帰還不能点【3/13・14@AI・HALL】
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/02/19 (金) ~ 2021/02/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
凄え舞台。「兎にも角にも絶対観ておいた方が良い」としか言いようがない。よくもこんな脚本が書けたものだ。
日米開戦前、総力戦研究所に集められた民・官・軍の若手のエリート達。シミュレーションを試行するも結論は日本必敗。しかし日本は戦争に突入し、シミュレーション通りに敗けた。
戦後、同僚の三回忌に奥さんの居酒屋に集まる面々。そこで即興劇宜しく日本がどうやって間違えていったのかを再現してみせる。
役者陣は実際に飲み食いし、とことんリアルを追求。黒澤明の『どん底』を思わせる演技合戦。
もうこれは映画ではないか。カメラを回せば、大島渚の『日本の夜と霧』のような作品が撮り上がる完成度。岡本喜八の『日本のいちばん長い日』や庵野秀明の『シン・ゴジラ』調のポリティカル・エンターテインメント。(ゴジラは日米開戦。)
黒澤明(原作山本周五郎)調の人間の熱い血がどくどくと脈打って流れている。演出の狙いは『生きる』の後半っぽくもある。
独りアウトレイジの粟野史浩氏はいつもながら最高。
この題材をエンターテインメントにする作家の力量に敬服。
『白い星』~シロイヒカリ~
100点un・チョイス!
ザ・ポケット(東京都)
2021/02/10 (水) ~ 2021/02/14 (日)公演終了
満足度★★★
『僕だけがいない街』系のリピート物語。10年前、恋人が刺殺された未解決事件を今も引き摺る主人公。ふと気付くと事件当日にタイムスリップしていた。何とか恋人の命を守り、犯人の正体を突き止めようとするも・・・。
花奈澪さんを久し振りに観た。(冒頭でいきなり刺殺。)2019年11月の『魔術士オーフェン はぐれ旅-牙の塔編-』以来か。この御時世、無理してでも観ておかないと本当に後悔する羽目になる。青木素姫(そおひ)さんが雛形あきこ似で印象に残った。三村貴恵さんは見覚えがあるのにそれが何だったのか思い出せなかった。
凄く好感度の高い運営スタッフで気持ちが良かった。
シンデレラ
NBAバレエ団
東京文化会館 大ホール(東京都)
2021/02/06 (土) ~ 2021/02/07 (日)公演終了
満足度★★★
バレリーナを夢見る少女。教室では雑用係としてレッスンさせて貰えない。夜中、無人の教室に貼られたポスターから三人の精霊が現れ、少女にレッスンを付ける。これはまさしく、ジャッキー・チェンの傑作『拳精』。古き良き功夫映画の精神が現代版『シンデレラ』にも流れている。ジョン・ウィリアムズ調の生オーケストラも素晴らしい。第二幕は宮廷の舞踏会。道化役の新井悠汰氏の身体能力に驚く。ヴィラン姉妹の喜劇パートがやたら長い。単調に所謂『シンデレラ』がなぞられて違和感さえ覚える。しかし、これには仕掛けがあって・・・。幻のフランチェスカ・ヘイワードversionもいつか観たい。
絶対、押すなよ!
東京AZARASHI団
サンモールスタジオ(東京都)
2020/12/22 (火) ~ 2020/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★
2020年のラストに観劇出来て良かった。不条理デス・ゲーム系の話なのだが、集められたのが若き少年少女ではなく、随分とくたびれたおっさん四人というところが見事。ほぼどうでもいい与太話の応酬が延々と続く。癖の強い四人のおっさんがひたすら与太り合っている中、紅一点の美女(神崎菜緒さん初舞台!)がぐっと笑いを堪らえてクールに澄まし顔。その何とも言えない空気感が最高。客席は皆マスク姿ながら爆笑が鳴り止まない、揺れる聖地サンモールスタジオ。これぞ東京AZARASHI団。
渡辺シヴヲ氏の役者としての深みを堪能。
四十年振りの小学校の同級生との再会が、自己存在を震わすエネルギーと化す。
90分、怒涛の笑いのジェットコースター。
オペラ座の怪人
劇団四季
JR東日本四季劇場[秋](東京都)
2020/10/25 (日) ~ 2022/01/10 (月)公演終了
満足度★★★★
開幕からお馴染みのテーマ曲。これを上手くアレンジしたのがBOØWYの『LIAR GIRL』で、いつも連想してしまう。四季劇場[秋]は13列目から段差が始まるので、後ろでも充分観やすい。今回センター席は6列目からの使用、横は一席おき。
クリスティーヌ役の山本紗衣さんの歌声の凄まじさ。これを毎日やるのか!?
