衣衣 KINUGINU
metro
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2018/02/09 (金) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/10 (土) 14:00
月船さららと結城座の出会いは、奇跡的だと思う。
でなければ、「ゴーレム」のような伝奇物は具現化できなかったろうし、ましてやこの作品のように泉鏡花の世界を見事に立ち上げることはありえなかったろうから。
「天願版・カリガリ博士」のチケットを購入した時、あとで気付いたのだけれど人形劇だと判り、しまった、と思った。まあ、購入したのだから仕方ないか、と足を運んだのだけれども、この失敗(と当時は思った)がその後の観劇に対する視野を凄く広げてくれた気がする。
どうも人形劇は、苦手だ。文楽も何度か見たけれど、好きな浄瑠璃演目でも、数人がかりで所作を操るのはせわしない。操り人形他でも同様で、上から動かそうが下から動かそうが、動かしている人間の所作が気になってしょうがない。
しかし、「天願版・カリガリ博士」しかり、「ゴーレム」しかり、この「衣衣」しかり、人間と人形とが一緒に演じることで、幽界と現実との狭間を見事に取り払い、観客にその世界を自由に行き来させてくれる。そこには生があり、生を与えられた虚が共存する。その玄たる世界観が見事。
月船さららさんの表現したい世界を「二輪草」に観たとき、その後に「ゴーレム」を観ていかにもと膝を叩いた次第。
「天眼版・カリガリ博士」で、後藤仁美氏のデビューに立ち会った至福を反芻しながらMetroという月船さらら表現の場に潜り込めた幸運に浸りながら、この「衣衣」にて泉鏡花の幽玄美を堪能させてもらったことに感謝。
鵺的トライアルvol.2『天はすべて許し給う』
鵺的(ぬえてき)
コフレリオ新宿シアター(東京都)
2018/02/07 (水) ~ 2018/02/13 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/08 (木) 14:30
座席1階A列5番
3人の女性と3人のストーカー(ネットで知り合い共謀する)の話。
かなりえぐいのですが、アフタートークでも話されていたように、3人のストーカーに異なる性癖、社会的立場、行動基準、価値観、相手の女性への感情を持たせることで、彼らを単なる異常者としてではなく、どこか観客と意識の共有を図れる存在にしたところは、秀逸なところ。
ただの異常者で括っては3人いる必要はないし、観客としてはただただ女性のみに感情が行ってしまうところを、女性3人・ストーカー3人を交錯させ多層的に表現することで、物語に厚みを出している。
ストーカー各自と女性との出会いと関係性も細かに描いていて、その後に起きる拉致監禁という悲惨な事件へとボルテージを高めていく。
しかし、拉致監禁後に今までの高揚感が急に失われていくのが残念だ。
その理由は、拉致監禁の描き方にあると思う。これが異様にさっぱりしている。
拉致監禁は、彼女らそれぞれがどのようなトラウマを持ち、その後の対応や生き方に変化を生じさせるかの重要な契機だし、同時にストーカーらが彼女たちへの心情を変化させその後の行動の方向性を獲得していくかの素因となるからだ。
時間の関係もあったのだろうが、拉致監禁の場面はもっと丁寧に(執拗に)描き込んで欲しかった。
それと、彼女らと共闘する弁護士が、彼女らを助けた人物から監禁された場所に関して情報を得ているのだが、それが劇中で活かされていない。
和田の溶鉱炉=ブラックホール説は、目を見張る発想なのだが、それがストーカー3人の話で閉じてしまうところがもったいない。溶鉱炉の存在を彼女らが知ることで、彼女らが置かれた立場を知らせることもできたように思う。そこでの感情の変化なども見てみたかったところ。
役者さんに目を向けると、「フォトジェニック」でのような、小松崎さんの爛れるような妖しさ美しさ、人を背徳の淵に誘うような艶っぽさ、倒錯感一杯の仕草を期待した向きには、今回はちょっと物足りなかった気がする。弁護士という役柄なので、どうしても性格の固い面が出るのは仕方がないだろうけれど、同性愛者的な設定が隠されているわけなので、その陰の部分をもうちょっと鮮明に露呈させると、彼女の魅力が引き立ったかと思う。
