な表現したり、あやとりを何人でもする感じでうまくひも使ってテーブル表現したりと、そこかしこにおもしろい演出がある。
 マッチ売りの少女、シンデレラ、白雪姫、グリム兄弟と誰もが知っている童話に出てくる主人公を組み合わせて、世界で一番美しい物語に仕立てようとするもくろみ。
 もちろんそんなとてつもない話が成立するわけがない。
 最後は、マッチ売りの少女から、世界で一番美しい人になり、王妃になったことが悲劇を生み出す。
 寒さをしのぐためぼろの服をつくろってほしいと思う程度の望みが、世界最強の美を求めて白雪姫の死を求める嫉妬にまで変わっていく。
 しかし、そんな寓意を含んだ舞台とか考える必要もなく、親子で楽しめる「学芸会」的舞台として成功している。ただ、親子の観客はいなかった。
 最後のシーンは子供向きでないかもしれない。
 マッチ売りの少女だった王妃が火あぶりの刑だもの。
 白雪姫も表面はかわいいが、王妃に死刑を命ずるなど残酷。こうしたことも子供向けでないか。
 今から子供にも人間両面あるよと教育するには、すばらしい舞台であるかもしれない。(ジョークですよ)
 と思いきや毒をいっぱい含んだ小劇場テイストに満ちあふれた舞台。
 小劇場ファンにはすいぜんの作品。

愛はタンパク質で育ってる

愛はタンパク質で育ってる

ぬいぐるみハンター

駅前劇場(東京都)

2012/02/08 (水) ~ 2012/02/14 (火)公演終了

満足度★★★★★

モザイク調のかけあい
 みな走り続ける物語。目的もわからずに走っていて時々嫌になってしまう。でも、走り続けることが生きている証。いろんなすれ違いがぎくしゃくをもたらし、それでもつながり続け、新たな生を生み出す。世の中、人生を肯定的に見ているコメディ。理屈ぬきにおもしろい。動きといい、セリフといいリズミカルで、テンポ抜群。ごくわかりやすい物語を織り込んで、モザイク調の展開をくり返す。男女の恋ばなしがベースになっている。男女関係もかけ合い的な漫才調。予定調和を破壊し、イラッとさせられる。女の甘えを、男が包容しているととらえることも出来る。それが恋の王道か。うーんそんな風に考える必要もなし。ただただうまくかみ合わないところもあるが、ちょっとした許しが恋を成就させる展開。倦怠気味の人にお勧め。

全 員 彼 女

全 員 彼 女

TOKYO PLAYERS COLLECTION

王子小劇場(東京都)

2012/01/05 (木) ~ 2012/01/09 (月)公演終了

満足度★★

物語に入り込めず
 私にはわかりづらい構成で、最後までなにがなんだかわからずじまいだった。物語に入り込めないままで終わった。最後ようやく8人の女優が出ているのだとわかった次第。
 劇場からの帰り道、「うーん、どうかな」とうなってしまった。
 アイデア自体はこっている。5人の彼女という分身。みんな理想的な彼女。それに、元彼女がいて、初対面の彼女と、別れ際の彼女、合わせて8人。
 さらに、前半部は男目線からのストーリー展開、後半部は女目線からなぞるストーリー展開。
 最初、そのへんの理解ができなかった。そこらのこりすぎが物語に入り込めなかった理由か。

ノマ

ノマ

リクウズルーム

アトリエ春風舎(東京都)

2011/12/02 (金) ~ 2011/12/06 (火)公演終了

満足度★★★

すとーりー?
 意味を破壊し、言語のわかりにくさをとことん追求。
 意味を追求することの無意味さに挑戦した実験的舞台。
 あまりの無意味さに感心するばかり。
 これだけ無意味さを追求することで、言語の有効性が浮かび上がる。
 ストーリー、わからない。
 でも、セリフそのものはおもしろい。
 不思議な訳のわからない言葉。次々に飛びだしてくる。ネアンドルハインヅガーって何?
 「それでいいのだ」と言ったセリフも確か出てきた。
 

ネタバレBOX

 わからなさの魅力。わからなさに魅入る。発する言葉のわからなさに聴き入る。わからなさに感じ入る。わからなさに意味を見出す。
 ここまでわからなさを前面に出せるというのも簡単ではない。かなりの力業。ほめ言葉として聞いてもらいたい。
 ただ、俳優の力量が問われる。セリフをかむようではわからなさの魅力を半減してしまう。わからなさが明瞭でなくなる。わからなさの世界を納得させてほしい。客にインパクトを与えるわからなさを徹底的に追求する。客がついていくわからなさの世界を見せてほしかった。
HELLO!