全員の歌唱力のレベルが自分の観劇史上最高峰。それだけで金が取れる。
映画を先に観たせいで、よくここまで舞台美術を再現できるなと感心。ファントムに拐われたクリスティーヌが長い階段を降り、地下湖をボートで渡っていく幻想的なシーンが美しい。床から無数の蝋燭が生え、天井からは鉄格子、左右から燭台やら彫刻やら。ティム・バートンの『バットマン・リターンズ』だ。
32年前、チケットがあったのに観れなかった、個人的に幻だったミュージカルを到頭観ることができた。
痴人の愛 ~IDIOTS~
metro
ザ・スズナリ(東京都)
2020/10/22 (木) ~ 2020/10/27 (火)公演終了
満足度★★★★
〈片岡版〉
地獄のような物語。自分を裏切り傷付け苦しめた少女に対し、未だに欲情を覚え渇望し崇拝する年老いた男。
とても男と女のある愛の一形態なんて優雅な代物じゃあない。地獄の果てしなさのような。ナオミが覚醒剤だとしたら腑に落ちる。
舞台美術がお見事。オープニングの譲二の登場シーンから最高。
黒子(?)の影山翔一氏がこなす無造作な舞台転換も痛快。
『テネット』方式の逆行モノでもある。
私はだれでしょう
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/10/09 (金) ~ 2020/10/22 (木)公演終了
満足度★★★★
平埜生成(ひらのきなり)氏がとにかく凄い。
この役を完全に自分のものにしている。 他の人には再現の出来ない産物。顔芸、ダンス、タップと平埜氏の大暴れを熟練の超一流役者陣がガッチリ脇を固め、受け止め切っての後押し。ピアノの朴勝哲氏との息もピッタリ。初演の川平慈英氏バージョンも観てみたかった。(当て書きらしい)。
朝海ひかるさんが長身で吉田栄作氏との並びが綺麗。吉田氏はかつての井上順氏や布施明氏を彷彿とさせる味のある良い役者になっていた。シリアスな役柄の朝海さんが愉快に陽気に踊り出すと場の空気が一転してパッと明るく。
朝海・平埜コンビの『日野浦姫物語』をまた観たくなった。
戦後まもなくNHKラジオで尋ね人の放送を開始。そこに記憶喪失のサイパンからの帰還兵が訪れる。「私はだれでしょう」。
たむらさん
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2020/10/09 (金) ~ 2020/10/11 (日)公演終了
満足度★★★
豊田エリーさんが舞台に現れ、奥の台所で調理を始める。
次に橋本淳氏が登場し、観客に向かって「たむらです」と自己紹介。「皆さんに一つ質問があります。その前に僕のこれまでのことを知って下さい」と三十年の半生を語り出す。
ここからはほぼ橋本氏の一人語り。豊田さんはひたすら調理。(時たま語りに合わせて効果音を出すくらい)。
半生を語り終えた後、豊田さんも加わりあるシーンの再現。
その後、観客に向けてある質問をすることになる。
ダークマスター VR
庭劇団ペニノ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2020/10/09 (金) ~ 2020/10/18 (日)公演終了
満足度★★★
これがVRか、大したものだ。
20人の観客がそれぞれ個室に入り、ゴーグルとヘッドフォンを装着。
解像度の多少の荒さと見える物の大きさが一回り小さい位でかなりリアル。
体験型アドベンチャー・ゲームをしている感覚。催眠セラピーを受けているようでも。匂いや震動もサービス。
やはり目が疲れるが、いろんな可能性を感じる。
開始から一時間程で終わった。
日高ボブ美さんがとにかく凄まじい。
帰りはやたら腹が減る。
音楽劇「銀河鉄道の夜2020」
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2020/09/20 (日) ~ 2020/10/04 (日)公演終了
満足度★★★
