ヴォンフルーの観てきた!クチコミ一覧

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帰還不能点【3/13・14@AI・HALL】

帰還不能点【3/13・14@AI・HALL】

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2021/02/19 (金) ~ 2021/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

凄え舞台。「兎にも角にも絶対観ておいた方が良い」としか言いようがない。よくもこんな脚本が書けたものだ。
日米開戦前、総力戦研究所に集められた民・官・軍の若手のエリート達。シミュレーションを試行するも結論は日本必敗。しかし日本は戦争に突入し、シミュレーション通りに敗けた。
戦後、同僚の三回忌に奥さんの居酒屋に集まる面々。そこで即興劇宜しく日本がどうやって間違えていったのかを再現してみせる。
役者陣は実際に飲み食いし、とことんリアルを追求。黒澤明の『どん底』を思わせる演技合戦。
もうこれは映画ではないか。カメラを回せば、大島渚の『日本の夜と霧』のような作品が撮り上がる完成度。岡本喜八の『日本のいちばん長い日』や庵野秀明の『シン・ゴジラ』調のポリティカル・エンターテインメント。(ゴジラは日米開戦。)
黒澤明(原作山本周五郎)調の人間の熱い血がどくどくと脈打って流れている。演出の狙いは『生きる』の後半っぽくもある。
独りアウトレイジの粟野史浩氏はいつもながら最高。
この題材をエンターテインメントにする作家の力量に敬服。

ネタバレBOX

南部仏印進駐をPOINT OF NO RETURN(帰還不能点)として日本史を俯瞰。
ニコニコと皆の即興劇を見守る未亡人黒沢あすかさんが一つの軸。クライマックスの旦那との出逢いのシーンは美しすぎて涙が出た。自殺を図る女を必死で止める男。敗けると判っていた戦争を止められなかった事への自責の念により、自己犠牲と他者奉仕による贖罪の日々。「私一人を救ったところで他のみんなは救えないじゃないか?」「みんなを救えないことが一人を救わない理由にはならない!」・・・参りました。
絶対に敗ける日米開戦を本当に止めることは出来なかったのか?ラストは時空を越え、何とかしようと止める方法を模索するメンバーの激論で終わる。この題材で感傷ではなく、この終焉に感服。これはもうある種の現代日本史運動なのでは。
『白い星』~シロイヒカリ~

『白い星』~シロイヒカリ~

100点un・チョイス!

ザ・ポケット(東京都)

2021/02/10 (水) ~ 2021/02/14 (日)公演終了

満足度★★★

『僕だけがいない街』系のリピート物語。10年前、恋人が刺殺された未解決事件を今も引き摺る主人公。ふと気付くと事件当日にタイムスリップしていた。何とか恋人の命を守り、犯人の正体を突き止めようとするも・・・。
花奈澪さんを久し振りに観た。(冒頭でいきなり刺殺。)2019年11月の『魔術士オーフェン はぐれ旅-牙の塔編-』以来か。この御時世、無理してでも観ておかないと本当に後悔する羽目になる。青木素姫(そおひ)さんが雛形あきこ似で印象に残った。三村貴恵さんは見覚えがあるのにそれが何だったのか思い出せなかった。
凄く好感度の高い運営スタッフで気持ちが良かった。

ネタバレBOX

やたら説明調の幼い台詞が気になる。話にのめり込む為には主人公である修斗の情念に感情移入させないと駄目だ。執念が力ずくで時空間をねじ曲げたようなエネルギーが。この設定で押し切るにはパーツが足りないような。ホームレスのエピソードももうひと工夫。
何度もやり直せたら人生は正解に辿り着けるのだろうか?
フェイスシールドの透明シールを付けたまま観ようとしていて、気付いた隣の方が親切に剥がしてくれた。どうも有難うございました。
シンデレラ

シンデレラ

NBAバレエ団

東京文化会館 大ホール(東京都)