HELLO!

表参道ベースメントシアター

表参道GROUND(東京都)

2011/09/02 (金) ~ 2011/09/04 (日)公演終了

満足度★★★★

若手タレントと小劇場も相性があいそう
 とある町の喫茶店を経営する家族と、それを取り巻く人たち一人一人の、挫折と不安と、それをなんとか乗り越えようとするエピソードがからまって展開する話。
 一人一人には深刻な話でも、それを取り巻く一人一人にはどう取り扱うかとまどってしまう。
 観客として観る側にもそのように映る。それが淡々と進行している舞台として感じた人が多かったに違いない。
 私には、そうしたことがとてもリアルに感じた。あえて凝らない、ひねりも加えない、正攻法で一人一人の人生のひとこまを描いていた。他人からみれば大したことのない新たな生き方を模索し、ほんのちょっとの曙光をみいだすことで舞台が終わる。『HELLO!』のタイトルには、そうした意味をこめていたのかどうか。新たな元気を社会にもたらすなんて大それたことを考えず、一人一人が自分の生き方に責任持って、立ちむかうメッセージとして、この舞台を、私は受けとった。

ネタバレBOX

 若手のタレントを囲んで、演技上手な小劇場で活躍する俳優・女優陣のバランスが良かった。
 白又敦は若いエネルギーを感じる。これからの伸びを期待したい。
 三宅ひとみ、可愛い子だ。それだけでも価値がある。これからどんなプラスをするか楽しみ。
 この二人のタレントも舞台等のキャリアを積むことで大きく成長していく可能性を秘めている。
 ザンヨウコ、母さん役が似合っていた。子どもたちのことを心配しながら、どうしていいかわからず、再婚話にも迷っている母親を演じた。幅広い役をこなせる女優。
 黒木絵美花、姉役で芯の強い他人に弱点みせない負けず嫌いなところを演技として見せていた。こうしたOLって周りによくいるよな。優等生を演じきっていて好感が持てた。
 武子太郎、アルバイトの国家試験浪人をしている青年役。なんとか、みんなの仲を取り持とうとするが、どっかでずっこける。憎めない青年。いい味出している。
 大川翔子、タレントのマネジャー役。独りよがり、相手の気持ちを読めないあわてんぼうな感じを、オーバーすぎる程の演技で演じた。正直、くどくなりすぎたかなという印象。ただ、この舞台の狂言回しと考えると納得。
 それぞれが今後の可能性を感じさせる舞台であった。

 
DUST CHUTE UTOPIA

DUST CHUTE UTOPIA

PLAT-formance

タイニイアリス(東京都)

2011/05/19 (木) ~ 2011/05/23 (月)公演終了

満足度★★★★

はずれない指輪
 感情をもろに出して、正直に生きている若者たちをユーモラスに、シニカルに描いていて、楽しい作品。
 大震災後の今の現実的不安を醸し出している。
 原発事故現場作業風のシーンもあったりする。
 わかりやすいわけではない。独立した話しを四つ(?)べたに並べている。
 それをちょっと関係ありそうな形にまとめたところも面白い。
 アドリブで言ったところは、私にはうけなかった。役者はうけていたが。
 計算し尽くされたセリフのほうがおもしろい。とっさのアドリブは失敗の方が多かった。
 この舞台、いろんな元ネタがあって構成されたものらしい。
 それを知っていればもっと楽しみも増えるのだろう。ニヤリと自分は分かったぞと自慢もできるのかもしれない。
 私はそれほどの通でないので、この舞台上だけでやりとりする面白さで満足するしかない。
 それで十分な仕上がりの舞台であった。
 なんかどっか憎めないずれた若者が描かれていて、ふるまいも普通じゃない。
 その中でも秀逸だったのが、女友達同士で、はずれない指輪を力いっぱいはずそうとするシーン。綱引きもどきに熱演する女優たちが良い。
 あの必死さ、真剣さが、他の場面のだるさ加減とコントラストがあった。
 
 

15 Minutes Made Volume10

15 Minutes Made Volume10

Mrs.fictions

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2010/12/16 (木) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★★

濃密な15分間の舞台表現
 6団体の舞台を一挙に観ることができる。それぞれの持ち味生かした個性溢れる実験的な内容が盛りだくさん。15分間という時間制約の中で、エキスそのものを放出している。15分間の中で、どれだけの表現が可能かを徹底して追求している。寄席で味わう入れ替わり立ち替わりの芸人の芸と、形式的にはちょっと似ている。
 内容的にはバラエティーに富んでいる。ペテン劇あり、夫婦げんかの不条理劇あり、不倫劇あり、夢想劇あり、重力格闘劇あり、悲恋劇ありと、深刻さをばかばかしさで笑い飛ばす活力がいい。
 今の社会状況に抗しようとする力あふれるものを感じる。若い一途な役者たちの挑戦がここにある。というのは、ちょっと感覚として暑苦しいかな。
 あと、一つ注文。若手だけでなく、中年も出演する団体も今後出て欲しい。

