人を殺して 生きている
オザワミツグ演劇
王子小劇場(東京都)
2018/06/27 (水) ~ 2018/07/03 (火)公演終了
満足度★★
鑑賞日2018/06/29 (金) 19:00
高校の時いじめられていた加藤は、教師になり、いじめられた女生徒を助けようとするが、自殺されてしまい……、という物語が痛々しく展開される。ステレオタイプのいじめ、ステレオタイプの援交、ステレオタイプのDV、ステレオタイプの不倫、という、ステレオタイプだらけの物語で、共感できる登場人物がいないなど、現実的でない部分が多く、演劇的にも予定調和的な終息は不満が残る。特に、エンディング、後日譚2つの前に、前日譚を挿入しているのは、いかがなものかと思う。
『片思い』
コルバタ
新宿スターフィールド(東京都)
2018/06/28 (木) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/28 (木) 19:00
女子プロレスラーの志田光を軸に、元女子プロレスのMARUの作・演出で舞台を作る、女子プロレス系劇団を初めて観る。予想を超えて面白かった。伊藤奈須という女性(志田)は素人コーラス隊のピアノ担当だが、一方で、伊藤奈須という男性(後藤真一)は素人小劇団で冴えない役者をやってる。それぞれの父親が出てくるが、これが何故か同一人物。この何故?が明らかにされていく2時間……、というわけで、ネタは途中で分かるけれども最後まで一定の緊張と興味を持って観ることができる。日替わりゲストを呼んでのプロレスシーンは、劇作上の意味は余りないけど、元々がプレレスラー志田のファンを狙ってのことだから、興行上は必須なのだろうなぁ(^_^;)。タイトルは、あまり活きていないのが惜しい。
「琉球の風」
劇団東演
俳優座劇場(東京都)
2018/06/25 (月) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/27 (水) 19:00
2016年に初演の作品を再演だが初演は観てない。5・6月で3本目の中津留章仁作品である。沖縄出身の旅行代理店の社員が企画した沖縄ツアーが、反基地ツアーではないかと言われるが…、という、興味深い物語が展開される。再演に際して、若干の書き直しをしたそうだが、中津留自身は沖縄の出身でなく、反基地のスタンスを取っているようでもあり、それほど明確でもないので、第三者的な東京の人間から見た沖縄の問題という距離感をほどよく保っていると思う。エンターテインメント的要素もあり楽しめて考える舞台と言えるだろうか。
海と日傘
劇 えうれか
古民家ギャラリーしあん(東京都)
2018/06/22 (金) ~ 2018/06/28 (木)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/26 (火) 19:00
1996年に岸田戯曲賞を取った松田正隆の代表作で、いろいろな所で上演されているが、観るのは初めて。死期の迫った妻と作家の夫を軸に、周辺の人々の物語が展開される。「静かな演劇」の代表とも言われているそうだが、会場の古民家しあん(ここに来るのも私は初めて)の雰囲気ともマッチして、丁寧な演出でしっかりとした芝居になっていた。何か大事件が起きるわけではなく、淡々と進む舞台だが、一定の緊張感を持って観られる115分だった。
serialnumberのserialnumber
serial number(風琴工房改め)
The Fleming House(東京都)
2018/06/21 (木) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/06/25 (月) 20:00
風琴工房あらため serial number の旗揚げ公演。『next move』を観た。将棋のプロ棋士を目指す2人の男の友情を、やや笑いも混ぜつつ、厳しさのある世界を見事に描いていた。天才棋士・藤井聡太の登場で注目される将棋界だが、以前から書かれていたという脚本を公開舞台化した。小学生から26歳までを田島亮・佐野功が演じるのだが、小学生を演じても愛嬌ある2人で、成長に応じて変化する様子と2人の関係の描き方が素晴らしい。ただ、最後の「負けました」のセリフを敢えて削る選択はなかったのかな、とも思う。でも素晴らしい舞台でした。
奇行遊戯
TRASHMASTERS
上野ストアハウス(東京都)
2018/06/20 (水) ~ 2018/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/06/22 (金) 19:00
2010年に初演したものを、若手公演として再演する。力作だった。中津留自身の経験も元にして、九州の田舎町での若者たちの厳しい暮らし等のエピソードが展開され、それが、2場では中国との対立やシーシェパードを思わせる団体との絡み合いに発展する、という、社会派に転じた頃のトラッシュの代表作という意気込みで書かれたらしい。この頃は、1場と2場の間にナレーションを字幕で見せつつ、大きく場面転換をする手法を取っていたが、それが久々に復活した。田舎町に突然現れた謎の女(藤堂海)やDV夫から逃げようとする璃子(堤千穂)を始めとして、登場人物が2場で変化するところは見応えがあると思う。