2021/02/06 (土) ~ 2021/02/07 (日)公演終了

満足度★★★

バレリーナを夢見る少女。教室では雑用係としてレッスンさせて貰えない。夜中、無人の教室に貼られたポスターから三人の精霊が現れ、少女にレッスンを付ける。これはまさしく、ジャッキー・チェンの傑作『拳精』。古き良き功夫映画の精神が現代版『シンデレラ』にも流れている。ジョン・ウィリアムズ調の生オーケストラも素晴らしい。第二幕は宮廷の舞踏会。道化役の新井悠汰氏の身体能力に驚く。ヴィラン姉妹の喜劇パートがやたら長い。単調に所謂『シンデレラ』がなぞられて違和感さえ覚える。しかし、これには仕掛けがあって・・・。幻のフランチェスカ・ヘイワードversionもいつか観たい。

ネタバレBOX

王子様との恋が実ってハッピーエンド風味の真っ只中、12時を指した巨大な時計が降りてきて夢の終わりを告げる。全てが引っぺがされ、教室に独り取り残された少女。まさかのBAD ENDを思わせるも、ヴァイオリニストが教室に入ってくる。少女が落としたシューズを拾い上げる彼の服からは道化の衣装がはみ出している。
現実の中に夢の欠片が幾つも転がっていると云うラストに成程。
ただ第二幕がイマイチかなあ。
絶対、押すなよ!

絶対、押すなよ!

東京AZARASHI団

サンモールスタジオ(東京都)

2020/12/22 (火) ~ 2020/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

2020年のラストに観劇出来て良かった。不条理デス・ゲーム系の話なのだが、集められたのが若き少年少女ではなく、随分とくたびれたおっさん四人というところが見事。ほぼどうでもいい与太話の応酬が延々と続く。癖の強い四人のおっさんがひたすら与太り合っている中、紅一点の美女(神崎菜緒さん初舞台!)がぐっと笑いを堪らえてクールに澄まし顔。その何とも言えない空気感が最高。客席は皆マスク姿ながら爆笑が鳴り止まない、揺れる聖地サンモールスタジオ。これぞ東京AZARASHI団。
渡辺シヴヲ氏の役者としての深みを堪能。
四十年振りの小学校の同級生との再会が、自己存在を震わすエネルギーと化す。
90分、怒涛の笑いのジェットコースター。

ネタバレBOX

個人的にも今年一年は地獄巡りのようであったが、何とかかんとか生き延びようとそんな気持ちになったラスト。「どうにもならない事なんてどうにでもなっていい事」、ブルーハーツの『少年の詩』のような気分。
オペラ座の怪人

オペラ座の怪人

劇団四季

JR東日本四季劇場[秋](東京都)

2020/10/25 (日) ~ 2022/01/10 (月)公演終了

満足度★★★★

開幕からお馴染みのテーマ曲。これを上手くアレンジしたのがBOØWYの『LIAR GIRL』で、いつも連想してしまう。四季劇場[秋]は13列目から段差が始まるので、後ろでも充分観やすい。今回センター席は6列目からの使用、横は一席おき。
クリスティーヌ役の山本紗衣さんの歌声の凄まじさ。これを毎日やるのか!?
全員の歌唱力のレベルが自分の観劇史上最高峰。それだけで金が取れる。
映画を先に観たせいで、よくここまで舞台美術を再現できるなと感心。ファントムに拐われたクリスティーヌが長い階段を降り、地下湖をボートで渡っていく幻想的なシーンが美しい。床から無数の蝋燭が生え、天井からは鉄格子、左右から燭台やら彫刻やら。ティム・バートンの『バットマン・リターンズ』だ。
32年前、チケットがあったのに観れなかった、個人的に幻だったミュージカルを到頭観ることができた。

ネタバレBOX

物語は永遠のテーマである、『醜男の叶わぬ恋』。
ラストシーンがよく出来ている。ファントムはクリスティーヌと恋人を逃がし、自らは死を選ぼうとする。そこに一人戻って来るクリスティーヌ。はっとするファントム。だが、クリスティーヌはファントムに貰った指輪を返しに来ただけだったのだ。チャップリンの『街の灯』を思わせる演出。素晴らしい。
痴人の愛 ~IDIOTS~

痴人の愛 ~IDIOTS~

metro

ザ・スズナリ(東京都)