(もちろん、同じような役をやらなければいけないということではなく、彼女の強みとして)
かさぶた
On7
小劇場B1(東京都)
2018/02/03 (土) ~ 2018/02/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/05 (月) 19:30
座席1階1列
かさぶたって、剥がしちゃいけないんだけれど、どうしても剥がしてみたくなってしまう。もう、直ったかなーって。で、つい剥がして後悔しちゃう。そんな誘惑と後悔の存在。傷口をそっと覆う儚くも美しく、しかし、その下には生々しくちょっと気味の悪い顔を持つ薄い薄い膜。
まさにそんな舞台でした。
これを演出家と出演者がゼロベースで作り上げたというのは凄いな。
だから、作り上げられたものでありながら、作り物感が全くない。身体の奥底から声が響きだし、能動的にかつ自発的に、そして自然に歩き、駈けて、倒れ立ち上がる。
いただいたマスクの下で、口元は緩み、締まり、時にぽかんと開いておりました。
on7の舞台は、いつも恐ろしいくらいに女性的で、魅力的です。
修了公演「美しい日々」
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/02/02 (金) ~ 2018/02/07 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/04 (日) 14:00
座席1階C列11番
宮田慶子氏の完成形。
一切の淀みなく、透き通った心象風景。
うん、素晴らしい。
オホヒルメ
アブラクサス
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2018/02/01 (木) ~ 2018/02/05 (月)公演終了
満足度★★★★
衣裳、小道具、音響どれをとっても素晴らしい。失礼を顧みずに言えば、明治座の舞台で観たいほどだ。そして何より脚本がよい。
私心に捉われ祭りごとを疎かにした孝謙天皇、私欲のままに帝の位を求めた逆賊道鏡という歴史像を、民を救わんとして仏教に帰依する君と、その志に殉じようとした僧侶に翻案した視点は見事という他ない。
偶然、ちょっと前に孝謙天皇と道鏡に興味を持って調べていた私としては、まさに恩寵のような舞台だった。
そこで、無条件に☆5つと行きたいのだが、そうはいかなかった。
それは、まずよく噛むこと。そしてセリフ回しが悪く、発音が聞き取れない。「し」と「ひ」の区別も怪しい方がいたし、おそらくセリフ間違いもあったように思う。
例えば、道鏡が称徳天皇と共に民に向かい宣言するのは「大君になること」であり「法王になること」ではないし(すでに彼は法王なのだから)、形容詞が被ったりしているところもあったように思う。
もったいないとしか言いようがない。そこで、☆1つ減らします。
それと、時代説明の時は、西暦ではなく元号で言って欲しかった。西暦で言われても、ピンとこないことは同じなので、やはり時代性を尊重して欲しい。
うーん、ホントにもったいないなあ。
楽園の怪人
トツゲキ倶楽部
小劇場 楽園(東京都)
2018/01/24 (水) ~ 2018/01/29 (月)公演終了
満足度★★
鑑賞日2018/01/29 (月) 18:30
座席1階1列
江戸川乱歩原作の舞台化となれば、取るものもとりあえず観劇に向かわねばなりません。
「偉大なる夢」という原題がなぜ「楽園の怪人」になるのか、そこには脚本家・演出家としての翻案があるのだろうとの期待もあります。
大川家3代の話の下りは、夫婦(といっても3代目は夫婦になる前に別れてしまうのだけれど)が全員女性、なかなかによいテンポで、あとで「ああ、それでなのね」という言葉遊びも入れて、結構楽しめる。
原作通り「偉大なる夢」の意味も途中で判るし、「楽園の怪人」というのも、信濃の山中で極秘裏に進められる研究所(研究者たちの楽園)に暗躍する怪人、あるいは、家族(楽園)の中に血縁のみに連綿と受け継がれる怪しい影(怪人の存在)という理解も可能かもしれない。
しかし、カタルシスがない。ラストに向けて迫りくるものがない。そしてなによりも、何が起きて、何が問題となっているのか(博士が襲われ、極秘裏の設計図が盗まれる。というのだが、それで?設計図はまぬけなくらいに、すぐ出てくるし)がよく判らない。
