Naoki007が投票した舞台芸術アワード!

2022年度 1-10位と総評
帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

1

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

実演鑑賞

「ガマ」
戦争六篇の大千穐楽観劇(5篇観た、残る「帰還不能点」は昨年観劇)
本作に拍手、そしてこのような厳しい状況下、他の公演が軒並み中止に追い込まれる中、細心の注意を払って8月18日からの長丁場で六篇上演しきったことに大拍手
日本にとって沖縄とは何なのか?
いまだに続くこの重たい問いに正面から取り組みつつ、生きることがいかに困難で貴いものなのかを訴える
照明はランプだけでステージはずっと薄暗い
ガマの暗闇が表現される
キャストはみな表情が凄い
ランプの灯りがそれを増幅する
キャスティングも素晴らしいが、前半は相変わらず先生役の西尾さん上手いなと感じる
苦悶する表情が素晴らしい
後半圧倒されたのは大和田獏
うちなんちゅの老人役だが、うちなーぐち(良くは分からないものの感じとして)が完璧で、老人らしいある意味達観した飄々とした雰囲気を醸し出していた
そしてラストの白旗を掲げた清水さんを先頭に皆で歩き始めるシーン
大和田さんの挙げた両手の先は微妙に震えている!
最後尾の青木さんのまだ意を決しきれない表情も素晴らしい
紅一点の清水さんは皇民教育に染まった少女の決然とした態度を良く表していた
「帝国臣民」「聖戦貫徹」といった言葉が飛び出す
「私たち沖縄県民はどうやったら日本人になれるんですか」
「友達は皆日本人として立派に死んでいった」
などという台詞は心臓をえぐる
そんな彼女を(あるいは兵士たちも)生かそうとする先生と老人
それを後押しする少尉(岡本)
場内2時間余り物音ひとつしない
最後の老人の「命は宝だから」という言葉の重み
いつになったら「沖縄県民かく戦えり」は報われるのだろうか
いつも思うのだが、劇チョコの舞台の転換に用いられる重たい音楽は効果的だ
セットもシンプルだが効果的
トリプルコールになった
当然だろう
最後に退きかけたあとの二人の団員の肩を抱いて連れ戻して挨拶した西尾さんの顔は晴れ晴れとしていた

追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)

2

追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)

劇団チョコレートケーキ

実演鑑賞

「無畏」
一昨年観て圧倒された作品だが、再び深く考えさせられた(キャスト同じ)
一昨年と同じく大室弁護士が松井大将の責任を「検証」していくシーンが圧巻だった
松井役の林竜三と上室役の西尾友樹の演技が圧巻
ハコは下北の駅前劇場の方が好きだな(サイズ感)、巣鴨プリズンにも合って、検証シーンでもより緊迫感があった

笑顔の砦

3

笑顔の砦

庭劇団ペニノ

実演鑑賞

いやー、面白かった
まさに笑いとペーソス
良く作られたセットに絶妙のライティング
昭和を思わせるオンボロ棟割長屋の2つの部屋が左右対称で同時に見える
時に両者の動きがシンクロする
漁師の部屋の暮らしは学生時代の寮生活を思い出させてくれる
その有様がごく自然に演じられる
みな表情が素晴らしかったが、最前列に座ったので、とりわけ縁台に座って思いめぐらせる剛史(緒方晋)の表情の変化にはしびれた
おばあちゃん役の百元夏繪も認知症になりきっていて素晴らしかった

夜ふかしする人々

4

夜ふかしする人々

戯曲本舗

実演鑑賞

「浮遊」はちょっとエスプリの効いたオトナの会話劇
キャラの異なる(多分演者も)3人のやりとりが面白かった
「アンフォルム」はちょっと異質
森宮ゆずの独特の世界観を感じさせる演技が残った
「機種変更」はリアリティがあって3人の表情が素晴らしく、最も気に入った
しかし・・・お父さんが過去も現在も自分とそっくり(笑)
娘に「親の顔が見たい?洗面所に鏡あるわよ」と言われたそのまんまだなぁ