2020/10/22 (木) ~ 2020/10/27 (火)公演終了

満足度★★★★

〈片岡版〉
地獄のような物語。自分を裏切り傷付け苦しめた少女に対し、未だに欲情を覚え渇望し崇拝する年老いた男。
とても男と女のある愛の一形態なんて優雅な代物じゃあない。地獄の果てしなさのような。ナオミが覚醒剤だとしたら腑に落ちる。
舞台美術がお見事。オープニングの譲二の登場シーンから最高。
黒子(?)の影山翔一氏がこなす無造作な舞台転換も痛快。
『テネット』方式の逆行モノでもある。

ネタバレBOX

ラストはスズナリに雨が降る。
雨の中、ずぶ濡れになって野花を摘み、小さな花束を譲二に手渡すナオミ。
その抒情性で終わる。

この原作に何故か乗れない訳は、ナオミに惹かれないことと譲二に感情移入出来ないこと。語られるのは性的なフェティシズムばかり。ナオミは人間ではなく、人を盲目にし狂わせ中毒にさせるものの象徴としよう。するとこれはもう一人の自分自身との取っ組み合いとも解釈できる。自分を崇拝したり蔑んだり愛して憎んでのくんずほぐれつ。黒澤明の『白痴』みたいだ。
私はだれでしょう

私はだれでしょう

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2020/10/09 (金) ~ 2020/10/22 (木)公演終了

満足度★★★★

平埜生成(ひらのきなり)氏がとにかく凄い。
この役を完全に自分のものにしている。 他の人には再現の出来ない産物。顔芸、ダンス、タップと平埜氏の大暴れを熟練の超一流役者陣がガッチリ脇を固め、受け止め切っての後押し。ピアノの朴勝哲氏との息もピッタリ。初演の川平慈英氏バージョンも観てみたかった。(当て書きらしい)。
朝海ひかるさんが長身で吉田栄作氏との並びが綺麗。吉田氏はかつての井上順氏や布施明氏を彷彿とさせる味のある良い役者になっていた。シリアスな役柄の朝海さんが愉快に陽気に踊り出すと場の空気が一転してパッと明るく。
朝海・平埜コンビの『日野浦姫物語』をまた観たくなった。

戦後まもなくNHKラジオで尋ね人の放送を開始。そこに記憶喪失のサイパンからの帰還兵が訪れる。「私はだれでしょう」。

ネタバレBOX

話はいつもの通りの纏まりがない感じ。いろんな要素を無理矢理こじつけているような。けれどそれが退屈でも不快でもないのが素晴らしい。ジブリ的に登場人物に嫌な奴が一人もいない為、微笑ましく観ていられるからか。GHQとの戦いや平埜氏の正体などには余り興味が湧かない。ラスト近くの台詞、『私は誰であるべきなんでしょう?』が胸に来る。
敗戦直後、不幸の共有者としての連帯感。八幡みゆきさん演じる女性分室員が象徴する純粋なる善意が、其処ら此処等に満ち溢れている。どうしようもない不条理に立ち向かう弱者の最後の武器は、無心の善意だけなのか。
たむらさん

たむらさん

シス・カンパニー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2020/10/09 (金) ~ 2020/10/11 (日)公演終了

満足度★★★

豊田エリーさんが舞台に現れ、奥の台所で調理を始める。
次に橋本淳氏が登場し、観客に向かって「たむらです」と自己紹介。「皆さんに一つ質問があります。その前に僕のこれまでのことを知って下さい」と三十年の半生を語り出す。
ここからはほぼ橋本氏の一人語り。豊田さんはひたすら調理。(時たま語りに合わせて効果音を出すくらい)。
半生を語り終えた後、豊田さんも加わりあるシーンの再現。
その後、観客に向けてある質問をすることになる。

ネタバレBOX

誕生、両親の離婚、小学校での虐め(ランドセルを黄色く塗る)、サッカー、野良猫殺しの同級生(床に猫を描く)、初めての彼女、ピンサロで母との再会(チューブで射精を表現)・・・。
いろんな工夫で話を飽きさせない。
社会人になって出逢った彼女と自らの誕生日に結婚式を挙げることに。
当日、彼女はウェディングドレス姿のまま踏切で電車に飛び込み自殺。(後で豊田さんと二人で影絵で再現)。
遺された手紙には主人公の父親と肉体関係があり、堕胎までしていたことが。
ここでいよいよ質問に入る。「父親に復讐するべきか、更正を促すべきか?」