面白くなりそうな題材は幾つも転がっているようなのだけれど。例えば、なぜ京子は極秘裏の研究に兄と同行しているのか、明智が話をしている女性はどこにいていつの話なのか(研究所内ではないらしい)、博士はなぜ子連れの女性と再婚したのかetc
私的には、ちょっと残念な舞台でした。
アスファルト・キス
ワンツーワークス
あうるすぽっと(東京都)
2018/01/18 (木) ~ 2018/01/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/01/19 (金) 19:00
音響、舞台装置、照明とても素晴らしい。時々挿入される、アスファルトキスの現場のフラッシュバック(雨の夕刻、皆傘をさしている)も、物語をよく引き締めている。
ラストへの伏線も、きちんとあるし(主人公の義父のセリフや仕草、妻の心情吐露)、サスペンスとしては面白い出来だと思う。
しかし、皆さんがおっしゃっているように、同性愛や事件のねつ造、権力者のエゴや民衆の悪意、1つ1つを取ると、確かに未消化というか、半端な感じは否めない。
もう70年前にもなろうかという時代を描いた戯曲なのだから、それなりに演出家も工夫を凝らしたのだろうけれど、もっと現代に引きずり込んでもよかったのかな、と思う。
刑事や新聞記者の悪意も、単に傲慢であるだけではなく、もっと陰湿で匿名性の高いものであったらと思う。
でも、こうした半端さを含めて、好きだな私は。
換身
劇団普通
SCOOL(東京都)
2018/01/18 (木) ~ 2018/01/19 (金)公演終了
鑑賞日2018/01/19 (金) 15:00
「劇団普通」を継続して観ようと思った動機が、新宿眼科画廊におけるカフカの「変身」の舞台だった。あまりに見事な場面転換、グレゴール・ザムザの変身が劇中人物の視点を我々に共有させることで実現させるといった斬新さetc。見事の一言。
そして、「帰郷」今回の「換身」オリジナルが続く。
さて「換身」
これが、難解なのか、訳わからないのか。何とも評価できない。
話としては、
御旅屋を飲み、お茶と灯油を車で買いに行く、しかし、それを車に置いたまま家に戻る。
家には、老人が1人ないし2人いるようだが、彼らは部屋の電気を点けることを自らすることを拒んでいるようだ。上着を脱いで、どこかに置いてきて、また着て。そして、また外に出て、、、これを繰り返す。
買い物に行く途中にある女を見かけるが、彼女がどのような服を着ていたのかも思い出せない。だから、、、、登場する2人はいつ「換身」したのだろう、それとも同居する老人たちと?
でも、またこの劇団を観に行くのだろうな、とは思う。
TERROR テロ
パルコ+兵庫県立芸術文化センター
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2018/01/16 (火) ~ 2018/01/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/01/20 (土) 14:00
座席1階18列16番
観劇後に、同行した方と、今観た舞台について意見を交わすことはよくあることです。1人観劇でない限り、少しお酒を入れての反省会(アフターファンクション)は、観劇の楽しみの一部であり、よほどのことがない限り外せないものです。
その時に時間が取れなくとも、別の観劇の意見なども交えながら、後日、飲み会の席で交わす演劇論議は、「あ、それ観たかったな」とか「○○はちょっと苦手なんだよな」なんて、たわいのない会話は、観劇人にとっての日常でもあります。
しかし、今回は。
私は無罪、同行者は有罪。酒が進むほどに、議論は白熱し、声のトーンも上がっていたのではないでしょうか。議論の中心は、憲法違反を許すべきか(加えて、軍人として命令違反は許されるべきか。生命の軽重を図ってはいけないにしても、7万+164名の命を葬るのと、164名の命を葬るのとどちらを選ぶのか、という問題をどうとらえるのか。
私の回は、208対200で有罪でした。
ちょっと、興奮した2人が、場を和めるために出した結論は、、、、
非国民的演劇
しあわせ学級崩壊
王子小劇場(東京都)
2018/01/11 (木) ~ 2018/01/14 (日)公演終了
鑑賞日2018/01/13 (土) 14:00