広大なステージに迫力のある大掛かりなセットと生演奏。船の舵と錨と時計の振り子を合わせたような象徴的なオブジェが荘厳。汽車は客船を思わせる作り。宮沢賢治的役回りの岡田義徳氏と歌唱担当のさねよしいさ子さん(精霊アメユキ)が苦しみ足掻く少年ジョバンニの姿を見守り続ける。
さねよしいさ子さんの歌は、矢野顕子調で歌詞こそ聴き取れないが曲と歌唱は絶品。聴いているだけで作品世界に溶け込んでいく気分。
前半の貧しい苦学生が出稼ぎの父の逮捕の噂で学校で虐められ、家には病気の母と、現実に追い詰められていく様が見事。
そこからの後半、銀河鉄道の旅の中で『本当の幸い』に人生を捧げていく過程が時間の都合もあって唐突、なかなか理解しづらいのでは。
カムパネルラが降りる、石炭袋と呼ばれるブラックホールの演出が秀逸。スモークと照明の美。
二階の一番後ろだったが、観易くて満足。
フランドン農学校の豚/ピノッキオ
座・高円寺
座・高円寺1(東京都)
2020/08/28 (金) ~ 2020/10/03 (土)公演終了
満足度★★★★
ピノッキオ
昨年からの二回目。辻田暁さんのラストの舞踏が観たくて堪らなくなる。理屈や論理を越えたもの、畏怖するしかないもの、言語化出来ないもの。そこに“神”が宿るのか。人間論のような作品。
MISHIMA2020
梅田芸術劇場
日生劇場(東京都)
2020/09/21 (月) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★
三島由紀夫の作品を若い演出家がアレンジして再構築する企画。各一時間に満たない程の中篇で、休憩が二十分入る。NHKのカメラが入っていた。
①『真夏の死』(『summer remind 』)/作・演出:加藤拓也。
中村ゆりさんと平原テツ氏の二人芝居。他に医者の声が入る。椅子に腰掛けた二人でスタート。中村ゆりさんが観客に向け自分の身に起こった出来事を語り始める。夏に家族で海に行くが、一人旅館で昼寝をしている間、子供が二人水死してしまう。子供達の死に対する罪悪感を背負い続けて生きていこうとする話。椅子が高くせり上がってライヴ会場になったり、出産シーンは桃(?)の形に膨らむ巨大なゴム風船だったり工夫が効いている。赤ん坊は巨大なへその緒で表現。中村ゆりさんがひたすら美しかった。
②『班女』近代能楽集より/演出:熊林弘高。
乱歩の世界を美内すずえが漫画化したような話。背後のスクリーンに映像が同時進行で投影されたりする。
キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】
劇団四季
キャッツ・シアター大井町(東京都)
2018/08/11 (土) ~ 2022/04/17 (日)公演終了
満足度★★★★
二回目の観劇。タントミール役の間辺朋美さんがやたらと目を惹いた。凄い身体能力。
話はあってないようなもの、予備知識として映画版『キャッツ』を観てからの方が楽しめると思う。(メチャクチャ酷評されているが自分は好き)。フランチェスカ・ヘイワード演ずるヴィクトリア(舞台では産まれたばかりの赤ん坊猫シラバブ的な存在)がガイドラインとして判り易く世界観を伝えてくれる。
物語を語る作品ではないので、簡単なキャラ設定を知っていた方がいい。何度も何度も観た方が楽しめる作りにされている。実際、初回より俄然面白かった。
隣の小学校低学年の女の子が、ラストの『猫に対する礼儀の講義』で号泣していた。これぞ正しいミュージカル体験。
絶え間なき躍動感の強烈なる放射が、眩い圧倒的な光の照射となって胸に突き刺さる。
ホテルニューパンプシャー206
UDA☆MAP
キーノートシアター(東京都)
2020/08/12 (水) ~ 2020/08/17 (月)公演終了
満足度★★★
舞台と客席を大きなアクリルパネルで遮り、客席は一席ずつ両側共に仕切り、演者は全員口元をフェイスシールドで覆い・・・。ここまでするかのコロナ対策。何年か後には笑い話になっていて欲しいもの。