エピローグ、豊田さんが食事をテーブルに並べ始める。
二人の台詞が聞き取り辛い為、意図が不明瞭に。『たむらさん』の話がネットニュースにまでなっているらしい。TVでも論点をまとめているようだ。息子が父親を訴えたのだろうか?
別の夫婦がそれを話題にしているということらしい。
殆ど父親との関係性が描かれていない為(父親に興味が湧かない)、『復讐するべきか?更正させるべきか?』と問われても何ともぴんと来ない。
加藤氏の才能はオリジナルではなく、アレンジの人だと思っている。
ダークマスター VR

ダークマスター VR

庭劇団ペニノ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2020/10/09 (金) ~ 2020/10/18 (日)公演終了

満足度★★★

これがVRか、大したものだ。
20人の観客がそれぞれ個室に入り、ゴーグルとヘッドフォンを装着。
解像度の多少の荒さと見える物の大きさが一回り小さい位でかなりリアル。
体験型アドベンチャー・ゲームをしている感覚。催眠セラピーを受けているようでも。匂いや震動もサービス。
やはり目が疲れるが、いろんな可能性を感じる。
開始から一時間程で終わった。
日高ボブ美さんがとにかく凄まじい。
帰りはやたら腹が減る。

ネタバレBOX

①『キッチン長嶋』に入り、コロッケ定食を食べる。そこのマスター(金子清文氏)から「月50万で代わりに働いてくれ」と頼まれる。
②マスターの指示が左耳の小型イヤフォンから聴こえ、試しにステーキを焼いてみる。
③厨房に立ち、客の注文に応える。ナポリタンを作る。
④トイレに行く。
⑤どんどん客が入り大忙し。
⑥気付くと今月の売り上げが600万。酒を飲んで朦朧とする。マスターと一体化していくような。
⑦デリヘルを呼んで暗闇で懐中電灯プレイと唾液オプション。
⑧SEX中にデリヘル嬢の顔がマスターと入れ替わってオチ。
音楽劇「銀河鉄道の夜2020」

音楽劇「銀河鉄道の夜2020」

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2020/09/20 (日) ~ 2020/10/04 (日)公演終了

満足度★★★

広大なステージに迫力のある大掛かりなセットと生演奏。船の舵と錨と時計の振り子を合わせたような象徴的なオブジェが荘厳。汽車は客船を思わせる作り。宮沢賢治的役回りの岡田義徳氏と歌唱担当のさねよしいさ子さん(精霊アメユキ)が苦しみ足掻く少年ジョバンニの姿を見守り続ける。
さねよしいさ子さんの歌は、矢野顕子調で歌詞こそ聴き取れないが曲と歌唱は絶品。聴いているだけで作品世界に溶け込んでいく気分。
前半の貧しい苦学生が出稼ぎの父の逮捕の噂で学校で虐められ、家には病気の母と、現実に追い詰められていく様が見事。
そこからの後半、銀河鉄道の旅の中で『本当の幸い』に人生を捧げていく過程が時間の都合もあって唐突、なかなか理解しづらいのでは。
カムパネルラが降りる、石炭袋と呼ばれるブラックホールの演出が秀逸。スモークと照明の美。
二階の一番後ろだったが、観易くて満足。

ネタバレBOX

矢張、タイタニック=サソリ=カムパネルラの自己犠牲の物語に。
謎の多い『銀河鉄道』の正体。個人的に一番合点がいったのが、そねはじめ氏(日本共産党都議会議員!)の論評。『これまでそれは、死者たちの魂を乗せて天井へ向かう死後の世界だという視点からの論評が圧倒的だった。(中略)銀河鉄道は、死者のみのためにではなく、人間一人一人にとっての真理や理想を求めていく人々の精神の旅路としてとらえ直すべきなのではないだろうか。』
鳥捕りのエピソードなど、そう考えでもしないと理解不能。何か統一した解釈で作品を再構築して欲しかった。
フランドン農学校の豚/ピノッキオ

フランドン農学校の豚/ピノッキオ

座・高円寺

座・高円寺1(東京都)

2020/08/28 (金) ~ 2020/10/03 (土)公演終了

満足度★★★★

ピノッキオ
昨年からの二回目。辻田暁さんのラストの舞踏が観たくて堪らなくなる。理屈や論理を越えたもの、畏怖するしかないもの、言語化出来ないもの。そこに“神”が宿るのか。人間論のような作品。