ネタバレBOX

 6本中、特にお気に入りは、少年社中「『僕ら』と『ノストラダムス』の1999年の大晦日」と、Mrs.fictions「東京へつれてって」の2本。
 少年社中の『ノストラダムス』役がでかい体を生かし、迫力ある演技が印象的。ペテン師としての嘘臭さが、外国語なまりのセリフまわしからよく出ていた。ジャックバウアーが活躍する「24」(時間)よろしく、「15」分間を意識した芝居構成も秀逸。ただ、ジェンガゲームの失敗の巻き返しのために「ジェンカ」を踊るというのはちょっと安易。もう少しひねりが必要。
 Mrs.fictions「東京へつれてって」は、一途な田舎のキャバクラ嬢「小桜」が、同級生「山瀬」というインテリ風ホームレスを慕うという、ちょっとあり得ない設定にギャップがあって面白い。
 小桜による中学1年生の時から6年間かけて書いた最高傑作のラブレター。小桜は、その告白の返事を高校卒業して何年経ってももらっていなかった。山瀬が居づらくなった故郷を離れて東京に行くことを聞いて、小桜は「東京」へついていくと荷物をいっぱい抱え、けばだったおしゃれをして、登場する。あほと称する小桜は、山瀬に精一杯の想いを伝える。
 山瀬にとって、前向きで疑うことを知らない小桜が愛おしい。
 15分間の小品とはいえ完成度高い。セリフもセンスあふれるものを感じる。
  
15 Minutes Made Volume8

15 Minutes Made Volume8

Mrs.fictions

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★★

15分劇6本立て興行
 1本15分間の舞台を、連続して6団体が6本の公演を行う企画。第8回目ということだ。これだけ継続しているのだから、それだけ世間的には受け入れられているのだろう。今年8月には、第9回目、12月には、第10回目の予定がある。申込出演希望団体もコンスタントにいるに違いない。また、観客数がそれなりに見込めるのだろう。営業的には、相変わらず持ち出しでやっているのだろうか。そうなると、どこかで息切れしてしまう。
 ここが、小劇場の一番の問題点。これを打破すべく意気込みなのかもしれない。それを裏づける言葉をビラの「ご挨拶」にMrs.fictons主宰、今村圭佑氏は、次のように述べている。「小劇場演劇は素晴らしい才能を持った方がひしめき合っていて、素敵な作品は発表され続けている。しかし、どうもうだつが上がらない世界であって、今もってパッとしないジャンルに数えられるとも感じます。」本企画が、この環境を打ち破るのに少しでも役立つ手立てになっていたか。今後、観客数を増やし、リピーターを増やし、似た企画がいろんな所でさまざま実施されるかどうかで決まる。小粒でも、ピリッと辛い山椒的なおもしろい舞台を繰り広げてもらいたい。

ネタバレBOX

 「小粒でも、ピリッと辛い山椒的なおもしろい舞台」を、それぞれの劇団によって展開されていた。
 15分間の中で、凝縮したスピーディーな工夫があった。時間の制約の中で、精一杯の表現ができている。
 「国道五十八号戦線」は、キャスティングのギャップと、2回のどんでん返しが冴えていた。
 「芋屋」は、お猿キャラが男女関係をかき回し、混乱させるのがいい。ただ、最後に現れる「でかい男」の意味がわかりづらい。
 「時間堂」は、過去と現在の男女が山手線で出会い、そして互いの今の状況を明らかにしようとする設定。それを同時進行で表現。ユニークな表現方法を試みている。でも、最後まで私にはわからなかった。解説されてようやく理解できた。わかりやすさが課題。
 「Mrs.fictions」はなんとも奇抜。特攻服を着た主人公が、宇宙にもどるといった竹取物語みたいな話。シュールさが売り物か。じわっとしたおかしみを味わわせてくれる。
 「PLAT-formance」は、素直に「おもしろかった」と言える作品。人質を取った犯人と、警察とのかけあいを、二人のコント仕立てにした。犯人側、警察側と、場面展開が「訳分からなく」進行する。そうしたごちゃごちゃ感がいい。
 「TOKYO PLAYERS COLLETION」は、大都会における人間関係の希薄さを、おしゃれに描写。互いに求め合っても、すれ違ってしまう大都会という不思議さが伝わってくる。大都会の複雑さを描こうとするユニークな作品。錯綜する現代社会の人間関係の問題点をスマートに描いている。
 以上、次の8月の第9回目にも期待。
 