初演は2時間50分だったが、今回は実測で2時間38分。やや短くなっていた。
なお、会場に、初演で謎の女を演じた林田麻里(初舞台だったハズ)、璃子を演じた川崎初夏がいて、新旧女優陣の勢ぞろいとなった。
海越えの花たち
てがみ座
紀伊國屋ホール(東京都)
2018/06/20 (水) ~ 2018/06/26 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/06/20 (水) 19:00
日韓併合後、朝鮮人と結婚し半島に渡った日本人妻達の姿を描く力作。実在する「ナザレ園」を扱いつつ、激しい4人の女性のそれぞれの物語をタイトに展開する。時間軸がしばしば飛躍するのだが、物語的には、いかにもありそうな(起こっていそうな)エピソードの連続で説得力はある。ただ、冒頭と最後のシーンの時代は、若い世代には分からないのでないかと、少し気になる。日本人妻を演じた4人の女優はいずれも熱演だが、最近は作家・演出家として大きな仕事をする桑原裕子が、純粋に女優としての力量を確実に表現してくれているのは嬉しい。西山水木をもう少しフィーチャーしてくれると良かったようにも思うが、石村みか演じる主人公の最後は切ない。
お蘭、登場
シス・カンパニー
シアタートラム(東京都)
2018/06/16 (土) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/17 (日) 14:30
北村想が、日本文学にモチーフを得て、新作を書き下ろすシリーズの第5弾だが、私にも作法が分かってきて、独特の楽しみ方があるということだと感じた。今回は江戸川乱歩を題材に、悪役に小泉今日子演じる「お蘭」を持ってくるのだが、「江川蘭子」というのは「えどがわらんぽ」のもじりで、要は、乱歩の作品のいくつかを題材に3人芝居で遊ぼう、という企画だと思う。それが十分に成功しているかと言えば、そうは言えないのだが、乱歩ファンとして、それなりに楽しめる作品にはなっている。
日本文学盛衰史
青年団
吉祥寺シアター(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/07/09 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/06/15 (金) 19:30
高橋源一郎の小説が原作らしいのだが、それは読んでいない。4場構成で、それぞれ北村透谷・正岡子規・二葉亭四迷・夏目漱石の葬儀に文壇陣や関係者、そして、市井の人々が集まったという体での物語。言文一致運動に腐心した人々の話として書かれていたであろう原作を、現代の話題等も入れ、エンターテインメントにしたのには、ちょっと驚いた。45分-35分-30分-20分と徐々に短くなり、3場の漱石の演説は本作の白眉だと思うが、同じ兵藤公美が4場で宮沢賢治を演じるなどの「遊び」も含まれていて、長さを感じない舞台だった。
なお、前説の放送で「日本文学盛衰史」と言うべきところを「日本大学盛衰史」と間違ったのは、どうも本当のミスらしいが、最も笑えた。
肉の海
オフィス3〇〇
本多劇場(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/06/13 (水) 19:00
私にフィットする渡辺えり作品だった。上田岳弘「塔と重力」を原作としているそうだが、私は読んでいなくて、実際、世界観を借りたものということらしい。不思議の国のアリスと、阪神淡路大震災を2つの軸として、多彩な登場人物群が夢とも現実ともつかない物語を展開する。初期の雰囲気を残した音楽劇だが、豪華な客演陣を得て、音楽のレベルは確実に上がっているし、そのことで芝居の表現力が豊かになっていると思う。時間と空間を飛び越えて展開される物語は渡辺が得意とする手法だし、オフィス3○○の40周年記念公演に相応しい出来だとは言えよう。
三田和代・久世星佳・土居裕子等のベテランや、舞台は滅多に出ない尾美としのりが興味深い味わいを出しているが、初舞台だという24歳の屋比久知奈の清涼感は際立った魅力がある。
悲しみよ、消えないでくれ
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/06/12 (火) 19:00
3年前に上演された作品の再演で、初演も観ている。改めて見事な作劇だと思った。山小屋という特殊な場所での、山小屋主人の長女の3回忌。同棲してた事実上の夫が2年も居続けていて、その山岳部の仲間達が集まる…。どうしようもない人間たちのエピソードが次々と明らかになるが、この辺は、何で?と思わないでもないけれど、そういう「しょうがない」存在が人間なのだと思えば、そんなものかと思う。軸となるダメ男を古山が好演しているが、初演と同じく、山小屋の主人のでんでんの存在感が芝居を引っ張る。加えて、終盤で重要なセリフを語る次女役の生越千晴が微妙な揺れを見せて良い。
なお、初演を観たとき、舞台美術のアクシデントで中断するという回で若干興を削がれた感があったのだが、今回はその美術は採用されていなかった。少し残念。
ねぇ、聞いてよ、ウォンバット!