座席1階1列
たいへん申し訳ない。
何のことやら、よくわかりませんでした。
ストリップ小屋である必要はあるのか、なぜストリップ小屋なのか。
理解と無理解との相克?などと言っても、何を言っているのかが、自分でも分からない。
2番目に殺された女性の呼吸の度に上下する腹筋と、死体なので動けないために、捲れたスカートを直せない状況が、一抹の哀愁を誘いました。
大音量は、何かそれで意味を持たせているような感じがするだけで、なぜあのような大音量を流すのかが、やはり分からない。
フライヤーの得体の知れなさに誘われての観劇でしたが、私的には残念な時間でした。
ごめんなさい。
SHIT AND LOBSTER 【ご来場ありがとうございました】
MILE STONE
吉祥寺シアター(東京都)
2018/01/10 (水) ~ 2018/01/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/01/11 (木)
座席1階B列15番
あらすじを簡単に言えばーーー、
古来から培われ、受け継がれてきた日本人の精神性の象徴が、西洋キリスト教文化から恐れられ壊されようとする。西洋は長年そのことを目論んできたが、なかなか果たせずにいたところ、敗戦を受けた占領下で、一気に壊滅を図る。もはやその象徴を守るのは、代々守り続けてきた本家と、ほんの一握りの人々。その人々も、付け狙う組織の手で、次々と殺されていき、、、、
ーーーという、伝奇活劇物語。
舞台の開始はダンスから始まり、どうなることやらと心配したけれど、蓋を開けてみれば納得かつ才気に満ちた痛快エンターテイメント。
「観たい」皆さん、「シットアンドロブスター」とは何か調べているようですが、けして調べられません。是非、舞台で解明してください。けして損はしませんよ。保証します。
黒の仁風
演激集団INDIGO PLANTS
ザ・ポケット(東京都)
2018/01/10 (水) ~ 2018/01/14 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/01/10 (水) 18:30
圧倒的な舞台。
脚本も面白いし、舞台装置もうまく機能している(山村部、地位の高低、関ケ原の陣などを1つの階段状の装置を回し使いながらよく表現している)。演出も悪くないし、殺陣も頑張っていると感じる。そして何より衣裳の素晴らしさ。※
なのに、どうしても不満が残るのは、阿国の立ち位置がどうもよく判らないからだと思う。
フィクションなのだから、吉継と阿国が幼馴染というのは構わない。ではなぜ、阿国なの?
吉継と阿国に恋愛感情があったのかも曖昧だし、阿国の活躍の場と言っても、家康に庶民の気持ちを代弁して諫言することくらい。期待した踊りもほとんどなく(ケレン味のあるカブキ踊りを期待したのだけれど)、これだったら阿国でなくてもよくない?
大谷吉継の話としては、かなり面白くできていて、それだけでも成立したと思う。
(また、個人的な興味として、それでも観に行ったはず)阿国を、語られることのない正室に置き換えたら、もっとすんなり話がまとまったのではないだろうか。→ネタバレじへ
阿国の存在が、観劇の動機を大きく占めてしまったので、どうしても喪失感が大きくなったことが惜しまれる。
本当に面白いのだけれどなあ。
※注文を付けるとすれば、
①一揆の場面でも、合戦の場面でも、なぜ敵方の兵は忍者の姿をしているのかが不明。
②その忍者姿の方の中に地下足袋らしき物を履いていた方がいたのが残念。
③大名クラスが裸足に草鞋で出かけたり、戦場に出向いたりはしないと思う。
シンクロニシティ2018∞
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2018/01/05 (金) ~ 2018/01/09 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/01/09 (火)
座席1階C列4番
価格4,000円
説明だけを読むと、何かどこかで観たようなお話。普通これだけ読むと、けして観ないだろうけれど、フライヤーの少しダークな雰囲気に誘われて劇場に。