MISHIMA2020

MISHIMA2020

梅田芸術劇場

日生劇場(東京都)

2020/09/21 (月) ~ 2020/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★

三島由紀夫の作品を若い演出家がアレンジして再構築する企画。各一時間に満たない程の中篇で、休憩が二十分入る。NHKのカメラが入っていた。

①『真夏の死』(『summer remind 』)/作・演出:加藤拓也。
中村ゆりさんと平原テツ氏の二人芝居。他に医者の声が入る。椅子に腰掛けた二人でスタート。中村ゆりさんが観客に向け自分の身に起こった出来事を語り始める。夏に家族で海に行くが、一人旅館で昼寝をしている間、子供が二人水死してしまう。子供達の死に対する罪悪感を背負い続けて生きていこうとする話。椅子が高くせり上がってライヴ会場になったり、出産シーンは桃(?)の形に膨らむ巨大なゴム風船だったり工夫が効いている。赤ん坊は巨大なへその緒で表現。中村ゆりさんがひたすら美しかった。

②『班女』近代能楽集より/演出:熊林弘高。
乱歩の世界を美内すずえが漫画化したような話。背後のスクリーンに映像が同時進行で投影されたりする。

ネタバレBOX

加藤氏の魅力はその語り口にある。気の知れた友人に話すような口調で始まり、何となく物語に惹きつけられていく。子供を失った母親の贖罪意識がラスト、同じ場所で新たに授かった赤子を投げ棄てるという行為に終着。波を表現するのは無数の大きな水色のゴムボール、あちらこちらに跳ね続けている。妻の行動を知っていたかのように旅館の窓から夫はただ黙って見つめていた。

大変申し訳ないが、『班女』は衝撃を覚える程つまらなかった。
キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

劇団四季

キャッツ・シアター大井町(東京都)

2018/08/11 (土) ~ 2022/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★

二回目の観劇。タントミール役の間辺朋美さんがやたらと目を惹いた。凄い身体能力。
話はあってないようなもの、予備知識として映画版『キャッツ』を観てからの方が楽しめると思う。(メチャクチャ酷評されているが自分は好き)。フランチェスカ・ヘイワード演ずるヴィクトリア(舞台では産まれたばかりの赤ん坊猫シラバブ的な存在)がガイドラインとして判り易く世界観を伝えてくれる。
物語を語る作品ではないので、簡単なキャラ設定を知っていた方がいい。何度も何度も観た方が楽しめる作りにされている。実際、初回より俄然面白かった。
隣の小学校低学年の女の子が、ラストの『猫に対する礼儀の講義』で号泣していた。これぞ正しいミュージカル体験。
絶え間なき躍動感の強烈なる放射が、眩い圧倒的な光の照射となって胸に突き刺さる。

ネタバレBOX

『メモリー』がなければ成立しない舞台。それだけこの曲は凄い。
『昔、自分は本当に幸せだったんだと気付き、心から悔いることができたならば、もう一度生まれ変わってやり直すことができる』がテーマ。
ホテルニューパンプシャー206

ホテルニューパンプシャー206

UDA☆MAP

キーノートシアター(東京都)

2020/08/12 (水) ~ 2020/08/17 (月)公演終了

満足度★★★

舞台と客席を大きなアクリルパネルで遮り、客席は一席ずつ両側共に仕切り、演者は全員口元をフェイスシールドで覆い・・・。ここまでするかのコロナ対策。何年か後には笑い話になっていて欲しいもの。
安いラブホテルの一室、訳有りの掃除婦と帰らない女性客、間違ってやって来たホテトル嬢、隣の部屋からは銃声が。90分程のハイスピード・コメディ。ワン・シチュエーションでここまで疾走感があるのは見事、面白い。
小林亜実さんは声が独特で台詞がはっきりと聞き取れる。観る度に生き生きとしていて、演技という水の中を自由に跳ね回る魚のよう。
一番驚いたのは高宗歩未さんの怪演。狂ったように顔芸を競い合う。この人のノーマルな状態の想像がつかない。
ベッドの上をごろんごろん転がり捲る役者陣。汗だくだくで熱量が凄かった。

ネタバレBOX

男性陣のキャラが弱かったかな。
無畏

無畏

劇団チョコレートケーキ

駅前劇場(東京都)