まなざし

まなざし

掘出者

タイニイアリス(東京都)

2010/03/19 (金) ~ 2010/03/23 (火)公演終了

満足度★★★★

家族も自分も信じられない
 あらゆる人間関係がこんがらがって、全てを信じてないし、信じようともしない人間たちの集まり。
 いろんな人間関係の中で、傷つき、傷つけられ、相手を信じようにも、信じられなくなった人間のからみあいを、スピード感のある言い合いや、台詞回しで見せてくれる。
 
 

ネタバレBOX

 息子のほうが年上という父子関係だったり、いじめられっ子で傷をなめあっていた女の友人関係が男の介在で上下関係を意識し始める。
 どうも一筋縄ではいかない、人間関係があり、全てぎくしゃくしてうまくいかない。それが関係の負の連鎖を生じ、目玉を突き刺してやるとか、ウンコを食べるとかの話になる。観ていて非常に気持ち悪いシーンも多かった。
 人間にとって、愛とか憎しみとか、哀しみとかだけではとらえきれない、感情のもつれを、強烈なセリフで描いていた。
 血縁、血のつながり、家族関係に希望を見出すことの空虚さを語ると、何も信じるものはなくなる。結局、信ずるのは、根拠のないよりどころにすがるしかないのか。相手を口汚くののしったり、セックスしたり、ナンパしたり、オレのほうが上だといってみたり、オレがお父さん、私がお姉さんだったりということだ。
 登場人物たちは、全て一生懸命で悪意があるわけでない。
 でも、人間同士がからみ合うと、負の連鎖におちいる。
 からみ合えば絡むほど、好ましくない関係になる悲劇性を、喜劇的に描こうとしたのかもしれない。

リベンジャーズ・トラジディ

リベンジャーズ・トラジディ

ナカゴー

王子小劇場(東京都)

2010/02/17 (水) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★

ハチャメチャさとおぞましさ
 破壊的な場面展開にショックを感じる。心臓が弱い人は要注意。なんていうか、あのハチャメチャさには笑いと、おぞましさでいっぱいになる。恐怖というより、気持ちの悪さ、居心地の悪さ、ちょっと居ても立ってもいられ無さ、どうしょうもない感情をこみ上げさせる。
 容赦なしの復讐劇といっていいのだろうか?でも、実際はそうでもなかったという許しと救いある劇である。こうしたバランスをとったところが、ある種弱さを示しているようで、優しさとして納まりある落ち着きあるものとなっている。ここは評価できる。
 もう、みんな体当たり演技で、舞台も、登場人物も、ぐちゃぐちゃ。あそこまで、ぐちゃぐちゃだと、子供のころのどろんこ遊びの痛快さに共通したところがある。そして、なんか、弱い子をいじめてやろう、それも突飛な誰も思いつかないようなやり方でといったところか?
 

ネタバレBOX

 挑戦的なパロディいっぱいの劇。でも、その原典を知らないので、付いていけないところも多かった。
 2人の違う俳優による、二つの長ゼリフシーンは、一回目はどうにも退屈でただがなっているだけといった印象あり。
 二回目はなかなか秀逸。生き方の前向きなメッセージが伝わってきた。自己を犠牲にしてでも闘うといった、何とも頼もしいたくましさがあり、希望を感じさせる。
 弱気にならず、自分の体力と、腕力で次に立ち向かう姿勢こそうれしい。別に賢い戦略があるわけでないが、究極の状況でも、自らの力で立ち向かうことしか土壇場をなんとか切り抜けることができないことを主張する。
 いいぞ、がんばれとつい声援を送りたくなる名ゼリフであった。肉体美をみせびらかしながら。
 自分に酔っている感じではあったが。
 でも、人間追い詰められたらそんなものだろう。

 楽しいはずの誕生パーティが突然現れた、得体の知れない殺人鬼によって、血みどろの修羅場に。
 それもあっと驚きのどんでん返しにあきれる。
 他愛のない原因が、世にも恐ろしい狂気の世界を生み出したのだ。
 恐ろしい事件に巻き込まれない唯一の主人公あさこの姉(黒木絵美花)だけが、正気でいられる。
 主人公あさこ(日野早希子)の不注意が、この事件の原因。
 あさこの姉の夫(松本哲也)が世の中の不条理さを、飽き飽きするほどの長ゼリフで説明する。その多くに警句も含まれているみたいだが、胸に響かないセリフ。自己満足的セリフは耳の穴からすっとぬけてゆく。
 奇想天外、発想が飛んでいる。
インコは黒猫を探す