安いラブホテルの一室、訳有りの掃除婦と帰らない女性客、間違ってやって来たホテトル嬢、隣の部屋からは銃声が。90分程のハイスピード・コメディ。ワン・シチュエーションでここまで疾走感があるのは見事、面白い。
小林亜実さんは声が独特で台詞がはっきりと聞き取れる。観る度に生き生きとしていて、演技という水の中を自由に跳ね回る魚のよう。
一番驚いたのは高宗歩未さんの怪演。狂ったように顔芸を競い合う。この人のノーマルな状態の想像がつかない。
ベッドの上をごろんごろん転がり捲る役者陣。汗だくだくで熱量が凄かった。
無畏
劇団チョコレートケーキ
駅前劇場(東京都)
2020/07/31 (金) ~ 2020/08/10 (月)公演終了
満足度★★★★
非常に衝撃的な作品。ドラマとして観れば平坦な作りだが、自分は論戦として受け止めた。
東京裁判にて死刑となる、南京大虐殺の最高責任者、当時の陸軍大将松井石根(林竜三氏熱演)と弁護士との対話。
このネタは時代が時代なら大揉めで酷い難癖をつけられていたことであろう。NNNドキュメント『南京事件』のような良作も糞味噌に言われる世の中なのだから。
初フェイスシールドは思ったより悪くはなかった。ここまでして、舞台を演り、舞台を観る、というのが人間の面白い所。コロナを逆手に取った新しい観劇スタイルなんかが生まれてくるんだろうなあ。
南京事件を扱った作品は巨匠チャン・イーモウ監督の『ザ・フラワーズ・オブ・ウォー』ですら黙殺される日本。(主演クリスチャン・ベール。韓国版Blu-rayにて日本語字幕有り。)
「何故、自称愛国者達はこれらの事(従軍慰安婦問題など)を禁忌としたのか?」「これらが事実であると何がまずいのか?」そここそが日本人論の焦点。
クライマックスの弁護士の詰問はド迫力。作者が時空を越えて松井石根を恫喝しているようにすら見えた。ここまでするか・・・。流石である。
バロック
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
超観たかったので、観れて嬉しい。ワン・シチュエーション・ホラーものなのにスズナリの舞台が無限の空間に思えた。照明の技術が凄すぎて、まずそこを褒め称えたい。暗転の瞬間に人が消えたり現れたり。光と陰の効果にかなり知恵を絞っている。『霊は光には映らない』という鶴田法男監督の言葉を想起。照明の阿部康子さんにRESPECT。ホラー・エンターテインメントの中心は映画館から小劇場へと移ったか。
古典的な呪われた洋館に閉じ込められた一族と悪霊の対決みたいな感じだが、古臭さがなくセンスが良い。二役の福永マリカさんが強烈だった。声の変わりっぷりに慄く。春名風花さんは巧く、野花紅葉さんはエロく、笹野鈴々音さんは実に映画的。死んだ伯母を愛して気が狂う祁答院雄貴(けどういんゆうき)氏のキャラも良い。近親相姦に取り憑かれた一族なんて、上手い設定。生と死、善と悪とが二元論からアウフヘーベンされるような世界観。佐藤誓氏演ずる旦那は普通なら簡単に殺されそうなキャラの処、作者の人生観を象徴するような飄々とした重要な存在に描かれる。狂った浮浪者役、吉村公佑氏も欠かせない。死に様が美しい。
きらめく星座【公演中止3月5日(木)~8日(日)】
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/03/05 (木) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
正しい音楽劇の傑作。レコード店主人の後妻役松岡依都美(いずみ)さんが凄かった。松竹少女歌劇部出身の設定を生かし、コミカルに踊る踊る。躁状態でイッちゃったサザエさんのようなキャラクター。観てるだけで楽しくなってくる。生演奏で次々に歌われる戦中流行歌が名曲揃い。灰田勝彦『燦めく星座』、市川春代『青空』、霧島昇とミス・コロムビア『一杯のコーヒーから』、中野忠晴『チャイナ・タンゴ』等々。明るく生き生きとした日本。
日中戦争中の昭和16年、レコード店オデオン(音楽堂の意味)堂一家の物語。翌昭和17年12月太平洋戦争開戦前夜の閉店までを二幕で送る。