「やがてこのコンビニ強盗が想像を絶する事件へと変貌してゆく…。」と書かれても、まあ、人質があれこれと騒ぎだして、、、、ドタバタと、と想像していたけれど、本当に「想像を絶する事件」というか、事件なんて生易しいものではないものに変貌していく。
いやあ、凄い脚本だな。ここまで作り込むのは。脚本・演出の佐山泰三さんの情熱には関心しきり。かなり小ネタでも笑わせてくれるし。何書いてもネタばれになるのがくやしい。千秋楽を観たので、とにかく観るべし、と言えないのが残念無念。
今年は春先から、作品に恵まれているな。
惑星☆クリプトンの美村さん、まだ『SMOKIN' LOVERS~紫煙~』 を観て、1ヵ月経っていないけれど、全く気が付きませんでしたよ。相変わらずのナイスボディと早衣裳替えでしたね。
山の声
温泉ドラゴン
「劇」小劇場(東京都)
2018/01/06 (土) ~ 2018/01/08 (月)公演終了
満足度★★★★
フライヤーのイラストから醸し出される緊張感に惹かれたのと、久方ぶりに浅倉さんの芝居が観たくて足を運びました。
「完全版」を銘打つだけあって、2人だけのシンプルな舞台装置での芝居、微妙に傾いて作られた足場、凍てつくような声の張りと鋭い眼光、いやあ見ごたえありましたね。
私も雪山かじったことがあるので、観ながら、爪先が痺れるような感覚、朦朧としかかる意識、雪が解けて水となり染み入る気持ち悪さ、存分に追体験させていただきました。
浅倉さんは山登りしないそうですが、どうやってあれが演じられたのだろう。
感動の余り、観劇後に浅倉さんと握手しようと思いましたが、きっとそういうの嫌がる方だろうなと思い、記念に一筆したためていただきました。
ツヅキノキセキ
たすいち
「劇」小劇場(東京都)
2017/12/22 (金) ~ 2017/12/26 (火)公演終了
満足度★★
予言と占い、この違いは何なのだろうな。「予言」というのは過程をいかように変えようが、結果同じ結末になるけれど、「占い」はあくまでもその人の意志りに動いているという感じかな。
さて、本作品、10年で27公演という、小劇団としては破格のペース(もちろん、番外編もあるのだし)、よほど愛され、かつ意欲的でないとこなせない回数と思うのだけれど、正直、ちょっと判らなかった。
大人の条件
The Vanity's
ギャラリーLE DECO(東京都)
2017/12/19 (火) ~ 2017/12/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/21 (木)
座席1階1列端番
前半はグダグダというよりは、むしろ、謎を収斂していっていないので、何を解決していくのか、何がキーになっているのかが不明確なのが残念。ミステリーになっていない。だから、ラストに、ああッ!というようなパンチがないのだと思う。
クローズドアイシリーズのタッチが父親の他の絵と異なること、また同シリーズの人物が三女にいていること、ある余命幾ばくもない妙齢の夫人が三姉妹の動向を調べていることなど、材料はできているのにもったいない。他にも伏線があるのだけれど、そこは書くともろネタバレになるので、、、また、姉妹を調査をしている女性が狂言回しなのだけれど、キーマンとして活きていない(彼女に何か気付きがなければ)。三女が盲目でも絵が描ける特殊能力の説明も何のためにあるだろう。
「大人の条件」というタイトルも、的を得ているのかどうか。「Closed Eyes」とかの方がよかったのでは。
とはいえ、The Vanity'sの皆さんの好感度は高く、ミュージカルをも手掛けている団員の皆さんのアフターコンサートは、とても楽しめました。せっかくの演奏付きなのですから、次回はもっと音源が活きるような音楽劇(音楽ミステリー?、、、ではワンパターンか)を期待します。
白い衣装は皆さん似合っていたし、歌も大変楽しませていただきました。
いろいろ批評めいたこと書かせていただきましたが、好きな劇団さんです。
お詫びと言えば何ですが、各皆さんのブロマイド3セット買わせていただきましたので、ご容赦ください。(まあ、自慢のブロマイドを見てみたいな、という欲求が強かったのですが)
THINGS I KNOW TO BE TRUE ーこれだけはわかってる-
幻都
black A(東京都)
2017/12/19 (火) ~ 2017/12/23 (土)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/20 (水) 19:00