インコは黒猫を探す

快快

シアタートラム(東京都)

2010/01/20 (水) ~ 2010/01/22 (金)公演終了

満足度★★

インコのきもちわからない
 出演者の元気の良さ、舞台いっぱいエキサイティングに動き回って、かき回す、わけのわからなさ。体育会系のノリというのかなあ。
 私には、ピンーと伝わるものがなかった。何が、どうなっているのか、理解できず、終演になった。欲求不満のまま、家路についた。インコと、黒猫と、人間たちがどういう関係なのか、最後まで分からずじまい。
 ダンスシーンに俳優たちのがんばりを感じた。結局、なにげない日常の気になることを切り取って見せようとしていたのだ。インコ好きにはたまらないのかもしれない。でも、私には、鳥にあんなに入れ込むこともないので、共感できないまま、舞台に対して、「なんだ」と突っ込むしかなかった。

『垂る』-shizuru-

『垂る』-shizuru-

ポかリン記憶舎

アトリエヘリコプター(東京都)

2009/12/09 (水) ~ 2009/12/13 (日)公演終了

満足度★★

モヤモヤ感が残ったまま
 前半、一つ一つのエピソードはわかりやすかった。恋人カップル、夫婦、携帯をかける女、車椅子の老人と介助する女、老女、そして怪しい男の、それぞれ面白い設定で、それなりに楽しく見ることができた。
 しかし、暗転後の後半とつながりが、飛躍ありすぎて、わかりづらい。
 最後のオチが納得できない。面白さ半減。
 なんかモヤモヤ感が残ったまま家路を急いだ。

地球の上で待ち合わせ

地球の上で待ち合わせ

劇団競泳水着

王子小劇場(東京都)

2009/08/29 (土) ~ 2009/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★

うまくいかない待ち合わせ
 人と人との出会いを細かく繊細に描いたおしゃれでちょっと哀愁を含んだ3組のオムニバス。
 私の趣味からいえば、女の子同士がしばらくぶりで出会うstoryがとてもシックでしっくりくる。携帯メールを中心にやりとりするシーンがとてもおしゃれ。「ビックリマーク2つ」、「(笑)」とか入れたセリフと共に、テンポの良いやりとりがとても心地よかった。若い人たちのメールのやりとりでは絵文字で自己表現する、あのウキウキ感が良く伝わってきた。
 軽やかでちょっとコミカルに描いてあった。でも、全てが順調でない状況がさりげなく描いているのがいい。

ネタバレBOX

 他の二組、不倫ペアと、同棲ペアのぎくしゃくは、互いに隠し事をし、嘘つき合うことでどうにかつなぎ止めても、もうどうにもならないことを暗示する関係を、あまり重く感じない描き方である。
 そんなことも、「あり」かなと思ってしまう。
 女優たちが光っている。それぞれはまって良い役を、好演している。
 私の趣味からいうと、スパイタッチのプロローグをふくらませたおしゃれで、コミカルタッチの舞台が観たいなあ。
ビキニも夢見る白い部屋

ビキニも夢見る白い部屋

KENプロデュース

池袋GEKIBA(東京都)

2008/12/19 (金) ~ 2008/12/23 (火)公演終了

満足度★★★★

サービス精神旺盛
 自殺未遂の大学生患者、競馬狂いで余命半年のガン患者、半端なやくざの患者たちが織りなす、病室での出来事。看護婦たちとのからみも注目。ちょっと、Hなサービスシーンもあり。まじめと、ふざけが、うねりのように、展開する。ちょっと不自然な受けねらいもある。でも、ストレスなしに、受け入れられる。いい芝居をみたなあと、満足感が得られた。  

とける

とける

ブルドッキングヘッドロック

サンモールスタジオ(東京都)

2008/11/13 (木) ~ 2008/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★

ほろ苦い高校生劇
 100席足らずの客席は満席だった。
 女子高校生が携帯電話を紛失したことから、物語は始まる。現実的な生徒、夢見る生徒、いじめ、劣等感、万引き、対教師暴力、受験、部活動等々、高校生活のさまざまな断面がテンポ良く展開する。汚い美術部室を中心で進む。
 大事件も、いつか季節が変わることで、「とける」ように消失する。そして、また、新しい、ちょっと希望ある日常の高校生活が訪れる。
 石原慎太郎の「青春とはなんだ!」とは、大きく異なる、現代的「高校生」群像劇だ。

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