2020/07/31 (金) ~ 2020/08/10 (月)公演終了

満足度★★★★

非常に衝撃的な作品。ドラマとして観れば平坦な作りだが、自分は論戦として受け止めた。
東京裁判にて死刑となる、南京大虐殺の最高責任者、当時の陸軍大将松井石根(林竜三氏熱演)と弁護士との対話。
このネタは時代が時代なら大揉めで酷い難癖をつけられていたことであろう。NNNドキュメント『南京事件』のような良作も糞味噌に言われる世の中なのだから。
初フェイスシールドは思ったより悪くはなかった。ここまでして、舞台を演り、舞台を観る、というのが人間の面白い所。コロナを逆手に取った新しい観劇スタイルなんかが生まれてくるんだろうなあ。
南京事件を扱った作品は巨匠チャン・イーモウ監督の『ザ・フラワーズ・オブ・ウォー』ですら黙殺される日本。(主演クリスチャン・ベール。韓国版Blu-rayにて日本語字幕有り。)
「何故、自称愛国者達はこれらの事(従軍慰安婦問題など)を禁忌としたのか?」「これらが事実であると何がまずいのか?」そここそが日本人論の焦点。
クライマックスの弁護士の詰問はド迫力。作者が時空を越えて松井石根を恫喝しているようにすら見えた。ここまでするか・・・。流石である。

ネタバレBOX

クライマックスからのエピローグが饒舌で冗長。各フォローのように見えて斬れ味が雑に。
『私は知らない事であるが、全ての責任は立場上私が取る』という日本人的美学を作者は糾弾する。そんな悲劇の善人が断罪された物語では何も解決しない。それでは何も後世に教訓が生きない。その美学を剥ぎ取り、自らの無力さをさらけ出してこそ、何故こんなことになってしまったのかを考え始める礎となる。永遠のテーマであり、また必ず同じことが繰り返されるであろうから。
大東亜共栄圏、もしくは大東亜協同体論などの理想を掲げて起きた出来事は「"大義‘’の過程において犠牲はやむを得ない。全ては輝かしき未来の為の瑣末事でしかない。」という詭弁にも感ずる。
作家宮崎学氏が連合赤軍植垣康博氏の著書に寄せた一文、『目的は正しかったが、手段を間違えた』という言い分は誤りで、『間違った手段を選ばせるような目的はそもそもが間違っていたのではないか?』との考察を思い起こす。
中国映画『南京!南京!』があの場の肌触りや空気感を巧く再現。自分がそこにいたら何を見てどんな気持ちになっていたのか?Amazonプライムなどの配信では日本語字幕付きで観れるのでこれもお薦め。
バロック

バロック

鵺的(ぬえてき)

ザ・スズナリ(東京都)

2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★

超観たかったので、観れて嬉しい。ワン・シチュエーション・ホラーものなのにスズナリの舞台が無限の空間に思えた。照明の技術が凄すぎて、まずそこを褒め称えたい。暗転の瞬間に人が消えたり現れたり。光と陰の効果にかなり知恵を絞っている。『霊は光には映らない』という鶴田法男監督の言葉を想起。照明の阿部康子さんにRESPECT。ホラー・エンターテインメントの中心は映画館から小劇場へと移ったか。
古典的な呪われた洋館に閉じ込められた一族と悪霊の対決みたいな感じだが、古臭さがなくセンスが良い。二役の福永マリカさんが強烈だった。声の変わりっぷりに慄く。春名風花さんは巧く、野花紅葉さんはエロく、笹野鈴々音さんは実に映画的。死んだ伯母を愛して気が狂う祁答院雄貴(けどういんゆうき)氏のキャラも良い。近親相姦に取り憑かれた一族なんて、上手い設定。生と死、善と悪とが二元論からアウフヘーベンされるような世界観。佐藤誓氏演ずる旦那は普通なら簡単に殺されそうなキャラの処、作者の人生観を象徴するような飄々とした重要な存在に描かれる。狂った浮浪者役、吉村公佑氏も欠かせない。死に様が美しい。