カミグセ
くすのき荘(東京都)
2018/06/08 (金) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/06/10 (日) 16:00
ウォンバットの夢を見る女子と友人(とウォンバット)による会話の雰囲気が良い。会場は「かみいけ木賃文化ネットワーク」なるプロジェクトの本拠地の一つで、木造の家の1室に入り込んだ感触は悪くない。物語は、所詮は夢落ちと言えなくもないが、夢だからこその展開を楽しむ、というタイプの公演だろう。主宰のつくには、最近は芝居の制作として活躍してて、芝居を作ることへの興味が減りつつあるという。やりたいときに公演ができるという形を追っているそうだが、本来はそうあるべきとも言える。
ツヤマジケン
日本のラジオ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/06/05 (火) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/08 (金) 20:00
2014年に上演した作品の再演で、初演も観てるが、それなりに面白かった、という記憶しかない。津山三十人殺しをモチーフに、女子校演劇部の合宿で起こるホラー調の物語。女子校あるある的会話を中心に楽しめるのだが、津山を思わせるエンディングに向かって堕ちて行く流れが、後味は良くないけれども、感触は興味深い。
ボーダーリング
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/07 (木) 19:30
面白いとは言えるのだけれど、消化不良的な面がある。最初は忍者のスギの婚活話かと思っていたのだが、後半は様々なカップルの有り様に話が移り、やや焦点が絞れていないのが残念。それよりも、演出が過剰に思えるキャラクターがいて(スギとか小夏とか)、そういうものに頼るより、会話劇に徹した方が、味が出ると思うのだけれどもなぁ…(^_^;)。
寿
やまだのむら
スタジオ空洞(東京都)
2018/06/02 (土) ~ 2018/06/09 (土)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/06 (水) 20:00
Bバージョン『ふじみちゃん』を観た。タイトルと当パンの記載から予想していたが、主人公の「ふじみちゃん」はやっぱり「ふじみちゃん」だった。脚本の木村(遠吠え)が愛の物語だと書いているように、確かに愛の物語で、よくできているとは思うけど、観終わって拾われていない/謎が解けていないエピソードが残るのはやや不満。笑える展開ではあるけれど…。
寿
やまだのむら
スタジオ空洞(東京都)
2018/06/02 (土) ~ 2018/06/09 (土)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/05 (火) 20:00
Aチーム『サーディン』を観た。元教員だったという越(ヤリナゲ)が書いた学校あるあるストーリー。演出の木村(遠吠え)も当パンで書いているが、緻密な構成で、起こりそうなこと・起こりそうもないことのバランスがほどよく展開され、しかもエンディングは切ない。若いユニットで役者の名前が分からないので、当パンに役名を書いておいてくれるとアリガタイ。
Last Night In The City
シンクロ少女
ザ・スズナリ(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/06/03 (日) 18:30
名嘉友美の劇作は、"Love"シリーズを経て、一皮剥けた印象がある。本作は、今まで観たシンクロ少女の中でもサイコーと言って良い出来だと思う。最初は、異なる3グループに見えていたエピソード群が、小学生の少年と女子高生のその後だと徐々に分かる展開は今までの名嘉の作品にもあった手法ではある。しかし、本作はその繋がりが切なく、しかもイタイ面を出しながらも、エンディングは今までのシンクロ少女にはなかったような終わり方だと思う。役者の選定も演技も見事で、一つの頂点に到達した感はあるのだが、次作への期待を裏切らないのは大変なことかもしれない。
なお、名嘉の映画好きは有名だが、本作でもいくつかの映画へのオマージュ的シーンがあるそうだ。私が気づいたのは「真夜中のカウボーイ」だけだけれど…。
家族熱
テレビマンユニオン
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/05/29 (火) ~ 2018/06/05 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/03 (日) 14:00
向田邦子が書いた家族を扱ったテレビドラマを、合津直枝の脚本・演出で、その3年後という設定で2人芝居として上演する。とある家族の長男と、後妻に入った、わずか一回り上の「お母さん」との淡い恋を描くのに、回想を中心とする構成にしたことで、感触よく提示してくれているのは巧い。長男に溝端淳平,義母にミムラを置いた。元のドラマは記憶にないが、その物語も徐々に分かり、少しの秘密も明らかにされるなど、脚本の妙が冴える。ただし、演出は淡々とやりすぎている印象がある。
3月に芸名を美村里江に改名したミムラが、その名義で出演する最後の舞台。と言ってもミムラとして舞台の経験は3本で、全て観ているが、今回は2人芝居で、しかも回想シーンでは実母も演じるという難作もしっかりこなしていた。
女帝
フリーハンド / オフィスケイ
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/06/02 (土) 18:00
2度目の『女帝』。良く観たら、主演の月船はほぼ出突っ張りだということに気づいた。それと、3人の「ママ」、実の母でスナックのママだった風祭ゆき、最初に大阪に出たときに勤めたスナックのママ和田真理子、ミナミのクラブにデビューしたときのママ大竹一重の3人が、重要な役割を演じていると思った。シライ演出の感触も改めて観ると、所々に感じられるように思った。続編を期待したい。
女帝
フリーハンド / オフィスケイ
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/05/31 (木) 19:00
夜の蝶を扱った傑作マンガを原作とし、ドラマ化や映画化もされている作品を、シライケイタの脚本・演出で、月船さらら主演で舞台化した。ストーリーは分かっているが、どう展開するか興味を持って観に行ったが、意外にストレートな舞台だった。エンターテインメントとして良く出来ていて、シライらしさはやや少ない印象もあるけれど、十分楽しめる作品だった。月船の硬軟取り混ぜた演技の幅も感じた。