店主の娘役の瀬戸さおりさんがやたら綺麗。その旦那となる義手の元軍曹、粟野史浩氏がド迫力。第一幕のクライマックスとなるシーンは素晴らしかった。本来憎まれるべきキャラクターである木村靖司氏演ずる憲兵が、物語の進行と共に愛すべき人間味を醸し出す井上ひさし節。
共骨
オフィス上の空
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)
2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
満足度★★★
8歳の時、母を癌で失った少女。思わず遺骨を食べてしまう。父との慣れない二人暮らしが始まる中、母の亡霊が現れ助けてくれるように。母が現れる時、決まって骨が痛み出す。
主演の新垣里沙さんがまた凄い。虚無演劇界のファム・ファタールのようだ。彼女の独り芝居でも良かったんじゃないかと思う程に圧倒的。アンナ・カリーナのように存在そのもので作品を成立させる。
『家族』という宗教、『愛』という宗教、『自分』という宗教に囚われて苦しんでいる人に、「そんなに大したものでもないよ」と少し気を楽にさせてくれるお芝居。自分が何に支配されているのかを色々と考える切っ掛けにも。是非観て貰いたい。
Pickaroon!<再演>
壱劇屋
DDD AOYAMA CROSS THEATER(東京都)
2020/02/25 (火) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
『少年ジャンプ』っぽい世界観。よく知らないけど、『ワンピース』とかの感じでは。凄く大衆に受け入れられる裾野の広さ。古代中国をイメージしたような架空世界、“ピカルーン”(盗賊の意味)と呼ばれる七人の盗賊が盗んだ宝箱の中には一人の赤ん坊が。七人は共同でその女の子を育てることにする。
女の子、『御姫』役の柿澤ゆりあさんが超美少女。アイドルかと思ったら「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞の16歳。個性溢れる“ピカルーン”達もそれぞれが魅力的なキャラ設定。高安智美さん演じる陸上飛(おがうえとび)はフラフープのような武器を使う。漫画のキャラのような表情と動作に目を奪われる。西分綾香さん演じる紙研(しげん)は番傘を差し、無数の紙を宙に舞わせる。複数のアンサンブルが真っ白な紙を一枚ずつ両手に掲げ、アクションに合わせバサバサとはためかせる素晴らしい視覚効果。武俠映画のようでカッコイイ。日置翼氏演じる伊武は百面相の男。次々にありとあらゆる姿へキャラ・チェンジ。ゲーム画面を観ているような華やかさ。集団舞踏的に全員の動きで場を作り上げていてテンポが良い。主題歌もキャッチー。
カーテンコール後、舞台上で作演出&男虎(おのとら)役の竹村晋太郎氏が「世界にはたった一人でも何処かに自分を助けてくれる人がいると信じています。そういう気持ちをこの話に込めました」的な挨拶を。希望に未来がパンパンに膨れ上がった劇団だ。早目に観ておいた方が良い。
誰にも知られず死ぬ朝
劇団た組
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)
2020/02/22 (土) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★
不老不死の主人公を取り巻くある家族の年代記。『亜人』や『無限の住人』的に死んでも死んでも再生してしまう村川絵梨さん演じる美しい女。人を好きにならないように何百年(?)も生きてきたのだが、平原テツ氏演じる男を愛し結婚してしまう。男の兄の一家とのエピソードと二人の出逢いから愛し合うまでをコラージュする前半。
半円系のコロッセオはかなり観易い。イメージと異なり、凄く静かな芝居。登場人物が『○○歳くらいです』と自分達の設定を各々説明してくれる。開幕の安達祐実さんが13歳設定なのだが、本当にそう見えるのが怖い。彼女こそが不老不死なのでは。