ネタバレBOX

後半からホラーADVゲームのように展開し、矢張『スウィートホーム』になっていく。エピローグはリメイク版の『サスペリア』っぽい。ここら辺が好みの別れるところ。兄妹間のラブロマンスを主軸に据えた方が良い。いっそ、一族の強みは性交を各々に課してきた濃い血の掟にあるぐらいにしても良かった。
きらめく星座【公演中止3月5日(木)~8日(日)】

きらめく星座【公演中止3月5日(木)~8日(日)】

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2020/03/05 (木) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★

正しい音楽劇の傑作。レコード店主人の後妻役松岡依都美(いずみ)さんが凄かった。松竹少女歌劇部出身の設定を生かし、コミカルに踊る踊る。躁状態でイッちゃったサザエさんのようなキャラクター。観てるだけで楽しくなってくる。生演奏で次々に歌われる戦中流行歌が名曲揃い。灰田勝彦『燦めく星座』、市川春代『青空』、霧島昇とミス・コロムビア『一杯のコーヒーから』、中野忠晴『チャイナ・タンゴ』等々。明るく生き生きとした日本。
日中戦争中の昭和16年、レコード店オデオン(音楽堂の意味)堂一家の物語。翌昭和17年12月太平洋戦争開戦前夜の閉店までを二幕で送る。
店主の娘役の瀬戸さおりさんがやたら綺麗。その旦那となる義手の元軍曹、粟野史浩氏がド迫力。第一幕のクライマックスとなるシーンは素晴らしかった。本来憎まれるべきキャラクターである木村靖司氏演ずる憲兵が、物語の進行と共に愛すべき人間味を醸し出す井上ひさし節。

ネタバレBOX

この当時の背景を知りたいなら、『日本鬼子(リーベン・クイズ)日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』がお薦め。
強い兵隊に憧れた店主の息子、砲兵隊に入隊するも耳が良すぎる為、砲撃の音に耐えかねて脱走。日中間を往き来する船に潜り込むが日本人の中国人への差別的対応に幻滅。日本人でいることに嫌気が差して自首しようと戻ってくる。戦場で右手を失った軍曹、店主の娘と結婚するも、電車内での軍上層部の人間達の会話に失望し日本の戦争の大義への不信感が爆発する。第二幕のクライマックスともいえるそのシーンが何か取って付けたようで違和感が。その遣り取りを耳にし、身籠った赤ん坊を自ら大きな石を腹に叩き付けて堕胎しようとする娘も唐突過ぎ。それを諫める広告文案家の『この宇宙の奇跡とは生きている人間一人一人の存在そのものなのだ』という折角の台詞も空回りに感じた。
無理に修羅場を作らず第一幕の感じでフェード・アウトするように物語を閉じていき、ラストのガスマスクの方が不穏な後味だったと思う。
第二幕開幕の、夫婦で『青空』を聴くシーンや宮沢賢治の『星めぐりの歌』を楽譜から松岡さんが歌うシーンが胸に焼き付く。
共骨

共骨

オフィス上の空

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)

2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

満足度★★★

8歳の時、母を癌で失った少女。思わず遺骨を食べてしまう。父との慣れない二人暮らしが始まる中、母の亡霊が現れ助けてくれるように。母が現れる時、決まって骨が痛み出す。
主演の新垣里沙さんがまた凄い。虚無演劇界のファム・ファタールのようだ。彼女の独り芝居でも良かったんじゃないかと思う程に圧倒的。アンナ・カリーナのように存在そのもので作品を成立させる。
『家族』という宗教、『愛』という宗教、『自分』という宗教に囚われて苦しんでいる人に、「そんなに大したものでもないよ」と少し気を楽にさせてくれるお芝居。自分が何に支配されているのかを色々と考える切っ掛けにも。是非観て貰いたい。

ネタバレBOX

中学を卒業後、父の頭がおかしくなり、亡き母と混同された娘は犯されかかる。家を出て振り込め詐欺グループと共同生活をするも、警察に摘発。母の弟にあたる叔父を頼って生活していく。母の亡霊が自分の妄想ではないかと葛藤。父を殺して自由になろうと決める。
中学の時の元彼が寄りを戻そうと口説くシーンが良かった。彼女の存在自体が自分を補完する“妄想”のパーツであるかのように求める。それこそがこの舞台のキーであり、求めているものは自分自身の欠けている“何か”なのだ。
Pickaroon!<再演>