トロイ戦争は起こらない

5

トロイ戦争は起こらない

人間劇場

実演鑑賞

2時間45分に及んだが、いろいろな要素が盛りだくさんで飽きることはない
役者もそれなりのベテラン勢がポイントを締めている
しかし何と言っても特徴は驚異的な台詞の多さ、その多くが長ゼリフ
さながら弁論合戦の連続であった
戦争とは何か、だれが戦争へ導くのかという問いかけは十分に伝わってきた
入ると金属の棒だけで構築された無機的な舞台美術が目を引く
上手のタワーのみモーターで回転している
開始早々声明のような合唱
古代ギリシア風の衣装と言えるが、透明傘を切って作った衣装飾りなどは奇抜
原作に加えられた音楽はそれなりの効果を上げていたように思う
特にパーカッションやうめきのような合唱は
一部ダンスもあった
最後は「やっぱりね」
武将が手を結びかけた平和を壊したのは文民だった

花を灯す

6

花を灯す

劇団水中ランナー

実演鑑賞

水中ランナーは前に観た時と同じく一風変わった設定でありながらとても温かい
癌が分かって病院から帰って来てお母さんが「6秒だけ」と言って泣くシーンは周囲ですすり泣き、こちらも涙腺ゆるんだ
ここだけでなくお母さん役の織田あいかの表情が素晴らしかった
次の場面のキャストが舞台上の別の場所に現れていて、ライティングで切り替えるため、テンポが良かった
最も印象に残ったのは先のお母さんのシーンと長男、次男とその妻たちなどそれぞれの会話がシンクロするシーンだった
開演早々は発声に?と思ったけど、初日ゆえか直ぐに改善された
あとは皆なかなかの好演だった
主宰の堀之内良太は相変わらず
フラワーロックがうまくメタファーに使われていた
しかし、こんなお父さんお母さん最高‼️
お父さんみたいに「楽しかった」って言って死にたい(今のところ大丈夫、ただし家族ではなく〜苦笑)

きっとこれもリハーサル

7

きっとこれもリハーサル

エイベックス・エンタテインメント

実演鑑賞

面白かった
笑い通し
からのホロリ
お父さんの「俺の言うことが聞けないなら出てけー❗️」
お母さんの「お父さんには子供たちのこと相談なんてできないでしょ」
には身をつまされる
自分の死期悟ってお父さん実験台に葬式のリハーサルして、子供たちにお父さんに隠してたことを語らせ、自分のお父さんへの思いを伝え、ついには自分の保険金を充てるつもりでそれぞれの夢への出資約束したお母さん凄い‼️
お母さんの本当の葬式の後での、最後のお父さんの「これもリハーサルだと言ってくれ」には泣いてる人多かったな
福くん大きくなったなぁ
昔のアイドルのイメージ払拭の石野真子はすっかり貫禄
羽場裕一いい味出てた、アフタートークの福くんたちの話では舞台裏でもめちゃくちゃ面白く、本番でも袖でみんなを笑わしているらしい
しゅはまはるみはあれこれ忙しい舞台回し
川島海荷は歳よりずっと若く見えて可愛かった
僧侶役やらされたのには爆笑
アットホームないい座組のようだった

朝ぼらけ

8

朝ぼらけ

teamキーチェーン

実演鑑賞

Azukiワールドは久々に周囲にすすり泣きの聞こえる舞台だった
みな熱演、好演だったが、障害のある翼役の山中雄輔は圧巻だった
田中愛実は翼との結婚を反対するお兄さんに食って掛かるシーンが迫力あったし、団員、常連はいつも通りきらりと光るものを見せた
毎回感心するが舞台転換の照明や音楽も秀逸
相変わらずチケットも凝っていた

アルプススタンドのはしの方

9

アルプススタンドのはしの方

稲村梓プロデュース

実演鑑賞

良く足並みのそろったキャストの感情表現が上手く、ホンのノリの良さが活きて調子よく進みとても楽しめた

リア王~スマホVSリア王~

10

リア王~スマホVSリア王~

一般社団法人銀座舞台芸術祭

実演鑑賞

なんと客席からスマホで参加できる舞台!
「携帯電話の電源はオンでお願いします」の注意書き
途中LINEのオープンチャットで撮影可の写真をアップしたりアンケートがあったり
衣装も舞台も現代風
しかし人間の凄みと科学技術が進歩した凄みの対決(演出木村)という構図はなくても、シェイクスピアのスペシャリストのタッグは十分にリア王の本質を表現できた気もする
途中からは単に演技に注目していた
栗田やシェイクスピアの人間の凄みが勝ったか
ラストシーンはとても印象的だった

総評

コロナ下の難しい状況ではあったが、バラエティに富んだいいものが多かったと思う

このページのQRコードです。

拡大