座席1階1列
大森博史、山本道子の安定感のある演技を中心に、4人の子供たちがそれぞれの人生をセリフの中で個性豊かに演じられている。丁寧な演出の朗読劇でした。
家族をよく幻想だと喩する表現を耳にするけれど、それは理想としての家族がそれぞれあって、それが家族内で相互に違っていて、現実との乖離に疲弊したり失望したりするからなのだろう。しかし、そうならない家族像というものが存在するのだろうか。そもそも、初めから家族などに期待したり、依存したりしたりしなければ、家族像などというものは描くことすらないのだから。
皆ちりじりになる家族、それぞれの思いを込めて。子供たちは未来を観、親は過去を観、愛するがゆえに通じない心のもどかしさ。
ある子は、家庭の中に人生の総てがあったと言い、ある子はこの家の中には何もなかったと言う。この違いは何?母親は言う、皆公平に同じだけの愛情を注いで育ててきたのだと。
朗読劇はつくずく、見せるものなのだな、と思う。
役者の位置、移動、視線、手や足などのちょっとした所作が、かなり大きなニュアンスや波風を生じさせる。その意味でも、この舞台は声だけでなく、十分に舞台劇としても成立している。
必見。
SMOKIN' LOVERS〜紫煙〜【30名様限定公演】
惑星☆クリプトン
Cafe Bar LIVRE(東京都)
2017/12/08 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
1日3公演と考えると、あの衣裳変えは、かなり大変でしたでしょう。毎回、同じ衣裳だったのでしょうか、ちょっと気になります。
今年も無事、「すもらば」を見れて、年を越せることをうれしく思います。
どの話も他愛ない、といえば他愛ないのですが。私は「らくだ色の女」「希望を捨てるな」がちょっとツボでしたね。ただ、後者はもっと乾いた演出の方がよかったかな。
あまりメソメソされても。
あと、美村伊吹の赤いミニのワンピースとっても似合っていました。
惜しむらくは、真横の特等席でしたので、膝にコート掛けないで欲しかったです。おみ足をもっと堪能したかったな。(ちょっとエロ目線でごめんなさい。)
池田屋裏2炎上
グワィニャオン
萬劇場(東京都)
2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/14 (木) 19:00
座席1階C列7番
よくもまあ、これだけの人数、登場人物を使いながら(書きわけながら)、けして脱線せず、浮いた存在を作らず、動かしきることができると関心しきり。「ほたえな」的な舞台で、舞台装置も目いっぱいに使いながら、殺陣でも魅せて、存分に笑わせてくれる。一方でこの夏「学ばない時間」「クラゲ図鑑」を観たものからすると、西村さんの才覚の幅広さというか深さというか、恐るべし。
ただし西村さん、一層の千代大海(九重親方)化が進んでいますよ。
『熱狂』『あの記憶の記録』
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2017/12/07 (木) ~ 2017/12/19 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/13 (水) 17:00
座席1階D列13番
「ある記憶の記録」「熱狂」を連日で観た。他のコメントにあったような、聞き苦しさとかタイミングの早さとかは感じず、相変わらずの熟成度のある芝居だなと感心しきり。
ただ、連日で観て、かなり周りの観客の方々が厳しい批評眼で観られていた(なぜか若い女性の方)ので、細かく見ればいろいろとあったのかもしれないが。結構、終演後、辛辣に語っていたからなあ。そんな見方をされる劇団になったのですねえ。
ただ1人2作に出ていられる浅井伸治さん、どちらもストーリーテラー的な役割なのだけれど、一方は強面のSS、一方は人の好い身の回りの世話係と、ものすごい好対照。
古川氏の今年演じられた脚本、「熱狂」→「旗を高く掲げよ」→「ある記憶の記録」→「幻の国」と繋げてみると、戦中戦後のドイツ負の歴史とでも言おうか、何かとても感慨深い。古川氏がパンフで書いていた「知的好奇心」のなせる業なのだろうけれど、なんとも、それに留めておくのがもったいない気がするほどの連続性、体系性だと思う。