Pickaroon!<再演>

壱劇屋

DDD AOYAMA CROSS THEATER(東京都)

2020/02/25 (火) ~ 2020/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★

『少年ジャンプ』っぽい世界観。よく知らないけど、『ワンピース』とかの感じでは。凄く大衆に受け入れられる裾野の広さ。古代中国をイメージしたような架空世界、“ピカルーン”(盗賊の意味)と呼ばれる七人の盗賊が盗んだ宝箱の中には一人の赤ん坊が。七人は共同でその女の子を育てることにする。
女の子、『御姫』役の柿澤ゆりあさんが超美少女。アイドルかと思ったら「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞の16歳。個性溢れる“ピカルーン”達もそれぞれが魅力的なキャラ設定。高安智美さん演じる陸上飛(おがうえとび)はフラフープのような武器を使う。漫画のキャラのような表情と動作に目を奪われる。西分綾香さん演じる紙研(しげん)は番傘を差し、無数の紙を宙に舞わせる。複数のアンサンブルが真っ白な紙を一枚ずつ両手に掲げ、アクションに合わせバサバサとはためかせる素晴らしい視覚効果。武俠映画のようでカッコイイ。日置翼氏演じる伊武は百面相の男。次々にありとあらゆる姿へキャラ・チェンジ。ゲーム画面を観ているような華やかさ。集団舞踏的に全員の動きで場を作り上げていてテンポが良い。主題歌もキャッチー。
カーテンコール後、舞台上で作演出&男虎(おのとら)役の竹村晋太郎氏が「世界にはたった一人でも何処かに自分を助けてくれる人がいると信じています。そういう気持ちをこの話に込めました」的な挨拶を。希望に未来がパンパンに膨れ上がった劇団だ。早目に観ておいた方が良い。

ネタバレBOX

個人的にはもっと暗い話の方が好み。死んだ奴が生きていたり、悪党は判りやすく悪だったりがあんまり好きじゃない。男虎(おのとら)の「裏切り、御免!」が最大の興奮どころなのに、すんなり済ませたのが残念。
誰にも知られず死ぬ朝

誰にも知られず死ぬ朝

劇団た組

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)

2020/02/22 (土) ~ 2020/03/01 (日)公演終了

満足度★★★

不老不死の主人公を取り巻くある家族の年代記。『亜人』や『無限の住人』的に死んでも死んでも再生してしまう村川絵梨さん演じる美しい女。人を好きにならないように何百年(?)も生きてきたのだが、平原テツ氏演じる男を愛し結婚してしまう。男の兄の一家とのエピソードと二人の出逢いから愛し合うまでをコラージュする前半。
半円系のコロッセオはかなり観易い。イメージと異なり、凄く静かな芝居。登場人物が『○○歳くらいです』と自分達の設定を各々説明してくれる。開幕の安達祐実さんが13歳設定なのだが、本当にそう見えるのが怖い。彼女こそが不老不死なのでは。

ネタバレBOX

①安達祐実さん13歳
②安達祐実さん23歳?
③安達祐実さん41歳?
『タイトル』

中嶋朋子さんが眼鏡などを変え、年代に応じて演じ分けているのが伝わった。『止められるか、俺たちを』で荒井晴彦を怪演した藤原季節氏は『た組』がよく似合う。ゴム風船を吹いて割り、中に仕込まれていた紙吹雪の散乱で反吐を表現。『あしたのジョー2』的なアイディアもの。
広い舞台、演者の位置によって台詞が聴き取れなくなるなど、静かな展開に客席の居眠り率はかなり高かった。
旦那の平原テツ氏が亡くなり、村川絵梨さんは後を追おうと包丁で自らの腹部を切り裂き、大量の腸(赤い紐で表現)を引き摺り出す。だが死ねない。そこに安達祐実さんが託されていた遺書を渡しに来る。それを読む村川絵梨さんと無免許で車を走らせていた(ラジコンで表現)藤原季節氏の事故がクロスフェードして幕。死ねない女と不意に死を受ける男の対比。
設定が雑でリアリティーがなく、ファンタジーとしてもバランスが悪い。安達祐実さん視点で村川絵梨さんの人生を語った方が良かった。
『ぼくのエリ 200歳の少女』なんかを思い出した。

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